423 :earth:2011/12/17(土) 00:13:00
仮想戦記のネタSSです。
『とある提督のエンドレスワルツ』
「またか……」
彼が、一人の海軍中将が目を覚ましたのは、何時もの見慣れた部屋だった。
「また戻ってきたのか……何回繰り返せば良いのやら」
彼は何度も何度も同じときを繰り返した。
太平洋戦争の幕を己の手であけ、そして幾多の激戦を潜り抜けてきた。そう何度も何度も。
彼は数えるのも億劫になるほど、あの米国と戦った。
だがそれでも勝てない。緒戦でいくら戦術的勝利を得ようとも、最終的にはひっくり返された。
「どうすれば良いというのだ……どうやれば、奴らを止められる?」
倒しても倒しても現れる米海軍。戦争後半になると質でも量でも日本海軍は圧倒される。
圧倒的な戦力をもって迫る米軍によって、開戦以降、頼りにしてきた部下達が次々に斃れていくのを彼は何度も見てきた。
普通なら心が折れてしまうだろう。しかし彼は諦めない。
「日本を敗戦から救うため、そしてこの無間地獄から抜け出すためにも……」
彼は戦死、または日本が敗戦した場合、即座にこの時間、この部屋に呼び戻される。
米国相手に戦い、勝利を、または名誉ある和平を成さない限り、この地獄は終らない……彼はそう考えていた。
「さて、今度もはじめるとしよう……」
そういうと男は空母『赤城』の艦橋に向かう。
第1航空艦隊を指揮する海軍中将・南雲忠一の、何度目になるか判らない真珠湾攻撃が始まる。
最終更新:2012年01月16日 18:58