379: earth :2017/01/16(月) 00:31:22
色々と思うところがあったので、前話の改訂版を掲載します。
380: earth :2017/01/16(月) 00:31:52
ガルマン・ガミラス連合軍が壊滅したとのニュースは即座に三賢者に報告された。
民間人が乗っている可能性がある船舶も全て撃沈したことも報告されたが、彼らはそれを是とした。
彼らは今後のことを協議するために、いつも使っている小会議室に集まった。
「逃亡した船舶は無し。主だった反銀河帝国武装組織を支えていた辺境のコロニーも全て破壊した。銀河中央に燻る反銀河帝国派への見せしめにもなっただろう」
ブローネの評価にライガーも同意する。
普段は強硬策に慎重な意見を言う山田でさえ、この件については口を挟まない。
現在の銀河帝国では地球帝国時代にその版図を拡大する中、宇宙船を使ったテロに手を焼いた記憶が色濃く残っている。
よって非武装の船舶、仮に女子供が乗っていたとしても反銀河帝国派の武装組織と行動を共にしていたのなら殲滅対象なのだ。
まして相手は別銀河に逃れて反銀河帝国勢力の再結集を図ろうとした者たち。手心を加えてやる必要を彼らは認めなかった。
「しかしヤマトの活躍は予想以上だった。いやはや建造した甲斐があったというものだ」
ブローネは己の肝いりで建造したヤマト級が大活躍したことにご満悦だった。
「ガルマン・ガミラス軍の艦艇を単艦でなで斬りにしていく様は絶頂すら覚えた」
「……ヤマト3に出てきたガルマン・ガミラス帝国の艦艇を改造した程度の性能で26世紀、いやそれ以上の技術で作られたヤマトに勝てる訳がないと思うのですが」
「蹂躙して当然だろう、JK」と山田はそう突っ込むが、ブローネは聞いていない。
「しかし気に入らないのは小型化したためにヤマトをポケット戦艦と諸国が考えていることだな。ヤマトをポケット戦艦とは言語道断だ。全く、やはり彼らは判っていない」
山田とライガーは顔を見合わせて「処置なし」と判断するとブローネがこちらに戻ってくるまで待つことにした。
尤もブローネも二人の視線にすぐに気付いたのか、慌てて咳払いをして会議を再開する。
「しかしよくもここまで戦力が集まったものですね……我々は善政を敷いているつもりだったのですが」
山田は思ったよりも多くの異星人が反銀河帝国武装組織に加わっていたことに苦い顔をする。
ライガーは「支配はしたくても、されたくないのはどこの星でも共通ということだろう」と気にするそぶりもない。
「ガルマン・ガミラス連合は潰した。後は根強いシャルバード教……宗教程厄介なものは存在せん。それに万が一、シャルバードの技術が外部に漏れれば少し面倒なことになる。その気になれば簡単に制圧できるだろうが……」
銀河帝国はシャルバード星の位置をほぼ特定していた。
無抵抗主義を貫いているかの星を制圧することなど、ライガーの言う様に造作もない。しかしブローネはその手の強硬策には消極的だった。
「平和を愛する無抵抗主義者の星を攻め落とした、などと知られたら堪らない。それは避けるべきだろう」
「シャルバード星はこれまで通り封鎖と監視に留めるのが良いかと。文字通り触らぬ神に祟りなしです。それよりも並行世界の探索と宇宙怪獣の対策に力を入れるべきです。例の件は決して無視できない案件です」
ブローネ、山田の反対を受けてライガーはあっさり引き下がった。
当の本人もそこまで乗り気ではなかったため、強硬策が採用されなかったことに文句は言わなかった。
シャルバード教以外に取り組まなければならない《火急の問題》があることを彼は理解していた。
「宇宙怪獣は知的生命体が存在する惑星を叩くのではなく、知的生命体が存在する惑星の最寄りの恒星を攻撃し、恒星の表面爆発を誘発するという方法を取り始めています。これは彼らに学習能力があることの証左と言えるでしょう」
381: earth :2017/01/16(月) 00:33:38
宇宙怪獣の変化はガルマン・ガミラスとの戦闘の最中に起こっていた。
彼らは第99観測世界を再び強襲した。そして山田博士が言っていた通りの戦術をもって地球人類を亡き者にしようとしたのだ。
襲撃の直前に配備された予知システムを使い、宇宙怪獣の変化を察知したフォークが適切な手を打ったため大事には至らなかったものの、宇宙怪獣がこのような手に打って出ること自体が驚愕に値することだった。
ライガーとブローネも最初は半信半疑であったが、今では宇宙怪獣に学習能力があること、そして戦術を変更しつつあることが事実であると認識していた。
「決戦ではなく圧倒的な数で波状攻撃を繰り返し迎撃側を消耗させ、その後に恒星に自爆型の宇宙怪獣を大量に送り込む。これをやられると堪らないな。防衛網を十分に構築できれば耐えられるだろうが」
ブローネが言う様に恒星系に十分な防衛網を張り巡らせなければ、この手の攻撃を防ぐことは難しい。
何しろ数匹の宇宙怪獣が恒星に突入した時点で勝負が決する。
恒星の表面爆発によって知的生命体が存在した惑星は壊滅的打撃を受ける。シェルターなどを用意していれば即滅亡は免れるだろうが、そのあとに惑星から脱出する術を用意していなければ緩慢な死を待つのみとなる。
「それにしても恒星を攻撃するとは……こちらのやり方を模倣したのか?」
「ワールドナビゲーターはその可能性が高いとの回答を示しています」
ライガーは少し顔をしかめる。
「相手はただの宇宙怪獣ではないということ、か」
「その場合、相手が宇宙超獣なのか、それとも更にその上位存在なのかは判りませんが……対処は必要でしょう。また宇宙怪獣は新戦術について試行錯誤を繰り返しているようです。異次元人が支配する勢力圏が攻撃された際の情報からもそれは読み取れます」
山田は手元の端末を操作してブローネとライガーの前に破滅した世界のリストが記されたウィンドウを展開する。
それを見ていたブローネは呻く。
「恒星間航行が可能な技術を持ち、相応の宇宙艦隊を持っている国家ですら、これだけの被害がでるというのか」
壊滅した恒星系は両手で数えられない。
そして異次元人の支配領域とは言え、失われた人命は優に100億を超えていた。
「我々の故郷、或いは21世紀に毛が生えたような世界では宇宙怪獣の恒星への攻撃を防ぐどころか、気づけもしないでしょうな」
ライガーが渋い顔をする。
「宇宙怪獣がハード面で進歩したという情報はありませんが、脅威が増していることには間違いありません。幸い、銀河帝国本国の要衝では次元転移、それにワープは大きく制限されているため宇宙怪獣への対処は十分に可能でしょう……しかし、それ以外では」
宇宙怪獣と言えどもワープが不可能なら、恒星間を移動するのに大きな手間がかかる。片やワープが使い放題の銀河帝国本国部隊は十分な余裕をもって迎撃できるため十分な勝算がある。
しかしワープが両者ともに可能なら……迎撃側にとって非常に苦しい展開になるだろう。
ブローネはやや苦い顔で尋ねる。
「本国以外でもワープを阻害するかね?」
「異次元人がワープ阻害システムの真相に気づく可能性があります。我々に因果律改変を可能とする技術があると彼らが理解した場合、彼らが冷静でいられるかどうかは……」
「やるのなら異次元人と宇宙怪獣を両方始末するか、こちらの切り札を悟られることなく宇宙怪獣を叩くしかない、と」
「あの異次元人共も宇宙怪獣は放置できないと悟るでしょう。この際、共同戦線とまではいきませんが、それぞれが勝手に宇宙怪獣を叩くことで同意することはできるのでは?」
ライガーもこれに賛意を示す。
「確かに。異次元人も損得勘定で妥協が成立する我々より話し合いが通じない化け物をより脅威とみなすだろう」
最終的にブローネも同意する。しかし当の本人は苦笑いを浮かべる。
「しかし《原作》で、異世界に進出して資源を収奪し、地球にすら魔の手を伸ばした化け物じみた連中と手を組んで、知的生命体の天敵である《本物の化け物》と戦うことになるとは……」
兎にも角にも異次元人との合意の下、銀河帝国はこれまで以上に宇宙怪獣対策に力を入れるようになる。
382: earth :2017/01/16(月) 00:35:21
あとがき
異次元人と銀河帝国が共通の敵を前にして麗しき友情を発揮します(棒)。
同じ知的生命体同士。話し合えば分かり合えるのでしょう(棒)。
宇宙怪獣を始末出来た場合、どうなるかは判りませんが。
最終更新:2017年02月20日 12:37