787: ナイ神父Mk-2 :2017/09/29(金) 20:26:13
大陸SEED 外伝ネタ

戦争の断片 その2

南米戦線にて

(またか・・・)

そう言った憂鬱な思いと共にクライスラーは地下深くに造られた旧世代の軍事用核シェルターの天井を揺らす見えない原因を睨み付けるが、現在地上拠点を爆破している大洋の戦略爆撃機、富嶽は視線で如何にかなる存在でも無く唯地震が納まるのを待つ様に振動が静まるのを待ってクライスラー机のしたから這い出てきて机の上の倒れたモニターを起こして再起動させると基地上層部へと通信を繋げる。

「敵機は過ぎたか?」

『音響センサー、カメラ共に感知外に移動した事を確認しています。』

通信モニターに写った緑服の兵士は緊張が抜けないのか硬い表情でそう返答すると、クライスラーは溜息と共に深く息を吐く。その様子には疲労が蓄積している事が伺える。

「被害は?」

『先ほどの爆撃により露天駐機させていた機体や基地施設が広範囲に渡って破壊されています。それに修復したばかりの飛行場設備が破壊されています。』

通信を繋げているパイロットの乗る機体のカメラアイからと思われる映像に写される基地上層部は大量の爆撃機が通った後の様な悲惨な状況で有った。複数の機体が離着陸出来るように作られた大型の飛行場は無残に無数のクレーターに変えられヴァルファウや戦闘ヘリやMSだったと思われる無数の残骸が散らばり、管制塔や格納庫だったと思われる構造物も原型が留められて居ない為、元の写真でも無ければ何処に何が有ったのかさえ確認できない。

「酷いな・・・」

『はい、指令の指示で地下に基地機能を移していなければ危険でした・・・』

「付近の被害状況をから立てた対策だったが、このまま大洋からの爆撃を・・・ん?」

其処まで話していた所でモニターの端に別の部署からの通信が入ってきている事に気が付き、通信を繋げると臨時指令室として整備した部屋から通信があり、モニターを繋げると自身の副官がモニターの前に立って居た。

「何か有ったか?」

『お忙しい中済みません。少々緊急の報告が・・・指令室までお越し頂けないでしょうか』

「直ぐに向かう。」

クライスラーは副官へとそう返すとザフト軍制服の黒い制服に袖を通す。自身の使用する執務室から退室し、指令室へと向かう。
そして、指令室に到着したクライスラーを迎えたのはザフトの戦況が更に苦境に陥った事を示す情報で有った。指令室の大画面モニターに写されていた映像には上層部とは又違った状態で無残に破壊された中規模拠点の映像は映し出されていた、周辺に散乱するMSの一部は運よく推進剤に引火しなかったのか上半身と下半身が泣き別れに成った機体等が其の侭残骸の上に落ちている事が確認できる。その光景を見せられたクライスラーは思わず言葉を失った。

「これは・・・」

「先ほど1503に映像に有る第72哨戒機地に着任予定で有ったアダムズ隊が合流直前に救援信号を受けて急行した結果送られて来た映像です。基地所属で有った南アメリカのMS中隊含む基地戦力は壊滅、基地施設を初めとした構造物も攻撃を受けて破壊されました。」

「敵の正体は解っているのか?」

「アダムズ隊が遭遇した基地壊滅の原因だと思われるMS隊を確認しています、短時間の交戦の結果トーマス隊が壊滅敵機が撤退した事によって被害はそれだけに収まっていますが・・・映像を」

788: ナイ神父Mk-2 :2017/09/29(金) 20:26:51
クライスラーの言葉に対して副官はオペレーターに指示を出すと、画面の映像が切り替わりMS視点から写されたと思われる映像が
写し出され、其処には小隊と思われる4機の蒼いMSが映し出されている。

「・・・最近の一連の基地襲撃はこいつ等かが正体か?」

副官は首を振ると新たな資料を提示し、通常の別の基地破壊された基地の資料をモニターに映し出す。其処も襲撃を受けた後らしく生き残ったと思われるカメラからの監視映像には4色のGタイプと思われる機体が移り込んでいるが何らかの妨害を受けているのかノイズが酷く映像が乱れ続けている。

「第72哨戒基地が襲撃を受ける30分ほど前、其れより600kmはなれた別の我が軍の物資中継基地が襲撃を受けています。やり口からして最近襲撃を繰り返している部隊と特徴が一致しています。」

「となると例のMS部隊とは別口と見るべきか・・・先ほどの蒼いMS小隊、交戦記録が有ると言うが、其方の方からは何か解らないか?」

「実際に戦闘を行ったアダムズ隊からの報告では攻撃を仕掛けたトーマス隊のMS3機をこの特徴的なモノアイタイプのMSが迎撃、一般の量産MSとは思えぬ運動性を持って単機で全て撃破したという事です。」

「仮にもジン3機を単機でか・・・」

そう言って指揮官席の椅子の背もたれへと身体を預けるとクライスラーは天井を高く取ってある指令室の天井を向いて目を瞑る。数秒ほどそうして上を向きなが何かを考えていたクライスラーは目を開いて視線を前方へと戻す。

「この情報は上にはもう上げたのか?」

「いえ、先に司令にお伝えするべきだと考えて未だ上には・・・」

「情報は一端保留にすべきだな・・・下手なルートで上に上げればアダムズ隊に対する処分だけで情報を握り潰され兼ねん。
この事は私の方から中立派の議員を通して情報を上げられるか如何か伝えてみる。いいな」

「了解しました。」

その後、南アメリカの各拠点を襲撃するMS隊の情報は中道派の議員を通してザフト上層部へと上げられるが、具体的な対策は立てられる事無く、ザフト軍は南米大陸より撤退する事と成り結局謎のMS達は謎の侭に戦争は終結している。

789: ナイ神父Mk-2 :2017/09/29(金) 20:27:36
ザフト技術部にて

アプリリウスに拠点を置くザフトの技術部では現在、アフリカより転進したザフト地上軍が齎した情報の分析を進めていた。
転進と上層部は公表しているが状況で言えば言い訳しようの無い大敗北であり、尚且つ今まで殆ど動く事の無かった連合の中でも最大勢力となる大洋連合の参戦と戦線に投入された新兵器群はその全てがザフトにとって脅威としか良い様が無い状況だった。
そう言った事情もある事からザフトでは大洋の投入した兵器の解析と対策が急務であり、エドガーが主任を務める部署にも情報が回って着ていたのである。

「小鬼ってのは名前通りの意味だったのかよ・・・」

そう、部署の中の人間が漏らしたのも最もで有った、現在会議室のモニターに移されているMSは何れもゴブリンとは比べ物に成らない性能を有して居り、ゴブリンが大洋からすれば比喩抜きに小鬼である事を示していた。

「推定時速200km以上は固い地上用高機動MSに音速まで加速可能な新型可変MSか・・・」

「危険度と言う意味では両者とも同等レベルだな・・・現地だと十字目と呼ばれているんだったか?」

「はい、渡された資料ではそうなっています。」

進行を勤めるメンバーの一人にエドガーはそう声を掛けると手元に有ったコーヒーを口に含んで再度手元の資料へと目を通す。

「資料を見る限り、これが過大評価だったという希望的観測を除けば推測された情報を見る限り既存機の改造での対応は無理だな・・・
バルドフェルド隊クラスの錬度の精鋭部隊を常時供給できるなら話は別だが・・・」

「しかし、新型開発となりますと上層部が渋りませんかね?」

「それは上層部が決める事だ、俺たちに出来る事は最善の方法を考える以外の方法は存在しない。」

疑問を呈した来たメンバーの一人へとそう返す間もエドガーは全く視線を相手に移す事無く、資料に目を通し続け数値化された情報と向き合っている。そんな中、参加者の一人が気が付いた言った声を上げる。

「そうだ、ビーム兵器を搭載すると言うのは如何ですか?ラゴゥのビーム兵器を受けて撃破された機体のデータが有りますし、開発中のゲイツのデータを利用で出来れば・・・」

「だが、根本的な解決に成らんぞ?現状のバクゥやディンでは機動性が違いすぎる。攻撃力を上げてもそもそも当らないのでは意味が無いだろう?」

「しかし、現状では大型砲は当り辛く、小型のマシンガン等では弾かれるというのが実情です。武装の威力を強化しなければ・・・」

「それでも・・・」

喧々諤々といった様子で会議は徐々に加熱していくが根本的な性能に差が有る上に、戦力を回復させつつある連合の状況を考えれば時間は連合の味方と成る。時間も人も足りないと言う不利な条件で問題を解決するべく意見を交換を続けるも決定的な意見は出てこなかった。最終的にはエドガー主導の下、下記の案へと纏められる。

  • 大洋が投入してきたMS同様のホバー機構を搭載したMSの開発
  • 既存MSに対するビームやレールガン等の高火力兵装の搭載
  • 核駆動機体のより多くの導入

その後、量産機に関する議題が終わった所で今度はワンオフ機へと機体分析の議題は移るがその話題に入ると誰もが口を噤んだ、何せザフトが威信を掛けて建造した切り札が想定以下の成果して上げられ無かったのである。しかし、それでも考えなければ行けない問題である事には変わりなく会議は夜を更けても続けられていく。ザフトの未来の為に。

790: ナイ神父Mk-2 :2017/09/29(金) 20:28:19
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最終更新:2024年03月07日 00:28