42 :名無しさん:2011/11/27(日) 16:12:48
以前話題になっていた、とある飛空士への追憶ネタでSSをつくってみました。


194Ⅹ年某月、米国との戦争も終わりアメリカ風邪対策のために列強国との関係改善を進めていた日本はある日突然大変な混乱に見舞われた。

曰く満州の日本領以外の土地が消えて海になっている、曰く国外にいた日本人が日本領にワープしていた、曰く航法どおりに動いているはずの船や飛行機が目的の場所に着かない、曰く他国との連絡が突然途絶えた。

嶋田首相はただちに各地に偵察機や爆撃機を飛ばし状況を確認するよう指示した。

命令を受けたパイロットは台湾や満州各地の基地から飛び立ち、つい先日まで中国があった土地を偵察したとき二つのことに気がついて恐怖する。
一つは確かにそこには海しかないこと、もう一つはまるで航法が上手くいかないことだ。
自分の飛び立った基地すら無線で誘導してもらえなければ帰れない。航法通りに飛んでいてもどうしても位置がずれる。
まるで丸い地球が平面になってしまったかのように。

「な、なんだこれは!」
そして満州からひたすら西へ向かって進んでいた重爆撃が行動半径の限界に近付いたとき、彼らはとんでもない物を発見した。
それは海の真ん中にそびえ立つ、端が見えないほどの長大な滝だった。

643 :名無しさん:2011/11/27(日) 16:13:18


それから十年後…

「やれやれ、またいやな命令を下すことになった」
異世界転移という国難に立ち向かうため、いまだに現役を続行していた(させられていた) 嶋田首相は自分の命令のもと、空へと飛び立って行く巨人爆撃機や『空母』を見つめながらため息をついた。
「しかたがありません。日本に選択肢はなかったのですから」
隣に立つ辻も肩をすくめる。
そう、すべては必然だったと言える。
海の真ん中に巨大な「滝」があるせいで日本がまともに交易できる国は、同じ段差にある帝政天ツ上だけだったのだ。もうひとつの列強である神聖レヴァーム皇国は王権神授説いまだ健在の絶対王政国家で、その上人種差別全開の国家だ。

レヴァームの圧力をかわすためにも天ツ上との連携は必須だった。

その結果として似たような文明を持つ両国の国民が精神的にも強く結びついてしまったことは必然だった。

日本は貿易の自由のためや石油依存を断つために、天ツ上はかつてレヴァームに奪われた領土を取り返し、猿呼ばわりされて差別され続ける未来を変えるために、お互いの技術を交換し、力を強めていったことも必然であり、自信を深めた帝政天ツ上が神聖レヴァーム皇国に宣戦布告した時には、国民の世論や国家利益のために日本もこの戦争に参加せざるおえない状況になっていたことも必然だったのだろう。

平和のために努力はした、だが駄目だったのだ。

644 :名無しさん:2011/11/27(日) 16:14:03


「弾道弾が上手くいっていればもっと安く勝てたはずなんですがねえ」
辻はこの世界の物理法則にぶつぶつと文句を言う。

この世界は真っ平らな地面の上で空が動いている天動世界だ。地球とは異なる物理法則に則って弾道弾を正確に命中させるノウハウはいまだ確立されていない。
弾道弾は脅しや嫌がらせ程度にしかなかならなったが、レヴァーム人を激怒させ敵将バルドーを焦らせることには成功した。あとは大瀑布を越えてやってくる彼らの二十隻の飛行空母と十万人の海兵隊員に最終兵器を叩きつけてやるだけだ。

原作と違って天ツ上の戦力にはまだ余裕がある。歴戦のパイロットたちが操る「ジェット戦闘機」真電改は核を抱えた日本の爆撃機が敵艦隊に突入するための血路を開くだろう。

だがその後はどうなるのだろうか?レヴァーム人はあんな破滅的な兵器を見せつけられて、戦後に天ツ上や日本と原作のような友好関係をつくれるのだろうか?
日本の入れ知恵でファナ皇女は無事にレヴァームに戻っているが、恐慌状態のレヴァーム人をまとめて平和条約を結べるだろうか?数年後にやってくる空飛ぶ島への対処は?海猫は、千々石は、彼らの決着は?
原作以上の勝利をおさめても、原作以上の人々の幸福や平和につながるのだろうか?

嶋田と辻はこの世界の未来を思い、人知れず頭を抱えるのだった。

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最終更新:2012年04月26日 17:55