230: 第三帝国 :2017/08/16(水) 00:05:41


銀河連合日本×神崎島ネタSS――——「アメリカの選択」


―――――アメリカ合衆国 ホワイトハウス

楕円形の部屋をしているがゆえにオーバルオフィス、と称されるこの場所はアメリカの権力の頂点に達した人物が執務を行なう場所である。

そしてこの部屋からアメリカ国民、ひいては全世界へ向けて大統領の意思を発表する場所でもあり人類の歴史を動かし続け、この日もまた地球の歴史に新たない1ページを加えるべく大統領と側近たちが集まっていた。

「さて、例のカンザキ・アイランドとの間に私は国交締結を宣言したが、この宣言に対する我が愛する市民と利権団体の反応について諸君から報告を聞こうじゃないか」

現在この部屋の主であるジョージ・ハリソン大統領が側近たちに報告を促した。

「財界の反応について報告します。
 カンザキ・アイランドの石油をはじめとする天然資源に警戒感を抱いています。
 しかし同時に600万人の新たな市場開拓に期待感を寄せており、大統領の国交締結の判断を歓迎しています」

「世論につきましては概ね好意的です。
 市民の大半は『宇宙人に続いて創作作品のキャラクターが現実に現れた』という認識ですから、それに・・・」

「それに"kawaii"ジャパニメーションのヒロイン達に敵意なんて持ちようがない、だろ?」

大統領の冗談に周囲は思わず笑いが漏れ、違いありませんと同意する。

「ただし婦人団体からはアドミラル・カンザキが事実上のハーレム体制について『前近代的』と非難の声を挙げています」

「おいおい、それを言い出したらきりがないぞ。
 まあ、たしかにアラブのハレムを上回る嫁を持つアドミラル・カンザキには男として一言二言言いたいことがあるが」

おどけてみせるハリソン大統領だが実の所冗談では済まされない問題を抱えている。
もしもその婦人団体の意向に寄り添って神崎提督の一夫多妻制について非難の言葉を大統領が言えば、文化として一夫多妻制が根付いているイスラムの国々、特に中東で重要な国であるアラブの敵意を買いかねないからである。

「とはいえ御婦人方の文句については、基本『自分の話を聞いてもらいたい』だけゆえに、その辺は何とかなるだろうが・・・例の市民団体はどうなっている?」

231: 第三帝国 :2017/08/16(水) 00:06:56
先ほどとは打って変わってハリソン大統領は視線を鋭く細め、問い詰める。

「はい、例のチャイナとコリア系の団体はファシスト・カンザキの打倒、米中韓による即時占領と軍事法廷の開催を主張しており、組織は拡大しています」

「・・・何を言い出すかと思えばまたそれか。
 今更イデオルギーだけで戦端を開く程アメリカは暇ではないのは分かっていないようだ。
 加えてあの島がチャイナの手に渡れば既に赤い舌と化したスプラトリー諸島以上に安全保障上の脅威となるのは明白だ」

神崎島の立ち位置は丁度中国が主張する第一列島線と第二列島線の間にあり、もしも神崎島が中国の占領下になれば中国の軍事戦略は完遂されたも当然となり後方拠点であったグアムが直接脅威に晒される。

例えアメリカと中国が妥協して互いに利益を分かち合うつもりで神崎島を分割占領したとしても、『中国が太平洋に進出した』という事実は変わらず、それに対する周辺諸国の反応等も含め面倒な事になるのは予想できた。

「大体なぜそこにコリアが混ざって来る?
 彼らは一体全体何を考えているんだ例の像と言い。
 加えて最近のチャイナはやり過ぎだ、核実験なんて特に。
 あの国は強硬派の軍部が完全に実権を握っているとしか判断しようがない」

冷戦以後、
核軍縮を繰り返し行って来た最中での核実験。
それもならず者国家である北の半島ではなくよりにもよって常任理事国の一つが実行した。
この事実に国際社会に衝撃が走ると同時に「中国脅威論」が大きく台頭し、アジアで緊張感が増しつつあった。

なお行なった当事者は「自国防衛のため」と主張するが、国内向けのプロパガンダではあからさまに日本と神崎島を標的にしており何を望んでいるかは明白であった。

「しかし、大統領。
 同時にわが国とチャイナとの経済的な結びつきは無視できません。
 例え政治的意図で人質を取るような真似をしていても、であります」

「それも分かっている。
 忌々しい事に例え虚構の経済体制であってもあの国の市場は無視できない」

よく中国経済は実態が伴っていない。
と批判されているが元々経済という概念自体が確実にこれだ!と言い切れるような物ではない。
特に今日では仮想通貨という幽霊のような存在が現れている事実が後押ししている。

そして虚構の需要、過剰な供給。
という実体のない中国経済は資本主義として成立してしまい、アメリカとしては大口のお客様として扱わざるを得ない。

「とはいえ、もはや忍耐は限界だ。
 ―――――私はナチスと妥協して見せかけの平和を得たチェンバレンのような選択肢はしない」

232: 第三帝国 :2017/08/16(水) 00:07:41

大統領は宥和政策の果てにナチスドイツの膨張を止めることが出来なかった人物の名を挙げる。

「おっしゃる通りです、大統領。
 今やあの島はチャイナが狙うポーランドであり、我々のズデーテン地方であるスプラトリー諸島は今もなお不法に占拠されているのですから」

参謀議長が大統領の決意に賛意を示し、周囲のその他側近たちも同じように頷くなどの態度で賛意を表明していた。

「ならば決まりだな。
 チャイナが何を言おうが友好関係を構築する。
 幸いというべきか向こうもこちらに対して友好的な態度だ。
 アドミラル・カンザキが提案したパール・ハーバでの慰霊は和解と友好を演出するのに絶好の機会だ。
 第2次大戦の記憶が遠い思い出となった今こそ大々的に和解と友好のキャンペーンを打ち出して流れを作ってしまおう。
 それにわが国でもkanmusu達のファンはあのゲームが知られてから増えているのだろ?」

「はい、それはもう幾度もサーバーを落ちる程熱狂的に増えていると聞いています」

「結構。
 ではここは盛大にアドミラル・カンザキを歓待しよう。
 パール・ハーバでアメリカの寛容と公正を赤い大陸とそれに追従する裏切り者に見せつけるのだ!」

――――――かくしてアメリカは未来を選択した。





おわり

234: 第三帝国 :2017/08/16(水) 00:10:46
以上です。
次回もよろしくお願いします。

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最終更新:2017年08月22日 11:41