360: earth :2017/01/08(日) 01:08:29


  時空の迷い子達
  《とある提督の即断》


 銀座の門を築いたと思われる世界の場所を特定した銀河帝国は偵察部隊を送り込んだ。
 三賢者は殴り込み艦隊から適宜増援を送ること、場合によってはFG(《特地》がある星に与えられた暗号名)に介入
してもよいとフォークに伝えた。
 三賢者は「何度計算しても面倒ごとになるという予測しかないのだが」と苦い顔だったが、《原作》との差異が存在する可能性もあると判断した故の決定であった。
 しかし偵察部隊が送ってきた情報は三賢者、そしてフォークの予想を覆すものだった。
 アドミラル・ヒジカタの第一艦橋で報告を聞いたフォークは驚愕のあまり目を見開いた。

「……信じられん」

 フォークは天井に設置されているメインパネルに映し出された偵察部隊指揮官に「それは本当なのか?」と聞き返すが
答えは変わらない。

『いえ、間違いありません。現地時間で48時間前に多数の宇宙怪獣が目標惑星《FG》周辺で殲滅されたことは確実です。
ただし《FG》も多大な被害を被っています』
「《FG》の被害は後で聞く。何があった?」
『……映像を回します』

 光の速度で48時間必要とする場所に展開させた偵察艦によって観測された《48時間前の現地の映像》がメインパネルに映し出される。
 それは多数のヒトサイズのロボットが宇宙怪獣と戦う光景だった。
 多数のヒトサイズのロボットが亜光速、場合によってはそれ以上の速度で戦場を駆けまわり、宇宙怪獣と互角に戦っている。銀河帝国本国がある世界の地球人類が見ても驚くであろう光景がそこにはあった。
 しかしフォークは別の意味で驚いた。いや、目を疑った。

「て、鉄人兵団、だと?」 

 フォークは小声だが、思わずうめいた。
 彼が《原作》で知るような攻撃など生ぬるいとばかりに、鉄人兵団の兵士たちは圧倒的な攻撃力と機動力で宇宙怪獣と戦った。
 数的な劣勢など気にもせず、ロボット兵は宇宙怪獣を次々に撃破していく。それは銀河帝国軍の艦艇であっても、あのロボット兵に取りつかれればただではすまないことを示していた。

(あの冥府の神、追い詰められてなりふり構わない手に出たのか?)  

 フォークは苦い顔をして偵察部隊の指揮官に尋ねる。

「戦闘はどの程度続いた?」
『半日です』
「そうか。なら重要と思われる局面と最終局面だけを手短で頼む」
『了解しました』

361: earth :2017/01/08(日) 01:09:01

 鉄人兵団のロボット兵に手を焼いた宇宙怪獣だったが、彼らは次第にその数を増していった。
 文字通り、宙を覆わんばかりの数をもって押し寄せる宇宙怪獣によって鉄人兵団は次第に押されていく。それでも戦線を崩壊させることなく持ち堪えている様子は「ドラえもん最強の敵」と賞されることだけの実力を持っていることを示していた。

「「「……」」」

 《原作》を知るフォークですら驚愕しているのだから、《原作》を知らない将兵(大半はクローンかアンドロイドだが)がこの超高性能ロボットの大軍団と、常軌を逸した物量(それも質も兼ね備えた)を誇る宇宙怪獣の一大会戦に目を奪われるのは当然だった。

(あれが鉄人兵団の手加減無しの攻撃か……まるでヒトサイズの宇宙戦艦だな)

 その鉄人兵団も不利を悟ったのか彼らは次第にFGに戻っていく。
 そして鉄人兵団が後退する度に宇宙怪獣は前進していき、FGを射程圏内に納めると容赦のない宙対地攻撃を開始する。
 無数の光がFGに降り注ぐが、それらは惑星には到達しない。惑星周辺にバリアが張られているのか、宇宙怪獣から放たれた攻撃は弾かれていく。
 これに業を煮やしたのか、ざっと見積もっても万の単位の宇宙怪獣が亜光速で突っ込み、バリアと接触後に自爆する作戦に打って出る。
 フォークは「原作6話かよ」と呟きつつも、視線を外せない。
 3回の波状攻撃の末に、FGを囲っていたと思われるバリアは砕かれる。そしてそれを待っていたかのように後続の宇宙怪獣が一斉攻撃を開始する。しかしそれでもFGは抵抗を止めない。地表に設置されたと思われる砲台から無数のビームが放たれ、宇宙怪獣を次々に宇宙の塵としていく。
 壮絶な潰しあいが暫く続き……先にFG側が力尽きた。
 抵抗を排除したのを確認した宇宙怪獣は更に接近し、星にとどめを刺した。

「……数の暴力といったところか」 

 映像を見終えたフォークは軽く息を吐いた。

「……それで、宇宙怪獣は?」
『宇宙怪獣は現在、この恒星系の恒星周辺に集結しています。この戦いで受けた傷を癒しているものかと』
「こちらが気づかれた様子は?」
『ありません』 
「……それは重畳」

 そう言うとフォークは即断する。

「横合いから殴りかかれなかったが……多少なりとも疲れた相手に殴りかかることはできる。このチャンス、そうはない」

 今の彼にとって《特地》の調査は優先度の低いものになっていた。

(鉄人兵団があの世界にいた時点で現地住民は色々と拙いことになっていただろうが……俺がするのはこの好機を生かすことのみ!)

 フォークは会議は踊るを地で行く地球諸国に対し、「宇宙怪獣が周辺世界に出現。これより迎撃に向かう」と通達するや否や、主力艦隊と共に全力出撃したのだ。
 もはや世界が特定されるのを恐れて迂回する必要も、欺瞞行動をする必要もない。
 故に彼らは最短ルートで宇宙怪獣が集結する恒星を目指し……恒星もろとも宇宙怪獣を始末することになる。

362: earth :2017/01/08(日) 01:10:41
あとがき
劇場版前か後かで特地の住民の運命は変わるでしょう……。
まぁ神様ですからきっとよい選択をしてくれたと信じましょう(棒)。

フォークとしては特地よりも宇宙怪獣入れ食いのほうが美味しかったかも(笑)。

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最終更新:2017年02月20日 12:25