343: 陣龍 :2017/04/16(日) 19:59:55
『アメリカ人としての良心と覚悟の欠片』


……何がどうしてこうなった

「おいハンス、お前まさか毒か何か飲ませたんじゃないだろうな?」
「出来る訳無いだろと言うか昨日夕方寝込んでから誰も大統領と接触して無いわ」



 アメリカ合衆国の大統領執務室。冷戦終結後世界唯一の超大国となった大国の脳髄たるこの場所では、関係者全てが
驚天動地を通り越して疲れによる幻覚の発症を疑い出す光景が現出されていた。


「…ああ、頼んだ。我が同盟国、日本の警告に従い在日米軍を出撃させるのだ。加えて日本本土のみならずグアム等にも
F-22や戦略爆撃機を派遣しろ。本土の部隊も動員を命令するのだ」
「りょ、了解しました!」
「頼んだ。最早一刻の猶予も無い」


 アメリカ合衆国大統領『ビル・クリントン』。つい先日まで国務省を根城に巣食っていたキッセンジャー派閥の妄言を異様に信奉し、血を共に流し続けた同盟国を足蹴にする行動ばかりとり続けていたこの男。


「……だ、大統領。……一体、どうなされたのですか?」
「……気にしないでくれ。今は私の身体の事等、枝葉末節ですらない些事だ」
「は……はぁ……」


 突然頭痛による体調不良を訴えて寝込んだその翌日に、まるで十年は老け込んだ様な姿となったこのクリントン大統領の次々と繰り出された命令は、緊急招集された各省庁の長官や官僚が一時思考停止してしまうまでに切れ味鋭く、そして現状打破の為に主に国防省から訴えられ続けていた指令その物かそれ以上の適切な命令であった。


「……ハンス、一体全体マジで何が起こった」
「だから俺に聞くな……突然呼び立てられて来たらこの状態だったとしか言えないわ」


 小声でこの光景を見るしかない若手官僚達。因みに彼らは【連絡役】かつ【今後の見識を深める為】に、このとんでもない境地に存在している。つまりは体の良い生贄だ。



「……領!大統領!!これは一体どういうことですか?!」
「……うっわ」
「来やがった……よりによってこんな時に」


 そしてその空間に突入して来たのは、クリントン大統領に要らん事ばかり吹き込み続けたキッシンジャー派閥の男。国防省所属の官僚や軍人が【お前は何を言っているんだ馬鹿野郎】と常々罵倒する様な反日的な言動を行い、そしてそれがアメリカの国益になると心の底から信じ切っている救い様の無いアホだ。口出し出来る立場にない若手コンビには渋い顔をする事くらいしか出来ないのが歯がゆい限りである。

344: 陣龍 :2017/04/16(日) 20:00:55


「……どうした」
「どうしたもこうしたも……大統領!一体どういうことですか?!今まで我々の行ってきた外交的功績を溝に捨てる様な行動は?!
それに、オルブライト長官に話を通さずに…」


「……どうしてこうなってるんだ」
「知るか馬鹿」


 今まで行ってきた外交方針を唐突に180度一転させる今回の軍事的、外交的行動に、今まで順調に日本外しの反日路線を進めて来て喜悦満面だったキッシンジャー派閥にとってこの寝耳に水な軍事的行動は、確かに激怒物だろう。


「……何か勘違いしているようだが」
「ですか……え?」
「君の上司はオルブライトだが……そのオルブライトの上司は、私だ。合衆国民に選ばれて、アメリカ合衆国大統領の椅子に座らせて頂かせている、ビル・クリントンだ。つまり、私の命令はオルブライトの言葉より優先される」


 行き当たりばったり外交こと【現実視点外交】とか何とか言う代物でアメリカの行く末を歪めて春を謳歌していたキッシンジャー派閥の男。
彼は……否、彼だけでなく、この場にいるすべての人間が、目の前の男が今まで満州に無造作に手を突き入れたりホワイトハウス内を売春宿に仕立て上げていた輩とは完全なる別物の雰囲気を漂わせている事に気付いた。


「……私は、とても運が良い。このままいけば、私は【合衆国史上最悪の無能大統領】程度の評価で、この大統領の椅子から降りる事が出来る」
「……だ、大統領……?い、一体何を…?!」
「【合衆国を永遠の破滅に追いやった疫病神】にまで堕ちる事が無い。私も、ヒラリーも、オルブライトも、そして君たちも……。……この状況を生み出したアメリカ人は等しく、彼らに感謝するべきだ」


 クリントン大統領の言う【彼ら】が、具体的に誰を指示しているのかは、明確に分かる人間はいなかった。唯等しくこの場に居る人間が分かったのは、今大統領の席に座るこの男は、昨日までのキッシンジャー派閥やその同類連中にたぶらかされていた無能とは話にならない位には現状を認識出来ている事くらいである。


「大統領」
「奴らの答えは?」
「現在、部隊に動きはみられていません。情報によれば、アメリカの行動に混乱しているそうですが」
「……確かに、昨日までの私とは全く行動が違うからな」
「だっ大統領!まさか日本を守る為に戦争をするおつもりですか?!」
「戦争をしない為にも、軍を動かしているのだ。事態悪化の根源たる私が言える資格など無いだろうが、君は馬鹿なのか?さもなくば、チャイナのスパイかね?」


 【日本人如きに】と言う声色と表情の男の言葉に、冷め切った呆れ顔で答えるクリントン大統領。この期に及んで漸く男は理解した。我らが大統領は、明らかにキッシンジャー派閥と袂を別ったと言う事に。


「言っておくが、ヒラリーは既に体調不良でイーストウィングに籠っている。オルブライトも、既に罷免書を書き上げたころだ」
「……なっ……?!ふ、夫人は昨日まで元気だった筈、そ、それに長官も……」
「いいか。ヒラリーは、急に、体調が、悪くなったのだ。そして、オルブライトも、既に、罷免書を、書き上げた。聞こえているか?」


 茫然としたキッセンジャー派閥の男に冷酷に突き付けられる冷たい新事実。キッシンジャー派閥の力の根源は、自派閥に賛同していたヒラリー、オルブライト、そしてクリントン大統領が居てこそであった。ヒラリーが他称体調不良、オルブライトが罷免されてしまえば、キッシンジャー派閥の権威等文字通り消し飛んでしまう。
最後の砦であった筈のビル・クリントン大統領も、完全にキッシンジャー派閥を殺しにかかってきている現状では、最早打つ手なしで有った。


「どうやら要件は終わったようだな。すまないが連れて行ってくれ」
「了解しました!!」

345: 陣龍 :2017/04/16(日) 20:01:32

 無情な現実に打ちひしがれた負け犬が連れ出されるのを尻目に、日本本土から、グアムから、本土から……命令一下、即応状態で待機していたアメリカ軍が多数出撃していると言う一報が舞い込んでくる。これである程度は安心出来るが、相手は共産主義に民族主義が悪魔合体した独裁国家である。何をしでかすか分かった物ではない。


「……さて。ハッキリ言って、心の底から申し訳ないが……事態収拾の為に、君たちの力を貸して欲しい。我が合衆国の大切な同盟国……否、アメリカの名誉と正義を、これ以上穢さない為にも」


――――もっと早く、そうなってくれていればな

――――崖から落ちる一歩手前で踏み止まれた。これだけでも、救いでは有るか

――――……全く。最後の最後に大化けしてくれて……


 今までの所業が脳裏に過りながらも、大統領執務室に集った男たちは一様に同じ言葉を返す。


『「Yes,sir!Mr.President!!』


 最後の最後に、真に忠誠を誓える存在となった大統領に。

346: 陣龍 :2017/04/16(日) 20:05:12
以上完了なり

Q.一体栗に何が起こった?A.(悪)夢でも見たんじゃね?


と言う訳で、最後の最後に正気に戻った世界の切れ端をお送りしました。類似例としては戦後世界におけヒトラー閣下ですかねぇ。比べるのは色々と間違っている気がしないでも無いですが

最後に、ラストの英語に関しては座りと語呂が悪いと言うか語彙的にあっているのかどうか極めて疑問なので誰ぞ添削をお願いいたしたく……英語なんか分かんねぇよ中高一貫して赤ばっかだよチクショーメ!!
最終更新:2017年05月04日 12:02