240: 影響を受ける人 :2017/03/19(日) 22:15:18
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
―― 北郷隊 ――
反対側で狐狸部隊が戦闘を開始するのと同時に、北郷隊も戦闘を開始した。
まずは先頭にいる北郷章香の持つ、【氷刻刀(ひょうこくとう)】による魔力撃の一撃だ。
「せぃやぁ!!」
刀に籠められ、放たれた魔力撃は空気中の水分をかき集めて巨大な三日月状の飛刃を生み出す。
氷の三日月は高速回転しつつ“コバエ”の群れに突撃し、ブーメランのように回転軌道でもって蹂躙していく。
しかし狐狸部隊の持っている武装と違って広範囲攻撃ではない為、進路上にいると悟った敵が避けるのは容易だった。
すぐさまレーザー弾幕と言う報復が飛んでくる。
小型であるが故に短発射で済ませているが、大量にいる味方の御蔭で壁が出現した様に襲いかかり、
「あら♪ それは駄目よ♫」
風間ランが前方に出て、【避攻扇(ひこうせん)】を開いて一薙ぎ。
同時に前方に、薄ぼんやりとする大量のシールドが出現した。
そして【避攻扇(ひこうせん)】は秘められた機能を全力に稼働させて、 す べ て のレーザーを反射して元の持ち主達を破壊する。
「わぁお♪」
思わぬ成果にランは喜色の笑みを浮かべる。
実は説明だけで、具体的にわかっていなかった【避攻扇(ひこうせん)】の能力だが、こうしてみると反則級の能力だとわかった。
半ば彼女は確信していた、この武装は“実体弾”も反射できると。
まさに、シールド技術の極致を極めた武装だ。
嬉しさに身を震わせるが、後ろからついてきたメンバーは引き攣った顔になっていた。
「いや。いくら何でも、こりゃないだろ。」
若本徹子が呟くと、他の学兵一同も同意して頷く。
話には聞いていたし、羨ましいとも思ったものだが・・・ 余りにも敵が憐れに思える。
だが、単純思考の“コバエ”は恐れない。愚直に突撃を仕掛けるだけだ。
とりあえず、章香は未だ飛翔する氷のブーメランを群れの中に突撃させる。
無論あっさり避けられるわけだが、
「爆散。」
呟くと同時にブーメランが中心部で爆砕した。
同時に氷破片が周囲にいる敵を破砕していく。遠隔操作の上、爆砕に魔力がいるので多用は出来ない。
しかし、だいぶ減ったようにも感じる。
「減ったぐぁ?」
「・・・いや。あまり変わらん。」
飽く迄も気持ち的に。それぐらい大量の“コバエ”が火そうしているのだ。
全員が銃を構え、ランは呪歌を歌い始めた。
すると、“コバエ”達は後方の“スズメバチ”以上に行動に不備が出はじめた。
酷いモノとなると、お互いに衝突して破損したりしている。
「おお、結構効いていますねぇ。」
「小型だからかな? だが好機だ!」
旭川梨奈が思わず歓声を上げると、間髪入れずに章香は攻撃命令を下す。
その号令を待っていましたとばかりに一人前に出た。
「小型で物足りねぇが。全部ぶっ潰すがぁるぁぁああぁぁぁあぁ!!」
真嶋志麻【硬絶(こうぜつ)】を振り回し、文字通り虫を散らす様に粉砕していく。
さらに【疑似椀部】でブローニング12.7mm機関銃を振り回した。
単体戦闘力において、ライバルとしている北郷章香必殺技【海割り】を除けば最強と言って良い人物の突進に、“コバエ”は砕け散っていく。
慌てた“スズメバチ”が指示を出そうとすると、何かに撃ち抜かれてバランスを崩す。
援護の為に旗本サエが【蜂乃火砲(はちのひづつ)】を用いて狙撃を敢行し、取りあえずもっとも邪魔になる敵の排除に掛かったのだ。
結果的に真嶋は助けられてわけだが、指揮官型の存在はこの事変終了後に確定されるまでわかっていない。
まったくの偶然で邪魔が出来たのだ。
そんな幸運を知らずに真嶋は突貫を続行s
241: 影響を受ける人 :2017/03/19(日) 22:15:56
「・・・いい加減にしろ。・・・足並みを乱すな。」
「う、うぃっす!」
iそうになったが、さすがに旗本が止める。
何時もの平たんで物静かな声だったが、長い付き合いのメンバーにはイラついていることがわかった。
すぐさま忠実な猟犬の様に引き返したきた副隊長の頭に、いい感じの拳骨を一発お見舞いして置く。
「ぐげぇ!」
「・・・得物はまだいる。・・・焦るな。」
そう言いつつ、引き金を引く。
矢針と言う特殊な弾丸を使用しているのにも拘らず、その軌道は恐ろしいほどに真っ直ぐで命中しやすい。
しかも使い捨てではなく、半自動で戻ってくるというのだから、その機能に呆れるばかりだ。
北郷隊は広がり過ぎない様に、ある程度まとまって迎撃していく。
作戦の要を担う坂本美緒も、魔力を温存しつつ戦闘をこなす。
「っく!」
弾幕のごとく放たれる“コバエ”の攻撃を捌き、反撃に銃弾を叩き込んで粉砕する。
体に染みついた反射行動であったが、数の暴力で襲いかかる相手に対し、常に周囲を確認しないといけないのは大変だ。
はぐれれば、周囲を取り囲まれて悲惨な末路が待っているだろう。
「こんのぉ!」
「うっとうしいよ!」
若本と竹井醇子も反撃する。
その後ろでは大隊弾薬係護衛の飯島凛と山田里子が、鮫島トミと大久保小毬を守っている。
と言っても二人とも守っていられるばかりではない。
時に前に出て強固なシールドで味方を庇う事もある。
「ああ! なしてウチがこないな所にいかんべ!」
「と、トミさん! 離れすぎないでくださいませ!」
「あの人・・・本当に歴戦の兵士なんッスかね?」
「さ、さぁ?」
- 一部、泣き叫ぶ声が聞こえるが、全員無視をした。日常茶飯事なので、もう慣れきっている。
―― 狐狸部隊 ――
戦闘開始からしばらく時間が経った・・・
「遅れて~。飛び出て~。ぶっ放すぅ~!」
江草貴子が何時も通りの笑顔で大砲を放つ。
【鬼支腕(きしで)】のお蔭で反動を気にせずにいられる為、大口径の機関砲を二丁景気よくぶっ放していた。
砲弾が直撃せずとも、掠るだけでも大ダメージとなる。
これには“コバエ”達も避ける事を優先し始めた。
「おっと、その軌道は良く無いね!」
回避行動を一斉にとれば隙間も大きくなる。そこに加東圭子の狙撃が、指揮官型の“スズメバチ”に襲い掛かる。
被弾した“スズメバチ”だったが、すぐさま身を翻して“コバエ”達が作る数の防壁に隠れてしまった。
「ああ、もう!」
積極的に攻めてこない相手に、穴吹智子が苛立ち気に刀を振るって、“コバエ”を斬り払う。
一撃で三・四体まとめて倒せるのは良いが、数が多すぎて辟易する。
最初の大技は魔力消費が大きいからそんなに使えない。
これは、不和姉妹にも共通する問題だ。
「うざい、うざい。」「きえろ、きえろ。」
二人とも機関銃を持ち、“コバエ”を掃討していく。
しかし・・・
「大隊長! このままだと弾薬の方が先に尽きる!!」
通信機に黒江綾香が叫びつつ、射撃を続行して目前の敵を減らしていく。
それでも減った気がせず、不安が胸中に湧きが有りそうになり、無理やり押さえて堪える。
目的である“ヤマ”の囲い込みには成功しているが、護衛の漸減には成功しているとは言い難いのだ。
倒し易い敵とは言え、負傷すると“スズメバチ”の更に後方で待機している“ヒラクモ”の元まで行って回復してくる。
そして戦線に復帰し・・・これが先ほどから行われている。
トリガーを引き続けているせいで銃の寿命が短くなり、すでに小隊の弾薬係三名は大急ぎで補給に戻っている。
現在は大隊長直率から補給を受けて戦闘を続行していた。
加藤武子としても計算外であり、大陸で味わった以上の数の暴力に、焦りが生まれ始めていた。
(どうする? もう一度あれをやってもらうか・・・
いや。あれの連発は出来ないし、溜めが必要。
時間を稼ぐ・・・無理だ。この攻勢を防いでいるだけで、精一杯だ。)
242: 影響を受ける人 :2017/03/19(日) 22:16:59
思考は加速するが、打開策が全く浮かばない。
単純でありながら効果的な戦術の前に、必死に考えて実行中の作戦が瓦解し始めている。
反対側の北郷隊も同じ様に苦戦しているはずだ。
弱点を探る観測班の学兵達も、身動きが取れずにいるだろう。
彼女等は知らないが・・・この現状を作り出したのは“ヤマ”だ。
夢幻会が考察した通り、“ヤマ”はネウロイにとっての移動拠点であり補給基地である。
しかし補給基地に護衛はいないと言えるのだろうか?
もちろんその護衛たる“スズメバチ”などもいるが、“ヤマ”はどちらかというと前線基地に属する。
前線基地に、敵前で耐える為の要塞に滑走の長い飛行機は必要だろうか?
必要なのは戦闘ヘリの様な、即戦力。一時的にでも敵に対して優位に立てられる武装。
本来なら、扶桑皇国本土で展開するはずだった“コバエ”を勝手に放出してぶつけているのだ。
無論指揮官型“スズメバチ”が黙っているはずもなく大激怒。
先程から砲撃がこないのは、お互いに罵りあっていてそっちに集中しているからである。
副官の指揮官型が ―いい加減にしてくれよ・・・― と、人間の中間管理職の様に苦労している事など知らずに。
そんな事は知らない両大隊長は、次第に差し迫る屈強に対してどう当たればいいか撤退を視野に入れ始め・・・
『これより台風に突入す。』
そのいきなりの通信に、暗くなり始めていた全員の表情が一気に明るくなった。
243: 影響を受ける人 :2017/03/19(日) 22:17:41
―― 第一打撃艦隊旗艦:戦艦【紀伊】 ――
戦闘は終了した。会場は敵が去るまで大砲の合唱が無かったかのように静かになっている。
敵の攻勢が、ようやく終わったのだ。
「・・・【尾張】【近江】は?」
「【尾張】は後部の主砲全てが使用不能。左舷の対空兵装が全損。艦橋にいた艦長以下全員負傷しており、機関長が指揮をとっています。また火災が収まっておらず、現在全力で火災消化中です。
【近江】は“ウシアブ”の後部攻撃により第三砲塔直撃を受けしました。幸いウィッチのシールドと緊急注水が間に合い、誘爆の危険は有りません。しかし、攻撃が煙突の方に向かい、殲滅前に破損し、機関部に異常が発生。速力回復の目途が立たないそうです。」
戦闘前まであった活気は無く、全員が戦士の顔で任務にあたっていた。そしてのその表情は硬い。
無理もない。主力艦である一隻が、この時点で脱落する事になってしまったのだから。
最初の攻勢を防ぎ、“オニグモ”に打撃を与えたまでは良い。
その後、無理をして囮となったウィッチの奮闘により有効射手に誘き寄せることに成功。
充分引き寄せてから全力射撃を行い、目論見通り大ダメージを与えることに成功する
しかし、自信の生存が不可能と判断した“オニグモ”は、なんとそのまま近くなった【尾張】に対して全力で射撃を開始。
回転するが故にレーザーの照射時間が短い“オニグモ”の攻撃だが、それでもたった一艦に対する攻撃は凄まじい被害を与えた。
慌てて残る三隻で射撃し、何とか殲滅することは出来た。
が、その間も全くひるまず消滅するまで攻撃を続けていた為、松明の様に燃え上っている【尾張】を全員が見る羽目になった。
更に間に挟まれる形となった駆逐艦三隻が爆沈している。
「・・・・・・完勝、とは行かんか。」
あそこで敵の攻勢が終わっていればよかった。
殲滅直後で気が抜けた【近江】が“ウシアブ”の存在に気が付くのが送れ、離脱攻撃うけて更に艦隊に衝撃が走った。
下手人は天龍空姫自身が殲滅したが、大打撃を受けた事には変わりが無い。
気分を変える為、顔をきつく叩き、気合を入れなおす。
「【尾張】は本土に返す。【近江】は第一機動艦隊まで下がるように指示をせよ。
抜けた二隻の代わりに【金剛】【比叡】【妙高】【羽黒】を機動艦隊より引き抜く。」
「しかし。それでは機動艦隊の護衛戦力が・・・」
「こちらの水雷戦隊を全て機動艦隊に預ける。どうせ軽巡洋艦以下は台風に突入できんのだ。」
「わかりました。すぐに取り掛かります。」
副官が急いで伝令に指示を出す。一気に慌しくなった艦橋で古賀峯一は腕を組んだ。
敵の攻勢は、機動艦隊の方まで及んでいた。
しかし被害は駆逐艦一隻が撃沈。二隻が中破。【赤城】の対空砲が少しやられただけと被害は少ない。
終盤の攻勢だったので、割けられる戦力が底をついていたというのも、要因の一つだろう。
思考の海に沈んでいた古賀だったが、副官を声をかけてきたのでそちらの方を向く。
「機動艦隊から了解の報が届きました。」
「ほう。早いな。」
「あちらも、こちらの被害は聞いていたようです。すでに艦隊分離を行っているとか。」
「・・・ちょっと早すぎではないか? まあいい。すでに台風突入部隊の報告が上がっている。
すぐに向かわなければ、彼女等が危ない。」
「了解しました。合流は台風の目でよろしいですね?」
「下手に速力を合わせても仕方があるまい。今は早さが必要だ。」
もう一度了解と答え、副官は再び離れる。
そして全ての物に聞こえる様、打電を発信した。
『これより台風に突入す。』
以上です。
だいぶ長くなって、久々の四分割?。しかしもうすぐ(前座の)クライマックスだ!
最終更新:2017年06月19日 09:03