341: earth :2017/01/02(月) 13:52:38

 時空の迷い子達
 断章《破局の足音》

 三賢者が知る《原作》において特地と言われた世界。
 エルフだのドラゴンだのゴブリンなど、お伽噺の存在が闊歩する世界。
 その世界で覇権を握っていた帝国は門の向こう側の日本を蛮族と侮り、遠征を仕掛けた。
 しかし彼らはそこで途方もない化け物たちを目の当たりにして逃げ帰ることになった。

「無数の魔法の矢を放つ天を覆わんばかりの巨大な化け物だと?」
「そのような化け物が存在するなど信じられん」
「ただの言い訳ではないのか」

 報告を受けた元老院の議員たちは口々にそういったが、最終的に化け物の攻撃で門が崩壊した事実は変わらない。
 このため遠征は炎龍を上回る《未知の怪物》の出現を受け、中止を余儀なくされたという形にして終了となった。
 帝国が蛮族に負けたのではなく、炎龍を超える化け物がいたから手を引いたという形にすることで、実質的な敗戦を糊塗することにしたのだ。 

「その巨大な化け物もこちらには来れん。恐れるに足らん。そのようなこちらに来れない怪物を恐れるよりもやるべきことがあるだろう」

 帝国皇帝モルトはそう断じ、失った戦力を回復を急がせることにした。
 武力によって強引な支配を行っている手前、帝国への反感は根強い。諸国をこれまで通り抑え込むためには失った戦力
の回復は急務だった。
 当然ながら臣民には負担をかけることになるが、そのことを気に病む男でもなかった。

「門が崩壊したのはむしろ僥倖だったな」

 彼は側近たちにそう漏らした。
 しかしながらそんな楽観的なムードをよそに、世界の危機は確実に近づいていた。
 そう、門の反応を探知した宇宙怪獣たちは高度な文明があると判断して、特地のある星の周辺に集結を開始していたのだ。
 ワープよりも高度な技術、異なる世界を直接つなぎ、その回廊を維持する技術。
 それがあるということは、それに見合うだけの文明と知的生命体が存在する証である……彼らの本能がそう告げていた。
 また銀河帝国宇宙軍との戦い、そして異次元人から接収した情報を基に、宇宙怪獣はワープ技術と次元移動技術が存在する世界の知的生命体は自分たち(宇宙怪獣)に対し十分に抗う術を持っていると判断するようになっていた。 
 加えて6000万もの宇宙怪獣が大した戦果を挙げることなく撃滅された直後ということもあり、宇宙怪獣を統括する
《ナニカ》は必勝を期して5倍以上の戦力、実に3億という戦力を《特地》にぶつける気でいた。
 そして《特地》を壊滅させた後、返す刀でついこの間に滅ぼし損ねた地球、銀河帝国側が第99観測世界と呼ばれた世界にある地球に攻め入る気でいる。 

(ツギコソハ……)

 ヒト、知的生命体、そして地球という存在に対する悪意が蠢いていた。
 三賢者でも対処に手を焼くであろう規模の化け物が自らが住む星に狙いを定めていることを《特地》の人間も神も、まだ知る由もなかった。

342: earth :2017/01/02(月) 13:55:01
あとがき
特地の神様は色々と思う所がありますが……今回ばかりは応援しておきましょう(棒読み)。
生き残っていれば伊丹が救いに行けるかも知れませんし。

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最終更新:2017年02月20日 12:15