207: 影響を受ける人 :2017/09/21(木) 21:32:56
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。というか、ほぼメアリー・スー状態です。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
天皇陛下と共に銅鏡で遠視の映像を見ていた九曜葛葉であったが、苦戦している味方を見るというのはいつになっても胸が締め付けられる。
天皇家に仕える様になってからは、よほどのことが無い限り、自分が出る事は無くなっていた。
それでも莫大な魔力にモノを言わせ、多数の能力によるゴリ押しは如何にかできるレベルではある。
相手が並ならば。
現場に出ない代わりに技能の充実を図りもしたが・・・
殆どが漫画の受け売りだったり、
夢幻会のヲタク共の会話を参考にしたりと、あまり口に出せないのが多い。
彼女自身が出撃するとなるとヒヨコに戦車を用いるようなモノなので、対外的にもよろしくは無い。
夢幻会メンバーが集まり、九曜葛葉自身も合流した後、ものは試しと運動能力を図った時の表情は忘れがたい。
どの競技、どの記録を計測しても世界新記録を樹立してしまうくらいに凄い。
本気を出しておらず、軽く力を込めただけでこれなのだから、体力自慢の夢幻会メンバーも呆れて笑い声も渇いていたという。
話を戻す。凄惨な戦闘を見ていた天皇陛下であったが、さすがに居た堪れなくなり九曜に映像を切る様に命じた。
いかに精神的に強くとも、人が死ぬという場面は堪えるものだ。
一緒に見ていた皇女陛下も顔を青くしている。
「大丈夫ですか?」
「・・・よい。」
大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせているのを見て、九曜は二人に部屋に戻るか尋ねたが首を振られて終った。
「これは朕も認めた事。故に最後まで見届ける義務がある。」
この方は、一度決めた事は決して曲げない。やると言ったら最後までやる。
それが悪い事ならば誠心誠意謝罪をする。そう言う御方であり、九曜自身も若いころから振り回されているが、対した苦ではなかった。
しかしそれでも無茶はして欲しくないと思い。もう無理だと判断したら、強制的にでも部屋に返そうと意思を固める。
再び現場の分体と意識を繋げて巨大銅鏡に映像を映し出す。
「皇女様も、あまり無理はしないでくださいね?」
「む、無論だ・・・」
気丈に返すが、顔は青ざめている。それでもなお視線は外さない。こういう所は親子そっくりだ。
内心で微笑みを作り、外面は冷静は表情を作って置く。これは転生前の首相時代に培われた技能。
何処でも通じるけど、両親と子供達、そして操を立てている夫には通じなかったが。
銅鏡内では回避を続ける戦艦が映っている。現在は第一打撃艦隊を写しているから旗艦の【紀伊】だろう。
上手く回避し続けており、大きな損傷はない。
仲間が無事という事実に、少しだけ安堵した。
このまま何事も無ければいいと思う反面、絶対になにか起きるという確証がある。
これは九曜の能力である【予知能力】の御蔭でもあるが、本来の性能とは変質してしまっていた。
当初能力を得た当時は便利な能力と言う感じで、使い勝手が良かった。
敵の攻撃を読み取り、逆に攻撃が外れてしまう軌道を見たりするのに重宝したのだ。
何しろ九曜葛葉は素の状態だと優秀とはいえない、寧ろ平凡により。それなりに・・・まし程度かしない。
近接攻撃よりも遠距離攻撃、援護射撃の方がメイン。
弓矢鉄砲はもちろん、スリングなどの投擲武器を多用し、近接攻撃は飽く迄防御か時間稼ぎ。
実の父も「前に出るな。」と言うくらいだったと言う。
そこに転機が訪れ、強大な力を手に入れてしまった。
なりたての頃は力の制御が覚束無く、頻繁に茶碗など日用品を破壊していた。
制御が出来ないじゃじゃ馬を連れて行くほど父は甘くは無く、怒鳴られるように言われてその間にニャンニャンしたら子供を儲けてしまった。
そして次女が誕生した際、【予知能力】が暴走。
僅かな先の未来を見る能力が、遥か先の未来を見る能力に変貌していたのだ。
そして、この能力が飽く迄も“悲観的思考”によるものだとわかってしまった。
未来を知るというのは誰しもが夢見るが、見ている者達からすれば予定通りに進むゲームの様な世界でしかない。
それが悲劇で終ると言うのは、どうしても受け入れる事ができなかった。
ましてやそれが、“自分が何もしなければ必ず起こる、文明崩壊レベルの大災害”ともなれば、動かなければならない。
一度だけ、試に監視程度にしていたら未曾有の大噴火が発生、大急ぎで対処しなければならなかった。
その【予知能力】だが、パターンは二種類のみ。
208: 影響を受ける人 :2017/09/21(木) 21:33:37
徐々に予知の風景が鮮明になっていく、時間経過のパターン。
災害が起こる1時間~30分前に、いきなり見せつけられるパターン。
今回は前者の予知が起動していた。どうにもこうにも自分の【予知能力】は、転生した自身に影響されている様にしか見えない。
時間時空を飛び越えた魂の移動。影響がないとは言えないだろう。
ただ、見ている時間が常に眠っているか、暇な時ではなく。仕事中に見る事もある。今回の様に。
「ぐっ!」
急激な頭痛が九曜に襲い掛かった。それは慣れ親しんだ痛みであり、最も感じたくない感覚。
― 蒼い空、碧い地面。
― 視線の先、青い地平線の先から黒い怪物が進んできた。
― 大きい怪物と小さい怪物が、世界を赤く染めながら、黒い煙で世界を覆う。
― 防人の盾が立ち向かう。双方が接触し、御互いを喰らいあう。
― 突然、後方からこの世のもとは思えない咆哮が上がった。
― 視線を後方に向ければ緑の山岳が崩れていく様が見える。
― それが禍々しく、黒い太陽の様であり、全てに等しく死を与えていた。
― 燃える、燃える。全てが燃える。
― 黒い太陽は逃げ惑う者すべてに等しく死を与える。
― 再び咆哮が上がり、世界を焼き尽くす。
― 全て。
ようやく鮮明になった予知は、相変わらず不鮮明なくせに脅威を強く主張してくる。
(くそったれ! 俺は富永じゃないんだぞ!!)
ついつい男口調の罵声を内心で吐きつつ、短くも強く刻まれた内容を反芻する。
気になったのは黒い太陽。
今まではっきりとしたイメージではなかったそれが、はっきり見えた。恐らくそれが、自分が対処すべき事柄。
そして後ろからというイメージは、別働隊がいるという事だ。
あれほど恐ろしいほどの規模を動かしておきながら、更に別働隊を編成し、見つからずに移動する事が脅威だ。
最初からそうだったのか、偶然そうなったのかわからない。
どちらにせよ。現場の人間達に言っても対処は出来ない。
酷い頭痛の余韻を振り払うように頭を振るい、天皇陛下に急ぎの用事が出来た事を告げようと顔を上げた。
「九曜よ・・・ 今のは?」
「ぇ・・・ あっ!」
呆然とこちらを見ていた。そして気が付く。自分の手が銅鏡に添えられていた事を。
この銅鏡は九曜葛葉と、当時の陰陽士・導術士が天皇家に献上するために作った一品。
当時の技術全てを用いて作った最高級品であり、高性能投影機でもある。
それこそ、触れただけで心の映像を投影できるくらいに。
そして今、タイミングよく見せつけられた予知の映像が、最悪なタイミングで起動したのだった。
内心で苦虫を噛み潰し、顔は平静を保つ。
しかし、ショッキングな映像を見ていた両陛下は顔が青ざめたままだ。
無理もない。黒い太陽が燃やしていたのは・・・臣民なのだから。
「陛下。」
「行くのか?」
説明をしようとしたが、すでにわかっている様子に苦笑してしまう。
「これが、私が生きる意味ですので。」
「あれほどの厄災。払えるか?」
「払わねば。この国は、まさしく業火で焼き尽くされるでしょう。」
「そうか・・・」
目を瞑り、小さく息を整えると陛下は真っ直ぐに九曜を見る。
「侍従長九曜葛葉よ。」
「はっ。」
「この国に迫る厄災を払うのだ。」
「心得ました。」
短くも、しっかりとした指示を受けて一礼し。この部屋から出て行こうとした。
その背中に、
「九曜! 待っておるぞ。必ず生きて帰るのだぞ!」
皇女声を受けて少しだけ振り返り、「わかりました。」と言って出て行った。
外に待機させていた護衛巫女たちに手短に命令を与え、八尾の分体を生成していらない服を脱いでは渡していく。
「お前はそのまま護衛に入れ。繋がりを切っても一月位は大丈夫だ。」
「本体も心配性ですね。昔ほど暗殺の手合いは有りませんよ?」
「どちらかというと皇女陛下の御守だ。心配をかけるからな。」
「心配をかけることが前提ですか。」
「怪我をしない戦場など何処にある?」
「ごもっともで。しかし、前世では机と椅子に向かていて、特に銃は握っておりませんが?」
「お前・・・」
自分で作り出しはしたが、あまりにもペラペラしゃべる為にげんなりする。
不機嫌な視線を向けられた分体だが、まるで辻正信のような胆力でもってニコニコ笑う。
209: 影響を受ける人 :2017/09/21(木) 21:34:27
「呆れてどうするのです? “陽気”に“嫌味”に“お喋り”な私として設定したのは貴方ですよ?」
「わかっている・・・ ただの自己嫌悪だ。」
分体を生成するにあたって、なんだかんだ言いつつも信頼している人物の模倣なのだから仕方がない。
本人が聞けば憤慨すること間違いなしだが。
外の庭に出ると大きく体をほぐす。ついでに小さくしていた尻尾を元の大きさ、大きく長いものに戻した。
「では、行ってくる。」
「夢幻会の方には?」
「・・・詳細は言わなくていい。差し迫った時の対応は「“アレ”が行うと思われます。何時ものごとく」そうだな。」
軽装になり、十分動かしやすくなった服装。武器を持たず、ウィッチの代名詞ともなったストライカーユニットも無い。
銃器も持たずに戦場に赴く姿に、軍人が見たら絶対に静止するであろう。
しかし九曜葛葉には不要。寧ろそれこそが足かせとなる。けして下手だからではない。
足を曲げ、ググッと姿勢を低くする。そして軽く、静かに地面を蹴って垂直に上昇していく。
一蹴りであっと言う間に100メートルほど上昇した。それを何度も行い高度を稼ぐ。
ある程度高度を上げると、今度は背中側にシールドを張り、自らの体を吸着させて固定。
今度は本気の蹴りで上ではなく、前方に向かって自分を発射した。
同時に自分の体を更に強化し、円筒状のシールドを後方に展開する。
その円筒状のシールドは、倉崎翁などといった技術職が一目見ればわかるくらいジェットエンジンに酷似ている。
速さを追求した結果、おのずと似ている構造になったのだ。もっとも、燃料は己の魔力だが。
蒼白い閃光と共に加速していく。音速領域まで加速できるが、さすがに爆音をまき散らすわけにはいかないので、静穏シールドで覆っておくことを忘れない。
このまま直感を頼りに向かう・・・わけではなく、各地に散らばって配置している分体に念話を繋げた。
(分体各自に通達。予知が発現した。場所は不明だが、現在連合艦隊が迎撃している地点ではない事はわかる。
迂回していのだろうな。変に知恵があると厄介極まりない。)
『こちら北九州チーム、了解しました。順次海上に出ます。』
『こちら沖縄チーム。泡盛どうしますか? 陛下が作ってとお願いしていた奴なんですけど。』
『いや、それ。顔が通じる地元民に渡してきなさいよ。あ、こちら中国地方チーム今から出ます。』
『あー・・・中部チームです。行方不明になっていた猟師を発見して保護中。一名残してすぐに向かいます。』
『えー北海道チームです。皇女陛下が所望しているトキシラズを探索中。行けません。』
(『『『『いや、中断しろよ!!』』』』)
『関東チーム。護衛を選抜でき次第、急いで向かう。』
『東北チームだ。くくく・・・我の眼から逃れはせんのだ!!』
冨永設定は一応優秀なんだけど、厨二病発言が自分で言っているようで頭が痛い。
しかも自分が知らない語録を引っ張り出してくるし、任務ほっぽり出して横道にずれるのが痛い。
他にも各夢幻会メンバーの性格を模倣したのがゴロゴロいて、全員本人からツッコミが入りそうだ。
その事を思うと少しだけ微笑む。しかしすぐに真一文字に口を戻す。
そして力の開放を行った。
それは若本徹子同様の変化をもたらしたが、印象はだいぶ異なる。
徹子の方がより獣らしくあり、九曜の方が人に近いと言って良い。
それでも両足は獣そのモノに変化し、両腕は肥大化して延長され、爪はより硬質になって伸びた。
いたるところから白い毛が出ているが、腹部・胸部・顔面は覆われていない。
尻尾も長く伸び、太く、まるで蛇のように蠢く。
最初から本気で殲滅する気である白き獣が、扶桑海を目指して飛翔していった。
誰にも見られない、たった一人の戦場。この世界に生まれ、この姿となってから当たり前となってしまった。
感慨も何もなく、敵意を静かにたぎらせていく。
「障害は全て潰す。そうだ。それが、私が“今”生きている理由だ。」
呟きを聞いた者は誰もいない。分体も、何者も。
以上です。
長らくお待たせしてしまって申し訳ない(涙
これも、マイナスばっかりつくるん部署が悪いんや!(八つ当たり。
最終更新:2017年10月11日 13:45