848: 影響を受ける人 :2017/05/02(火) 22:45:34
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
―― 北郷隊 ――
事態が切迫しているのは、あの強力な攻撃を見てからわかっていた。
防ぐ事ができなくなった以上、早急にどうにかしないといけない。
解決策は二つ。一つは判明した弱点を破壊する事。二つ目は、敵がレーザーを溜めこんでいるあのレンズを如何にかする事。
しかしその解決策が実行できない。
「くそったれ!」
悪態をついても現状は変わらない。
敵の狙撃能力は予想を上回るもので、合流に成功した金剛型戦艦四隻追加分の砲撃すら撃ち落として見せた。
現在はレーザーの充填を少しでも減らすために、交互射撃で頻繁に迎撃させている。
しかし敵も頭を使っているようで、迎撃にはほんの少しの、力の開放のみにして充填をしていた。
さらに、再び“コバエ”の群れを突撃させてきており、迎撃に忙しい。
「隊長、どうしますぅ?」
焦りがぬぐえない北郷章香に、副官の旭川梨奈が問う。
「どうしようもない。下手に前に出れば、あの精密射撃の餌食だ。」
「それに加えてランさん。結界士達の応援に行っちゃいましたからねぇ。」
最初の高出力砲撃に艦艇は沈まなかった。だが、台風を切り裂いた射線の先に結界士のウィッチが三名おり。
彼女等は真下からの攻撃に気が付く事無く蒸発し、結界に綻びができた。
すぐさま結界担当の秋月璃子隊長が、副隊長の木更津千早に命じて負担を分散させる。
有望株である天宮春香も急激に上がった負荷に対し、仲間の分も背負って結界時に脂汗を流す。
『誰かこっちに応援をよこせない!?』
「【瑞鳳】か【翔鳳】に連絡は!」
『そんな時間的な余裕はないわ! またさっきの砲撃を受けたら、さっきよりも早い時間で破られる!!』
「あ、なら私が行くわ♪」
「風間さん。・・・結界士の技術もっていましたっけ?」
「あら♫ 呪歌使いは結界士の事も習うのよ♪ 科目的にも近いしね♩
敵さん引っ込んじゃったし、戦艦と連携すれば行けるでしょ♪」
「お願いします。」
「心得たわ♬」
『早く、急いで!!』
そう言って離れて行った。
秋月隊長の焦りは本物で、蒸発した三人の一人が35歳のベテランだったからだ。
出世に興味がなかった人物であったが、一部隊位任せても大丈夫と目されていたのだからその損失は大き過ぎる。
敵の動きを鈍らせてくれる人物がいなくなり、縦横無尽に襲いかかる小粒の敵。
戦艦の対空攻撃も織り交ぜて漸減していくが、一向に減った気がしない。
「・・・まずいな。・・・くるぞ!」
“ヤマ”を視界に入れながら真嶋志麻を援護していた旗本サエが警告するのと同時に、力を十分に蓄えた“オカ”が砲撃を放った。
狙いは【駿河】。最初に放たれたレーザーの口径と、ほぼ同じ太さの砲撃だ。
まず間違いなくシールドは貫通され、【駿河】は撃沈してしまうだろう。
その場にいた全員が、環境で指揮を執る艦長たちも、最悪の未来を幻視する。もうだめだと。
だが、人間はあらゆることに対処して未来を突き進む生き物。
まっしぐらに突き進むレーザーの槍は・・・・直前で折れ曲り、巨大な水柱を上げる。
余りにも不自然な折れ曲がり方だったが、サエはすぐにそれがランの仕業だと見抜いた。
「・・・おい。」
『どう♪ 曲げてみたんだけど♫』
「・・・報告は上げろ。」
『アアン♩ 旗本さんつめt「・・・報告。」i・・・ はいはい、わかりましたよ#
どうあがいても貫通させられるのなら、シールドレンズで曲げちゃえって提案したの♭』
「・・・なほど、道理だ。」
『でも、デメリットもあるわよ♬ 敵の侵入も、退避もさせなかったシールド、無くなっているからね♪』
「・・・早く言わんか!」
思わず怒鳴ったサエに、隊員達が驚いて振り返る。小さく咳をすると、気を引き締めて章香に通信を繋げた。
「・・・だ、そうだが?」
『それでも、敵の精密狙撃能力が落ちたわけではないですからね。まだ自重してください。』
「・・・さもありなん。」
849: 影響を受ける人 :2017/05/02(火) 22:46:21
結界と言うのはそう複雑なものではない。むしろ単調な運用こそが真骨頂と言える。
今までは「強固なシールドで全部防ぐ」と言う事であったが、現在は「すべて明後日の方向に受け流す。」という方針に切り替わった。
まさに〔城壁〕と言う前者の運用方法に対し、後者の運用方法は〔水流〕といっていい。
〔城壁〕は壊さない限り通ることは出来ない、〔水流〕は流れに身をうまく身を任せれば簡単に行き来できる。
この変化を敵が察しないわけが無い。
この場の敵は、上手く戦況を読んで対処している。増援を呼びに行っているかもしれない。
いや、すでに呼びに行ったと考えるべきだ。
ならばすぐに結界を〔城壁〕に変えるべきであるが、早々変えられないのも結界の特徴でもある。
今回直ぐ切り替えられたのは、結界に亀裂が入った事と、風間ランが持つ【避攻扇(ひこうせん)】を媒体に使用したからこそだ。
戦艦の被害を出さなくしたのは良い。
しかし、屈折させるためにはそれ相応の距離が必要だ。詰めることは出来ない。
更に分厚い装甲内部にある、敵の核を破壊する策も思いついていない。精密射撃を止める事ができない以上、どうしようもない。
まさに手詰まり。その時だった。戦場に異質な咆哮が轟いたのは。
――戦艦【紀伊】――
佐宗縄斗は偶然それをカメラのレンズ内に入れていた。
当初、それが何なのかわからなかったという。しかし、それが強大な何かであり。
極めて原始的な 暴力の権化 であるという事を、本能的に察したという。
何枚も激写され、映写機に記録されたその映像資料は機密書類として封印される事となる。
―― 北郷隊:観測班 ――
精密射撃に驚きつつも、再び本体に合流した三人は表情を歪ませながら射撃を叩き込む。
「弱点がせっかくわかったのに!」
「醇子、援護!」
「わかってる!!」
悪態をつきなが若本徹子が前に出て、機関銃備え付けの擲弾筒で攻撃する。
そのカバーの為に坂本美緒・竹井醇子が牽制弾を放ち、微妙に効果範囲内に追い込む。
目論見は成功し、十体チョットが粉砕されたが、雲霞のごとくせまる“コバエ”の群れの前では雀の涙ほどの効果しかない。
それでも地道に削らなければならず、大分体力を消耗していた。
ただ敵は一気に押しつぶそうとはしてこない為、一息つける間があるのが有り難かった。
「っち、くそ。」
舌打ちと共にもう一度悪態をつく。
三人の中で一番体力がある徹子とは言え、この長期戦は辛いものがある。
「ま。あの一週間に比べりゃまだいいけど。「そうですわね。」うぉ!」
「補給に来たました。」
いきなり背後から声が聞こえて驚き、慌てて振り返ると飯島凛と大久保小毬がいた。
小毬は笑顔で水筒を手渡し、慣れた手つきで銃を交換してあげる。
余りにも自然に渡されて、すばやく交換してもらったのでちょっと二人を交互に見てしまう。
「なにをじろじろと・・・」
「あ、わりい。」
仏頂面になった凛に、徹子が謝る。その姿を見て小毬は少しだけクスリと笑った。
そこに美緒と醇子もやってきて素早く補給する。
同時に隊長から一時後退して休憩するように言われ、五人は後方に下がりつつ情報を交換する。
「状況は、よくないようですわね。」
「ああ・・・ 隊長の指示も、防衛一択。」
「砲撃しても、砲弾が潰されるんじゃ。意味ないぜ。」
深刻な状況に誰しも表情が曇る。
「なあ、委員長に醇子。何か手は浮かばないか?」
ふと、この中で最も頭のいい二人に徹子は聞いてみた。
しかしすぐに首を振る二人の様子を見てすぐに項垂れる。
「どうしようも、無いのかよ・・・」
「どうしようもないよ。いくらウィッチがシールドでもって攻撃を防げると言っても限度があるし。」
「高速飛翔する砲弾をピンポイントで撃ち落とす精度、それを掻い潜るなど無謀以上の何ものでもありませんわ。」
「皆囮にすれば行けるかもだけど・・・」
「確実に部隊は壊滅しますわね。」
手詰まりだ。まだ知識を、戦術や戦略の知識をそれほど仕入れていない彼女等に、現状を打破する策を考えるのは限界がった。
悲痛な沈黙がおる。その時、山田里子から通信が入った。
850: 影響を受ける人 :2017/05/02(火) 22:48:33
『こっちの補給は終わったッス。お嬢、そっちはどうッスか?』
「あ・・・ええ。すんなり終わりましたわ。」
『そうッスか。連絡が遅いんで、どうしたのかと。』
「ちょっと話し込んでいたのですわ。」
『あー、徹子がわがまま言ったんッスか? 突撃しない様に言ってくださいよ。隊長も自重しろって言ってるんっすから。』
「わかっていますわ。そ れ と。徹子さんもそこまで馬鹿ではないですわよ。」
主従とも、親友ともいえる二人の会話。視線をずらせば難しい話をしつつ戦術の意見を交わす親友二人。
視線を今度は本土、扶桑皇国がある方角を見る。そこにいるのは両親、そして導術士学校の同級生たち。
視線を戻せば戦場飛び回りながら敵を叩く、頼れる上司と先輩達。
この戦場には他にも、魔力は無くとも自分達と同じように勇気を振り絞って戦う男性たちもいる。
皆、誰かのために戦っているのだ。
家族の為、親友の為、顔も知らない誰かの為、故郷の為。
様々な理由で戦場に立っている。
命を懸けて・・・
「そろそろ休憩は終わりだ。行こう。」
「ワタクシたちはまだ補給には戻らないのでご安心を。」
「でも無茶しちゃだめですよ?」
「徹子ちゃん。行こう。」
短くも貴重な休憩は終わりをつげ、徹子は遅れて飛翔する。
先頭を飛ぶことになった美緒と醇子は気が付かない。徐々に徹子が高度と速度をとしていることに。
凛と小毬も、視線を別の方角に向けているために、遅れだしている彼女に気が付かない。
そして、
「二人ともごめんな。」
小さく呟くと同時に、
「先生、旗本さん、真嶋さん、穴吹さん、すみません。」
インカムを捨て去り、
「早良先輩。約束、破ります。」
首飾りを握りしめてその場に留まり、“一生”に“一度”しか発動できない能力を発動させる。
魔力が爆発的に膨れ上がり、影響を受けた髪の毛が一気に腰まで伸びる。
変化はそれだけにとどまらず、体が文字通り膨れ上がっていく。
爪が伸び、体毛が生え、使い魔の耳と自分の耳が融合する。
今まで起動していたストライカーが、急激な魔力増加と流入により爆発して海上に落ちていく。
落下しそうになるのをシールドで足場を作り、その上に四つん這いに踏ん張る。
剥き出しになっ足にも鍵爪が生成され、形状が変化する。横眼から見た姿は、獲物に飛びかかる前の狼を連想させた。
歯も犬歯が伸びて、口橋が割けるように広がる。
体格はどんどん成長を遂げ、北郷章香よりも大きくなった。そして最も特徴的な物は体色と尻尾。
上半身は扶桑狼特有の体色だが、下半身に行くにつれて脱色されたかのように白くなっていく。
そして尻尾は、普通に1本。ただし異常なほど長く、自分の身長を超える10mというもの。
変身を終えた若本徹子であった一体の獣が、
「■■ッ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
血の涙を流しつつその場で咆哮した。
以上です。
次回、若本徹子無双(時間制限つき)です。
最終更新:2017年06月19日 09:19