28 :包丁 ◆Cf5EEGrCg.:2008/08/27(水) 23:45:31
今月分のコンドームを買って、薬局の自動ドアを潜って、一歩外に出た時、其処は森の中であった。
一瞬、呆然と立ち竦む。頭が、後ろ後ろっ、後ろを見ろと叫んでいる。後ろを見てみる。
何もない。森の中である。だから如何したというのか。
数分歩いたら、舗装も電柱もない、ただ家と店らしき建物が並ぶ町村に出会った。
電柱がない為、此処が何処か分からない。標識も無い。下水管のマンホールも無い為、市の象徴の確認も出来ない。
とは言え、マンホールの絵なんて、自分の住む市の花の絵しか知らない。結局、マンホールを見つける事は出来なかった。
建物の形も何もかも、不思議な町である。
此処が何処かを示す物を探したが、店らしき建物には漢字・ひらがな・かたかな・アルファベット、どれでも無い。丸と棒の隣国の文字でもない。
その事に幾らか戸惑うものの、恐らくはどんな店か中を見ようと、客を店内に入れさせる商売の術だと考える。しかし、町全ての店が同じ術でと言うことは異様である。
中に入らなければ見つからないとは、再び来たときに道に迷わないかと考える。
横に繋がった文章を、アラブ風に右から読むのか、欧州風に左から読むのか分からないが、店内を除く限り、靴屋であるらしい。
それにしても奇抜なデザインの靴ばかりが並ぶ。もしかしたら靴ではないのかも知れない。靴で無ければ何であろうか。
29 :包丁 ◆Cf5EEGrCg.:2008/08/27(水) 23:46:05
そろそろ汗ばんで来た為、冷房が効いて涼しいであろう店内に入ることにした。
数十秒、店の扉の開け方に苦労するも、中から人が開けてくれた。欧州系の顔立ちを持つ綺麗な娘さんである。
此処は何の店かと聞いてみたが、どうも話が通じていないようである。外国語が一切使えない私は困り果てる。
店内は冷房がガンガン効いている訳ではなさそうで、どちらかと言うと冷房はつけていないようである。
地球温暖化のためか、照明も良く見ると天井の穴から太陽光を店内に入れているようである。店内は入り口付近は日光が石床を反射した光、店の奥の方は小さい穴明き天井からの日光で照らされている。
ただ、影の部分が多い為、外より幾らか涼しい程度。これぐらいの温度差であればクーラー風邪はひかないと思う。
頭の中で否定しつづける夢遊病と言う言葉がそんな時浮かぶ。早く家に帰ろう。
仕方なくジェスチャーで此処は何の店か聞いてみる事にした。自分の靴を指差し、その後、店内に飾られた靴を指差す。
娘さんは自分の靴を凝視していた。店内は土足厳禁……ではないようだが。
確かに私の靴は汚れている。森の中を歩いた為、土が沢山ついていたからである。
娘さんは私の靴から目を離さない。これでは話が進まない為、娘さんの顔の前で手を振った。
吃驚した娘さんは靴を脱ぐようジェスチャーして来た。少々、目的から離れた気がする。
そもそも靴を買う金を持参していない。また、靴を買う為に来たわけではない為、両手を上げて拒否の姿勢をとる。
娘さんは当然の如く首を傾げる。靴を買いに来たのでなければ、何をしに来たと言うのか。
靴を脱げというジェスチャーが恐らく此処が靴屋である事を意味している。
此処は何処かというジェスチャーは、難しい。
忘れていた。一応、言葉で挨拶をする。初対面の相手には当然であるが、その相手が赤の他人である為、少々ぎこちない。
「こんにちは、森から来ました。ここは何処ですか」
やはりというか、当然の如く言葉は通じていない。
今気づいたが、この娘さんは店の主人の息女であるのか、それともロリコンな主人の嫁か、それとも妹か。
ただ、私の前に居続ける彼女は私を困った表情で見ている。如何も難しい。
今時の外国人は日本語を話すが、この娘さんは未だ日本語に慣れていない様である。
相手は何を思ったのか、意味不明な言語で喋りだした。聞いた限り私の知っている単語は無く。何とも私にとっては喋り難い言葉であった。英語ではなさそうである。
こんな時、青ダヌキの翻訳こんにゃくがあれば、とこの現状を楽にしようとする考え方に私は苦笑する。
娘さんは何時の間にか店の奥へと歩いていた。私は娘さんの背中を見送った後、店の外に出る事とした。
店の奥に行き着く前に、娘さんが何処かの部屋へ続く通路の入り口に呼び掛ける。影で暗くなっており、其処が通路だとは知らなかった。
恐らく娘さんの父親か、夫か、はたまた兄か、出来れば日本人が出てきてくれれば良いなと期待しつつ、少し様子を見る事にした。
期待は軽く裏切られた。出てきたのは娘さんと同じく欧州系の容姿の長髪の男性であった。恐らく父兄であろう。
しかし、日本語が達者な外国人である可能性もある。
仕方なく私はその人物にも先ほどと同じく日本語で話し掛ける事とした。
結局、日本語は通じず、日本語通じないのによく店を建てたものだなと内心で悪態つきながら店を出る事にした。
最終更新:2012年01月19日 11:24