333: 第三帝国 :2017/10/29(日) 21:48:25
衝号抜きの太平洋戦争ができたので投稿します

334: 第三帝国 :2017/10/29(日) 21:49:31

「そうか、終わったか」

――――宮城にてとある人物の呟き。



「サレド驕レル者ハ久シカラズ。
 東郷元帥閣下曰ク、勝ツテ兜ノ緒ヲ締メヨト」

――――嶋田繁太郎総理、停戦に際して国会で演説する。



「史実が終わり、歴史が始まる」

――――辻政信大蔵大臣、夢幻会の会合にて。




衝号抜きの太平洋戦争~第28章「ロンドン講和会議」


日米の戦いは太平洋を主戦場としたため太平洋戦争と呼称されることが日本では多いが、途中から英国、そしてドイツが義勇軍枠で大西洋で戦ったため両洋戦争とも称されている。
そしてアメリカが停戦に合意し戦争が終結したのはロング大統領が自決した3日後の8月28日であり、
日本ではこの日を戦勝記念日として21世紀に至るまで祝日としている。

閑話休題

停戦に合意してはい、そうですか。では終わらない。
問題は勝者と敗者がいる以上その後をどうするか話し合わねばらず、戦勝国である日本の首都で講和会議を行う権利を有し、それを行使する必要がある。

しかしアメリカと東京の距離は遠いため、同盟国として縁を回復した英国の首都ロンドンで講和会議を行うことが決まった。

そして講和会議について・・・。

「これ機会に1939年以来の世界大戦の総決算、すなわち戦後秩序について話し合いたい」

と日本政府は談話を発表。
この問いかけに対して各国は様々な形で賛同を表明。
真っ先にドイツ、さらにドイツの同盟国であるイタリア、ヴィジーフランス。
日本と準同盟国ともいえる地位にあるフィンランドを筆頭とした北欧諸国に加えソ連も会議に参加することになった。

結局、欧州主権国家の大半に、南米の一部もオブザーバーとはいえ参加した世界的な会議となった。
そして後世では第二次世界大戦後の世界秩序を決める契機となったので20世紀のウェストファリア条約としばし例えられている。

しかし、例外があった。
そこにアメリカと同じ戦争の当事者である中華民国の姿はなかった。

なぜか?
張学良は1942年の12月8日に北京から逃亡する最中に列車ごと爆破され死亡。
悪いことに主な幹部もその時に死亡しており、その後の後継者の継承は完全に失敗。
おまけに国民党と共産党、さらに他の軍閥との戦乱でもはや中国を代表する組織は消滅したと各国は判断したからだ。

そして講和会議でも中華民国の消滅が確認され、
大陸は民族自立を名目に福建共和国、華南連邦と大小様々な独立国家が正式に誕生。
統一された大陸、という中華の夢は夢で終わりさながら五胡十国時代のごとく細かく分断されるに至るのである。

話を会議に戻すと9月後半に始まったこの会議主導権を握ったのは日本の嶋田総理、次いで英国のイーデン首相であった。
会議に先立って嶋田総理とイーデン首相は共同でアメリカに対して第一次世界大戦でドイツに課せられたような法外な賠償金は一切要求しないと宣言。

335: 第三帝国 :2017/10/29(日) 21:50:41
代わりに戦争の勝敗を分かりやすく示すために軍艦など分かりやすい兵器、さらに各種工作機械等、海外利権、特許、領土等を以て賠償とする。
加えてかつてヴェルサイユ条約第227条で皇帝ウィルヘルム2世を戦争犯罪者として追訴したような特定の個人に対して戦争責任を問わない。
と提示したことで会議はホッとした空気が流れた。

これにロング大統領の自殺で大統領となったハリー・S・トルーマン大統領は、「寛大な処置に感謝す」とコメントしたことで会議で支配していた緊張感が解かれ、活発に議論を交わす切っ掛けとなった。

とはいえ会議は大方の予想通りアメリカにとって厳しい内容が突き付けられた。
まずは海外利権であるフィリピンのアメリカの影響を排した完全独立にグアム、ハワイ諸島などの領土放棄。
次いでメキシコ、満州で有してした利権の放棄とこれまでアメリカが築いてきた成果の全否定に等しい代物であり、いくら100年単位で課せられる賠償金が課せられないとはいえ、アメリカにとって納得できないのは当然であり議論は沸騰した。

が、トルーマン大統領はすでにアメリカ国民が戦争に疲れている事実を把握していた。
加えて徹底抗戦すれば日本は更なる原爆の投下で答える事は確実であり、交渉で幾つか修正を得た上で受け入れた。

  • フィリピンの完全独立を認める。
  • グアムでの主権を放棄し大日本帝国に譲渡する。
  • ハワイ諸島はミッドウェー等の島を含め以後ハワイ共和国として独立する。
  • ハワイ共和国は今後大日本帝国の保護国となる事を認める。
  • アラスカでの主権を放棄し、その領土を大英帝国と大日本帝国に譲渡する。
  • 海外で有していた利権、特許を格安で売却する。
  • 賠償金として指定された軍艦など各種兵器、工作機械を提供する。
  • 日系人の意図的な虐殺について共同で調査しそれに協力する義務を負う。

領土はグアム、アラスカを完全に喪失。
アメリカが独立して以来初めて領土を失った瞬間であった。

しかしハワイ諸島は日本の領土とならず独立させた上で日本の保護国化。
海外で有していた利権と特許は格安とは言え売却、という形で持って行ったアメリカの交渉術の高さを証明していた。
日本と英国が降伏ではなくあくまで停戦相手として交渉してきたのを最大限生かした結果である。

とはいえ、この会議に参加した国々は改めてアメリカが戦争に負けたことを確認。
戦争責任こそ追及されなかったが、日系人の意図的な虐殺を根拠に責任者の追及が始まるのは確定。
国家の象徴である軍艦に経済の再建に欠かせない工作機械の引き渡しなどアメリカにとって厳しい内容ばかりである。

336: 第三帝国 :2017/10/29(日) 21:51:43
また会議の最中で東に分裂した「アメリカ共和国」と南の「アメリカ連合」の扱いも日英は再度国家として承認すると発表。
世界的な覇権を握るであろう国家が消滅したのを会議に参加した国々は見届けることになった。

以後、アメリカは三国志のごとく3つに分裂したの状態が継続することになり、アメリカ本土で受けた被害の大きさもあって覇権国家的な思考がアメリカ人の中で忌避され、「大草原の小さな家」的な世界観とともに内向き、保守的なものとなり、覇権国家から離脱した。

そしてアメリカと日英の間で交渉が纏まったのを契機にいよいよ1939年以来の世界大戦の総決算、戦後秩序について話し合いが始まった。
とは言え話し合いは平和的には進まず、日本、英国、ドイツ、さらにはその他各国の間で当初から激論が交わされた。

アメリカは国家分裂が確定した上にソ連と並ぶ敗戦国ゆえに静かであったが、特に欧州で「勝ち逃げ」を果たしたドイツが日英同盟を筆頭に現在日本だけが有する核兵器について深刻な疑念を表明。
ドイツはアジア、北米における日本の権益について認めるが欧州に対して影響力を行使するのは到底認められないと反発。

対する日本は欧州枢軸連合が解体されれば考えても良いと回答。
加えてナチス党が現在行っている各種人権侵害について反省すればなお良い、とけんか腰の対応で答えた。

結果、当然のごとく嫌味や非難の応酬が日独の間で発生。
ヒトラーが「いつまでも日本だけが核兵器を持っているとは思わないように」と恫喝すれば、嶋田総理は「アイスランドにはアメリカを焼き払った『富嶽』がすでにいることを忘れないように」と脅迫し返す光景が誕生した。

このまま会議が暗礁に乗り上げてしまうのでは?
そんな空気が議場の間で流れでした時にこれまで沈黙を保っていたムッソリーニ統領が発言。

曰く、細かい点に拘るのではなくまずは各国が共有すべき基本理念を決めるべきである。
イタリアの提案として第二次世界大戦における戦争責任を個人、及び特定の国家に対して追及せずを基本理念としたい。
また次の戦争を止めるために各国首脳の間で定期的な会議を開催し、首脳同士が直接連絡し合える通信網の構築を提案する。

議論が停滞していたことに閉塞感を感じていた各国はこれに賛同。
細かい議論は後にして先に大枠を決めるのが先決である、という雰囲気となった。

対してどう聞いても前世であった主要国首脳会議にホットラインの概念を有したイタリアの提案に対し、聞いていた嶋田総理以下日本の官僚が「何が変なものでも食ったのか!?」と内心で驚愕していた。

とはいえ、反対する理由はないため日本も賛同を表明。
これにより戦後秩序の基本的な理念が決まり各国はこれをベースに議論を深めてゆくことが決定した。
初めに提案したムッソリーニ統領の個人的な名声とイタリアの名誉が高まったのであった。

しかし、議論はまだまだ始まったばかりで戦後秩序の構築という大一大事業はこれからが本番であった・・・。





おわり

337: 第三帝国 :2017/10/29(日) 21:57:21
以上です。
相変わらず突っ込みどころ満載ですが笑って楽しんでいただけたら幸いです。
恐らく次回こそが本当の最終回となるはずです。

では


追記
神崎島ネタは少々お待ちください

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最終更新:2017年10月31日 20:32