829: 影響を受ける人 :2017/06/12(月) 20:50:54
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
流血表現が有ります。グロイ表現が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
若本徹子が列車砲ネウロイに突撃したかと思えば、蒼黒い爆発光と共に爆炎が吹き上がり、爆圧が巨体黒い大地に押し付けた。
その時、坂本美緒は何を言ったか覚えていない。
親友の竹井醇子の証言によると、徹子の名前を叫んでいたそうだ。
なにしろ列車砲ネウロイ(後に“ナナフシ”の名前が与えられる)の巨体を吹き飛ばし、ネウロイの土台に打ち付けさせるほどの爆発。
誰しもが徹子の生存を諦めたという。
しかし泣き叫びながら向かった美緒、悲愴的な未来を思い浮かべつつも僅かな奇跡を信じて追従する醇子。
その二人の先を、「連れ戻す」といった飯島凛、山田里子が飛翔していた。
本来なら二人は大隊弾薬係の鮫島トミと大久保小毬を守る大隊弾薬係護衛なのだが、まだ補給に向かうほどではなかった。
突撃しているさなかに避ける人員の余裕などない。志願した凛を信じ、北郷章香は許可を出した。
「お嬢。二人が付いてきてるッス!」
「まったく・・・ 醇子さん、美緒さんを押さえつけられないんですの!?」
二人は感情的になった美緒と、醇子に気が付いていた。なので、すぐさまインカムに向かって文句を言うが・・・
『ごめんなさい! 出だしが遅くなって追いつけないの!』
「あ~お嬢? ミーちゃん。応答に答えないッス。」
「御馬鹿ぁ・・・」
芳しくない返答に怒りが静かに湧き上がる。っと、
爆煙の中から何か葉飛び出て来た。それは細長く、自分達と同じくらいの大きさで・・・人型をしていた。
「徹子さん!」
正体に気が付いた凛は視線で里子を見やる。主従と言っても良い仲の里子はすぐに察し、腰につけた拳銃を取り出した。
「行くッスよ! 【瞬間減速】!」
ウィッチが重傷等の外傷を受けた時、こん睡状態に陥った時、低確率ながらも能力を得る事がある。
里子は強制魔力回復薬の飲み過ぎによる体調不良、自身の能力の低さに対するストレスが重なり、能力が発現したと目されている。
里子が得た能力。それは射撃などが大したことが無い自分でも、確実にダメージを得られるようになるモノ。
球形状の魔力領域を作り出し、触れた対象の速度を減速させると言うモノだ。
本来は手の平から蒼白い光が飛び出て対象に向かうのだが、直進しかできないし射程距離も10mと短い。
効果時間は込める魔力の量で変わるが、5秒~20秒が限界。対象が大き過ぎると硬化時間が短くなってしまい、中型までが有効だと判断している。
夢幻会が知ったら「デッドスペースのステイシスか!?」と驚くだろう。
そんな能力だが、弾丸に籠める事もできると検証している時にわかった。
ただし、予め弾丸に込めておかないと意味が無い。しかし一度でも籠めておけば減衰しない為、非常に使い勝手が良い。
1発に籠める時間が〔効果時間5秒=籠める時間10分〕と長い事と、〔1日4発のみ〕という条件を除けば。
里子が構えた拳銃の弾丸はペイント弾。ダメージは与えられないが、戦場で遅い獲物は真っ先に落とされるもの。
だからそれで良しとしていたのだが、今回はそれが功を奏した。
引き金を引き、徹子に・・・当たる前に、放物線を描くその先で能力発動と共に砕ける。
そして徹子が領域に触れた瞬間、速度がスローになった。
(これで間に合う!)
まだ距離がある。だからこその判断であり、機転だった。
硬いネウロイの表面に落ちれば、あの大爆発から生存したとはいえ確実に死んでしまう。
一気に距離を詰める中、もう一度里子が発砲するが対象は徹子ではない。
護衛として周りに展開している陸戦ネウロイに向かって発砲したのだ。自分達の安全確保と、徹子への攻撃を低減する為。
「ここは大盤振る舞いッス!」
素早くリロードし更に発砲、次々に着弾する遅行弾に陸戦ネウロイの動きが乱れていく。
遅い動きしかできない陸戦ネウロイが、行動の妨害に上手くなっている。
その甲斐あって凛は、二度遅くさせた徹子を確保する事ができた。
ゆっくりと、青い光が消えていくと共に早くなる人体を、御姫様抱っこする。
「・・・っ!」
830: 影響を受ける人 :2017/06/12(月) 20:52:24
改めてみる徹子の惨状は、言葉にしようが無かった。
斬り飛ばした右腕は既に血は出ていないが、二の腕から先が無い。
左腕はまるで弾けたかのようになっていて、肘から先は消失している。
両足も赤黒い所などなく、骨が飛びだしていた。右足は反対側にねじれる様に折れ曲がり、左足はグシャグシャ。
能力により長くなった髪の毛は骨のように真っ白で、健康だった顔色も死人のようになっている。
栄養すら使い切ったのか、頬がコケ落ちアバラが見え。唇も、肌もカサカサだ。
全身に血が付着し、内出血を起こしていない所などない。呼吸も浅く、危険な状態だとわかる。
反動が有る事は知っていた。だが、これは、想像以上過ぎた。
「徹子! ・・・あぁぁぁ。そんな、なんで!?」
追いついた美緒の慟哭が聞こえるまで、呆然としていたようだ。
周囲を見渡せば里子が顔を伏せ、醇子は目を見開いている。美緒は・・・
「いやだ・・・ いやだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「美緒さん!」
頭を振り回して恐慌状態になり掛けていた。恐らく、目の前で死んだ早良ミチルと重ねてしまったのだろう。
立ち直ったお思っていた。しかしいかにあれから時が過ぎようとも、彼女に刻まれた傷は治らない。自分で克服しない限り。
凛は慌てて取り押さえようとしたが、両手がふさがっている。里子もどうしていいか迷っていると、
パァン…
醇子が容赦なく頬を叩いた。チョット強めだったのか、美緒はよろけて少し後ろに下がる。
大久保小毬のように大人しいと思われていた醇子の暴力に、三人の思考が一時的に止った。
叩かれた本人は頬に痛みを感じて手で抑えるが、それよりも暴力に訴えた事がなかった人物の行動に目を白黒させている。
叩いた張本人、竹井純子はにっこり笑いつつ美緒に話しかけた。
「美緒ちゃん。」
「え、あ?」
「徹子ちゃんは死んで無いよ? ミチル先輩みたいに死んで無い。」
「で、でm「でも、なにかな?」ぅ・・・」
笑顔が怖い。凛と里子は普段おとなしい人が怒り狂うと、普段怒る人よりも怖い事を知った。
「凛さん。徹子ちゃんを安全な場所までお願いします。」
「あ、はい。」
「総隊長には言ってありますから。ああそうだ、小毬ちゃんも連れて行ってください。空の弾薬箱を鮫島さんから受け取って、一時帰投するみたいなので合流を。」
「りょ、了解しましたわ!」
一刻も早く離れたい気持ちになっていた凛は、里子に目配せして戦場を離脱するために台風の壁に向かった。
里子も慌てて着いていくが、一度だけ振り返って大きく手を振って去る。
醇子が堪えて大きく手を振ると、ようやく意識が正常に戻った美緒が詰め寄った。
「醇子! どうして「美緒ちゃん、ココはどこ?」え・・・」
普段から知っている、導術士学校から知っている醇子の声ではなかった。
余りにも冷たく、感情がうかがえない声。
「ここは戦場なんだよ?」
「そ、それは・・・」
わかっている。そう言おうとした。でも、それは答えではないような気がする。
言いたい事もわかった。短くも濃密な時間を過ごしたからこそわかる。
親友の惨状に何も思わないのかと問いたい。戦士としての理解と、人としての感情がせめぎ合う。
手を伸ばし、俯いて感情がうかがえない彼女を振り向かせようとして、それはされなかった
「くぉらぁぁぁぁ!」
「うわっ!」「ひゅわ!?」
怒声と共に上空から降ってきた巨人・・・もとい、真嶋志麻が飛び込んできて二人を【擬似椀部】で掴みあげた。
「ナァにしてやがるぅぅ・・・・」
彼女の顔が怒りに歪んで、まさに鬼と言って良い。もしくは悪鬼だ。
「えっと・・・「口答えずんじゃねぇぇぇぇぇ!!」はぃ・・・」
グゥルルゥゥゥ・・・
怒り狂っている魔獣は【硬絶(こうぜつ)】を肩に担ぎ直し、唸り声を上げる。
「戦場でボーっと突っ立てんじゃねぇ! 死にてぇえなら俺が潰すぞぉ!
ぞれが嫌なら役目を果たしやがりゃぐぁぁ!!」
その咆哮に、二人は知らず内に背筋をまっすぐさせる。旗本サエの教育の御蔭だ。
831: 影響を受ける人 :2017/06/12(月) 20:53:50
「坂本! でめぇの役割は何だぁ!!」
「て、敵の弱点を探る事です!」
「竹井! てめぇは何だぁ!」
「敵を探る際に無防備になる坂本美緒を護衛する為です!」
「で・・・ 何で、此処でボーっとしてやがるんだぁ!!!」
大咆哮。唾も飛んで汚いが、二人には関係が無い。それでも何か言いたそうだった美緒の胸倉をつかみあげ、顔面の目の前に持ってくる。
「何が言いだそうだがら言っでやる!
確かにあの馬鹿が負傷じだのは悲しい事だ。だがなぁ! あいつは勝手な行動をじだ!
何の相談も無しにだ! そんな奴に書ける情けなんざねぇぇ!!
いまは一分一秒でも貴重な時間を消費するわげにはいかねえぇンだよぉ!!
それに、あの馬鹿の行動を無駄にずる訳にもいかねぇんだ!
切り開いた道は、今度は俺だぢが切り開いて、抉じ開けで、突き進むんだ!!
わかったら、さっさと行動に移せやぁぁ!!」
怒声と罵声。更に任務を言い渡され、美緒は無言でその場を後にする。
醇子も去るが、去り際に「ありがとうございます」と言われて頭を掻いた。
二人が去ると、自分も行動を開始する。とりあえず【疑似椀部】が持っている銃器でウザったい陸戦ネウロイを破壊しつつ合流先に向かった。
『済まないな。』
「何の話だ?」
インカムから章香の声が聞こえてきたが、素っ気なく答える。
『恨まれ役についてだ。』
「この容姿だかんなぁ。恐れられたりするのは慣れてんぜ。」
『鮫島が良く言っていたぞ。恨まれ役をやり過ぎていないかとな。』
「あいづぅぅ・・・ 余計な事を・・・・・・」
『それで、若本の容態だが・・・』
「ああ? 聞いてねぇのか?」
『・・・・・・助かると思うか?』
「見た目の損傷と、消耗は確かに酷いがな。出血自体は無がった。」
そう言ってチラリと振り返る。
核を潰されても形が残っている列車砲ネウロイのすぐそば、本来なら徹子が落ちる地点の少し後ろ。
そこに、干からびた犬の死体があるのを知っている。
凛は徹子しか見えていなかったが、視力がいい志麻の視界には抜け落ちる様にして落ちていく使い魔だった犬も見えていた。
本当なら回収してやりたかったが、そんな余裕などない。
心苦しいが、見て見ぬ振りをするしかなかった。
ギリリと歯を擦り合わせる。
「おそらぐだが・・・ 使い魔が、最後の最後で身代わりになったんだろうなぁ・・・」
『そう、か・・・』
通信はきれた。歯切れの悪い心残りが出来た。
だが戦場にいる限り、それは溜まり続けるだろう。
解消するには戦場以外の場所で、平和になったと自覚しないとなくならないと思う。
最後に志麻はもう一つ見落としている物があった。
徹子が身に着けていた首飾り、それも一緒に落ちて行ったことに。
その首飾りの宝石が、輝きを失って只の石になっている事も。
バラバラに砕け散っている事も
使い魔同様に、分体と言えど繋がりを持つ者を助けるために犠牲になった事など。
誰にも知られる事は無かった。
以上です。
答え:飯島凛嬢が助けに行きました!!
そんで遅れて申し訳ない!!
最終更新:2017年06月19日 09:53