529: トゥ!ヘァ! :2017/07/30(日) 13:53:41
アナザーseed if もしもゲートが現れたら 4

火星ヴァース帝国と地球連合の開戦からひと月。火星側の電撃作戦は予想以上に進んでいなかった。いや、進められなかったのである。

連携を断ってなお強固な連合の防衛陣地。CE世界から大量に流れてきた銃火器の類から中古兵器。
何よりそれらを扱う多くの傭兵。

特に一桁ランカーの活躍はすさまじく既に幾人の爵位持ちが打ち取られ、揚陸城も一つが陥落させられている。
その中にはヤーコイム男爵。リビティナ、リベルティナ姉妹子爵。城持ちのマズゥールカ伯爵など原作において有名な人物も含まれていた。

幾ら原作よりも戦力が強化されており、爵位持ちも男爵や騎士爵などの下位が増えているとはいえ被害を看過できなくなった各地の伯爵たちの侵攻は目に見える速度で落ち、守りの体制へと移っていった。

しかし、そんな中で変わらず攻勢を続けている勢力がいた。ザーツバルム伯爵貴下の軍団と彼と手を組んだ幾人かの伯爵の連合軍である。
彼は中央アジア地域へと己の揚陸城を下ろしながらも、貴下の軍団と手を組んだ伯爵たちと共に主に中国と欧州方面へと攻勢を掛け続けていた。

彼自身は地球も火星も滅べと内心思っているが、だからと言って負けるのも面白くないと様々な手を打っていたのである。
その一つがこの戦争が引き起こされる原因となったアセイラム姫の爆殺騒ぎであった。

そして実際の戦場でも自力で劣る火星側が守りに入ったら負けると理解していた彼は多少の損害は無視しながらも重要な資源地帯を中心に侵攻を続けていたのである。
無論物資には限りがあるが、その点は現地からの接収や連合軍の補給基地を襲撃して物資を奪いなどの方法でやりくりしていた。

地上ではこのように迅速、適切に対応する連合軍とグダグダな火星軍という対照的な状況であったが、逆に宇宙はというと激戦が繰り広げられていた。

初動の電撃戦で地球軌道上の大まかな衛星や宇宙基地は制圧、または破壊した火星側であったが、連合軍側は事前の計画通りの衛星軌道上サテライトベルトに設置された秘密基地への分散。
事前に貯蓄されていた大量の物資を用いながらゲリラ戦を仕掛けていた。

火星側もこれを迎撃していたが、何しろゲリラ相手の戦い方や輸送船を守るための護衛戦など知識はともかく実戦経験やノウハウが不足しており、余り効率的な対応ができないでいた。
無論だからと言ってやられているわけではない。各伯爵ごとに指揮権が分かれているこの状況ではまともな連携は望むべくもない。
そこで輸送船の護衛は火星からの護衛部隊に任せ、各月面騎士の伯爵たちは独自に連合の秘密基地を叩き始めた。
連携が出来ないのなら役割を明確にして、それぞれの動く範囲を明確にする。あとは好きに手柄を立てればいい。
地上に降りて自ら領地を得られない彼らは地上へ降りた貴族たちと比べればまだ分別が存在していたのである。

また各月面騎士が率いる軍勢はそれぞれに指揮権が分かれているため逆に小回りが利きやすいという利点があり、アルドノアドライブを搭載した爵位持ちのカタフラクトはその能力も相まって強力な機体であるため結果的に少数精鋭による拠点攻撃という形を成していった。

連合側は数は多かれど、大半の戦力では火星側の一点物カタフラクトに太刀打ちできず、部隊事の離散と集合を繰り返すことにより被害を最小限に食い止める方針へと移っていった。
結果的にだが連合側の攻勢が緩み、輸送船への襲撃が減るなどの成果が表れており、まさにスタンドプレイから生じたチームプレイという体をなしていたのである。


そしてそれから更に三か月がたったある日のこと。開戦から四か月。
突如連合から世界中へと、とある声明が発表された。

それはアセイラム姫を首班とするヴァース共和国とその政府の樹立である。
首班にはアセイラム姫自らがなり、その陣容には戦死したと思われていたマズゥールカ伯爵やリビティナ、リベルティナ姉妹子爵。ヤーコイム男爵など幾人かの火星貴族が参加していたのである。

530: トゥ!ヘァ! :2017/07/30(日) 13:54:17
この放送に最も敏感に反応したのはアセイラム姫謀殺の犯人であるザーツバルム伯爵と火星にいるレイレガリア皇帝その人であった。

ザーツバルム伯爵は「姫は偽物であり、これは連合の謀略である」と風潮し、皇帝その人に至っては余りの驚愕に声が出ないでいた。

ヴァース共和国政府は悪戯に軍事偏重の政策を取り、民を飢えされる帝国から人々を解放することを名目にヴァース帝国へと宣戦布告。
この帝国への宣戦布告と共和国の樹立は連合政府とCE世界各国の承認と支持を持って受け入れられた。

これと同時にCE世界の諸国連合は火星ヴァース帝国へ宣戦布告。編成の済ませた各国の艦隊が地球や宇宙のゲートを通り西暦(アルドノア)世界へと侵攻。
地上、宇宙問わず地球連合の部隊と協力しながら火星帝国側の部隊を駆逐し始めた。

またこれらと同時進行的に共和国側へついた貴族たちの火星領土において配下の部隊が行動を開始。地球連合はもとよりCE世界各国からの支援を受けた彼らの軍勢はCE世界の市場に出回っているMSやMAで武装されており、鎮圧に赴いた火星本土の帝国カタフラクト部隊の悉くを跳ね返した。
更に密かに潜伏し準備をしていたCE連合軍の先行部隊もそれら共和国側貴族部隊へ合流しており、尚更手が付けられない状況であった。
衛星軌道上においてもアルテロイドベルトに潜伏していたCE諸国連合の先行艦隊が強襲を仕掛け、ヴァース帝国の宇宙施設や艦隊などを一方的に叩き潰すなど本格的な行動が開始されていた。

ここに至っては仕方ないと病床の皇帝はアセイラム姫の皇籍の剥奪を宣言。火星に残っている諸侯の部隊と貴下の近衛隊に反乱者達の鎮圧を命令した。
地球では自分たちの領地が攻撃を受けていることに狼狽した諸侯は各々混乱の極みに達しており、それを見た地球連合の部隊に攻撃を仕掛けられ撃破されるものが相次いだ。

この事態を重くみたザーツバルム伯爵は皇帝に一時的な地球における指揮権の統括を直訴。
レイレガリア皇帝はこれを承諾。地球侵攻軍と月面駐留部隊の全権をザーツバルム伯爵に託すことを勅命とし発令。
諸侯は内心不満に思いながらもこれを承諾。表面上であるが地球及び月に展開している各軍団の指揮権はザーツバルム伯爵へと一本化されることとなる。

しかし、後の歴史家からは度々この行動は遅すぎたと言われることになるが、当時の帝国側の現状を知る者たちからすればこれが最善手であったことは疑うまでもなかった。

次回へ続く。

531: トゥ!ヘァ! :2017/07/30(日) 13:55:12
〇設定諸々



  • ヴァース共和国

どっかの悪徳役人が姫様を諭して樹立した傀儡国家。まごうこと無き傀儡国家である。
姫様を始めとし、参加した貴族たちもそのことは承知済みである。
飢えに苦しむ民たちを救えるなら悪魔にだって魂の売るのだ。「泣ける話だね」とはこれをプロデュースした辻(長男)の言である。

提示された条件はCE側の技術を使い食料や衣料品などを火星の住民たちへ満遍なく行き渡らせること。
帝国の住民たちには抵抗をしない限り何も危害を加えないこと。
参加した方々の身の安全と地位は保証するということ。
帝国政権を打倒した後には地球との貿易を再開すること。
火星圏における地球連合とCE諸国による入植と開発を認めること。
そしてヴァースが保有するアルドノアドライブと技術の一切と地球連合とCE諸国へ譲渡すること。
その後は治安維持用の兵力は認めるがアルドノア関連の保有と研究は禁止。技術者に関しては一旦地球連合とCE諸国の共同預かりとなる。

戦後は諸侯の領土は統廃合され、CE世界の技術を使った食料プラントや農業コロニーが火星圏へと建設され、少なくとも火星の人々が飢えで苦しむことはなくなった。



  • 生きていたのか〇〇!

死んだと思われていたが実は生きていた火星貴族方。大体裏から手を伸ばして「あんたのとこの領民助けるよ」と悪魔の取引を持ち掛けられた方々である。

原作以上の軍事偏重のせいで火星本土の食糧事情が酷いことになっているため自分の趣味に万進できず、割と切実に地球で得た領土の食料で自分の領土の民衆を救おうと考えていたマズゥールカ伯爵。

原作外伝漫画よりリビティナ、リベルティナの姉妹はケテラテッセ卿に乗っ取られた自らの領地を奪還することと領民たちの食糧事情を改善することを条件に承諾。
ケテラテッセ卿に人質に取られていた二人の母君はストーム1が率いるCE諸国連合特殊部隊によって救助された。

なお大恩ある姉妹とそのご両親を助けるためにケテラテッセ卿に背面服従していたジョヴァンニ(フェルゼン)君も目的が済んだので配下と共に脱出からの姉妹の元に駆けつけている。
良かったね。
このため北海道の悲劇は起きていない。三影父(と周辺の部隊は)生存。そのまま日本の防衛に従事している。

原作で絶対零度ロボを操っていたヤーコイム卿は傭兵ギルドのランク7との決闘の末に敗れ、なんやかんやで捕虜になり、ランク2と意気投合。姫様側へと降った。

因みにスレイン君はスカイキャリア乗って姫様探していたところ連合の航空部隊によって撃墜され捕虜に。
そのあとは姫様が彼のことを知って味方に引き入れたためちびっこメイドことデルリッゾと共に姫様の秘書兼ボディガードとして忠犬人生を送っている。
そして共和国側の蜂起部隊には地味にハークライト君が参加していたりもする。

戦後は貴族籍を返還。政府の重鎮をやっていたり、警備隊の隊長をしたり、結婚式を挙げて夫婦で土壌改良の研究者になったりなど各々新しい道を歩んでいる。

532: トゥ!ヘァ! :2017/07/30(日) 13:55:49
  • CE諸国の工作

特殊部隊「戦前からスタンバってました!」

潜伏部隊「大体開戦前からスタンバってました!」

先行艦隊「開戦一月目くらいからスタンバっていました!」

結論:戦前からこの動きは決まっていた。

不満を持った民衆から支持を勝ち取ることも、彼らの中に工作員が紛れることも、帝国が国力の限界から開拓できていない地域の地下に秘密基地を増設することも、火星と木星の中間地帯であるアステロイドベルトに秘密裏に仮設基地を建設することもなど造作もないのである。
元ジオン転生者は特にこの手のことは得意であった。悲しいかな。技術力と経験が違い過ぎる。

なお火星側は地球がこんな遠くまで自力で来て、尚且つ秘密裏に基地を作り上げ戦力を潜伏させていることなど思いもしていない。
実際アルドノア世界の地球連合ならまだ難しいがCE世界の各国からすれば容易いものなのであった。

なお潜伏部隊や秘密基地にはミラージュコロイドを始め、最新のステルス装置がこれでもかと運び込まれている。

533: トゥ!ヘァ! :2017/07/30(日) 13:56:23
投下終了

既に王手なんだよなぁ…
帝政ヴァースは滅びてどうぞ。

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最終更新:2017年08月02日 07:13