364: earth :2017/01/08(日) 21:14:10

  時空の迷い子達
  《祭の後始末》


 銀河帝国軍は改良したジオイド弾を含め大量破壊兵器を恒星に大量に撃ち込み、恒星そのものを大爆発させるという実に豪快な戦術をもって大量の宇宙怪獣を一度に抹殺するという手に打って出た。
 さすがの宇宙怪獣も恒星の大爆発には抗しきれず、爆発と発生した衝撃波によって多大な被害を被った。そしてその隙を突くかのように銀河帝国軍は襲い掛かり、その恒星系、及びその周辺宙域に展開していた宇宙怪獣の殲滅に成功した。
 撃滅した宇宙怪獣の数は3億以上。銀河帝国宇宙軍は前回の戦いを含め実に4億近い宇宙怪獣を短期間の内に葬ることに成功したのだ。引き換えに恒星どころか恒星系そのものが崩壊するという21世紀人類から見れば大惨事をもたらしたのだが……。

「対宇宙怪獣戦を考えると、費用対効果は完璧だな」

 セイレーンの第一艦橋でフォークは戦果と自軍の消耗を比較するとそう評価した。
 恒星系が一つ滅んだものの、無数の並行世界の中にある無主の恒星系一つと引き換えに軽微な損害で勝てるなら問題ない、それが銀河帝国側の考えだった。
 それが自分たちの故郷の価値観からどれだけずれているか……三賢者もフォークも気づかなかった。いやそれに気づこうともしなかった。彼らの思考は鉄人兵団出現とその対処に向けられていた。

(三賢者の面々も大わらわだろうな。《原作》との差異がこのような形で示されたのだから)

 三賢者は鉄人兵団出現を受けてドラえもん世界から介入を受ける可能性が高まっていると判断し、勢力圏の監視体制をより強化することを決定した。

「ドラえもんが出現した場合、下手な介入を受ける前に、早めにお帰り願うしかあるまい。場合によっては多少の土産を持たせても問題ないだろう。当然、記憶の消去などの措置もできるだけ無しにする。嫌がられて脱走されたら劇場版の始まりだ」

 小会議室で放たれたブローネの言葉にライガーも山田も異を唱えない。

「技術を隠蔽してきた甲斐があったというものだ」
「ええ、銀河帝国建国に時空犯罪者がかかわっている……などと思われたら目も当てられませんし」

 三賢者にとって特地の神々やボラー連邦よりも1体の子守りロボットと4人の小学生のほうが怖かった。
 かといって彼らはこの5人だけを恐れている訳ではない。 

「鉄人兵団が他世界に進出している様子は? あれだけの科学力を誇る連中だ。間違いなく門を解析しているはずだ」
「今のところ、確認されていないが……警戒は必要だ。まぁ全力の鉄人兵団の実力が判ったのは大きな成果だ。いやはや門という不便な移動手段で展開できる部隊だけでこれだけのことが出来るとは驚いた」
「劇場版前なら異世界に奴隷狩りと称して出撃する可能性がありますね。この場合、ドラえもん劇場版の順番が変動しますが」
「何はともあれ、ドラえもんの奮戦を期待するしかないか」

 大の大人の3人は4人の子供と22世紀製の1体の子守りロボットの奮戦を願った。 

「しかし、特地の神々は消えていても気にはしないが……GATEの原作ヒロインの行方は気になるな」
「おや、陛下も彼女たちに会いたかった、と?」
「そこまで会いたいとは思わんよ。特にロゥリィに会ったら色々と面倒なことになりそうだからな。ただ少しは気になる。
《原作》が完全に崩壊した場合、《原作》において重要な役割を果たした者たちはどのような役割を振られるか」
「なるほど。それはある意味、興味深いですな」
「私としては、彼女たちの未来が少しでも幸多いものになるように祈りますよ」

 山田の意見にライガーは笑う。

「奴隷狩りで連れていかれていたら、死こそ救いになりかねないぞ? 特に女性は奴隷を増やすために活用されるだろう」
「薄い本御用達のR18な展開、と?」
「それで済めばむしろ幸運だろう。必要な臓器だけを抜き取られる展開も考えられる。魔法の研究のための解剖もやるだろう。
どんなことをされても死なない亜神は恰好の研究材料だろうな。特地の神、あの精神生命体もエネルギー生命体。機械生命体にとっては興味深い研究材料だろう」

365: earth :2017/01/08(日) 21:15:12


 山田の脳裏に別の意味でR18に指定されるであろう凄惨な光景が浮かんだ。

「……悍ましい限りですね」
「ドラえもんが負けていれば、地球人類も同じ目に遇った可能性が大だぞ? いやはやそれを考えるとTPがドラえもんの活動を見過ごしているのも納得できるというものだ」

 ここでブローネが咳払いをする。

「話題がずれているぞ」
「おっと、そうですな。失礼しました。かの世界については資源探索などを進めるということで」
「それでいいだろう。特地以外に魔法文明がないとも限らないだろうからな。件の恒星系は崩壊済みだから無視しても構わん」

 その後もいくつかの議題が話し合われるが、原作ヒロインの話題はない。
 彼らに原作ヒロインに会いたいなどという願望はなかったのだ。勿論、彼らも《物語》に出てくる彼女たちは好きだった。
 しかし《物語》が現実になった世界において無駄な労力をかけてまで彼女たちを探し出そうとする意志はなかった。 
 何はともあれ、特地に関する議論が終わると、彼らは今回の一件におけるもう一方の当事者であった世界に目を向ける。

「それで第99観測世界の地球だが……未だに結論が出ていない。それどころか、報告にもあったように情報が漏れて混乱が拡大しているようだ」

 ライガーが地球各地の様子を捉えた映像を円卓中央に映し出す。
 映像には一部の国々のみによって地球のリーダーが決められようとしていることへの抗議活動が各地で繰り広げられている様子が映っている。
 その一方で自国こそが地球の全権代表に相応しいと主張するデモも起きており、G20諸国の議会では「容易な譲歩は絶対に行うべきではない」との声が高まっている。
 それが沖縄にいる首脳へのプレッシャーにもなっているのは言うまでもない。

「……誰だ、そんなヘマをしたのは?」
「南北に分断されている某国。政府内には北のシンパが多いですからな」

 ブローネは「ああ」と呟いて納得した顔をする。

「あの連中か……まぁスパイ天国の日本でもありそうだったが」  
「留守番をしている第7分艦隊には、世界各地から自称・地球代表による会談を申し入れが殺到。非常に賑やかなことになっているようで……全く人類の業というのが垣間見えますな」

 ブローネと山田は揃ってため息をついた。
 そんな二人にライガーが追い打ちをかける。

「ああ、それと面白いことにヤマト、トップをねらえなどの製作関係者の周囲がにぎやかになっているようですな」
「並行世界に彼らの作品とそっくりの世界が実在したから、ですか。現地の脳科学者が忙しくなりますね」
「ははは。忙しいのは彼らだけではないぞ。他分野の科学者も未来技術を解析するべく次々に動員されている。
 ヤマトの実在こそはまだ公表されていないが……TVもネットでは23世紀世界についての議論で夢中。一部のバカが23世紀の未来に連れて行ってもらおうと沖縄を目指したらしい。おかげで海保と警察も大忙しだ」

 地上の狂騒ぶりを改めて目の当たりにした三賢者は「収拾はつかない」と判断した。

「しかしドラえもんがこちらに来る可能性が高まった以上、第99観測世界の地球を放置という訳にもいかん」

 ライガーの意見にブローネは渋々といった様子で同意する。

「何かしら手を打つ必要があるか」
「仕事が増えますね」
「「「はぁ~」」」

 いくつもの銀河を統治する超大国・銀河帝国。
 その大帝国を采配する男たちが弱小勢力の扱いに苦慮するという、何も知らない人間が見れば首をかしげる展開が帝国の奥の院で繰り広げられていた。

366: earth :2017/01/08(日) 21:16:28
あとがき
特地世界の話は終了。
こうも特地側の話がばっさり終了する話ってあっただろうか(汗)。
でもGATE地球はいまだにグダグダです。

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最終更新:2017年02月20日 12:29