213 :earth:2011/12/13(火) 22:56:54
思いつきのネタ話。
 本編では空気なイタリアについて考えていたら、こんなものが出来てしまいました(爆)。


「本国からの増援は?」
「間に合いません。それと……スペインが参戦を表明しました」
「……」
「閣下、ご決断を……」

 西暦1942年6月1日。大英帝国の地中海における要衝であるジブラルタル要塞は陥落した。
 本国艦隊、そして米海軍大西洋艦隊からの増援を加えて英地中艦隊が日伊連合艦隊に挑んだジブラルタル海戦では連合国軍は史上稀に
見る大敗北を喫した。本国艦隊の弱体化は著しく、日伊連合艦隊が大西洋に出てくれば英本国と各地を結ぶシーレーンは危機的状態に陥る
と考えられていた。
 一連の凶報にロンドン、ダウニング街十番地にある英首相官邸では、さすがのチャーチルも顔色を悪くしていた。

「閣下、報告にあるとおり、『第二』日本が使う兵器は、太平洋で日本軍が使っているものとは明らかに違います。
 勿論、他の枢軸のどの国の兵器とも……」

 第一海軍卿の報告を聞いてチャーチルは苦い顔になる。

「ドイツの秘密兵器という線は?」
「ありません。それにあれほどの艦隊を極秘裏に建造していたのなら、彼らはとっくに本土へ上陸しています」
「……と言うことは、連中のいうとおり、彼らは別の世界の日本海軍ということか」

 ことの始まりは西暦1941年12月10日。太平洋戦争が始まって間もない頃だった。
 イタリア近海で奇妙な日本の艦船が確認されたことが最初の兆候だった。
 イギリスは急に現れた日本の艦船の調査を開始。そして暫くして『イタリアが別世界と繋がった』という冗談のような情報が出てきた。
 勿論、イギリス政府は『ガセ』として取り付く島もなかった。彼らからすれば悪質な冗談にしか聞こえない。彼らは日本とイタリアの
陰謀と断じた。アメリカ政府もそれに続き、第二日本と称される勢力の撃滅を図った。しかしそれこそが致命的な誤りであった。 
 この世界の日本をも凌駕する強力な『第二』日本海軍の機動部隊が地中海で所狭しと暴れ回り、結果としてイギリスの戦略は破綻した。

「スエズ運河も陥落寸前。さらにゲートと言われる場所からは続々と物資が供給されているようです。
 ヒトラーは『第二』日本と連携して英本土上陸を考えているとの報告もあります」
「……植民地人に頭を下げるしかあるまい。それと『第二』日本との交渉も行う必要がある」

 そのころ、第二日本と呼称された世界の日本政府、いや正確に言えば政府を牛耳る組織、夢幻会も戦争終結を図っていた。

「あちらのイギリスもこちらと戦う愚は悟ったはずです。この辺りで幕引きが適当でしょう」

 嶋田の意見に反対意見は無かった。彼らとしては本土の目と鼻の先にあるゲートの安全さえ確保できれば問題なかった。
 だが破竹の快進撃を支える『第二』日本に抜けられては困るドイツとイタリア、そして遠く極東の地にある日本帝国は『第二』日本を
この世界大戦の泥沼に引きずり込もうと画策。
 『第二』日本海軍に手痛い敗北を喫した米国海軍も復仇に燃える。時空を跨って行われるこの大戦が何時終るかは判らなかった。

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最終更新:2012年01月16日 18:40