139: 影響を受ける人 :2017/08/15(火) 22:31:04
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第百十六話 ―扶桑海事変-20―

――北郷隊――

様に危機的状況。そう表現するしない現状に、苦笑いしか浮かばない。
まさにラストチャンス。これを逃がせば、あとが無くなった。

「まさか、【伊勢】【日向】が大破するとは・・・」
『・・・時間は本当に無い。・・・あのネウロイ共は、己の命を対価に此方を足止めしようとするかもしれん。』
『あ″あ″、その可能性は高いな。』
『偵察機の報告でも、増援はそれなりの数ですよぉ。【金剛】【霧島】も対空能力は強化されていますが、【伊勢】【日向】ほどではないですしぃ。』
「阻止は不可能・・・か。」

確かにこの天井が有るという空間は行動を制限し、迎撃がしやすい。
しかし外から襲い掛かる者達のとっては、ちょうどよい牢獄。何しろ逃げる場所が限られる。
四方八方から襲い掛かれば・・・逃げ道はなくなる。

「もう、後方の事は考えるな! とにかく、この一度に全てを賭ける!!」
『『『『『了解!』』』』』

もう何度目かの号令。これを最後にしたい。

――リーダーネウロイ“スズメバチ”――

厄介な敵を回避が上手い味方に任せ、一撃離脱で厄介な敵を無力化できた。
今のところ順調だが、もう切羽詰った状況には変わらない。頭が足りない護衛対象はあっさり操られて自分を攻撃している。
替えが無い“オカ”だが致し方が無い。いかに増援が来るとわかっても、根幹が無くなっては意味が無いのだ。
“ヤマ”を守りきる。それが自分に課せられた使命。

―自分みたいな若造に、こんな大役を任せるのが悪いんだ!―

取りあえず愚痴を言いつつ突進をし続け、現前に四つの金属塊が徐々に迫ってきた。
身体に蓄えたエネルギーももう残り少ない。だが、撤退など考えずに攻撃に入る。
取りあえず一撃入れてすり抜ける。そして最も先行している小さな脅威を排除せねばならない。
時間を稼ぐだけでもいい。
っと、少し小さめの金属塊がユラユラと左右に動いた。

そのせいで速度が落ちて、自分達に近づいくのだがまた速力に任せて大きなものに近づく。
何がしたかったのだろうか?
良くわからない事はどうにも詮索できない。もうすぐ射程に入るし、余計な考えは捨てよう。
そう思った時、眼前に水の壁が出現した。

――雲仙型重巡洋艦三番艦【田代】――

古田高雄はあらゆる方法を模索していた。
何とか第二打撃艦隊に合流し、懸命に部下と共に戦ってきたがここまでの危機は初めて。
いかに演習で鍛えようとも、戦艦が何隻も沈められる今の現状は知らない。更に言えば敵の数も尋常ではない。
一部の参謀があり得ない演習内容(想定した敵の規模が、史実第二次世界大戦後期のアメリカ機動艦隊)を書いたと言う。
それはあり得ないとしてあっさり没になったが、今考えるとしておけばよかったと思う。

そんな思惑は現状何の役にも立たない。
先程の迎撃は上手くいった。陣形を継続できればそうしたかったが、敵増援の報がなし崩しの対策をとる意外の選択が無かった。
自分達も迎撃に、【伊勢】【日向】の護衛として働きたかったが、【長門】からの命令によりそれは断念せざる負えないかった。
そんな中、古田は魚雷の信管を戻すように命令した。
副官は困惑していたが、すぐに慌てて信管を戻すように水雷長に命令する。

「ついでに信管の自爆時間を短くしてくれ。」

追加の命令にさらに困惑が深まった。だが命令は命令、すぐに実行に移される。
そして突然の蛇行命令。矢次に出された魚雷発射命令。
部下は全員困惑したが、鍛えられた扶桑皇国海軍兵は躊躇なく実行に移す。
そして不可思議な行動の結果、超低空のネウロイに水柱を喰らわせることに成功した。
ようやく意図を理解した副官が明るい顔で古田を見る。が・・・

「少しだけの時間稼ぎにしかならん。」

頼れる艦長の顔は厳しいまま。
その言葉に嘘はない。現に先頭の奴は直前で爆発されたのにも拘らず避けられた。
そしてすぐにコースを修正している。他の水柱に驚いて回避するモノも同様だ。
直撃させることは出来ない。そんなシビアな事は流石の職人芸でも無理。

140: 影響を受ける人 :2017/08/15(火) 22:31:59

「次も同じ様な事をすれば、警戒もするだろうが・・・」

そう何度も放てるモノでも無い。だが、無謀な突撃をしてくるなら・・・
身を張ってでも止めるしかない。

――大型ネウロイ“ヤマ”中心下部――

人間。ネウロイ双方共に命がけの行動をしていた。
人間の目的は“ヤマ”の撃破。ネウロイの目的は人間の攻撃阻止、もしくは遅延。
それぞれが明確な目標を見据え、そのために努力を惜しまない。
だからこそ、片方の致命的な遅れが結果を生み出した。
先行したのは観測班二名。坂本美緒と護衛の竹井醇子が“ヤマ”に一番最初に到達した。

「美緒ちゃん!」「行っけぇぇぇぇぇぇ!」

二人が行うのはマーキング。どの位置に弱点があるか、それを示すため。
それが終わると高速で離脱。時間が無いが故に、迅速に行動しなければならない。
続いて突っ込んできたのは旗本サエと真嶋志麻。

「ギァァはハハハハハッは八ッ!!」「・・・喧しい。」

【義肢椀部】と、いつの間にかロープを結びつけた【硬絶(こうぜつ)】を思いっきり振り回していた。
獣声を上げなら遠心力の勢いが付いた【硬絶(こうぜつ)】を、思いっきりマーキングの中心に叩き込む。
同時に旗本が【蜂乃火砲(はちのひづつ)】で、出来上がったクレーターに追撃するが、幾分かめり込んだだけでそれほど損傷は見当たらない。
そこに、間髪入れずに不和ヒビキ・スズの双子が突進。

「一撃!」「必殺!」

【真雷(しんらい)】【進電(しんでん)】を用いて準備した巨大な雷球を、弾丸の様に形成させて撃ち放つ。
【蜂乃火砲(はちのひづつ)】の弾丸がめり込んでいる場所に命中し、そのままクレーターの奥に埋没した【硬絶(こうぜつ)】まで伝い爆発した。
内部から爆ぜたおかげで、クレーターが更に巨大化。
しかしさすがに狂っていても危機的状況を察したのか、再生が始まった。

「そうはさせん!! 全力全開!!! うぅぅぅみぃぃぃわぁぁりぃぃぃぃ!!!!」

再生途中での追撃。魔力増幅を意図的に起こし、最も威力のある一撃を叩き込む。
己が生み出した一撃必殺。貯めが大きく、使い所が限られるがここぞという時には頼りになる。
その一撃が、真一文字に“ヤマ”の装甲を切り裂いた。
更に追撃にとして【氷刻刀(ひょうこくとう)】の能力が発動。氷塊が出現し傷口の再生を押しとどめる。
しかし、装甲を撃ち抜くほどではなかった。

「最後ぉ! 狐火一閃!!」

穴吹智子が【偽神烈火(ぎじんれっか)】で変換させた火閃の一撃が、北郷が付けた傷と交差するように刻まれる。
最大にまで高まった威力は、通常の造りである扶桑刀の刀身を赤熱化させていた。
赤熱化した刀身は振り終ると共に溶け、魔力刃と共に飛翔。
氷の栓を一瞬で溶かしつくして溶断したが、それでもまだ足りない。
他の隊員も機関銃を、墳進砲を叩きつけるが、あまり有効打にならない。精々再生を遅らせる効果しかなかった。

「砲術長、全弾外すなぁ!!」「良いトコみせましょう!!」

ウィッチ達が次々離脱していく中、砲身をぴったり合わせていた【紀伊】【駿河】の主砲が吠える。
たった一度のチャンスを生かすために、素早く照準された砲身は見事に目標を捕えていた。
一隻につき連装主砲砲塔五基、二隻併せて20発の砲弾が僅かな時間差をつけて着弾した。
命中したのは12発。目標に命中したのは4発。
“ヤマ”体が巨体であることを考慮しても、驚異的な命中率だと言えた。

「砲術長。」「すでに。」

【長門】艦橋の会話は短かった。しかしそれで意思は通じる。
既に艦隊は第一打撃艦隊とハ乃字になる様に進路を変更し終わっていた。
そして第一打撃艦隊が放つと同時にこちらも主砲が吠える。
砲弾は砲術長の思った弾道を飛翔し、堀川吉郎の希望どうりに命中した。
14発の砲弾が全弾命中し、内6発が目標に命中した。

その腕前に全員が思わず歓声を上げた。
しかし爆砕の後の煙が晴れると、その声は無くなる。
攻撃は上手くできた。訓練でした以上に、実戦で行った以上にうまくできていた筈だった。
眼前には、朱く輝く“核”が見える。
そう、 無 傷 の“核”が浮いている姿が見えるだけ。

確かに分厚い装甲を破壊するだけの火力を叩きつけることに成功はしていた。
だが、それだけ。
本能的に装甲の質を引き上げ、まだ現存していた“ヒラクモ”を使い潰して再生を促し続けた“ヤマ”のせい。
絶望が、全ての人間の感情を支配する。
急速に再生する“ヤマ”。時間が経てば見えなくなるだろう“核”。
一部のウィッチが引き返して攻撃を加えようとするが、砲撃に巻き込まれないように退避していたので距離が有り過ぎる。

141: 影響を受ける人 :2017/08/15(火) 22:33:10

魔力がもうほとんどない北郷も、顔を蒼褪めさせつつも向かう。
こんなところで終れない。終ってしまったら、大陸で死んだ仲間達になんて言えばいい?
本土に退避した民間人に、待っている家族に何を詫びればいい?

「終れるかぁぁぁ!!」

吠えた。心の底から、魂の叫びをあげた。
しかし、いくら魔力を注いでもストライカーは、それ以上の速度を出さない。
目尻に、涙が浮かび上がり始める。

(誰か、誰でもいい! 後一撃なんだ。後一撃入れられれば!!)

心の中で、慟哭の叫びを上げる。必死に助けを求めた。
神に祈りをささげ、白き狐の守護者に手を伸ばし・・・願いは届いた。
それは【陸奥】の後方から飛来し、治っていく“ヤマ”の傷口に命中。
爆発は戦艦と比べれば小さい。それもそのはず、爆発の元を打ち放ったのは重巡洋艦【田代】。
時間稼ぎを行っていたかの船が、どうして間に合ったかというと・・・

思った以上に追撃してくるネウロイが、魚雷攻撃というはったりに恐れたからだ。
突然眼科下から攻撃される。その混乱は人間が思っている以上に大きかった。
なにしろ使った魚雷は酸素魚雷。雷跡を見せない魚雷だ。
それ故にいつ放ったのか全く分からない。
だから、ただ単に蛇行しただけで回避行動をとるようになってしまった

これはネウロイ側が、もう再生出来ないほどにエネルギーを消耗していたことが要因だ。
超低空で突き進んでいたのは攻撃を受けない様にする為。
もう損傷を再生させられるほど余裕がない以上、傷を受けることは避けなければならない。
そこに不可視の攻撃。しかも苦手とする水攻撃。
慎重にならざるおえないのも無理はない。

こうして時間を稼ぐ事ができた【田代】は、最後の魚雷を放ち、全速力で航行を開始した。もちろん自らも砲撃に加わるため。
しかし攻撃が始まった時、【田代】がいた地点では全門斉射は不可能だった。
進路を変更すれば出来るかもしれないが、そうなると今度は時間と飛距離が足りない。
たとえ射撃可能範囲に入るのがたった数門でも、急いで航行する方が良い。
僚艦の【焼石】はどう頑張っても射撃は出来ない。【田代】しか、チャンスは無かった。

「射撃地点に入り次第撃て!!」

命令はすぐさま実行され・・・奇跡は起きたのだ。
放たれた砲弾はたった4発。命中したのは全弾だが、3発は再生中の装甲に当たりむなしく散った。
しかし、1発だけが隙間を縫って内部に侵入し、“核”に見事に命中した。
めり込んだ砲弾はすぐさま信管を起動させ起爆、“核” を大きく削る。
破壊された瞬間は誰にも見えてはいない。しかし、少しだけ何も音がしない時間が流れた。
そして・・・

―GIIIIIIiiiiiiiiiiii!!!!???―

耳をつんざく音が聞こえたと同時に、“ヤマ” に亀裂が走る。
“核”付近から発生したひび割れはあっと言う間に体全体に入り、砕け散る氷山の様に粉々に砕け散っていく。
心臓部を破壊されてもしぶとく“ヤマ”は足掻いたが、もうどうしようもない。
最後にもう一度咆哮すると同時に、最大級のネウロイは光の粒へと消え去った。



以上です。

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最終更新:2017年09月16日 12:37