6: パトラッシュ :2014/06/07(土) 08:25:34
メルダ・ディッツSIDE(2)
宇宙航海に出ていたアキラが帰ってきたと連絡があったので、ガルマン大使館に招いた。『獺祭』という地球の酒を手土産に現われた彼女は、宇宙帰りとは思えないほどきれいな肌と充たされたような表情だった。
「久しぶりだなメルダ。デスクワークにはうんざりしてないか?」
「まあ本職がパイロットだからな。カトウ隊長に頼み込んで、週に一度は旧ガミラス軍の鹵獲戦闘機を操縦させてもらって発散している。最近は地球とガルマンの外交交渉が煮詰まっているし」
「大統領とデスラー総統の相互訪問問題か。さすがにボラー連邦の手前、まだ難しいだろう。ベムラーゼが地球に足を運ぶ姿など想像もできないし」
「それに地球には、まだガミラスに対する憎悪を持つ者が多いのは思い知った。同胞の大半を失えば当然か……ところでアキラ、お前が男と一緒に暮らしているという噂を聞いたが本当なのか?」
「半分正解だな。少し前まで半同棲していたが、やはり軍人である彼は宇宙駐在任務に就いてしまった。今度の航海で久しぶりに会ってきたが、次はいつかわからん」
なるほど、妙に生き生きした感じがするのは、男に会ってきたためか。
「ところでその――も、もう相手の男とその、寝ているのか?」
「というか、私が彼を襲って強引にモノにしたというのが正しいな。地球は度重なる戦争で深刻な男不足に陥っているから、いい男をつかまえるための女の争いは激化しているし」
肉食系の本性を隠そうともしないアキラに、実はまだ男を知らない私はただ頷くしかなかった。この肌の色のおかげで隠せたが、かなり顔も熱くなっていたし。
「そ、そうか。ヤマトに乗艦していたとき、モーションをかけてきた男を片端から叩きのめすのを何度も目撃していたからな。そのお前に愛人ができたなどと、にわかには信じられなくて」
「私は男嫌いではないぞ。男を選ぶ基準が厳しいだけだ。私よりも強く、亡き兄のように私を大切にしてくれる相手をずっと探していた。やっと見つけたと思ったら、彼はガトランティス戦で私の目前で戦死してしまった……」
「それは――ショックだったな」
「思わず錯乱して彼の散ったところへ突っ込もうとしたが、後輩のパイロットが私の乗機を傷つけたおかげで救出された。ヤマトに戻ってから彼を恨んで殴ったが、大切な人が命を捨てて守った世界で生きるのが残された者の義務だと諭されて反論できなかった。私が生きながらえたのは彼のおかげだ」
「では、そのお前を助けたパイロットが?」
「私のパートナー、織斑一夏大尉だ」
アキラは胸にかけたロケットを開いてみせた。片側にはアキラによく似た兄らしい同じ白髪の男の、もう一方には精悍な表情をした黒髪の軍人の写真が納めてある。彼がオリムラというアキラの今の男か。
不意にアキラは声をひそめた。
「実はなメルダ、ここだけの話だが一夏は“あの”方面でも信じられないほど強いぞ。一緒に休暇を過ごしたときなど、朝も昼も夜も彼に抱かれ続けて、文字通り体がとろけてしまったな。頭の中が真っ白になって声も嗄れるまで喘いで、何度も失神するほどに。最初に襲ったのは私なのに、今はすっかり溺れてしまっている。しかし、ここまで女を激しく愛して、凄まじいほどの快楽を与えてくれる男はいない。最高の男を手に入れたと思っているし、もう他の男など考えられん。まだ子供ができないのは残念だが」
「わ、わかった、もういい、私の負けだから惚気はやめてくれ……」
あまりにも生々しい打ち明け話に、私は腰を抜かしかけた。おかげで例の次元回廊に関する情報について、話を切り出せなかった。地球へ帰還したばかりのアキラだが、来週からまたヤマトの訓練で宇宙に出ると言い残していった。あの惚気を平然と聞けるようになるには、私も男を経験しなければダメなのか。にしても、あそこまでアキラを満足させるオリムラという男には興味があるな……。
※肉食系の玲なんかイヤだという方はスルーしてください。「実は薫も一緒に休暇を過ごしたのを省略してメルダに吹聴した」という裏設定です。Wiki掲載は自由です。
最終更新:2017年08月22日 13:31