207: ナイ神父Mk-2 :2017/04/19(水) 23:26:05
大陸SEED ゲート編 その6

技術部の憂鬱と新型開発計画

オーブで数日に渡る連合同士の交渉が行われている頃、ザフトの開発局の一つにはジャンク屋やザフト地上軍によって回収されたインパルスやグフの残骸の一部が運び込まれていた。それの解析任務を与えられているマッド・エイブスを初めとした技術者達は運び込まれた残骸を解析して顔を青くさせている。

「主任、これ・・・」

「ああ、アンチビームコーティングがまるで意味を成していないな。相当強力なビーム兵器だ。・・・コイツは艦艇の主砲にでも打ち抜かれたのか?」

「いえ、情報通りであればモビルスーツの手持型ライフルです。」

「どれだけふざけた出力と収束率だよ。・・・それだけの出力が出せるとなると、大西洋連邦の機体か?」

見事に肘から先が消滅し、人体で言う間接に当たる部分が溶解、拉げている部分を調べていたマッドの言葉に対して情報を持ってきて居たザフト兵は首を振ると脇に抱えていた端末を弄り、とある機体の画像を見せてくる。画像は戦闘中のカメラアイの映像で、NJか損傷の影響で大きく乱れてはいるが、何とか全体像は読み取れた。その中に写っているのは頭部や腕部等に丸みを帯びたパーツを装着する十字のモノアイスリットを持ったMSである。

「コイツは・・・ドムで採用していた十字型のモノアイスリットだな。向こうのザフトの機体か?」

「オーブに潜ませている諜報網に掛かった情報ではゲート向こうの大洋連合が作った量産型MSだそうです。」

「量産型でこの性能!?欺瞞じゃ無いのか?」

量産機と言う言葉にマッドは思わず驚いた声を上げて欺瞞の可能性を尋ねるも兵士から帰ってきた言葉はその疑問に対する否定だった。

「少なくとも例の戦闘で空母艦載機部隊として運用出来るだけの数が揃っている事はパイロットからの聞き取りとMSのカメラ映像から割り出していますね」

「そうなると示威目的で送られた最新型辺りか?」

「少なくとも上層部はそう判断しています。」

「そう考えてもこのクラスがポンポン出てくる様に成ると厄介だぞ。何か他に特徴は無かったのか?」

「この機体の戦闘中に確認された機能としては可変機構が確認されています。又、此方でも確認されているレイダーの他に此方では未確認のMSについての情報も上がってきました。」

「と、成ると本格的に高級機として考えるべきだな。幾ら連合とは言えここまでの高性能機の開発は難しいだろうからな。確か向こうの連合は構成国が冷戦中と言う話だろ?コイツへの対抗機となると残りもこいつと同じか其れより前後する位だろうな・・・」

マッドはそう言うと兵士から借りていたパッドを返すと再び残骸に振り返り解析作業を続けるが、後にこの機体が当初の想定と異なり旧式の量産機である事が発覚。上層部より対策を求められ、開発局全てが阿鼻叫喚に包まれる事に成るが、それは又別の話である。そして、ザフトで大陸側の機体の解析が進められている頃、大陸側の大西洋連邦の一角にあるアズラエル財閥の所有する会社の会長室にてアズラエルは渡された資料を見て目を点にさせていた。

「・・・すいません、一つ聞きたいんですがなんですか、此れ?」

「何と言われましても新型MAのデータとしか・・・」

データを持ってきた女性秘書にそう返される物の、アズラエルからすればそう言った答えが欲しかった訳では無い為、その言い様無い脱力感が彼を襲う。

208: ナイ神父Mk-2 :2017/04/19(水) 23:26:36
「そう言う事が聞きたいんでは無く、この無駄に気合の入った戦略級の代物を一体誰が提出したかと言う事ですよ。」

「それに関してヴィッカーズグループのスペンサー様ですが・・・」

「彼ですか・・・」

その名前を聞いてアズラエルは疲れが更に増した様な気がした、頭痛すら覚える様な気だるさの中、アズラエルは秘書に向けて言葉を続ける。

「彼に、スペンサーに通信を繋げて下さい、直接彼と話します。」

「解りました。」

秘書はそう言うとアズラエルの会長室から出て行った。その数分後、秘書の持ってきた通信装置を使って旧大英帝国首都で有ったロンドンに本社を置く、ヴィッカーズグループの会長室へと通信を繋げて居た。画面には青年と言える金髪の男性が写っている。
画面に写る彼の部屋の奥には大型の模型が置いてあり、それが自身の元に送られた設計図の機体の模型で有る事が伺える。

「久しぶりですね。スペンサー」

『アズラエルか・・・この間会ったばかりだが何か有ったか?』

画面の向こうの青年、ヴィッカーズグループ会長であるスペンサーはマイペースに通信画面に映ったアズラエルと挨拶を交わすとそのマイペースさにアズラエルは更に脱力を強めるが、さっさと用件を済ませてしまおうと話を続ける。

「ええ、具体的には貴方の送ってきた機体開発プランに付いてですよ。」

『ああ、アレか。中々良いものだろ?』

「性能は良いものですね、性能は・・・」

『だろう?』

其処まで言った所でアズラエルは息を吸い込むと深いため息を吐き出し、スペンサーに対して声を荒げる。

「はっきり言います。馬鹿ですか貴方は!!」

『大学から友人に対して馬鹿は無いだろう?馬鹿は』

「いいえ言わせて貰います!大体なんですか、あれ。全長2400m級の移動要塞型MAとか貴方はMAの上に要塞でも作る気ですか!?」

『実際その心算なのだがな・・・。理論的にも技術的にも財政的にも可能な筈だが?』

「出来るのとやれるのは別です!大体、あんなもの何処で使う気ですか貴方!」

『何処といわれても・・・本土かアフリカ辺りしかないだろう?』

一頻大声で怒り続けたアズラエルであったがいつも通り過ぎるスペンサーの様子にアズラエルは無駄に体力を使ったと言わんばかり椅子に体を預けると疲れたと言わんばかりに声のトーンを下げながら話を続ける。

「本土は兎も角アフリカなんかに置いたら大洋、ユーラシアと全面戦争ですよ・・・」

『いかんな、其れは考えて居なかった・・・。まあ、そっちはついでだ、本来の目的はカラミティの改修案だ。』

「やっと本題ですか・・・。まあ良いですけど、其方の方はまだ受け取っていませんね」

『それならもうお前の社の方へデータを送っている。その内お前の部下が届けるだろうな』

「全くあなたと言う人は・・・。如何してそうまともな物と突拍子も無い物の差が両極端なんですか・・・」

『我が事ながら何時もの事だろう?』

アズラエルは内心でこの友人には何時も振り回されると内心でため息を吐きながらその後も暫く旧交を温めていたが次の業務の為に秘書が呼びに来た事によって談話は終わる事になる。その後、ヴィッカーズ社より送られて来たカラミティーの強化改修プランによって各種強化型のカラミティが開発されて行くことになる。しかし、同時に送られて来た大型の双胴型水陸両用MAによってアズラエルの血圧は又上がる事になる。

210: ナイ神父Mk-2 :2017/04/19(水) 23:27:49
セイランの衝撃とオーブの動き

オーブにて行われた両世界の連合の会談は成功といえた物の、オーブ自体は最悪と言って良い事態に成っていた。何せ満を持して両世界の連合の外交官達を集めたアスハとの婚約の席に置いて婚約者であり、首長でもあるカガリ・ユラ・アスハが突如海中から現れたフリーダムとアークエンジェルに誘拐されたのである。その騒動のゴタゴタとオーブ軍の首長の捜索へのサボタージュによってオーブの評価は大きく落ちる事に成る。
しかし、そんなオーブにも成果が全くなかったかと言えばそうでは無く、大陸側の連合との交渉で機密に触れない範囲でのオーブ攻略戦の様子の入った記録映像を入手する事に成功したのである。映像は戦後大洋連合で纏められた物で、最初は恐らく航空機と思われる機体のカメラから入り、現在は戦闘後に回収したと思われるM1のカメラアイの映像に移っていた。

『なんだあれは、MA?』

『周辺のリニア自走砲部隊に連絡を入れろ!砲撃を集中させて上陸の阻止を・・・』

『丸山一尉!!』

通信で聞えてきた丸山一尉と言うのが機体のパイロットの様で有るが、その叫び声に合わせて海側に立っていた小隊メンバーの方へ振り向くと其処にはまるで怪獣の様に口を開けてビームの砲口を向けるMAの姿があった。そして、次の瞬間周囲のMAと共に放たれたビームは一瞬で周辺に展開していた部隊を周辺構築物ごと焼き払う。光が消えた後には先ほどまで存在していた大隊規模の部隊が消滅し、近くに見えたイージス艦も居ない。映像のパイロットの小隊は運よく難を逃れた様であるがその直後に入った通信で後方へと向かう所で映像は次の物へと切り替わっていく。この映像をユウナと共に見ていたウトナを始めとした下級氏族達や前大戦で生き残り、今は独立勢力になり始め、今回の事で呼び出されたサハクはこの映像を見て顔を青くしている。ユウナ自身も鏡を見れば自分も同じ様な表情だろうなー、この怪獣映画をポップコーン片手に見られればどれだけ楽しいかとかを半ば現実逃避の思考に入りながら映像をみていた。この後も一時間ほどして映像は終了し部屋の中も照明と暗幕が取り払われて明るく成ったが、今回の視聴に参加した氏族達の顔は暗い侭だった。

「正直な所、予想外ではあるな。まさか此処まで一方的にこのオーブが敗れるとは・・・」

「向こうのオーブの外交官からそれとなく受け取る事が出来た資料を見る限りは単純な戦力数では此方の倍近い守備隊がザフトやジャンク屋を含めて存在していた様だが、アレではな・・・」

口々に向こうのオーブでの戦闘の感想を話す氏族達であったがユウナはその話を切ると本題に移る様に話始める。

「取り合えず、感想も必要ですけど、先ずは本題に入りませんか?今後の外交方針にも関わって来ますし・・・」

「それはそうだが、具体的なプランは有るのか?向こうの連合と万一戦争に成れば向こうのオーブの二の舞だぞ?」

「先ずはムラサメの改良からですかね?現在のムラサメの性能だと情報通りなら向こうの制空機にスコアを計上するだけですから・・・
その為に無理言ってサハク家にも来て貰ったんですから」

211: ナイ神父Mk-2 :2017/04/19(水) 23:28:27
「そもそも何故私を呼んだ?軍も支持もアスハで固まって居るのだろう?」

話を振られたミナはセイラン親子が座るほうへと視線を向けると自身を呼んだセイランに疑問を呈す。その疑問に対してユウナはお手上げを言ったポーズをとりながら話し始めた。

「固まっているからこそですよ・・・。面倒くさい事に軍人の支持がアスハで固められた現状軍にはアスハの指示しかまともに通らない訳ですから。まあ、それが戦闘とか土壇場で判明しなかっただけマシですけど」

「なるほど、例の首長誘拐事件の事か・・・」

「ええ、そうです。恥ずかしい話あの事件でオーブ軍はまともに仕事が出来て居ませんでしたから・・・。オマケに此方に対する反感も有りますし正直兵器の改良を今のモルゲンレーテとオーブ軍に任せるのは不安なんですよ、自国内に政敵だらけと言うのもあれですが」

「それで、此方に何を望むのだ?技術者に関してなら心辺りが無いわけでは無いが」

「ミハシラにはパイロットの派遣をお願いしたいのです。此方にもしたがってくれる兵士は居ますが、テストパイロットを任せられる位に優秀な人材となると中々・・・」

「良いだろう。その代り此方にも逐一データを回せ、それで手を打とう」

「・・・有難うございます。」

この後、ミハシラより送られて来たパイロットとセイラン他非主流派のオーブ軍人達による本格的なムラサメの後継機開発がスタートする事に成るのだが、此れを軍の主流派はセイランが本格的に軍事に口を出して来たと考えて警戒。新型MS開発には非協力的な立場をとる事となる。しかし、セイラン側は此れを強行し、先の外交的失態から連合への援軍を拒めなかった事と相俟って軍内での反セイランの動きは益々強くなっていく。そして、それが後の悲劇やカガリの苦労にに繋がって行くことはもう少し先の事である。

212: ナイ神父Mk-2 :2017/04/19(水) 23:28:59
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最終更新:2017年05月04日 15:09