369: ナイ神父Mk-2 :2017/03/05(日) 23:36:12
大陸SEED ゲート編 その2

第一次ゲート開放作戦と東アジアの奮闘

ゲート出現後から僅か数ヶ月の交流でゲート向こうのプラントの世論は大陸側のプラントの末路を知って急速に過熱を始めた。当初こそ穏健派であるデュランダルはその流れを押さえようとしたが、民意には逆らえず、旧ザラ派等から有志を募り急遽ゲート向うのプラントを理事国の支配より開放する為の開放作戦用の艦隊が編成されて向こうの世界へと派遣される事となる。しかし、其れを感知出来ていない大陸側の理事国は通常通り、ナンバーズフリートの一個艦隊をゲート警戒に付ける形で警備を行っていた。

新型艦の試験航行も兼ねて行われる警備中の東アジア艦隊の旗艦、『チンギス・ハーン』の艦内では、艦長席に座るリー・リンジュン中佐が新品のシートに身体を預けながら出現以降代わり映えのしないゲートへと目をやっていた。

「あれからゲートに変化は?」

「初期のザフト出現以降は沈黙を保っていますな、向こうからしても未知の物で下手に弄れないのでしょう。」

「其れは此方も同じだな。今は各国が構造を解析しようと調査団を送る計画を立てている。其れまでは我々が此処の警備だ。」

「これが本当に異世界同士を繋げる物ならその価値は計り知れませんからな。」

「軍事・経済どちらから見ても大きな意味を持つ物に・・・如何した?」

突然眺めていたゲート中央部の発光が強くなりその異変に気が付いたリーは思わず声を上げ、其れと同時に異変を感知したオペレーター達の動きも慌しくなる。

「ゲート中央部より発光現象、此れは前回のザフト艦隊帰還時に起こった物と同質の現象だと思われます!」

「何が来るか解るか?」

「いえ、発光現象が強く中々・・・」

「万一に備えてプレトマイオス基地と周辺を航行する艦艇に通信を入れろ!MS隊も出撃、アグリッサにも出撃準備を整えさせろ!」

「了解です。」

俄かに慌しくなった艦内でリーはそうオペレーターへと指示を出すと今だ発光の続いているゲートを再び見据えた。周辺のネルソン級からは次々と東アジアの主力MSであるティエレンやイナクトが飛び出し艦の周りに展開していく。一方侵攻してきたザフト艦隊は予想以上に大陸側の連合が戦力を展開している事に慌てていた。当然と言えば当然だが、ザフト側の世界では半ば放棄されたエリアであり、そんな価値の無いエリアに大艦隊を展開しているなど予想の範囲外だったのである。

「ナチュラル共、此方の出撃を予想していたとでも言うのか?」

「解らんが、寧ろ好都合だ。あの部隊を叩いてゲート周辺を制圧する。MS隊を出撃させろ。私もザクで出る!」

ザフト艦隊の指揮を与るサトーはそう言うと指揮官席を離れて後部の扉へと向かう。其れと同時に各艦の格納庫からは多数のゲイツRや最新鋭機であるザクシリーズが各々に合った武装を装備し出撃、東アジア艦隊へと向かい始めた。対する東アジア艦隊も迎撃を開始する。
しかし、戦況は当初ザフトで考えられていたような確実な勝利からはほど遠いものとなる。

『クソ、此方マイケル隊。敵のビームの壁が厚い、援護をくれ!』

『馬鹿な、ナチュラルのMSに追いつけない!?』

『嘘だろ、あのMAビームも実弾も弾き返して・・・』

370: ナイ神父Mk-2 :2017/03/05(日) 23:36:43
通信ではそうした戦局不利を知らせる通信が戦闘開始以降多発、ザフト艦隊は徐々に強力な砲撃能力を持ったティエレン隊に包囲され始め、MS隊の更に後方から放たれる艦砲射撃によって徐々に逃げ道を失っていく。そんな中、ベテラン中心のサトー隊は何とか戦況を打破しようと動いていた。しかし、それでも倍以上の戦力を投入している東アジア艦隊の物量と火力に押されて徐々にその動きは精彩を欠き始める。

『舐めるなよナチュラル!』

自分達コーディネイターがナチュラルの良い様に遣られる。そうした事態に我慢できないザフト兵はそう叫んで近くに居たイナクトに切り掛かろうとするもイナクトは寸前の所で其れを回避し、逆に切りかかった機体は離れた所から複数のミサイルを浴びて爆散する。

『レナード!くう、墜ちろ!!』

サトーは落とされた部下の名を叫びながらその敵討ちと言わんばかりにザクファントムのバックパックに装着されたビームガトリングを掃射して部下を撃墜したイナクトを蜂の巣にして叩き落す。しかし、接近をしすぎたせいで砲戦型へと改良されたティエレンの多数のビームと実弾の混合した弾幕がサトーを襲う。

『ぬう、ウオオー!』

声にならない声を上げながら有らぬ方向からGの圧力を受けながら無理矢理機体の軌道を咄嗟に変えてサトーはティエレン隊からの砲撃をギリギリの所で回避する。だが、避け切れたのはサトーのみであり後方に付いて来ていたMS隊や射線上に居た艦艇は無数のビームと砲弾を浴びて爆散。ザフトの形成は更に不利へと傾いていく。
一方で対抗している東アジアはザフトの戦力に対して違和感を感じ始め、アグリッサを操作していたパイロットは他の部隊も含めて通信を繋げる。

『此方第一小隊、ザフトのGを確認したか?この規模であれば一個小隊は居ても可笑しくない筈だ。』

『いや此方では見ていない』

『第5小隊同じく』

(連中まさかGを持って居ないのか?このレベルの艦隊で?)

世界樹戦からのベテランであるアグリッサのパイロットはそうしたザフトの動きについて思考を巡らしながらも機体を動かし、次々にザフトのMSを両腕に装備された大型ビームライフルや機体下部に取り付けられたプラズマ砲で次々とMSやナスカ級を初めとした艦艇を撃墜していく。そして、近く居たローラシア級を沈めると同時に上方から迫ってくるMSを感知し肩部分に取り付けられたシールドで攻撃を受け止める。

「角付きのトロール、指揮官機か!」

『此のままで終われるか!せめて、貴様だけでも・・・』

機体が近いことで聞えてきた通信からはそうした声が聞こえ、ザクはスラスターを噴かせて一層ビームアックスをアグリッサ上部に付いたティエレンに対して押し込もうとするが、機体の基本出力の違いも有り逆にザクのビームアックスが対ビームシールドによって押し返され始める。そして、均衡が崩れた瞬間状況は動いた。ザクを押し返したアグリッサは即座に後部に合ったミサイルランチャーをザクへと向けて発射して追撃を行うが、それに気が付いたサトーはスラッシュウィザードへと搭載されたビームガトリング砲を発射して撃墜する。

『この程度のミサイルなど・・・』

サトーがそうコックピット内で言いかけた時、モニターに写って居たのは前方に取り付けられた大型の格闘用のクローを振り被るアグリッサの姿で有り、これがサトーの見た最後の光景と成った。勢い良く叩き付けられたアグリッサのクローによってザクファントムの機体は真っ二つとなり、追撃と止めの為のビームが上半身に直撃して爆散。指揮官機のザクを撃墜して一息ついたパイロットが周辺を見ると既に周辺のMS戦は終了しており、今し方艦砲射撃と思われるビームによって撃沈されたナスカ級の爆発を最後に戦闘は終了する事と成る。

この侵攻に投入された戦力も全滅と言う結果は、未だにコーディネイターが至高と考えるプラント住民に大きな衝撃を与え、原作側の連合にザフトが前大戦程の脅威ではなくなっていると感じさせるには十分な結果に成ったと言え、結果的に原作側での戦争の再開を決定付ける切欠と成っている。又、戦闘中にGタイプやゲイツの強化型等の機体が見られなかった事から大陸側は今回の襲撃が威力偵察で有り次は本隊を送って来ると警戒を高めて居たが、其れとは裏腹に停戦を求める大使がやって来た事でその予想は外れ、肩透かし喰らう事に成っている。

371: ナイ神父Mk-2 :2017/03/05(日) 23:37:15
新型機開発と大洋の動き

東アジアがゲート警備にて戦闘を行っているのと同時刻、大洋領のオーストラリアではとある武装の試験運用が行われていた。
標的として数十キロ先に配置された標的役の陸上戦艦からは既に乗員は全て退避し、無人の艦が停止している。そして、其れを狙う大型砲は未だに扱う機体が完成していないため臨時として固定と操作の為の砲台へと設置され発射体勢を整えている。次の瞬間、近くに居ればMSでさえ吹き飛ぶのでは無いかと言う轟音と共にその大型砲は砲弾を発射。少し遅れて聞えてきた凄まじい着弾音と衝撃の後には200m以上の大きさが有った筈の陸上戦艦は跡形も無く消え去り、後には隕石のクレーターと見紛ばかりの巨大な着弾跡が残るのみであった。

「此れは、何と言うか・・・圧巻だな」

新型の対拠点用の新型砲が完成したという報告を受け、自身の目で確かめに来た林は実際の試射や着弾の様子を見て思わずそう声を漏らす。

「1800mm単装砲、まとも直撃すればPS装甲でも使わない限り原型の維持は無理でしょうな・・・」

「良い出来だな」

「しかし、疑問であります。」

林のその褒め言葉に対して後ろを付いてきていた将官は林に対して質問を投げかける。

「何がだ?」

「いえ、世界全体の機運として軍拡が進んでいるのは理解していますが、此処まで強力な戦力・・・其れも戦略クラスの物を複数生産しているのが聊か気に成りまして・・・」

「その事か・・・各国とも怖いのだよ、未知なる物が。」

「・・・其れはゲートの事ですか?」

「そうだ、平行世界同士を繋げるゲートと言う常識外な物が出てきたのだ。あのまま、平行世界のみで終わるならそれでも良い。
しかし、万が一今の戦力で対抗できない世界と繋がる。或いは今繋がっている世界が何かチョッカイを仕掛けてくる。
その時に我々が対応できないでは済まされないのだ・・・」

「それは・・・確かにそうですが・・・」

「まあ、主力としてドワッジもレッドホーンも生産が進んでいる。ガルスJと合わせれば大西洋や東アジアには先ず負ける事は無いだろう。
新型機の開発は順調に進んでいる。」

「・・・例のドーガシリーズですか」

「ああ、ドライセンに変わる新型の第二世代MSだ。単純な比較は出来んが、宇宙での運動性ならドライセンを上回る、陸上でもガルスJ以上の格闘性能が望めるだろう・・・先ずはドライセンの充実が先だがな」

林は其処まで話すと他の機体の確認へ行くべく踵を返した。その後、大洋では異形とも言える生物的姿をした新型MAレッドホーンの発表が行われ、各国を驚愕させる事に成る。又、同時に公開されたスペックも各国を驚かせるには十分であり各国では此れに続こうと大型の陸戦MAの開発が加速、世界は更なる軍拡へと突き進んでいく事と成る。

372: ナイ神父Mk-2 :2017/03/05(日) 23:37:45
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ナンバーズフリートの一隻を 一個艦隊に修正
ゲートの向こうという表現を原作側に変更
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最終更新:2017年03月06日 11:30