354: パトラッシュ :2015/03/01(日) 09:19:28

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART65

シャルロット・デュノアSIDE(7)

「弱者の脅迫かよ。救われないぜ」
 一夏は憤慨してるけど、古代艦長の言葉は重かった。ウクライナはロシアにクリミア半島を奪われただけでなく、ISを一機も保有していないため周辺各国に比べ科学や軍事面で遅れていると聞いている。いわばヨーロッパ各国の人民を人質にして、コスモリバースシステムという最高の技術を独占して自国の政治的地位を高めようと狙ったわけか。
 やはりISを持てずに国際的立場を落としていた韓国が、過去の謝罪をネタに地球連邦から技術を奪い取ろうとして大恥をかいたけれど、ウクライナも同じ誘惑に駆られたのかも。顔を見合わせる僕たちに、古代さんは複雑な笑みを向けた。
「……しかし、あまりウクライナを笑えないのではありませんか」
「どういう意味です、中佐」
「ここにいらっしゃる皆さんも、それぞれの本国から秘密指令が出たはずです。何としてもヤマトの保有する技術を奪えとね」
 僕と鈴は思わずスプーンを取り落とし、皿に落ちて甲高い音をたてる。ラウラとセシリアはカップを震わせてコーヒーをこぼし、ダリル、フォルテ両先輩はマゼランパフェのクリームを吹いた。織斑先生と更識会長だけが冷静に古代艦長や一夏たちヤマト側と相対し、ひとり箒だけぽかんとしている。

「まあ、こいつらの本国がそう言ってくるとは予想していた。これほど凄まじい力を見せつけられては無理もない。しかし貴官らも考えていたのではありませんか」
「少なくとも私はクレムリンから指示は受けておりません。いくら自由国籍のロシア代表でも、確実に日本へ漏れると思ったのでしょう」
 うう、さすがに先生と会長は百戦錬磨だよ。僕みたいな素人にスパイしてこいなんて、大統領は本気で成果が得られると思ったのかな。広い大食堂は静まり返ったけど、一夏は平然とコーヒーのお代わりを注いだ。
「確かに予想してたよ、千冬姉。だから対応策も立ててある」
「策とは何だ?」
「すぐわかるさ。箒、ここで『紅椿』を展開してみろよ」
「え、だだが……」
「いいから」
 ぎこちなく箒はISを起動しようしたが、不意に赤い紐を巻いた左手を振った。
「どどどういうわけだ、反応しないぞ!」
「何だって?」
 僕も慌ててラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを起動させようとしたけど、ネックレスの形は変化しない。甲龍のブレスレットやシュヴァルツェア・レーゲンのレッグバンド、ブルー・ティアーズのイヤーカフスも待機状態のままだ。こ、これは一体――。
「ちょっと一夏、もしかしてこれは」
「鈴の想像通り、ISの起動を抑制する電磁波動が流されている。ヤマト艦内では一切、ISは動かせない。だからこそ皆を艦内に招待したのさ」
「い、一夏さん、起動を抑制するとはつまり、ISコアを動けなくしたと……」
「その通り。わが地球防衛軍はISコアの解析に成功しました。皆さんのISは単なる装飾品でしかありません」
 古代艦長の宣告に、織斑先生や更識会長も愕然として自分のISを確かめる。ダリル先輩とフォルテ先輩は唇を震わせて失神寸前だ。ISを世界最強の兵器の座から引きずり下ろすほどの、圧倒的な科学力を見せつけられてしまった。軍事の根幹をひっくり返された世界に与えるショックは計り知れないし、それが引き起こす政治的混乱も想像したくない。僕たちはヤマトの護衛や日本と地球連邦の友好をアピールする政治ショーのためではなく、地球連邦に逆らおうという意志すら打ち砕く情報を世界に広めるための広報役に招かれたのだ。
 容赦ない国際政治に利用されたと悟って頭が真っ白になったところへ、壁に掛けられたスクリーンに若い制服姿の男が映った。
≪古代艦長、緊急事態です≫
「どうした、相原」
≪ISと思われる飛行物体が約二十機、ヤマトに向けて侵攻してきています≫
「そうか、大統領の予想が的中したな――空間騎兵隊に出動命令。後は手筈通りにと斎藤に伝えろ」

※ハーメルンで連載中の「IS学園特命係」がいいですね。小野田官房長の陰謀でIS学園に職員として派遣された右京さんと薫ちゃんが、千冬さんや楯無さんたちと協力してISの闇が絡んだ犯罪を調べていくストーリーが秀逸です。山田先生が尊くんといい感じになったり、カイトパパが日本IS委員会理事として登場するなど、最近ますます楽しみになってきました。拙作もあそこまで好評だとよいのですが。最後に先日亡くなられたレナード・ニモイ氏に哀悼の意を表したいと思います。Wiki掲載は自由です。

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最終更新:2017年08月27日 09:44