12: パトラッシュ :2014/06/14(土) 09:34:52

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART60

イギリス国家安全保障会議SIDE

「SIS(英国秘密情報部)長官、セシリア・オルコット嬢からの情報が正しければ、日本政府と倉持技研は地球連邦との接触で具体的な利権を獲得したわけかね」
「は、首相。織斑一夏大尉が『銀の福音』捕獲作戦で示したエネルギー効率を大幅に向上させたIS技術は、間違いなく倉持とデュノア社の次世代機に活用されています」
「外相、国際IS委員会での技術開示要求は?」
「指示しましたが正直難しいかと。開示要求決議が出ても、アラスカ条約に署名していない地球連邦が無視したらそれまでなので。倉持の傘下入りしたとはいえデュノア社が技術を取得したので、フランス政府も開示には消極的ですし」
「これは重大なアラスカ条約の骨抜き行為です。日本政府に抗議すべきでは?」
「そして地球連邦とは一切の裏交渉を行わないと、世界に宣言するわけかね。馬鹿正直な真似をすれば他国を喜ばせるだけなのは、内相も理解できると思うが」
「国防相の言われる通りです。そんな要求をしたら、日英関係にも大きな障害になりかねません」
「し、しかし外相、わが国も地球連邦に媚びへつらえと言われますか!」
「焦らずとも長い目で見れば、いずれ倉持やデュノア社の技術は流出してくるさ。しかも、その件に絡んでの情報だがパキスタンとカンボジアが地球連邦に対し、自国産品の格安販売を打診してきたそうだ」
「パキスタンとカンボジアが? つまり……」
「間違いなく中国が背後にいますね。中国は日本のような低姿勢外交はとれないので、友好国に手を回して唆したのだろう」

「それと、デビアス社から内々に興味深い話がありました。地球連邦がデビアス日本支社に対し、ダイヤモンド原石のカットと販売で協力を求めてきたと」
「……本当かね、財務相」
「はい、全部で一万カラット分はある稀少な純天然グリーンダイヤの原石で、かのドレスデン・グリーンより大粒の石が最低二十個は取れるそうです。地球連邦が向こう側の冥王星で鉱床を発見したものの、カット技術も消滅していたので持ち込んだとか。デビアスは『プルート(冥王星)・グリーン』のブランド名で販売する計画で、およそ二十億ポンド(約三千四百億円)の売り上げを見込んでおり、これが地球連邦の外貨準備になるわけです」
「冥王星産のグリーンダイヤとは、国際的な話題になろう……デビアスに話を持ってきたのは、世界のダイヤ取引の中心地たるロンドンの地位にも配慮したから文句をつけるなとの意味だな。ならば英国としてもここは小細工などせず、彼らが求めている上等な食料や嗜好品を正面から売り込もう。『宇宙の彼方に輸出されるスコッチウイスキーやチェダーチーズ』というスローガンに反対する者はおらんさ。そこから外交窓口を確立していくのだ」
「仰る通りです、首相。名誉と実利を両取りする美しい外交こそ英国の伝統であり、わが国は常に世界の模範であらねばなりません」
「強引に技術を奪おうとしてアメリカに処分された韓国はもちろん、日本や中国のやり方を真似る必要もない。諸君、地球連邦との取引はIS関係だけでなく、英国経済発展のためにも絶対に成功させねばならん。外相は交渉準備を急いでくれ」
「わかりました――失礼、本省から電話です。ああ、私だ……待ってくれ。首相、日本大使が至急の面会を求めてきました。地球連邦との関係で重要な話があるとのことで、首相も話を聞かれますか?」
「そうだな。わかった、大使をダウニング街によこしてくれ」

「これは大使、お久しぶりです」
「首相にお目にかかる機会をいただき感謝しております。本国政府の訓令を申し上げます。このたび日本と地球連邦は、ある共同事業に着手することで合意いたしました。つきましては英国の協力を求めたく、参上した次第です」
「(IS技術取得に続いて共同事業とは、日本は地球連邦に相当食い込んでいるな)両国は何を行うのですか?」
「実は……」

※①デビアス:「ダイヤモンドは永遠に」のフレーズで有名な南アフリカに本社を置く英国資本のダイヤ採鉱・加工・流通・販売会社②ドレスデン・グリーン:ドイツのドレスデンに展示されている世界最大の天然グリーンダイヤ(41カラット、推定価格2億ドル)③ダウニング街:英国首相官邸の所在地――でした。次回から最終章です。Wiki掲載は自由です。

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最終更新:2017年08月27日 09:36