578 :名無しさん:2011/12/26(月) 08:51:56
※韓国の憂鬱
ゲートを通じて憂鬱朝鮮の特使が訪れた時、大韓民国では国を上げて歓迎した。
その歓迎式典において、全国放送されている最中にその言葉は飛び出した。
「我々の朝鮮との統一をお願いしたい」
この言葉に笑顔を崩さぬまま、当初大統領は困惑していたらしい。
だが、大統領が何らかの返事を返す前に、特使は告げた。
「聞けば、ゲートの向こうの日帝も、こちらと同じ日帝と言われているとか」
「その通りです」
これには間髪いれずに返した大統領だった。
そうだ、向こうもまた日帝なのだ……。
「私共もそれを聞いて感嘆致しました。残念ながら我々の土地は二十年前という事もあり、こちらに比べ明らかに遅れております。それ故、統一を申し上げるのは申し訳ないと感じておりまして」
「いや、そのような事はありませんとも!」
そう言われては、こう返すしかない。
「ありがとうございます。ですが、同じ日帝と言うのを聞いて、そうだ、同じ朝鮮ではないか。そう思うと私共も思い切って申し入れてみようと思ったのです」
そう言われて、大統領もまた今度は心より笑顔になった。
成る程、そんな事なら気にしなくていいものを。
「幸い私共は日帝に占領されず、独立を維持する事は出来ましたが、こちらは日帝による占領を受けたとか……是非、一丸となって、朝鮮民族は他に頼らずとも世界に羽ばたけるという事を示そうではありませんか」
「ええ、喜んで!」
両者は笑顔でがっしりと握手し、日本
アメリカを除き初めての同じ国同士の合併の話という事もあり、この模様は世界中に報道された……。
579 :名無しさん:2011/12/26(月) 08:52:28
そして、その感動は韓国に措いては少なくともトップらは僅か一月と経たぬ内に暗転した。
「……もう一度言ってくれ。何だと?」
「は……ゲートの向こうの朝鮮を現在の我々のレベルに引き上げるには最低でも5000億USドルは必要かと思われます……」
顔を蒼ざめさせながら、青瓦台の大統領官邸で首脳部を前にそう答えたのは経済官僚の一人。
今回、特使の帰還に合わせ向こうの視察に赴いた視察団の一人でもあった。
呆然とする首脳部に向こうの朝鮮の映像が示される。そこには舗装もされていない道路、道端に適当に放り出された排泄物、建物はいずれも土で出来た貧相なもので、民衆もどこか疲れたような様子でボロを纏っていた。
しかも、これはあちらの現在の、それも首都の様子だというのだ。
はっきりいって、こっちの世界でなら首都クラスならもっとマシなものになるはずだ。
日帝による占領がなかった為に、インフラへの莫大な投資も何もなかった。その結果が、これだった。
「これでは下手に併合などしない方がいいのでは…」
そう言い掛けた者もいたが、それは別の者によって打ち消された。
「いや、世界中に向けて、併合を宣言してしまったのだ。ここで今更併合しないなどと言ったら……わが国の面子は丸潰れだ」
「ならば、日本に金を出させれば」
その言葉に閣僚らがそれしかないかと頷きかけた時、大統領が首を横に振った。
「……それは出来ん。忘れたか、特使はこう言ったのだ、日帝の力がなくても朝鮮民族が世界に羽ばたけるというのを証明しよう、と……もし、日本に金を出させれば…」
それ以上は言わずとも分かった。
もし、日本の金、日本の技術で事を為せば、どう言いつくろった所で『朝鮮民族単独の』力とは見られない。何だ、結局、日本の力を借りないと出来ないんじゃないか、そう思われるのがオチだ。
そして、一旦金を引き出して事を為せば、最早それを証明する機会は、ない。
そして、調べれば調べる程、事は面倒だった。
独立を維持している、すなわちそれは未だ両班らが、労働を卑しいものと看做す文化を持つ連中がトップに居座り続けているのだ。
その為に費用は余計にかかると見られていた。
かといって、代わりに法を押し付け、両班を排除する事も出来ない。それでは日帝と同じやり方でなければどのみち何も出来ないという事を世界に示してしまう事になる。
「で、では、あの両班らの統治体制を維持したまま……全て我が国が金も人も出して向こうの朝鮮の生活レベルを引き上げないといけないのですか!?」
当り前の話だが、向こうには技術者などいない。
建設機械など持って行っても扱える者などまともにいないのだ。
事ここに至り、誰もが理解していた。嵌められた、と……。
強大な日本帝国に対抗する為の莫大な軍事費の支出に加え、向こうの朝鮮へのとんでもない出費。
韓国の前途を考え、誰もが重い気持ちになっていた。
実の所、これらは憂鬱朝鮮が必死に考えた結果だった。
下手に日帝を刺激してはならない。
もし、日帝を怒らせるような事になれば、どうなるか?
確かに独立は保たれているが、実質的にその保護下にあるようなものなのだ。間違いなく、それに関わった者はかつての憂鬱アメリカとの戦争時同様、証拠すら残さず、けれど確実に『事故死』する事になるのは確実だ。
かといって、平成日本から金を向こうの朝鮮が毟り取ろうとした場合、平成日本を同じ日本だから自分達の取り分と日帝が看做していた場合、やはり危険だ。
日帝の領分を侵さず、日帝に言動を取られる事なく、向こうの朝鮮から援助を引き出す。
その為に、彼らは知恵を絞ったのだった。
……無論、憂鬱日本はそれを理解し、向こうの状況もその優れた諜報機関で把握した上で、全てを見越して沈黙を保ったのだった…。
最終更新:2012年01月18日 22:26