838: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:35:59
大陸SEED支援ネタSS GUNS OF THE AFRICA for ZAFT
激しい発砲音が大地を震わせていた。
それは、毎分2000発のハイペースで打ち込まれる128mmの弾丸がもたらす破壊と、火薬の炸裂音だった。
砂漠に並べられたMSを模したターゲットは、高速でばら撒かれる徹甲弾に撃ち抜かれて消し飛んでいき、着弾した弾丸は激しい砂ぼこりを巻き上げていく。それは、ジンの主兵装である76mm重突撃銃とは比較にならないものだ。
「ぐぐぐぐ……!」
そのガトリングガンを装備したMS--ジン・オーカーのコクピットの中で、パイロットは歯を食いしばってその衝撃に耐えていた。
圧倒的な破壊をもたらす反動は、当然の如くそれを持つMSに襲い掛かって来るのだ。先程から操縦桿はがっちりと握っており、うっかりでも手放さないように注意を払っている。
「!?」
アラート音が響く。銃身過熱だ。レッドゾーン(危険温度)こそまだ遠いのだが、イエローゾーン(注意温度)に到達している。
同時に、OSが自動的に発射レートを落とし始めた。機体に伝わる振動がいくらか緩み、モニターを焼き尽くしそうな発火炎が小さくなる。
ちらりと記録用モニターに目をやれば、きちんとログが記録されているのが見える。安全装置は問題なく動作しているようだと確認し、徐々に引き金を緩めていく。そして、徐々に弾丸が吐き出されていくペースは落ちていき、気の抜けたカラカラという音だけが、銃身を束ねたガトリングが空回りする音が外部マイクに拾われて耳に届く。それもやがて静かに止まり、完全に停止した。
「ふぅ・・・」
安堵の息が漏れる。
安全装置が問題なく動作するかどうかのテスト。それも、あえて高温の砂漠に数時間以上放置した上で試すという、
人が生活し生産工廠として最適化されたプラント本国では難しい耐環境テストだった。アフリカに降下した直後の数多くのトラブル、そしてそれを解決するまでの試行錯誤の過程は、決して少なくはない痛手をザフトへと与えていた。
銃火器の暴発や不具合は、それの最たる例である。ザフトの設計や予測を超えるレベルで損耗し消耗する過酷な環境は、ある意味では連合軍よりも恐ろしい。優秀なはずのコーディネーターが作った兵器は、その安全性や信頼性は大きく揺らいだのだ。
「射撃テスト終了。これより帰投する」
『こちらCP了解』
帰投を伝え、ジン・オーカーはそのガトリング砲を抱えたまま歩き始める。
重装備をしているだけあって、ジン・オーカーの機動性は最悪だ。
その前後を護衛機が固めているのも、襲撃を警戒してというより帰投中の事故を心配してのものだ。
下手に転ぶと、この銃装備を廃棄しなければならなくなる。それほどまでにこのXMA-D988S ヒッポパーラマス128mm対MS掃討用重ガトリングガンは重く、かさばる。これをうっかり落としてしまうと持ち上げるのにも一苦労であるし、下手をすると壊れるかもしれない。まだまだ、このガトリング砲は信頼性が低いのだから。
しかし、とテストパイロットは思う。これを試験して配備するのは間に合うだろうかと。
控えめに見ても、以前連合軍と激突した時はかなり苦戦した。勝ちはしたのだが、損害が大きかった。
今その損害の埋め合わせに必死になっていると聞いているが、それが影響しないだろうかと思う。
(俺の考えることではないかもしれないが……)
重たい装備を持ち直させながらも、パイロットは一抹の不安を覚えていた。
自分が考えるべきこと、即ち、あの連合のMSとの戦闘のことだ。
このジン・オーカーの反応性は通常のジンよりだいぶ鈍い。護衛機が常に張り付けるとは限らないのだ。
この重装備だから、懐に飛び込まれたら抵抗のしようがない。手放したうえでフェイルセーフを手に取って迎撃。
さて、どれだけの時間が必要だろうか?間に合わないかもしれない、と思うのはあのゴブリンとかいうMSと戦い、その俊敏性を理解しているからだろう。こちらが銃火器で武装しているからと言って、必ずしも安全とは限らない。
「おっとっと……」
失いかけたバランスを、咄嗟に立て直す。
少し不吉な予感がするのは気のせいだろうか。
砂漠はいつものように熱く、そして過酷だった。
839: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:36:52
「悪くはない結果だ。だけど、ねぇ……」
端末に表示されたテスト結果を眺めながら、アンドリュー・パルドフェルドは苦い顔を隠さずにいた。
XMA-D988S ヒッポパーラマス128mm対MS掃討用重ガトリングガンのテストは、パルドフェルドも把握していた。
というか、自分の要望で制作を依頼したのだ。先日やっと届けられたそれはすぐさまテストを実施しており、分析官たちの分析を行ったうえで自分に報告が上がって来た。だが、その苦労に見合わないと、判断せざるを得なかった。
「不満があったのですか?」
そう問いかけるのは、副官のマーチン・ダコスタだ。
彼もまた報告には目を通し、その威力と射程、戦術的な利用価値には納得していた。
壊れているとはいえジンを標的とした試験でも高い威力を実現していたし、これならば連合のMSに優位を保てると判断していた。
だが、それでも上司は満足できていない。それに少なからずダコスタは疑問を覚えていた。
「うん。76mmじゃあ威力不足っていう指摘は理解できるし、弾丸の口径を置きくして装薬を強化して、銃身を長くして射程を伸ばすという考えは悪くないさ。でもこれだと必要なところに持ち込むだけでも精いっぱいだ。
陣地防衛用として正しくはあるんだろうけど、ここまで小回りが利かないというのも問題さ」
「敵MSの掃討用ですし、これくらいは必要だとおっしゃったのは隊長ご自身では?」
「そうなんだけどね。ここまで威力を追求しろと言った覚えはないんだ。いや……」
パルドフェルドは一度カップの中のコーヒーの液面をじっと眺める。
たっぷり2分は使って、ようやく答えを導き出したのだが、その顔は晴れやかではない。
「これは僕の落ち度だね。個人ルートで開発するってことのリスクに目をつむったんだから」
「個人のルート、ですか?」
「うん。報告を握りつぶされるかもしれないと思ってね。結果は案の定。多分、技術屋も悩んだ結果だろうとね。
表にできないルートの情報を元に開発する以上、既存の製造ラインを公には動かさず、公の資源を利用できず、試験されて余っていたものを再利用したんだろう。結果、要求とのずれが大きくなったものを送り出すしかなかった」
嘆息しながらもパルドフェルドは自分の予測を述べる。
「でも、よくやってくれたよ。少なくとも、これをまともに喰らえば効果は期待できる。
この重量だからバクゥあたりに背負わせるか、それともザウートに持たせて危険を承知で前線に赴かせるか……悩みどころだね」
「どうします?」
「とりあえず、76mmとの弾薬の共通化を検討しておいてくれたまえ。
装備を軽くして使いやすくするのも必要だ。既存の重突撃銃よりはましになるだろうしね。頼んだよ」
「了解しました」
ダコスタが退出していくのを見送り、砂漠の虎と呼ばれた指揮官は背もたれに身を預ける。
先の大規模戦闘の被害の埋め合わせは、残念ながら進行がだいぶ鈍い。少なくとも序盤の時の勢いはない。
恐らく本国も大わらわなのだろう。自分の送った要望を無理やりでも実現してくれた技術屋達には本当に頭があがらない。
次の反抗作戦が来るまでに、最低限の戦力は揃えられるだろうか、という不安がある。
目を閉じると、やたらといい動きをしていた2体の、否2機の子鬼(ゴブリン)が浮かんでくる。
多くのバクゥとディンを蹴散らした子鬼。否、あれは子鬼というより立派なハンターというべきだろう。
獲物の習性と危険性を理解したうえで、戦いを挑んでくる。
あれ以上のMSが与えられ、連携と度胸で襲い掛かってきたらこちらは、ザフトは大丈夫だろうか?
エース級を割り当てるべきというのは当然の流れだ。負けないという自信はいくらかある。五分に持ち込めるだろうと思える。
(だが、結局は五分だ)
現在補充が進められている兵器や兵士にしても、ドクトリンにしても対MS戦闘とは言えない。
MSを先んじて導入したからこそ、MSを相手取ることにかけては不慣れなのだ。
先の戦闘のパイロット達の生き残りが多くはないため、対MS戦闘をこれから仕込むにも時間がかかる。
そこまで考えて、いったん考えをやめた。
「よぅし、すこしブレンドを試してみようか。疲れているとネガティブになる」
務めて明るくいってみる。
だが、空元気であることは隠せない。
少しのむなしさと申し訳なさは、パルドフェルドの胸中に残り続けていた。
840: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:37:34
<メカニック紹介+ザフト試作兵器設定>
〇ジンオーカー・アームドテストタイプ
形式番号:TMF/XS-3A
全高:ジン・オーカーに準ずる
基本重量:78.2t
動力:バッテリー+専用ガスタービン発動機
装甲材:ザフト汎用装甲材(仮)
武装:
MMI-GAU2ピクウス 76mm近接防御機関砲ポッド×1
MMI-M7S 76mm重突撃機銃
XMA-D988S ヒポタース128mm対MS掃討用重ガトリングガン
他、ザフトのMS用武装の搭載が可能
概要:
アフリカ戦線においてXMA-D988S ヒッポパーラマス128mm対MS掃討用ガトリングガンのテストに用いられたMS。
ベースには同戦線において利用されていたジン・オーカーが利用されており、同ガトリングと弾倉をバックパックに搭載し、火力支援を行えるように仕立てたものである。
重装備になったために脚部系統と関節部の耐久性は向上させてある。また、大型のスタビライザーと機体固定用の折り畳み式簡易脚部を各所に追加することで、大型の銃火器であるヒポタース使用時のバランスを維持できるように工夫がなされている。
火力は非常に高いのであるが、重装備になっているために非常に動きは鈍重で、機動戦闘に関してはほぼ度外視されている。
その為護衛MSと弾薬を運搬する支援MSが必須となっている。これによって運用のコストや手間が非常に大きいと判断された。
また、しっかりとした地面に踏ん張ったうえで射撃を行わなければバランスが保てなくなり、その発射レートの反動で射撃精度が著しく低下するというテスト結果ももたらされている。
将来的には対MS戦における火力支援機としての運用が検討されていたが、上記の理由から数機程度にとどまった。
配備されたそれらは地上戦線において全損している。
841: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:38:32
〇XMA-D988S ヒッポパーラマス128mm対MS掃討用重ガトリングガン
スペック
銃身全長:11.2m
基本重量:12.8t(全備重量:20.2t前後)
装弾方式:ベルト給弾方式
作動方式:電気回転ドライブ方式
発射速度:毎分3000発(可変)
使用銃弾:試作128mm対MS徹甲弾
概要:
ザフトがゴブリン対策のために開発し試験配備したガトリング砲。
既存の重突撃銃での効果が低いと判断され、さらに数の優位を生かしてくるゴブリンに対して有効な武器はないかという要望に基づいて試作された。
これはアフリカ戦線においてMS「ゴブリン」を擁する連合軍との大規模な戦闘を経験したバルドフェルド隊からの要望であった。
パルドフェルド隊からの要望もあるが、実際にはパルドフェルド個人の持つルートで依頼されたと言ってもよい。
報告を上げても握り潰されるという確信が、依頼を行ったパルドフェルドにあったかどうかは定かではないが、その研究・開発・試験配備が大規模でなかったことから察するに、内密に試験導入された可能性が高い。
性能としては対MS戦闘に投入することを前提としている。
連合のMSを確実に撃破するために試作された対艦徹甲弾を採用。
改良された炸薬と長いバレルを採用することによる射程と威力の強化と合わせることで、重装甲にしたMSが相手になっても数発で擱座乃至撃破に至らしめることができると期待された。
また、専用の三脚や二脚の追加を行うことで対地攻撃だけでなく限定的ではあるが対空射撃にも転用可能であった。
しかし、当然欠点もあった。
まず消費される銃弾がMSが一機で抱えるには多すぎるという点である。これ自体でも相当な重さがあり、スムーズな運用には最低でも2機のMS(ガンナー 給弾役)が必須となることである。また航空機用の対地ガトリングなどと同様に電気回転による給弾が行われる方式を採用しているために実弾兵器ながらもバッテリーを必要とする点も大きくマイナスとなった。そもそも銃弾と本体を運ぶだけでもMSの運動量の増加は非常に大きくなっているので、下手を打つとバッテリーが干上がって使えなくなるという可能性がある。
また、空冷式では間に合わない銃身の過熱を解決する手段としてガス冷却と水冷式が検討されていたのであるが、これもまた運搬物品の増加とそれに伴う運動量の増加を招くこととなった。総合的に見ても、威力は十分すぎるが、必要となる位置に運搬することがとても難しく足かせが余りにも多かったのである。
これの解決についてはバルドフェルド隊でも知恵が絞られたのであるが、対空戦闘や支援砲撃を担当するザウートに乗せるか、機動戦闘を担当するバクゥに搭載するという案しか考案できず、根本的な解決とはならなかった。
アフリカ反抗作戦時には苦肉の策として76mm重突撃銃との共通弾薬へと切り替えたモデルが投入されたが撤退時に放棄された。
その後も南アフリカ戦線とオーブ戦で予備パーツをくみ上げた本銃が使用されたが、こちらも放棄されたとされる。
〇MA-MV02 ビームクロー内蔵型シールド
ザフトが既存MSへのビーム兵器の配備を行うために少数生産したビーム兵器の一種。
ドレッドノートやプロヴィデンスなどに搭載される攻防一体の複合型兵装のプロトタイプである。
こちらはビームクローのテストも兼ねており、地上圏でも安定運用できる格闘ビーム兵器の開発に役立てられた。
配備そのものはゲイツのロールアウトに先駆けて行われていたが、やはり不具合やトラブルが頻発した。
とはいえ、ビーム兵器に関する貴重なフィードバックをもたらしたことは確かである。
842: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:39:24
〇MMI-XD120 試作105mm重突撃機銃
大洋連合及びユーラシア連邦が運用していたMS用の銃火器、所謂ザクマシンガンを元にザフトが試作したアサルトライフル。
自軍の配備する銃の倍近い口径を持ち、実際にジンを容易く撃破したということもあってザフトはザクマシンガンの回収に力を入れていた。
これの解析と自軍装備への反映を行うことで、装備面での不利を埋めることを検討していたのである。
とはいえ、まとまった数が手に入ったのはアフリカの大反抗作戦の前後で、それのフィードバックを行うにはあまりにも時間が足りなかった。
結果、開発できたのは口径を増強させた重突撃銃であり、口径と炸薬の増強分以上の性能向上は叶わなかった。
そして前線配備に関しても既存の76mm重突撃銃などの既存の製造ラインの変更が時間的にも労力的にも間に合わず、本土防衛部隊の一部が間に合わせで使用するにとどめた。
〇MS埋め込み型対艦攻撃ブースター「ダイナミックホーク」
武装:
8連装60cmエリナケウス 対艦ミサイルポッド×6
M69バルルス改 特火重粒子砲×1
75mmガンポッド×4
ザフトが試作した、ミーティアと似たようなMSの拡張ユニット。
元々ミーティアが火力を増強させるユニットというもので設計がすすめられたのとは対照的に、こちらは連合の宇宙艦艇に対して機動力を持って攻撃を仕掛けるという設計で進められていた。
構造としても非常にシンプルであり、大型のブースターを2基とプロペラントタンクを組み合わせたユニットにミサイルポッドと、ジンの重突撃銃と特火重粒子砲をガンポッドとしたものをポン付けしただけである。
そのシンプルさと、完成したミーティアより小さいサイズに由来して、建造コスト自体も非常に小さいという利点があった。
いいことづくめに見えたこれはナスカ級などを仮想敵としたテストも実施されたが、次々と欠陥があらわになっていた。
まず、アウトレンジ攻撃を仕掛けるのは良いが機体の容積的に見てギリギリ往復できるか出来ないか程度の行動半径しかないという欠点があった。
推進剤などを詰めたタンクを追加で装備すれば解決はできるのであるが、そのタンクは耐久性が良いとはいえず、流れ弾が数発当たれば破壊されかねないと判断されていた。元々機体の質量を抑えて加速しやすくするため、コスト低減のための苦肉の策であったが、下手に被弾をした瞬間飛び火して大爆発という危険性があった。
また、速力に関しては申し分なかったのであるが、被弾のリスクを下げるために高速化させた場合、操縦難易度が上昇し、コーディネーターでも少数のパイロットしか耐えられない体への負荷がかかると判明した。
他にも連合の配備する艦艇がMSに対する対応策の一環として対空砲の増強に走ったことが確認され、このユニットの武装であるミサイルの効果が相対的に低下し、尚且つ被弾の可能性高まったのである。
それの改良を行おうとしたところで、モビルスーツ埋め込み式戦術強襲機「ミーティア」の開発が進み、そちらへの研究の注力が決定したことでこの開発と改良は中断されることとなった。
ザフト式のストライカーパックであったミーティアが戦術モジュールとして肥大化したことで、コンセプトや設計思想が似通ってしまい、相対的にこのモジュールの価値が低減したためであった。
ザフトの思想的に少し強いものを大量にそろえるよりも、少数でも圧倒的な質を求める傾向があったが故と言える。
843: 弥次郎 :2017/11/05(日) 17:40:26
以上、wiki転載はご自由に。
よし、すっきり。
あとは短編のネタがまとまったら投下しますかね。
ベース自体は出来ているので、あとは肉付けだけですから、時間をかけてゆっくりやろうかなと。
最終更新:2017年11月11日 10:12