227: トゥ!ヘァ! :2017/05/01(月) 19:20:53
アナザーseed とあるフォトジャーナリストの火星旅行記

CE73年

火星。かつては戦と農耕の神(マース)の象徴ともされた星。
現代では太陽系開発における最前線となっている場所だ。地球圏から遠く離れたあそこでは地上やコロニー、月とも違う独特の文化や気風が育っているらしい。

この手記ではそんな火星の話を紹介していきたいと思う。

早速火星圏のコロニーや都市の話を…する前にそこに行くまでの定期船や航路のことを話したいと思う。

まず火星に行くには各国のコロニーか月から出ている定期船に乗らなければならない。
とは言えこれに乗るには特別な審査は必要ない。旅客機や民間シャトルに乗るのと同じ手続きをすれば乗り込むことができる。
どの船に乗っても乗り換え含め大よそ7日ほどで火星に着く。

今回筆者は大洋連合ムンゾコロニーから出ている客船「ナデシコ号」に搭乗した。
大洋の船はどれも少々お高いが手が出さないわけではに程度の価格であり、十二分に満足できるサービスを提供してくれるため人気のチケットだ。
逆に安く済ませたいのならば東アジアの定期船がお勧めだ。
東アジアの船は最近まで安かろう悪かろうを地で行っていたが近年では余りの風聞の悪さに上層部が動きだし、サービスの向上に努めているとの話だ。
実際に乗ってみた私の友人曰く前に乗った時よりも格段にマシになったという話だ。

話を戻して取りあえず船上の人となったわけだが、客船だけあり、寝室の他にゲームセンターやスポーツジム、食堂、映画館なんてのもある。
もう少し高級な客船になればプールやカジノまであるというのだから一度は乗ってみたいものである。

この船に揺られて三日ほど。火星と地球圏の中間に位置する中継拠点出雲へと到着する。
宇宙に浮かぶ巨大なコロニーと小惑星を合わせた施設であり、中には火星と地球を行き来する様々な船が引っ切り無しに出入りしている。

元は大洋連合の整備した拠点だったが火星開発が本格化したため他国の支援も募り追加の区画を建造。
現在ではコロニー内には各国様々な企業が参入し、実に多国籍な内情を構築している。

ナデシコ号はこの出雲に駐留し、整備点検と休暇を兼ねて約1日後に火星に向けて出発予定である。
定期船の中には火星までいかずこの出雲まで人を送り届けることが目的のもあれば、ナデシコ号のように整備と休暇のために寄り、その後火星に向けて再出発する船もあれば、個々に寄らずそのまま火星にまで直行する船もある。
直行便の場合は約5日で火星まで行くことが可能だ。

この出雲では客が泊まるためのホテルから大規模なショッピングセンターからスポーツ施設に映画館、飲食街、カジノや夜の店が用意された歓楽街まである。
まさに宇宙に浮かぶ一大娯楽施設だ。

ここには航路を守るために配備されている近隣の軍事基地からも兵隊たちが休暇に訪れている。

今までは主に大洋連合の兵士が多かったがここ最近は大西洋や新ソ連も再び火星開発に乗り出し始めているためか、大洋以外の兵士の姿も多く見かける。
そうなると観光客や兵隊同士のいざこざもあるが、ここでは出雲当局の憲兵が適切に対処しているようだ。
どうやら出雲憲兵は各国から出向してきた憲兵隊の集まりで特殊な命令系統と命令権を持つ集団なようで出雲における各国兵士の問題を一手に引き受けているらしい。
違う国同士の兵隊が一つの集団として動くとは一体どれだけの苦労があるか私にも想像もつかないが頭の下がる思いである。

さて気を取り直して私はナデシコ号の整備が終わるまで取りあえず一日コロニーの方のホテルで休むつもりである。
そう急ぐ旅でもないし、ここはパーっと遊びつくそうと思う。

次回へ続く。

著:ジェス・リブル

228: トゥ!ヘァ! :2017/05/01(月) 19:21:25
○諸々説明


  • 火星の状況

主に火星に開拓都市を持っているのは大洋連合、大西洋連邦、新ソビエト連邦の三国であり、他の国々は開拓コロニー群を持つだけである。
これら違いは開拓都市は火星地表に都市や基地を置けるだけ開発が進んでいるということであり、逆にコロニーの方は未だ地表へ目立った拠点を築けていないという証明である。

ここらは単純に火星開発をどれほど重視しているかにより決まるものであるがやはり投入できる資本力の違いも如実に表れるものである。

現状では大洋連合が地表に三都市、宇宙に大規模コロニー群と最大の開発規模である。
次点に新ソ連で地表に二都市、宇宙に大規模コロニー群。三番手に大西洋で都市二つに宇宙に中規模コロニー二つ。
残りのBU、東アジア、AEUでは地表に都市は持っておらず、宇宙にそれぞれ中規模のコロニー群を持ち、地表へは開拓や探索のための観測基地を幾つか置いているだけである。

新ソ連が大西洋を抑え、開発が進んでいるのは旧東側の盟主という立場あったためと、東アジアやAEUの企業から利権絡みの支援を受けていたためである。

しかし、これらも戦前までの話であり、現在では既に地表へ都市を築いている三国を始め、未だコロニーだけだった残りの国々も積極的に地表への拠点開発を進めている。
来年か再来年あたりにはどこの国も開拓都市が一つか二つほど増えていると思われる。



  • 火星航路

地球から火星に行くまでの航路のこと。

途中に出雲を始めとして幾つかの駐留拠点が整備されている。
新ソ連資本中心のヴェールヌイ、大西洋資本中心のシャングリラなど。

また航路を警備するために各国取り決めの範囲で警備基地を置いており、客船のSOS対応や危険なデブリや隕石の排除などを行っている。
警備が主な任務のため余り重装備な兵器や置かれていない。

航路においては定期便が幾つか存在しており、各国それぞれに国が出資し設立した運航会社が運用を行っている。
戦後になり10年も経つ頃では火星の開発も進んだことから民間企業の参入も進むようになり、多数の客船が航路を行き来することとなる。




  • 火星圏への渡航制限

今のところこれといった制限はない。
現状では火星から採掘された各種資源の運搬が最も活発であるが、近年は火星の自然を見に行く旅行プランなどが人気であり、また中継拠点や開拓都市も整備が進んできたことから徐々に娯楽目的での人の行き来も増えてきている。




  • マーシャン
原作では火星開拓のためのコーディネイターであるマーシャンが存在していたがこちらでは元より大洋を始めとした大国の手厚い補助のもとで開発が進められてきたため、原作における彼らのコロニーは存在していない。
代わりに原作で登場した各火星組の人々はどれかの国の住人として平和に暮らしていると思われる。

229: トゥ!ヘァ! :2017/05/01(月) 19:22:04
投下終了

今回は短め。多分火星日記は次で終わるはず。
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最終更新:2023年11月05日 15:57