357: earth :2017/01/05(木) 22:20:06
G20による国際会議が踊っている様子は、銀河帝国側に筒抜けであった。
アドミラル・ヒジカタに戻っていたフォークは臨時の長官室にした部屋で部下からの報告を聞くと軽く頭を抱える。
「まぁ予想はしていたが……いやはや」
要求を突きつけた彼自身、纏まるのは困難と見ていた。
しかしそうでも言わなければ、銀河帝国上層部(特に三賢者)も納得してくれない以上、言わざるを得なかったのだ。
わずかな可能性に賭けたのだが、その賭けは予想通り彼の負けで終わりそうだった。
「如何しますか?」
「最低限のケアはして、あとは自助努力に期待。これが一番可能性が高いプランだろう。こちらが用意した支援計画が無駄になるのは残念だが……」
三賢者が支援に後ろ向きなら、21世紀世界の人類を実験動物に例えて支援の必要性を訴えるつもりだったフォークは、その必要がなくなったことに安堵した。
(我々の上司が思っていたよりも《人の子》であったことを確認できただけでも上々だな。だとすると、あとは特地か)
銀河帝国側かれすれば特地は厄ネタの塊(特に正神関連)であり、好き好んで関わり合いになりたくはなかった。
ライガーは「許されるならジオイド弾で吹っ飛ばしたほうが後腐れがなくていい」と思っていたほどだ。
フォークは、「例え《原作》通りであっても非武装の民間人や関係ない亜人もろとも抹殺は人としてどうか」との思いがあるので、仮に特地側と事を構えるにしても銀座事件の原因を作るなど問題の多い冥府の神に仕置き(他の神への見せしめ兼ねる)をして手打ちでいいのではないかと思っていた。
しかし特地の帝国に対しては容赦する必要性を感じていない。特地の権益に対して興味を持たない銀河帝国からすれば、現地が多少混乱しても問題なかった。
(対帝国戦となれば帝国の中枢を奇襲して終了だな。あとは現地住民に任せれば良い。わざわざ地上に関わる必要はないからな)
多少乱暴な手であるが、宙対地爆撃で空から一方的に攻撃することだってできる。
そしてそれを防ぐ手立てもを彼らは持たない。訓練よりも簡単な作戦になるだろう。
銀河帝国政府は具体的にどうするかをまだ決めていないが、特地の情報があるに越したことはない。故に彼はまず特地の世界がどこにあるかを探っていた。
「銀座の門、いや次元回廊で何かわかったことは?」
「異界観測班はあと36時間程度で回廊を形成した世界の座標を特定できるとのことです」
「一日半か……よし偵察部隊を用意するように参謀長に伝えてくれ」
「了解しました」
フォークは部下が部屋から出ていくのを見た後、考え込む。
銀河帝国からすれば特地の価値は高いとは言えない。だが21世紀側はそうではない。
「しかし問題は日本が、この世界がどう動くかだな。まぁ門が潰れている以上、どうすることもできないだろうが……我々に何かしらの協力を求めてくる可能性もある」
帝国軍は銀座に侵攻したが自衛隊、警察の反撃、そして宇宙怪獣の攻撃でその多くが死亡している。
それでも少数の捕虜を日本は得ており、いずれ門を築いて侵攻してきた異世界の存在を彼らは知るだろう。そのときの対応も考えなければならない。
「……無駄な仕事が増えるから、見つかったときには滅んでいました、なんてオチにならないだろうか。残業をやるにしても別の業務に時間を割きたいし」
本音か冗談か、区別がつかない台詞を呟いた後、フォークは再び仕事に戻った。
彼の願いが叶うかどうか、それを知る者はこちらにはまだいなかった。
358: earth :2017/01/05(木) 22:21:40
あとがき
アンチものは多々ありますが、感情の問題ではなく自分の仕事が増えるから滅んでいてほしいなと思われた世界はないでしょう(苦笑)。
最終更新:2017年02月20日 12:23