718: トゥ!ヘァ! :2017/04/15(土) 01:02:48
アナザーseed 傭兵ギルドあれこれ
傭兵ギルド。名前その通りに傭兵の組合である。通称レイヴンズアーク。
今回は地上も宇宙も問わず世界を股に掛ける彼等渡り鳥の話をしよう。
アナザー世界ではジャンク屋ギルドと同じく世界規模の組織であり、多数の傭兵が所属している巨大組織である。
運営資金の支援元はジャンク屋ギルドと同じく六大国を始めとする各国とそれらの企業である。
設立の歴史はそれほど古いわけではない。まずはギルドが設立されるまでに経緯を説明しよう。
まだギルドが設立される前。CE以前の大再編時代において国家の混乱を尻目に各地の荒事で傭兵が散々暴れまくった時代が存在した。
今の大まかな国々にまとまるまでに様々な混乱や戦乱があったわけであり、潰れた国家や半壊していた国家も少なくない。
そして世界中が混乱に見舞われていた時代だったため傭兵たちは好景気に沸いていた。
ある者は歩兵として、ある者は戦闘機乗りとして、ある者は戦車乗りとして。珍しいものでは船を扱う傭兵などもいた。
彼らは崩壊した国家からの流出品や汚職の目立つ国軍からの横流し品といった兵器を身にまとい各地の戦場で暴れまくった。
名声も悪名も欲しいままにし、身の回りで精いっぱいな大国の手が届かない地域では傭兵による独立国家すら立ち上がったほどである。特に当時のアフリカは傭兵天国と呼ばれるほど仕事も支援元(パトロン)にも困らなかった。
このように世界中の戦場を渡り歩く彼ら傭兵のことをいつしか人々は畏怖と侮蔑と尊敬を込めてレイヴン(ワタリガラス)と呼ぶようになった。
世はまさに大傭兵時代。個人から少数の徒党に小規模な国家にすら比肩する大規模なPMCまで様々な傭兵が伝説を築いた時代。
しかし時は過ぎ去り、CEの時代に近くなってきた頃には大まかに現在の国家の形となってくる。
そして国家が安定して内から外へ目を向けた先にあったのは強力な武力を持ちながら自由極まりない存在。つまり傭兵(レイヴン)だ。
折しもテロや武装難民といった武力を持ったアウロトー達によって酷い目にあった記憶の濃い時代。
国家からすれば誰の首輪にも嵌っていない彼等のことは殊更危険に思えた。国家達はどうにかして傭兵たちを枷を嵌めようとしたが、既に半世紀近く好き勝手にやってきていた傭兵の大多数はそれを拒否した。
彼らの多くは偉そうにする権力者が嫌いだったし、今更国家なんぞの首輪付きになる必要があるとは思われなかったからだ。
しかし後の歴史家の多くが言うように彼らの多くは見誤っていた。彼等が拒否した国家は今まで自分たちが商売相手にしてきた、吹けば飛ぶような中小国家ではなく。
現在でいうところの大洋連合、大西洋連邦、ブリタニアユニオン(BU)、新ソビエト連邦、東アジア共和国、AEUの六大国の元となるそれぞれの巨大な共同体国家だったということ。
そして今まで半世紀近くも不穏分子という名の反動勢力とドンパチしながらどうにか共同体をまとめてきた彼等国家からすれば自分たちの言うことも聞かずに嘗め腐った態度で好き勝手する傭兵なぞテロリストと変わらないという認識を持っていたこと。
何よりその手の連中相手に半世紀も戦ってきた各国からは不穏分子への容赦という言葉が各国の辞書から消えていたことも。
始めは些細な行き違いから、しかし実は深い認識の隔たりから両者がぶつかり合うようになるにはそう時間がかかることはなかった。
ここに中部アフリカを舞台とするCE以前の時代最後の大規模な騒乱と言われた国威復帰戦争が始まることとなる。
相対するのは日米英露中欧の後の六大国の雛型となる再建された共同体連合。対するはアフリカの現地国家や独立傭兵国家の下へと世界中の傭兵が募った傭兵連合。
今の時代の我々の目からすれば巨大国家の連合相手に幾ら腕利きだろうと傭兵と中小国家の連合が敵うわけないと思えるが、当時の認識としては多くの国家が機能不全を起こして崩壊した時代からそう遠くない時代だったため国家というものの威信が軽んじられている風潮が色濃く残っていた。つまりは嘗められまくっていたのだ。
国家の兵隊は弱腰兵士。数人死んだだけで国元大騒ぎ。数十死ねば挙って和平を申し出る。
当時の国軍兵士への認識なんぞこんなものである。それは傭兵だけではなく関わりの少ないアフリカ現地の住民でも似たようなものであった。
彼等現地民を庇護しているのは地元の傭兵たちやマフィアであり、国家が見える形で何かしてくれたところは少なかったためである。
大国連合何するものぞ!傭兵連合側の認識は大まかにこんなものであった。
719: トゥ!ヘァ! :2017/04/15(土) 01:03:25
無論根本的な地力の差に警鐘を鳴らす者達も少なからずいたが、その手の傭兵達の殆どはさっさと荷物をまとめて中部アフリカから逃げ出すか、逆に大国連合側へと自分を売り込みに行っていた。
一々新しい飯の種をライバル達に親切に教えてやる義理もないからである。傭兵業界はシビアなのだ。
そして始まった戦争の様子は中小企業と個人営業の集まりと大企業の連合という根本的な資本力の違いを様々と見せつけられる戦いとなった。
正面から戦えば負けなしの傭兵集団だろうがマッハ幾つもの速度で海を越えて襲ってくる数百発もの弾道弾や長距離ミサイルは防げなかったのだ。
中小&個人の集まり相手に大国連合側は大人げなく大規模な総力戦を仕掛けたわけである。
ミサイルの後は数百もの航空機による爆撃と数十もの艦船からの対地攻撃。その後に航空援護の下で守られながら、まず軽機甲部隊を降ろし壁兼火力地点を構築。その後ろから歩兵部隊が悠々と上陸してくるという明らかに戦う相手を間違えているとしか思えないガチっぷりである。
傭兵連合側としては銃弾一発撃てばミサイルが数十発撃ち返される状況に大人しく頭を伏せて隠れるくらいしかできなかった。
目立つ連中や我慢できない連中は真っ先に消滅した。文字通りである。
独立傭兵国家?地元の中小国家?弾道弾による主要拠点への攻撃と音速戦略爆撃機によるピンポイント爆撃による開始一日目でその殆どは機能不全へと陥った。
結局のところ戦争時代は中部アフリカの半分ほどを虱潰しにしていきながらも一年かからなかった。
主要な国家はすぐさま制圧され、粘り強く抵抗を続ける傭兵や勢力へは囲んで物資を絶たせながら、連日気化爆弾とナパーム弾の雨をくれてやった。
逃げ足早い奴らには気づかれないように遠くから徐々に囲んで押し込んだらそこへ火をつけろ。
半世紀近く不穏分子と戦ってきた各国はこの手の“作業”に慣れていた。
溢れ出てくる難民には従順な者達は手厚く保護し、反抗的な者へは徹底的に見せしめを行った。
誰しも小規模なゲリラの一拠点を潰すために10発もの気化爆弾を搭載した大型バンカーバスターを使用するとは思ってもみなかっただろう。
遠めに見てはキノコ雲(注:核ではない)が多数立ち上ることを真顔で、しかも容易にやってのける連中相手に大多数の人々は命張ってまで抵抗しようとは思わなった。
命かけて抵抗しようとした連中の末路がそのキノコ雲なのだから。
殺意を通り越して滅意である。それほどまでに今回の戦争へ各国が本気だったということだろう。
各国としても今まで散々に下がってきた国威を回復させる必要があったからだ。
そして何より俺たちに逆らう連中はこうなるというわかりやすい意味での脅しも含まれていた。
彼等傭兵連合は体の良い生贄兼見せしめにされたのである。
戦後この戦場となった中部アフリカは北アフリカのアフリカ共同体とBUの南アフリカ領へ編入されることとなり、各国の積極的な支援のもと両国が嬉しい(とは言っていない)悲鳴を上げることになる。
因みにこの時の支援の下で建造されたのがアフリカ共同体のチャド湖マスドライバーであり、 BUのビクトリアマスドライバーである。
この戦争を一言で表すとすると傭兵連合側は大国連合側の本気度合を見間違っていたということであろう。
傭兵達もそれに協力した現地の国家もどうせ連中は本気じゃない。数当てすれば後は流れでどうにかなると思っていた。
こうしてアフリカに蔓延していた厄介者たちの多くは露と消え去り、残ったのは目端の鋭い者達か物わかりの良い者達だけであった。
この戦争では既存の兵器の他にレールガンやパワードスーツ(PS)、衛星軌道上からのピンポイント爆撃、小型迎撃レーザーシステムや自立型ドローンなどの画期的な兵器が多数投入された。
無論新兵器故に不具合も多く報告されたが、これらの新兵器はこれからの戦いの方向性を位置づける物差しとなった。
またこの戦争の後の約十数年後にCEの時代に入っていくのだがそれはまた別のお話にしよう。
話に戻そう。
720: トゥ!ヘァ! :2017/04/15(土) 01:04:15
このたびの戦争で物わかりの良くなった傭兵達をまとめ上げたのが傭兵ギルドの始まりである。
彼らは個々人を始めとし、チームや企業にも管理コードを設けて首輪付きとした。
今までのような自由さはなくなったが代わりに国家は彼らの働きに手厚く報いた。
依頼の斡旋から保養地の見繕いに保険や戦傷支援まで幅広い保証を行ったのである。
ギルドに所属する傭兵たちはそれぞれ国家や企業の常連か専属となり、中には国軍の兵士としてスカウトされる者も少なくなかった。
彼らの多くは無軌道な自由を失ったが、代わりに下手したら一生得られなかったかもしれない安心と安定を手に入れたのである。
最もこれに従うことを良しとしない傭兵達も仲には存在するが、その多くが稼いだ金を元手に傭兵家業から足を洗うか、引退して隠居生活を送るかであった。
ギルドやその後ろ盾である各国に弓を引こうというものは真っ先に派遣されてきた元同僚の傭兵に潰されたからである。
それでも生き残るような腕の立つ、あるいは悪運の強い極一部のはねっ返りには多額の懸賞金がギルドからかけられた。
彼等賞金首を捕まえることを生業とする賞金稼ぎ専門の傭兵まで出てくるなどギルドの活動を活発化するために徹底的に利用された。
こうして立ち上がり、活動していく組織は傭兵管理機構と名付けられ、CEの時代では傭兵ギルドへと名を変えながらも存続していくこととなる。
そしてようやく話を現代に戻す。
現在の傭兵ギルドではランカー制を導入しており、ランクが高いほど割りの良い依頼が回されるようになり、より手厚い支援が受けられるようになる。
ランキングは依頼の達成度と国家や企業、ギルドへの貢献度、顧客の満足度など複数の要員によって決まり、腕は良くても評判の悪い傭兵では中々高いランクには上がれないなど荒れくれ者組織と見られがちであるが審査は厳格である。
依頼はパトロンである国家や企業の他にもNPO法人や学術団体、個人から警察まで幅広いものを取り揃えている。
軍や警察を動かすほど事件や依頼ではないが、だからと言って信用できる武力が欲しいと思った時には使い勝手がいい傭兵ギルドへと依頼されるわけである。
信用は支援元である国家や企業が太鼓判を押しており、ギルドに関しても後ろ盾となってくれている国家の手前下手な対応はできない。
また同じく各国が支援元となっているジャンク屋ギルドとの関係も深く、彼等ジャンク屋が危険な地域へ出かける際に傭兵ギルドの傭兵を雇うことも珍しくない。ジャンク屋ギルドからの紹介状さえあれば割引が効くからだ。
中には傭兵とジャンク屋の二足の草鞋を履く剛の者もいるという。
CEの時代になろうとも戦場は消えず。月の統一主義者テロ事件や宇宙海賊に民族ゲリラの相手など時代が移り変わっても彼ら傭兵(レイヴン)の仕事はなくならないのだ。
近年ではプラントの戦争を機に爆発的に普及したMSを運用する傭兵も増えてきており、MSパイロット専用のランキングも整備されている。
支援元の各国との取り決めにより傭兵ギルドで扱うMSは原則バッテリー機となっており、一部の限られた許可を得られた者達しか核分裂炉や核融合炉の使用許可は下りていない。
プラント独立戦争の戦後では動力をバッテリーに代えた各国の旧式機やザフトからの鹵獲品などが連合各国から合法的に傭兵ギルドへと降ろされており、欲しがるパイロット相手に売買、または貸出している。10年単の積み立てローンやMS操縦教室なども行っており、売れ行きは上々だそうだ。
プラントとの戦時中では傭兵ギルドは全面的に連合側に立っており、各地の戦場では多数の傭兵が派遣されていた。
彼らはザフトやその同盟国に雇われたギルドに所属していないグレーやブラックすれすれ、完全違法な傭兵などと相対することとなり、いくつもの伝説を戦時中に打ち立てた。
戦後においては戦場の規模こそ戦時中よりも縮小したが、戦時中とはまた別の戦場が出てきている。
宇宙では戦時中に大量に発生した各地のデブリを求める違法ジャンク屋や宇宙海賊との相手にギルドから傭兵が派遣されることは珍しくない。
また北アフリカでは出戻って来たアフリカ共同体の首脳陣がスキャンダルで全員退陣し、更に民族ゲリラの生き残りが未だ活動を続けているなど不安定な状況が続く。
中東においても戦時中に潜伏することを選んだ民族ゲリラや過激派宗教団体などが改めて活動を再開しており、未だ戦火が燻っている。
南米では戦時中にチャンスを掴んだ新興マフィアと戦時中は海外へと高飛びしていた出戻りマフィアが縄張りを巡って対立を深めている。
等々etcetc
戦争が終わり復興も一段落すれば世界はまだ見ぬ宇宙の先へ向かって進んでいくこととなるが、それでも人が人である限りこの世に戦場と戦火は絶えず、彼等傭兵の仕事もなくならないだろうということは容易に想像できる。
721: トゥ!ヘァ! :2017/04/15(土) 01:04:49
○傭兵ギルド無差別総合ランキング
ランク1:首輪付き 本名不明 大洋連合の紐付き
ランク2:サイファー 本名不明 独立傭兵
ランク3:星海坊主 本名 神晃(かんこう) 東アジア寄り
ランク4: ムラクモソード 本名 叢雲劾 独立傭兵
ランク5:オッツダルヴァ 本名 マクシミリアン・テルミドール PMC ORCA旅団団長
ランク6:ピクシー 本名 ラリー・フォルク 独立傭兵 新ソ連と専属契約中
ランク7:ミスターコレクター 本名 カイト・マディガン 独立傭兵 企業BFFと契約中
ランク8:ヴァースキ 本名 ヤザン・ゲーブル 大洋連合寄り
ランク9:雷電 本名 ジャック 独立傭兵 大西洋連邦寄り
ランク10:コマンドウルフ 本名 アーバイン AEU寄り
722: トゥ!ヘァ! :2017/04/15(土) 01:06:52
投下終了
今回はアナザーseedでの傭兵ギルドのお話。
CE以前の時代に傭兵や中小国家にまで舐められていたのはつい最近までどこの国家も自分家だけで手一杯だったから。井の中の蛙大海を知らずってね。
分かりやすく言うと長い闘病生活から回復したばっかの元プロボクサーの病人相手に最近調子乗ってるヤンキーが挑発したみたいな。
誤字脱字修正
最終更新:2023年11月05日 15:56