272: ナイ神父Mk-2 :2017/07/02(日) 21:21:12
大陸SEED ゲート編 その9
ユウナの苦悩と連合の準備
CE73年9月、東アジアの旧日本地域ではそろそろ辛い残暑も終わろうかと言うこの時期にユウナの姿は再びタケミカズチのブリッジに有った。一見すると意気揚々と乗り込んで指揮官席に座っている彼だが、心の中を占めるのはこの一言だった。
(どうしてこうなった・・・)
ユウナが思い返すのは一月程前の出来事である。
「欧州への戦力派遣要請?」
自宅の執務室に居たユウナは自身の元に来た秘書が言った事をオウム返しに聞き返す。それに大して秘書は頷きながら
言葉を続ける。
「先ほど大西洋連邦より外務省へと入った通信がそれです。」
「参ったなあ。もう戦力地に部隊派遣をした後なんだけど・・・」
「では断りの通達を?」
「いや、現状で断るのは不味い、一回協力したからと言ってもまだまだオーブの信頼度は低いんだ。断れば又不審の目で見られるよ。」
秘書からの言葉に対して片手で頭痛のして来た額を押さえながらユウナはそう答えた。
「しかし、現状ユウナ様の派閥で派遣が出来るほどの戦力は・・・」
「其処はアスハ派の人間を使うしか無いだろうね」
「大丈夫なのですか?」
「嫌でも使うしか無いよ、現状の多数派はアスハなんだ使わないと数が足りない。それにタケミカズチ級も2番艦が完成間近だから万一の際も最低限の攻防は出来る。」
アスハ派を使用するというユウナの言に秘書は不安を覚えるものの、現状では手はこれしか無いとしてユウナはアスハ派を中心とした部隊編成を行いタケミカズチを含む10隻の艦艇を率いてユウナは態々大西洋の欧州近海まで足を運んだのである。そして、回想から復帰したユウナの目の前には現実が広がっており、水平線の向うには多数の揚陸艦や空母を有した連合の主力艦隊が見えてきていた。
(まあ、何は如何あれアレだけの大艦隊と陸軍からの挟撃だ、今のザフトに此れを防ぐ手立てが有るとは思わないけど、未だに出てこないアークエンジェルが気に成るかな?前大戦でアレだけ出張って来た彼らが大人しくしているとは思えないけど、なんだか嫌な予感がするなあ・・・)
内心でそんな事を考えて居るユウナでは有ったが、表面上は何時も通りの薄い笑いを浮かべた表情の侭目の前の近づいてくる艦隊を目に入れながらモニターに写る作戦概要を眺めていた
273: ナイ神父Mk-2 :2017/07/02(日) 21:22:01
オーブ艦隊が大西洋上の連合艦隊を間もなく合流しようとしてたのと同時刻、ユーラシアに於ける旧ドイツとポーランドの国境線近くの拠点には次々と連合軍所属の陸上戦艦や周辺基地から合流してきたダガーLや戦車等が所狭しと並べられている。この光景に新型の大型MSを受領して合流してきたネオは思わず声を漏らす。
「何時も見ている機体でも此処まで集まれば壮観だな」
「それだけ上も欧州奪還に本気と言うことでしょう。我々に配備された兵器もそうですが相当数のMAまでも投入しての
作戦ですから」
「あれか・・・アレを市街地で使うって事がどういう事か解ってんのかねぇ・・・」
「ヨーロッパ側の住民は大多数がザフトに協力しています。上としては最早向うはザフトの陣営と考えて居るのでしょう。」
ネオの言葉に副官であるイアンは表情も変えずにそう堪えると沈黙し、ネオも表情の見えない仮面の中で格納庫内を写すカメラの画面に映る巨大な機体が写っていた。調度その時、後方扉が開くと軍艦には似つかわしくない様な青髪の少年が一人入って来たがその表情は如何にも不満ですと言った表情してる。
「おい、ネオ!何で俺のアビスが出撃出来ないんだよ!」
「アウル・・・仕方が無いだろ?アビスは海戦用なんだ、今までは他の機体より強力だから使わせたが今回はステラがデストロイに乗るから空いているガイアを使ってくれ。」
「ちぇっ、ステラには新型で、俺にはお古のガイアかよ・・・」
「我慢しろ、これから陸戦中心に成るならその内新型を申請してやるから」
「頼んだぜ」
アウルは未だに不満だという顔をしつつもネオの言葉に渋々と言った様子で引き下がると、入ってきた時と同様に部屋から騒がしく退室していった。その様子を見ていたイアンは若干呆れた様子でネオへと話掛ける。
「上は何時までああした子供を使うのでしょうか・・・」
「さあな、少なくともこの戦争が終わるまでは無理だな・・・」
ネオのその言葉以降、イアンも会話を切った事でこの話は終了した。この数日後、連合軍は国境を越えてドイツ側へと侵攻を開始し欧州奪還作戦「レコンキスタ作戦」が発動される事に成る。
274: ナイ神父Mk-2 :2017/07/02(日) 21:22:34
新型の配備とザフトの準備
連合が日に日に戦力を欧州方面へと集中するのに対抗する様に、ザフトでも北アフリカや中東に展開していた部隊を欧州へと集中させ、陥落したカーペンタリアから撤退してきた部隊も含めて再配備を行っていた。そして、現状ザフトの最高戦力と言って良いミネルバにも新型機が配備されようとしていた。
「此れを俺に?」
そう呟くシンの目の前には巨大な羽を持ったGタイプの機体が鎮座しているMSを見ていた、整備を担当するヨウランは得意気に機体に付いての説明を始める。
「新型MSデスティニー、此れまでのインパルスで収拾したデータをベースに完成させた新型機だ。此れがあれば連合のトロイMA位簡単に落せるぜ。一機がお前でもう一機がハイネ隊長専用に調整された奴さ」
「そうなるとインパルスはどうなるんだ?レイ辺りが乗るのか?」
「インパルスはルナに任せるって話だ、このディスティニー以外にも新型機が一機来ているからそっちに乗るんだと」
「新型が未だ居るのか・・・」
「チラッと聞いた話だと上も相当危機感を感じてるみたいだぜ?ハイネ隊長の部下の部隊も地球に降りてきてるらしい」
その言葉を聴いてシンは納得したのか再び目線を目の前のデスティニーに移した。その目にはあの時何も出来ずに落され掛けた様子を思い浮かべて居るのか拳を握り目には強い決意が浮かんでいた。
しかし、新型機が配備されているミネルバ組は未だ幸福と言えた。現状欧州に集結しているザフトの多くはザクやグフへと更新出来ているがそれでも完全とは言えず中にはゲイツやザウートを有している部隊も少なくない。しかし、もっと悲惨なのはザフト側へと義勇軍として参加した欧州の義勇軍とでも言うべき部隊だった。
現状の旧欧州地域の多くは反連合に舵を切り始めザフトへと協力して居たのだが、元々戦力の供給を行っている連合に反抗している以上最新のウィンダムやダガーLは先ず手に入らず、戦力の殆どはジャンク屋からの購入したレイスタによって賄われ、足りない分はジンやストライクダガーで補完されていると言う状況だったのである。
この報告を受け取ったザフトの欧州駐留部隊の総指揮官は手に持った報告書を眺めながら頭を抱えたい思いに駆られていた。
「この戦力で3倍以上は戦力を揃えている連合に打ち勝てと?」
「評議会からの命令に変更は有りません・・・」
「・・・幾らエースに最新機種を回した所で所詮は一個人なのだがな」
「しかし、実際に前大戦ではラクス様が率いるフリーダムやジャスティスが少数で戦果を上げている以上は如何しようも有りません。」
「戦争の才能はコーディネイトでは生まれないのだがな・・・やるしかないのか・・・」
司令官がそう言う様に上層部の一部は一抹の不安を感じてはいるものの、始まろうとしている決戦を遅らせる事は出来ず、今後の戦いを大きく左右する欧州防衛線へと雪崩れ込んで行く事となる。
275: ナイ神父Mk-2 :2017/07/02(日) 21:24:13
以上ですWIKIへの転載は自由です取り合えず原作とは異なる作戦と各勢力の直前の動きを出させていただきました。
誤字脱字誤変換修正
最終更新:2017年07月08日 10:29