794: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:36:53
アナザーseed if もしもゲートが現れたら5
アセイラム姫を首班としてヴァース共和国の成立。それと同時にCE諸国軍の本格的な介入に始まり、地球連合の反撃開始。
ヴァース火星本土においても共和国側へ与した貴族の軍勢が以前より潜伏していたCE諸国軍の特殊部隊と共に帝国側領域へと攻勢を掛け、宇宙ではアルテロイドベルトにて先行していたCE諸国の連合艦隊が奇襲気味にヴァース帝国の宇宙拠点へと襲い掛かっていた。
帝国側もこれらへは猛然と反撃を行っていたが、原作以上に強化されている地球連合(アルドノア)とそもそも地力が違い過ぎるCE諸国軍相手では戦術レベルですら成果を上げることが難しく、更に戦略となるともはや巻き返しのできない状態なのは明らかであった。
火星軌道衛星上では多数の防衛用宇宙要塞が大洋連合の艦砲射撃の前に、大西洋連邦の艦載MS隊の前に、AEUの巨大MAの前に次々と爆散していくこととなる。
既に一部地域では艦隊の援護の下に東アジア、BU、新ソ連の降下部隊が火星表面へと降りており、地上部隊の侵攻が開始されていた。
それら宇宙要塞や地上拠点の防衛にあたっていた火星カタフラクト部隊に関しては同様に一般兵の乗る量産型も貴族の乗るワンオフも等しく蹂躙されていった。
中には得難い能力と純粋なパイロットの腕からかCE諸国のMS隊すら苦戦させる貴族のカタフラクトも存在していたが、この戦局に至っては焼け石に水にしかならず時間をおかずして囲まれて撃破されるか降伏する羽目となった。
また帝国が強力な中央集権国家ではなく、前時代的な封建制だったのがここにきて仇となった。
蜂起する民衆側へと離反する部隊が相次ぎ、更に圧倒的な連合側戦力の前に士気を折られ、戦う前から降伏する貴族も相次ぐ始末。中には帝国を見限り独断で連合側へと付く貴族まで現れる始末であった。
このように帝国本土はCE諸国という災厄にも等しい軍勢を前に加速度的に崩壊していくこととなる。
最終的に一週間ほどで火星の主要な領地や施設は連合に制圧され、残すはヴァース帝国帝都とその周辺地域のみとなっていた。
連合側は帝都へと籠る帝国軍相手に再三降伏勧告を行ったがレイレガリア皇帝はこれを拒否。徹底抗戦の構えを崩さなかった。
さて、ここに至って何故降伏を受け付けないかというと訳がある。
実際のところは連合侵攻の報告と各地で帝国軍が敗退している事実を前に遂にレイレガリア皇帝が倒れ、指揮官不在状態であったからだ。
このため現在の帝都の指揮は防衛司令官がとっており、お飾りとしてアセイラム姫の異母妹であるレムリナ・ヴァース・エンヴァース姫を担ぎ出しており、この司令官が降伏を拒否していたからである。
彼自身としては能力はあるが如何せん臆病な気質が強く、ここで降伏した場合民衆へと引き渡され殺されるのではという被害妄想に取り付かれていた。また彼の冷静な部分はこの一週間での連合の火星侵攻の様子から軌道衛星上からの人口密集地域への攻撃が行われなかったことを鑑みて帝都への直接爆撃はないだろうという予想も立てていた。戦力的には帝都防衛のための親衛隊と各地からやってきた少数の敗残兵や防衛施設の数々によってある程度の防衛戦闘も可能という考えもあり、食料に関しても以前より大量にため込んでいたため最低でも一月は凌げる計算があった。これは前時代的な封建制にありがちな配下貴族の反乱の可能性を警戒していたためである。
795: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:37:28
実際のところ連合軍側はどうなのかというとまさにお手本のような電撃戦が成功したため一々衛星軌道上からの人口密集地域への爆撃を必要としなかったという点が大きかった。
そのためこの帝都に関してはまともに当たると相応の被害が出るとの予想から軌道爆撃の実施も視野に入っていた。連合の各国司令官としては無為に民衆を巻き込んだ市街戦などしたくはないが、だからと言って他国の、しかも戦争相手の民衆のために自分たちの部下を無駄に傷つけ殺させるような慈悲は持ち合わせていなかった。
こうして降伏を受け付けないヴァース帝国の帝都に対して衛星軌道上の艦隊から艦砲射撃のミサイルによる爆撃が決定される寸前にとある一方が駆け込んできた。
ヴァース共和国政権代表であるアセイラム代表からの皇族しか知りえない秘密の脱出路を用いた内部への侵攻という手である。
しかも妹であるレムリナ姫からの皇族専用の秘匿回線を用いた密告により既に皇帝レイガリアは倒れ、現在指揮を執っているのは帝都防衛司令官であり皇族専用の脱出路の存在は知らないであろうという情報も。
妹姫としては姉に協力することはいかんともし難い感情があったが、ここで帝都防衛司令官に付き合って無為に死ぬことも嫌だったためである。突然担ぎ出されて、何も知らぬまま全ての責任を被せられることを嫌ったためである。これがもしも自分が納得しての始末ならばよかったが如何せん今回は覚悟を決める時間がなかったため理不尽に対する嫌悪感の方が勝った。
この情報の提供により連合軍は作戦を変更防衛司令官の拿捕を目的とした少数精鋭による秘密通路からの強襲作戦を執り行うこととした。
幸いこの秘密通路は貴族用の大型カタフラクトの移動も考慮された作りとなっていたため18m前後のMSならば通ることは可能であった。そして各国のエース格を中心とした精鋭部隊は秘密通路から帝都の帝城へと強襲。人員輸送用のガンタンクとそれに搭乗していた歩兵部隊も合わせて行動を開始し、見事帝都防衛司令官を拿捕。抵抗した歩兵やカタフラクト部隊などもMS部隊によって瞬く間に排除された。同時に密告者であったレムリナ姫の保護と意識を失い倒れていたレイレガリア皇帝の身柄の確保にも成功していた。なおレムリナ姫は保護された後に共和国政府の願いで政府首班の元へ移送され、半ば無理矢理書類仕事を手伝わされる羽目となるのだが今この時点のレムリナ姫には知る由もない未来であった。
こうして半月立たずにヴァース帝国火星本土は陥落することとなる。同時に未だ意識の戻らないレイガリア皇帝に代わりレムリナ姫により未だ抵抗を続けるヴァースの地球侵攻軍に即刻停戦と武装解除が命じられるが、地球侵攻軍の指揮を預かるザーツバルム伯爵はこれを無視し、逆にこれは連合の陰謀だと徹底抗戦の構えを崩さないでいた。
796: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:38:14
時は少し戻りCEの連合艦隊が火星各地に侵攻を開始している最中の地球。アルドノア世界の地球連合軍とザーツバルム伯爵が統括者となったヴァースの地球侵攻軍は双方の戦力をアフリカへと集めていた。両者をこのアフリカのアルジェリアにおいて決戦を行う腹積もりであった。
地球連合側としては既にほぼ勝敗の決まったこの戦争を長引かせる理由もなく、ヴァース帝国側は既に本土が侵攻されている最中ではこの決戦に全てを賭ける必要があったためである。
戦力数の差は地球側5に対してヴァース側は1. 更に言えば地球連合側にはゲートを通り派遣されてきたCE世界の傭兵やCE諸国の連合部隊も参加しており、単純な数字以上の戦力となっている。
対して火星側は幾らザーツバルム伯爵が統括者となったとはいえ、彼のことを嫌う貴族や火星本土の自領のことで気が気でない貴族、既に連合の逆撃により大きな被害を受けた貴族など戦力的にも士気的にも連携的にも全てが劣っている状態であった。更に言えば地の利は地元である地球連合側にあり、火星軍側に対してアウェーである。
天の時、地の利、人の和全てを取っても連合側に劣っている状況。戦えば負けるは必然。しかし、半ば意地で戦いを続ける彼としてはここで止まることもできなかった。いや、したくなかったのである。
最も決戦の一日前には火星本土の陥落とレムリナ姫による停戦と武装解除命令が届いたが満場一致でこれは拒否された。既に退路無しという考えはザーツバルム卿だけではなく、この場に集った貴族たち全員の思い出もあったのである。とは言え一般の兵士にはそんなこと関係なく、全周波数で届けられたこの勧告を聞いた一般兵士の多くは更に士気を下げることとなる。
このように圧倒的と言っていい差の中で開かれた戦いであったが、予想通りと言えばいいのか地球連合側の大勝で終わった。
見せ場と言えば一部の貴族が乗るワンオフカタフラクトの勇戦が目立っただけで終わり、既に質も量も士気も兼ね備えた連合側の猛攻により大多数の火星軍側は脆くも崩れ去ることとなる。
これがまだアルドノア世界の部隊と派遣されてきた傭兵だけならば勝機もあったかもしれないが、援軍としてCE世界からやって来た六大国+αの部隊相手には手も足も出ず、それは一般兵の量産カタフラクのみならず貴族のワンオフ機も例外ではなかった。無論中には奮戦する者もいたが、戦局を覆すほどの戦果にはならなかった。
797: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:38:49
このように妥当な結果で終わったアフリカの決戦であったが、敗北してヴァース帝国の貴族の大多数が戦死するか降伏し捕虜となる中でザーツバルム伯爵はしぶとくも生き抜き撤退することに成功した。
だが既に地球侵攻当初の軍勢の面影はなく、揚陸城も専用のカタフラクも失い兵力数としては一個大隊にも満たない軍勢だけが彼に付き従っていた。
他に離脱に成功した貴族や部隊も存在していたが敗戦の最中でバラバラに逃走しており。ザーツバルム伯爵としてはこのばらけた戦力を集め、もう一度連合に決戦をと考えていた。無論彼の冷静な部分はそんなことをしても無駄だと激しく訴えていたが感情の方で納得しかねていた。
だがここまで健気に彼に付き従ってきた兵士たちも体力、気力共に現界であり、手持ちの戦力もカタフラクトはほぼ存在していない状況では希望を見出すことなど出来るはずもなかった。
ならばと半ば自暴自棄気味に自分だけ特攻でもするかと考えている最中に彼の元へと元同僚となるマズゥールカ卿が訪れ降伏を進めてきた。
無論半ば意固地になっているザーツバルム卿は無論拒否していたがマズゥールカ卿は苦笑いしながらもとある封筒を渡すだけに終わった。あとでその中身を見ていてほしいと。
彼が帰った後でザーツバルム卿が封筒を開けてみれば一通の手紙とどこかで見たことのある指輪が光っていた。
後日ザーツバルム卿は残った兵士と共に降伏。身柄は連合政府へと明け渡され、後に裁判へとかけられ極刑を言い渡されることとなるが、ザーツバルム伯爵は粛々とその結果を受け入れた。
彼に降伏を決心させた封筒の中身は彼の死んだと思っていた婚約者による遺書と婚約の際に渡した指輪であった。
死んだ婚約者のため半ば私念で戦っていた男が最後にはその女性の遺言により戦いを終えた。降伏する際の彼の表情はどこか物悲しかったという。
ここに第二次惑星間大戦は終結することとなる。戦後も各地に散らばった敗残兵の処理などが残っていたがどれもまとまった戦力はなく、降伏するか排除される運びとなっていった。
次回:エピローグ
798: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:46:02
〇設定
アセイラム姫の異母妹。母親がアセイラム姫と違うために冷遇されていた人物。アセイラム姫が共和国政府の代表となり皇籍が剥奪されたため帝都へと呼び戻された。
本人は自分と母親を冷遇したレイレガリア皇帝とその血筋を憎んでいるのだが、今回の出来事については一連の動きが早すぎたために正直認識がついていけてなかった。
姉が皇籍剥奪されたから呼び戻される→その直後にCE連合艦隊による火星侵攻→祖父レイレガリア倒れて帝都防衛司令官に担ぎ出される→嫌気がさしたので姉に密告して助け出してもらう→姉のところに居候して書類仕事の真っ最中(今ここ)
後に30半ばで引退した姉に代わり共和国政府の二代目代表となるがそれはまだ先の話。
姉と共に苦労をしていくためか姉妹の仲は原作よりも良い方向に向かっていく模様。
ザーツバルム卿の婚約者だった火星騎士。15年前の第一次惑星間大戦において種子島に降下するがヘブンズフォールの影響により離脱できず月の破片落着に巻き込まれ生死不明となっていた。
実際のところ生きており、連合政府に捕虜として確保されていたのである。しかし重症ではあったため数年間目を覚まさず、目を覚ました後もケガの後遺症に悩まされていた。更に言えば月の破片に含まれていたのかわからないが多量の放射線を浴びている状況であったため余命も幾ばくない状況という老い先短い人生となってしまった人物。
余命いくばくもないことに対して何かしら思うことがあったのが前のように高慢な態度は鳴りを潜め、連合政府への情報提供にも積極的にとはいかないものの拒絶するほどの抵抗もしなかった。
本来ならば苛烈な尋問も予定されていたが彼女自身の体の様子から担当医からの反対もあり却下されることとなる。また彼女が目覚めた際には既に大陸CE世界との交易が始まっており、それどころではなかったという点もあった。
結果的にある程度の情報提供を見返りに病院に入院している生活が続いていたが、第二次惑星間大戦が勃発する数年前に病気が悪化し死去。婚約者であったザーツバルムへは遺書と共に婚約指輪を残す。
彼女の遺書と遺髪、婚約指輪などは彼女のことを不憫に思った担当医が保管していた。
彼女の遺書の内容は公表されていないがザーツバルム卿自身に降伏を決断されるような内容が書かれていたのは確かである。
半ば意地で戦う続けた人物。決して褒められた人物ではないが部下からの人望は厚かった模様。最後は婚約者の遺書を読み降伏を決意。また降伏時には部下の助命を嘆願した。
戦後は地球侵攻側の責任者の一人として裁判にかけられ極刑を言い渡された。
なお他の貴族も大なり小なり幾つかの有罪判決を言い渡されている。
アフリカのアルジェリアで行われた最後の決戦。双方の最大戦力を持ってぶつかった戦いである。
5対1(地球5、火星1)という圧倒的な物量差の戦いであったが、質の面でもCE世界の連合軍参加により地球側が有利となっていた。
結果的に火星側は大敗。多くの貴族や兵士が戦死するか捕虜となった。なお火星側はこの戦いで残っていた揚陸城全てを失いこととなった。
その後も生き残った火星側の部隊による散発的な抵抗が続いたが一月足らずで残り全てが降伏するか殲滅される結果となる。
800: トゥ!ヘァ! :2017/09/10(日) 15:47:50
投下終了
途中パソコンの調子が悪くなって焦った(汗
姫様の尽力により火星の帝都救われるの巻。共和国政府を運営していくに際しても帝都に残っている文官は必要だからね…
最終更新:2017年09月16日 10:18