474 :①:2011/09/24(土) 07:18:27
「くそ!頑丈で高機動で燃費がよくて、そこそこ荷物がつめる車なんてないな」
背の高い男が書類を机に叩きつけ、うなるように言う。
「いっそドイツから売ってもらうか?シュビムワーゲンならそこそこ使える」
普段ドイツ車を愛用している小さな男が茶化すように言う
「Rubbish! ナチの作った車なんかに乗れるか!」
背の高い男は唇を尖らせて吼えた。
「キューベルワーゲンは確かに使い勝手がよい車だ。我が軍にトラックが充実しているならこのタイプの車は指揮・連絡で
十分使用できるだろう。しかし…」
軍人には似つかわしくない髪の長い男が呟くようにしゃべり続けようとすると、小さな男がさえぎる。
「はいはい、非力だって言うんだろ?条件的には
アメリカのジープが一番あうんだが…」
「おいおい、俺たちはそのアメリカから土地を奪おうって言うのに植民地人が売ってくれるわけないだろ」
3人は堂々巡りの議論に溜息をついた。
ここはブリストルにあるイギリス海兵隊基地。
その一角で三人は様々な車をテストしていた。
祖国イギリスはまもなくアメリカ上陸を行う。
彼らは上陸後、イギリス軍を支える車のテストを行っていた。
いかんせん条件が悪すぎた。
イギリスは上陸後、植民地人の抵抗を考えていた。
それに対応するためと前線に手軽に補給を行え、場合によっては車に武装し、
パトロールや限定的な反撃も行うことができる手ごろな車を探していた。
本来ならそのような任務は、軍用装甲車や大型トラックが任務ごとに用意されるべきものであった。
しかしイギリスの国力は疲弊していた。
それらはどうしても基幹部隊や基地の警備・補給に必要で、とても前線部隊にまわせる数が用意できなかった。
計画では歩兵に自転車で進撃してもらい、現地で乗用車やトラックを徴用してもらう予定だ。
「徴用で使える車は限られてくる。植民地人も徴用を受けたらイギリス軍に悪感情を持って抵抗するに違いない。そう多くは徴発できない」
背の高い男が溜息をつきながら言う。
「だからこうして俺たちがテストしてるんだろ?現地で兵士が苦労しないようにいいものを送ってやらないと…でもなあ…」
小さい男が困った顔をし、長い髪の男が受けて言う。
「アメリカではやはりピックアップトラックが最適だ。しかし…」
「パワーが足りないんだよ!スピードもな!」
背の高い男が再び吼えた。
三人の中では頑丈で、そこそこ搭載力があり、使い勝手のよい車種がピックアップトラックであることは一致していた。
しかし既存のピックアップトラックは、戦闘にもそこそこ使えるという厳しい条件を満たすものがなかった。
機動力と悪路にも耐えうる足回りという条件を満たすことができないのである。
かろうじて条件に当てはまるとすれば、ジープとシュビムワーゲンであったが、いかんせん両方ともイギリスでは手に入らないものだった。
アメリカは海の向こうで敵国になるし、ドイツはソ連との戦いで自軍でも必要なものでとても売ってくれるような状況ではなかった。
「このままじゃ、前線の兵隊が苦労するだけだぞ…」
「どうしたものかねぇ…」
「うーん…」
三人は悩んでいた。
そのときである、扉を叩くものがいた…
475 :①:2011/09/24(土) 07:18:58
2
「これはすごいな」
「こんなものを日本人が作っていたなんて」
「しかもこれが日本じゃあまり売れていないとは」
「これより小型の物は大いに売れているそうだ」
「体が小さいからかな?」
「ちがう、日本じゃこれぐらいの大きさは中途半端だそうだ。小荷物を運ぶには大きすぎる、さりとて大きな荷物だと小さい」
「それに天候の要素が大きいらしい、このサイズなら日本ではワゴンタイプを選ぶそうだ、イギリスも似たようなものだ」
「日本じゃ農家のどら息子か変人しか買わないそうだ」
三人の前にピッアップトラックが3台いた。
一台は泥だらけ、もう一台は泥だらけの上に荷台に重機関銃が備え付けられている。
そしてもう一台は焼け焦げ、ひしゃげた車体で廃車寸前だったがエンジンがかかっていた。
悩める三人の前に現れたのは日本人だった。
聞いたこともないはるか東洋の自動車会社から来たセールスマンだった。
「こちらで車をお探しと聞きまして…」
東洋人特有のよくわからない笑みを浮かべた日本人のセールスマンは三人の男に、いかにわが社の車がイギリス軍のご要望にあっているかを
力説し、ご丁寧にもテスト用の車を三台持ってきたのだ。
三人の男は日本人の作る戦闘機と戦車が優れているのは知っていた。
しかし、車が優秀とは聞いていない。それでも三人はテストすることにしたのだ。
今まで日本車は対象に入れていなかったし、もしかしたらという思いもあったのだ
結果は三人を唖然とさせた。
テストドライバーの激しい運転に車の足回りは耐えていた
武装しても機動力はあまり衰えず、搭載力もそこそこあった。
そしてほとんど苛めにしか見えない耐久テストにも合格した。
補強さえすれば鉄球をぶつけても耐える車体、
崖から落としても原形をとどめているシャーシと動く足回り。
海水につけて泥だらけでも、火を放ち焼け焦げても、基本ツールと小整備でかかるディーゼルエンジン…
「これで決まりだな、こいつのタフさとパワーはbrilliantだ」
背の高い男は言った
「価格も手ごろだ。何より短い時間で、数をそろえられる」
小さな男も同意した
「後ろに●YOTAとプレス文字が浮かんでいるのは気に入らないけどね」
長い髪の男が唯一不満を表明した。
セールスマンは三人の男の話を聞きながらニヤニヤしていた。
(これでウチも浮かび上がれるかも…)
憂鬱世界ではまだまだ新興企業のト●タ
(三菱や倉橋に水をあけられているが、この車を元にこの世でも世界に●ヨタ車を溢れさせてやる…
●ヨタ黄金期の、日本の真髄とも言えるあの車の名で…)
突然長身の男がセールスマンに振り返って聞いてきた。
「ところでこの車の名前はなんだ?」
セールスマンは胸を張って答えた。
「ハイっ!、●OYOTA Hiluxと申します!」
部屋の隅ではテストドライバーが試乗を終えて、白いツナギに白いヘルメットをかぶったまま、椅子に座って無言で腕を組んでいた。
※すんません、完全にネタ投稿です。
アメリカ分割後のアメリカ人のゲリラはどう戦うんのかなと考えてたところ、
1940年代のピックアップトラックにライフルやら散弾銃を抱えた南部のおっさんたちの写真を見てトヨタ戦争を思い出し、
やはりこれかなと。
で、ピックアップにトヨタということになるとネタ元を思い出してしまい、思わず…
最終更新:2012年03月21日 20:23