486: ナハト :2017/07/11(火) 23:20:00
―――逸見エリカは狂犬だ。
これは道術士学校で共通した認識である。

なぜなら、彼女はおよそスマートとは言い難い戦い方をし、相手が強敵であればあるほど、目の瞳孔が開かれ
ぐるりと唸り立ち、全身が逆立ち、大地を獣のように疾走し、相手の懐まで接近し喰らい付く。

例え、演習で防衛対象が赤軍の攻撃で包囲されようとも、その一角を逸見エリカただ一人で破り
幾重に防衛していた敵の防衛対象を一人躍り込み、逆転勝利をもぎ取ってしまうほどには

これには、どこか旧態依然とした戦いがいまだに残った道術士学校の先輩お嬢様達に恐怖のどん底に突き落とし
より、実戦に即したカリキュラムに組みなおされ、道術士学校を改革する切っ掛けとなる



逸見エリカは強い。それは誰もが知っている事柄である。
しかし、そんな彼女でも弱点は存在していた。
一つが西住みほ
そして、もう一つが・・・




「えーと・・・ここで待機して防衛し、その隙に別動隊が回り込んで・・・
あーーーーもーーーーめんどくさい!!なんで私が指揮をやらないといけないのよ!?
出来る奴に任せればいいじゃない!?」
指揮であった。

エリカは直感型で戦場をひっくり返すには自分の力で全部殴り倒せばいいじゃないという素晴らしき脳筋思考であった
教官はその弱点を少しでも埋めろと言わんばかりに最近は指揮の教練が多くなり
いまでもこうして宿題が出されているのであった

「くう・・・なによ。この複雑な指揮の組み方は」
エリカはぶつぶつと言いながら、頭をガシガシしつつ宿題を解いていくがなかなか進まない
これは一晩徹夜かなと予想を立てるエリカ


しかし、その予想は・・・・・


「あ、エリカさん。それはここをこうしてこうすればいいんだよ」
みほのお蔭で早く終わりそうだった。


道術士学校は寮生活で、二人ないし三人で一組の部屋が割り当てられており
逸見エリカと西住みほが二人で生活していたのである。

本当は、カリキュラムが同じ者同士が部屋を組むのが望ましいとされているが
エリカの事を多くの生徒が怖がって拒否し、みほと同居生活となったのである

「それとこっちもここは薄いところじゃなくて厚いところで突破が正解だよ」
「・・・・・じゃあ、こっちも分かるの?」
「うん?・・・・ああ、ここはここで伏兵を用意して、引っ張り出すのが正解だよ」
「・・・・・・・」

次々と正解していくみほに、エリカが何事か考え込む
その様子に気付いたみほが声をかける

「・・・・?どうしたの?エリカさん」
「・・・・・・・(ピーン!)」
エリカの頭の上に電球が現れ
なにかを浮かべたエリカはもの凄い笑顔で言う

「ねえ、みほ。明日協力してほしいことがあるのよ」
「な・・・なにかなー(あ、この顔は良くないことを考えている顔だ)」
502: 名無しさん :2017/07/12(水) 20:45:05
487の差し替え、wikiはこちらで掲載お願いします




―――翌日
西住みほの教室の扉がガラガラ開いて先生が入る

「お前ら席につけー・・・・うん?西住は欠席か?」
「せんせー、みほは風邪をひいて、保健室だって」
「風邪かー。なら仕方ないな。みんなも気を付けろよー」
「「「はーい!!」」」」
こうして授業が始まった


一方、学舎から離れた場所、演習場では逸見エリカのクラスが演習が始まろうとしていた
この日も逸見エリカが指揮官であり、相手方の指揮官は容易く勝てると思われたが・・・

『こちらカツエ!やられました!』
『側面に回りこまれました!両側からです!』
『敵が見えない!動けねぇだよー!』
『やられたー』
『おいは恥ずかしか!』
『救援を・・・救援を!』


「な・・・何が起こっているのですの」
相手側の指揮官は茫然とするしかなかった

打った手がごととく裏目裏目にでて気が付けば包囲殲滅されようとしていた
そして、何もできずに演習は逸見エリカの圧勝に終わった。


「はっはー!ザマアみやがれ!いつも私を馬鹿にして、仕返しだよ!!」
「いいのかなあ、こんなことして」
「何言ってんの。世の中勝てば官軍なのよ」
演習場から少し離れた森、そこには逸見エリカと西住美穂の姿があった

彼女達は前日に機械室から無線機一式を運び出し、森の中に隠し
演習が始まると同時に隠れていたみほが指揮を執って見事に勝利を収めたというわけであった。

かかかっと笑い続けたエリカだが、急に真顔になると
「あなたは指揮に才能があるわ。私が何度も機会を作ってやるから、あなたは自分でここまで来なさいよ」
「もちろんです!エリカさんを引きずり出してやりますよ!」


これが何度となく繰り返し、不審に思った教官が探りを入れるまで勝利を何度となくもぎ取った。
当然、大目玉になり、このまま評価されずに終わったかに見えたが、偶々道術士学校を見学にやって来た東条が
西住みほの非凡な指揮の才能を見て、彼女の頂点を伸ばすべく新たな学科の設立を働きかけた

その学科はずばり、幹部候補生課程である。
この幹部候補生課程はそれまでは学校に出たら役立つ料理・裁縫・学力など勉強することしかなかった魔法力を持たない人たちでも
指揮に才能があれば入ることができ、ここで学び、多くの名指揮官が生まれた。

特に試験艦として就役しながらも、マルタの緊急補給作戦、ペデスタル作戦に参加し
多くの落伍艦を出しながらも、孤立奮闘し、多くの船を救った航空駆逐艦晴風の艦長岬明乃が有名である。


こうして、逸見エリカと西住みほが引き起こした火は少しずつ大きくなろうとしていた・・・・・



おまけ
無線機を盗む・西住みほの授業のさぼり・逸見エリカの指揮放棄
などなどの罪状合わせて、二人で女子寮トイレ掃除一週間となった

488: ナハト :2017/07/11(火) 23:22:21
終わり

よそのスレを誤爆しておいは恥ずかしか!!

505: ナハト :2017/07/12(水) 20:52:58
落伍した船を救いたいというミケの思いから見捨てずに
ついていったので、結果的に本隊から離れて孤立奮闘に近い状態になったと
書きたかった。

重ね重ね言葉が足りなくて申し訳ない

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最終更新:2017年08月12日 09:23