239: ひゅうが :2017/07/09(日) 15:17:20
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 惑星日本ネタ―――「水星(火星)年代記のようなもの」 その15


――1983年5月20日


「人のいない新大陸か…」

「それは成長するわけだ。」

「しかし、スペインと違ってこちらでは統一を保っていますね?
副王領がそのまま移行したような州があるのに。」

「こちらではその副王領が腐敗した本国へレコンキスタを成功させたようだからな。」

「独立戦争でワシントン率いる大陸軍がジョージ3世の英本国を逆征服か…なんというバカ歴史だ。」

アメリカ使節団は呆れ顔で、人工知能の語った日本史を英文に直しながら反芻していた。
たった数時間の教材であったのだが、それこそ数年分も老け込んだような気分になってしまっている。

アメリカの水星探査船「ニュー・ホライズン(新たなる水平線)1号」のバズ・オルドリン船長は軍人上がりとはいえ純粋な興味の観点から歴史を観察することができていたが、それでもこれまでの日本史講義には大いに驚かされていた。

「どこが映像だよ…」

「人工知能が解説しつつ映像資料を上映するとか…教員まであの小箱に入っているとは…」

つまりはそういうことだった。
地球でいうところの教育ビデオのように映像をただ上映するようなものではなかったのだ。
まず現れたのは、ウォルト・ディズニー作品よりもさらにデフォルメ―ションされた妙に若い女教師の立体映像。
「立体映像か?」というつぶやきに対し、その女教師はあろうことか反応を示したのだ。
「はい。この講義を担当します大和さくらと申します。海外から来られた方にわかりやすく言いますと…人工知能ですね。領分は歴史に関することに限られますけれど、なんでもお聞きください!」
驚くべきことに、それは幾分古風な表現が目立つものの、立派なアメリカ英語だった。
最初の小学生向けかというような定型句は、この人工知能の挨拶であったのだ。


そんな彼女が上映をはじめた映像と、それに対する解説は、人工知能についての質問が半分くらいとなったものの的確だった。
“彼女”がいうには、これのおかげでこの星における教師は、青少年の人格形成を主導する方へシフトしているらしかった。

「あれほどの人工知能が存在するということは…パルプフィクションのようなロボットもいるのだろうか?」

トーマス・フォーリー特命全権大使がうめくように言う。

「HAL9000とかじみたのが動かすロボットですか?」

「ぞっとしないな。」

先年続編が出たばかりの2001年宇宙の旅を揶揄したあとで、オルドリンは軍人としての頭脳でさらに頭の痛いことに気が付いた。
おいおい。ということは、水星側はあの映画のクローン・トルーパーじみた兵士を無尽蔵に作り出せてしまうことになるじゃないか。

「これも、彼らなりの脅迫かな?」

「それか、あまりに一般化しすぎているからあちらも気が付いていない…とか?」

数秒間の沈黙。
たしかに応用の用途は無限大だった。
惑星間航行を実現したあとには当然想像されてしかるべき恒星間を渡るには、寿命や必要物資の限られた人間を運ぶよりもこうした人工知能を使うことも考えられる。
また、地球上では大問題となる放射能汚染地帯の中での活動も、こうした自己判断できるロボットと人工知能があれば…

軍はもとより、各企業も喉から手が出るほどそうした「労働者」は欲しいだろう。


「閣下。おとぎの国に来たかと思ったら、ここはコルサントだったようですな。」

「パルパティーン皇帝のようなのがいないことを祈るよまったく。」

全員が苦笑いするしかなかった。
そこから話を発展させる暇がなかったのだ。

頃合いを見計らったこの月面都市の田中角栄市長、そして礼装で固めた「帝国宇宙軍」の士官が笑みをはりつけた顔で軌道エレベーターへの移動の時間を告げにやってきたからであった。

240: ひゅうが :2017/07/09(日) 15:17:51
【あとがき】――約2年ぶりのため、リハビリ的に一本

241: ひゅうが :2017/07/09(日) 15:18:54
要望に応えて復活させてみました。

252: 名無しさん :2017/07/09(日) 16:38:01
ひゅうが先生、重隅で申し訳ないのですが、スターウォーズの惑星首都の名前はコルサントです

253: ひゅうが :2017/07/09(日) 16:42:18
おお…
タイヘン=シツレイしました。


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「コンサルタントだったようですな」→「コルサントだったようですな」に修正。

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最終更新:2017年07月13日 19:01