628: パトラッシュ :2014/04/26(土) 09:24:10

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART53

ラウラ・ボーデヴィッヒSIDE(5)

 月は美しく、潮風も心地よいが、戦いの余韻で高ぶった神経は落ち着かない。ようやく事件が終結した臨海学校最後の夜。捕獲した『銀の福音』と搭乗していたアメリカ軍ISパイロット、ナターシャ・ファイルスの身柄を受け取りに来た在日米軍関係者との折衝や今回の件に関する国際IS委員会への報告作成に教師たちは忙しく動き回り、嫁と山本少佐も米軍の二人ともども手伝いに駆り出されていた。
 取り残された面々――私にオルコット、デュノア、凰、そして初陣の篠ノ之は、虚脱したような気分で自然と宿屋の一室に集まっていた。疲れてはいたがとても眠れず、波音だけが響くなかで黙ってコーラやジュースを飲みながら思いにふけっていたが、やがてデュノアが「今日の一夏の戦いぶりはすごかったよね」とつぶやくのに全員が頷いた。

「白式って第三世代のはずなのに、福音と戦う姿は第四世代並みに見えたよ」
「確かに、一夏さんの操縦技術もあるでしょうけど信じられませんでしたわ」
「クラス対抗戦で甲龍の衝撃砲を紙一重でかわしていく一夏を思い出して、怖くなっちゃった」
「あいつに追いつくことなど、本当にできるのか」
 そんな言葉を聴きながら、ふと私は「あの噂は本当だったのかも知れないな……」とつぶやいた。
「噂って何よ?」
「デュノア、貴様の実家デュノア社は倉持技研からの資本と技術支援で倒産を免れたが、そのIS技術とは嫁が提供したものだという噂がヨーロッパの軍関係者の間で流れていたのだ」
「え、会社からは何も聞いてないけど。でも確かに白式って戦うたびにオーバースペックになっていくみたいだね」
「待ってよ。ラウラが言いたいのは、一夏が篠ノ之博士のようにISを改修しているってこと?」
「いえ、一夏さんの地球防衛軍では、こちらには存在しない超兵器が実用化されていると英国IS委員会でも話題になっていましたわね。ならばIS技術の進化が、こちらより急速に進んでいてもおかしくありませんわ」
「だ、だが噂なのだろう。証拠があるわけでは」
「あー、それ本当だよー。おりむーが技術提供してくれたのって」
「「「「「ゑ?」」」」」

 クラスの布仏本音が、例の着ぐるみ姿でコーラを飲んでいる。いつ入ってきたのだ?
「の、布仏さん、それは間違いないの?」
「あたし、生徒会の書記だからね。会長がうれしそーに話してるのを聞いちゃったんだ。あ、コーラごちそうねー」
 ちゃっかり菓子類まで食べて布仏が出て行くと、全員が再び顔を見合わせた。
「オルコット、デュノア、凰。今の話は本国に報告せねばならないが、IS関係者が聞いたら卒倒しかねない事態だぞ」
「そうですわ。各国が膨大な資金と時間と人材をつぎ込んで競っている第三世代型開発が無意味になりかねません」
「おまけに布仏さんが、わざわざ今の話をしていったのは……」
「間違いなく更識会長の差し金よね。更識系列の倉持技研は一夏と近い関係を保っていると、さりげなく誇っているんだわ」
「ど、どういう意味なのだ?」
「更識は、つまり日本は各国に対して、向こうの世界と良好な関係を築いたからIS技術上の優位を確保できたと公言したに等しいのだ。ISの能力拡大は、その国の外交や軍事的優位に直結するからな」
「今後はどの国も更識のように甘い汁を吸うため、競って地球連邦に尻尾を振りかねないよ」

 それだけではない。篠ノ之以外の者にはわかっているだろうが、嫁の世界との接触が拡大し地球連邦の持つ優れたテクノロジーが一挙に導入されたら、ISを頂点とした現在の軍事体系が崩壊するだろう。その中で嫁は今回のように、事実上の第四世代型ISを実現した地球連邦の技術力を宣伝する役割も担っている。つまり国際政治における女尊男卑傾向をひっくり返し、政治的混乱をも招きかねないのだ。
 よもやと思うが、そんな事態を防ぐため本国が「嫁の暗殺」を指示してきたら、私はどうすればよいのか……。

※私が作者なら、絶対に篠ノ之姉妹と織斑姉弟に対する国家レベルの拉致か暗殺計画を重要なテーマにしますが。wiki掲載は自由です。

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最終更新:2017年08月22日 13:23