464: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:36:11
大陸ガンダムSEED支援ネタSS 「Triumph&Survive」2
- CE70年7月11日 オーブ オノゴロ島沿岸防衛区域 大西洋連邦上陸地点
『こちらサプライ・スカイグラスパー隊Pelican隊長機(リーダー)。
エリアキーパー、聞こえるか?どうぞ』
『こちら揚陸部隊、エリアキーパーのOscar隊長機(リーダー)のウィルキンスだ。
感度良好、どうぞ』
『こちらも感度良好。これより補給物資の投下を開始したい。誘導を頼む。どうぞ』
ウィルキンスがカメラで水平線の方を見れば、空母から発艦したスカイグラスパー隊が見える。
尾部が大きく膨らんでいることから、間違いなくサプライストライカーを装着した補給部隊だろう。
継戦能力を維持するための宅配サービス。接続されたコンテナには武器弾薬の他、電源装置も載せられている。
戦闘をある程度しながらもクリアリングを進めていた自分達にはありがたい補給物資だ。
『Oscarリーダー了解。これより誘導のための発煙筒を焚く。
目安とされたし。どうぞ』
『Pelicanリーダー了解。優しく受け取ってくれ、空から落ちてくる美女みたいにな』
『ぬかせ、ごつい武器ばっかり載せているくせに』
軽口をたたきながらも、ウィルキンスの部下が発煙筒を使用し、着色された煙が立ち上り始めた。
本来ならば危険な行為も、一時的に制圧下に置いている現状ならば問題が無い。
既にオーブ側の航空戦力は概ね叩かれていたし、対空陣地に関しても徹底して潰してある。
比較的低速になってしまうスカイグラスパー隊も、安全に物資を投下できるだろう。
投下開始まで、まだ時間はある。
改めて周囲を警戒しつつ、状況を把握しようと大型通信機を搭載したダガーを操る部下に問いかける。
『ギース、大尉たちは?』
『大尉たちは順調に進行中だそうです。空中管制機がより進出できれば、よりリアルタイムで分かります』
『NJってのは厄介だな……ここで燻るのも性に合わねぇ』
現状、届けられる短いコードでは順調に戦闘が進んでいることと、おおよその現在位置しかわからない。
ウィルキンスとて、ここを維持しておくことが重要なのは理解している。海兵隊あがりなので、上陸戦における役目の重要さはなおさらだ。
普段ならば、揚陸艇なりで大々的に乗り込んでくるのだが、まだそれは出来ていない。多数を投じるために、どうしても行動にはタイムラグというものが発生してしまうのだ。これからMS部隊が上陸してきて、前線を維持しながら制圧を進めるのだろう。
『こちらPelicanリーダー、間もなく投下を行う』
『Oscarリーダー了解』
そして、上空にパラシュートを付けたコンテナが舞う。
まだ、オーブ攻略戦は序盤戦が終わりを迎えつつある段階。ここから更なる激戦が控えている。
それを予感として感じつつ、ウィルキンスはコンテナの確保に乗り出した。
466: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:37:40
オーブの防衛戦線は、すでに崩壊の音を大きくしていた。
大西洋連邦軍との交戦を開始した、というか、奇襲を喰らう側になってしまったオーブ軍は、MSの高速突破を阻止することが出来ないままに、戦線の破壊を許していた。
元々、防衛用の火器や意識が前方、海の方を向いていたのだから、当然である。
勿論、向きを変えて対処を行うという手もある。だが、破壊装置となったMS部隊は、何も直進しかできないわけではない。
通常の兵科ではできない地形の踏破能力を発揮し、予期せぬ方向から、ウィークポイントを的確に破壊して来るのだ。
『Sierra3、Engage!対空陣地だ!MSが2機!』
『吹っ飛ばせ!』
『Sierra1、交戦!』
先手を打って、ビームライフルと機関銃の弾丸の嵐がオーブの防衛部隊を蹂躙する。
航空攻撃への対処をして弾薬を消費し、残弾などの確認を行っていたタイミングを狙っての攻撃。
まともに対処を許されず、ジンとジャンク屋のワークスジンは地面に倒れ伏す。
こちらに背中を丸見えにしていたあたり、後方に意識が向けられていなかったのか。
はっきり言えば、間抜けも良いところだ。
代わりのように対戦車兵器と思われるロケット砲を担いだ歩兵が反撃して来るが、所詮は歩兵用に過ぎない。
MSはその程度の装備で撃破できるほどやわな兵器ではない。
『全く……』
パイロットのSierra2の嘆息と共に、頭部に備えられた機銃が、その歩兵を消し飛ばし、血しぶきに変えた。
飛んできた弾はあっけなく装甲に阻まれ、焦げ目を軽く突ける程度に終わってしまう。
さらに歩兵たちがこちらに武器を構えてくるが、あるいはPS兵がけなげにも武器を向けてくるが、それへの返答は苛烈。3分と経たず、対空陣地は沈黙で満たされる。
そして、放置された対空砲などもビームライフルや機関銃などによって次々と破壊される。
延焼と炸裂、そして火薬の誘爆。土くれと泥が破壊されてグチャグチャになった兵器と共にまき散らされ、地面にぶちまけられる。
あとには負傷兵と爆発の残り香があちらこちらに伺えるばかり。
既に防御を行うための陣地としての能力は、失われてしまったのだ。
『よし、クリア!』
『砲は潰せたか?』
『あとは歩兵と弾薬くらいだな。残りは少ない』
『なら、次に移るぞ』
『了解!』
105ダガーは腰のグレネードポーチからグレネードを投じると、すぐさま移動を開始する。
足を止めてはならない。それは、戦闘の面でも、そして戦術の面でも同じこと。
次から次へと叩き、動き、翻弄すること。それが、強襲揚陸したMS部隊の仕事だった。
『しかし、MSってのはスゲェもんだな』
『ああ、MSから見ると他の兵科が地味に見えるのも納得だぜ、と』
障害物を乗り越え、大西洋連邦のMS隊は進み続けた。
467: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:38:26
他の揚陸艦から上陸したMS部隊が動き回っている頃、ハンターたちも、順調な進撃を重ねていた。
練度の高さと奇襲効果もあって、さらに機動力によって現在位置を把握させにくくすることで、ハンターたちはオーブの戦力を着実に撃破していった。その原動力こそ、エールストライカーだ。
手数が減ることは欠点だが、それでも十分な戦闘力は兼ね備えている。
多少の地形を滑空や跳躍で飛び越えるのにも極めて重宝していた。
しかし、逆に言えばそれが重要になるほど地形が複雑で、通常の進軍に向いていないということでもあった。
そこに張り巡らされたインフラも必然的に複雑であり、総じて攻撃などに極端に弱いのである。
『輸送車両か』
ハンターが見れば、道路には大型の輸送車両が3両ほど止まっている。
前方の道路が破壊されていることから、どうやら立ち往生していたらしい。
いや、破損がみられるあたり、流れ弾によって被害を受けたのだろうか。
『マイルズ、道路の様子はどうだ?』
『車は通れませんが、MSなら大丈夫です。輸送車両に可燃物を積んでいるかもしれないので、注意してください』
一端停止して、マイルズが先の様子を窺う。
ミサイルの着弾で地盤に衝撃が伝わっているならば、下手にMSで進んで崩れてしまうかも知れないし、
一発だけとは限らない。この先の道路や地面が崩れていたら進撃を続けるには些か厄介だ。
エールストライカーを装備しているなら飛び越えられるだろうか。
『マイルズ、一旦飛び上がって地形の確認をしてくれ。
事前攻撃が激しすぎるのも考え物だな……地形データがあてにならなん』
事前のルートとは違うところを進まなければならないことも多々あった。
概ね飛び越えたり迂回することはできたのだが、やはりスムーズな進出には地形の把握を行い、
大きな道路をはじめとした整備された土地を進んだ方が速くなる。事前攻撃は、これを大きく崩してしまうのだ。
だが、進撃がここまで楽だったのも事前攻撃のおかげだ。
そのバランスが重要だな、と思ったハンターはマイルズの飛翔を見送ろうとした。
『!?』
止められていた輸送車両が、突然爆発した。
中に乗せられていた可燃物、爆発物、弾薬に引火したのか、MSでさえもよろけるような爆圧と熱波が襲って来る。
それらと衝撃によってMSは激しく揺れ、爆発の光と煙が視界を覆い尽くした。
咄嗟に、シールドを割り込ませることで衝撃と爆圧を受け流す。脚部はしっかりと地面を踏みしめ、押されないようにする。
一体何が、と思う間を、ハンターたちは与えられなかった。
さしものハンターをして、それは偶然だった。
周囲の状況確認のためにモニターに目を凝らしていたとき、視界に動くものが見えたのだ。
『敵だ!』
必死に、叫ぶ。
数は分からない。
何かはわからない。
だが、警告を発さねばならないと理解していた。
『!?Conta--くぅっ…!』
予想以上の速度で急に飛び出してきたのは、シグー。重斬刀ではなく、大ぶりな、加熱された刃を持つバトルアックスをふり被っていた。
狙われたマイルズはとっさにシールドで防御し、高温の刃が機体に迫るのを何とか阻止する。パワーは拮抗した。
だが、続けて振るわれた右手の湾曲刀---ハンターの記憶が確かならばショーテル--が強かにダガーの胴体を殴る。
マイルズのダガーはそのまま吹っ飛ばされてしまう。コクピットへの強い打撃で、一部がひしゃげてる。
追撃を喰らうと流石にマズイ、とハンターは急いでビームライフルを構える。しかし、先読みされたのか、
構えた時には既に射線から逃れており、こちらに向けて左腕のシールドのバルカンを構えている。
こちらがPS装甲というの把握しているのだろう、狙ったのはこちらの武器であるビームライフルだ。
それが分かったのは、おそらく直感。
ビームライフルそのものは防御性を落としてでも携行性などを優先している。
だが、メインウェポンを失うのはためらわれ、やむなく射撃を中断してライフルをずらす。
マイルズの部下が一瞬迷い、ライフルを向けるが、シグーの方はこちらに向けて推進をしようとしている。
バルカンをこちらに放ちながら迫って来るだろう。確かに多少の格闘兵装は怖くないが、かと言ってダメージが無いわけではない。
468: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:39:54
(…!?)
防御を選ぶか、とハンターが操縦桿を操作しようとした次の瞬間。
シグーの右腕、左足が立て続けに破壊され、シグーがそのまま地面に崩れ落ちていく。
止めとばかりに、崩れたシグーのコクピットにビームの弾丸が撃ち込まれた。
『Tango one down(敵機撃破)!』
ユノーだ。その動きのままに、自分の方へとビームライフルを向け、もう3発発射する。
何を!?と一瞬驚くが、センサーの音がそれは違うと伝えてきた。
だから、あえて動かない。むしろ、動きを止め、構えていたライフルを引っ込ませる。
そして、自分から見て後方で破壊と爆発の音が起こる。
『良い反応だ、少尉!』
『もう一機です!』
さらに飛び出してきたジン。
自分の記憶にある、南米仕様の、カラーリングなどが変更されたジンだ。
こちらも、右手にショットガンを、左腕にはバトルアックスを構えている。
気を付けていたからこそ、すぐさま反応が出来た。
『やらせない!』
マイルズの部下、先程動きを止めてしまったケリーが今度こそ動いた。
ビームサーベルを引き抜きつつ、シールドを構えたまま突っ込んでシールドバッシュを浴びせる。
そのジンは咄嗟に右手のショットガンを放つが、至近距離とは言え、シールドによって強引に防がれる。
そして、シールドを破壊されながらも吹っ飛ばす。もはや体当たりだ。それによって、倒れたジンは、立ち上がろうともがく。
だが、ケリーのビームサーベルがつきたてられ、ジンの脚部が破壊される。
『あとは任せろ』
『お任せします!』
ケリーのダガーが素早く立ち上がって飛びさがったのを見て、今度こそ、ハンターはビームライフルを放った。
それは、正確に胴体を貫通し、破壊しきる。確実に獲物をしとめるという意思の表れ。
まさにそれは、狩人。容赦なく獲物を追い詰め、破壊する人間。
『マイルズ、無事か!?』
撃破の余韻に浸る間もなく、吹っ飛ばされたマイルズの安否を確認する。
数瞬のノイズの後、やっとモニターに映ったのは、力なくコクピットシートに身を預けるパイロットの姿だった。
ヘルメットの下には赤い血の色が見える。どうやら吹っ飛ばされた際にコクピット内部で強く頭を打ったらしい。
『すい、ません…大尉…油断、しまし、た……』
とぎれとぎれだが、声がする。呼吸の音も、そして、身体の動きもきちんとある。
まだ生きている。その事に安どの息を吐きかけるも、すぐにやるべきことを思い出す。
『マイルズ!くっ、ケリー、応急手当だ!急げ』
『了解!』
すぐさま部下が治療のために向かうのを見ながらも、ハンターの意識はレーダーとセンサーに向けられる。
『大尉、このままでは…』
『ああ』
ユノーが言わんとすることは分かる。ここは敵地。
うかうかしていると袋叩き似合う。今攪乱を行っている自分達への追撃も、この間に迫ってくるかもしれない。
動き続けることで捕捉されず、交戦を最低限としてきたが、それが一時的に止まってしまった。
『さあ、ここからだぞ、諸君』
軽口を叩くハンターに、しかし、毛ほどの油断もなかった。
攻勢を緩め、守勢に回らざるを得ない。何故だか、ハンターの悪寒は止まらなかった。
469: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:40:46
『まずいな、どんどん被害が広がってく』
歩兵でいうところのラジオマンの役目をするジンを引き連れたヴィルターは、中継されてくる情報を元に緊張した面持ちで呟く。事前攻撃で消耗した部隊が、MSによってあっけなく崩されていく。
まともな撤退さえ許さない速度での攻撃だ。抵抗を選んでいるのかもしれないが、概ねあっという間に制圧されている。
『長く交戦せずに、すぐに次のところへ移動していますね』
『ああ、極めて正しい判断だ。動き続ければ、こちらも追跡しなくちゃならん……』
最悪振り切られる。
敵は好きなところをゴールとして定められるし、好きなタイミングで引き返してもいい。
地形などからルート予測はできるのだが、MSの踏破能力の高さから断定は難しい。
このまま攪乱を許すわけにもいかない。友軍に無線で警告を発しながら追撃しているが、追いつけずにいる。
『せめて上空を抑えられれば…!』
だが、上空は既に連合の戦闘機や攻撃機にあふれている。
今はいないのだが、それは移動を続けているので補足されていないために過ぎない。
ここに来るまでの間に、かなりの戦力が消えて行った。特に航空戦力は、その損耗が激しかった。
だからこそ、先程から移動しつつも攻撃を仕掛けてくる連合の航空戦力に対して対空戦闘を行っている。
不意打ち気味に狙えば、2,3機は落とせる。だが、その後すぐに散開されてしまい、倒せなくなる。
なので、相手の数が全然減らないのだ。焦りと、弾薬の消費だけが積み重なる。
何時までもこのままとはいかないだろう。必死に上陸部隊を追跡しているが、まだ尻尾もつかめていない。
ここは諦めて、上陸地点の奪還に向かうべきか、と迷う。
『!?今のは何だ!?』
その時、ひときわ大きな爆発が体を襲う。
単なる爆発ではないのは確かだ。
防衛区画の一角から起こったそれは、尋常なものではない。
『隊長、これは……』
『ああ』
ひょっとすると、かもしれない。
音響と爆風の到達時間の差を元にした計算では、案外自分達から見て近い場所だ。
『いくぞ、あたりを引いたかもしれん』
それに異論をはさむ者はいなかった。
ヴィルター隊は、友軍を襲い続ける何者かの影を、漸くとらえた。
470: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:41:48
『やはり、接近してきているな』
輸送車両をトラップとしたシグーとジンの襲撃を潜り抜けたハンターたちは、次なる標的を求め移動していた。
移動をしながらも、ハンターたちは後方に指向センサーで探りを入れていた。
追撃されている。その理解は全員にあった。後方に先程から大きな音源が迫ってきていた。
『振り切れますが、どうします?』
今のハンターたちは、全員がエールストライカーを装備している。
機動力を優先したこのストライカーならば、振り切れなくもないだろう。
だが、とハンターはその進言を否定した。
『逃げ回ってもどうせ追いつかれる。この先の地形で何があるか分からんからな』
大きな岩を飛び越えさせつつ、ハンターは断言する。
『それに、このまま逃げ回っていても消耗が激しくなる。
補給をおちおち受け取れないのに下手に逃げ隠れてしているとこちらが根を上げるしかなくなる。
不利な状況で戦うより、有利な位置で迎撃する方が後腐れはない』
『しかし…大丈夫でしょうか』
吹っ飛ばされた際に頭をうって負傷したマイルズは、生々しく血に染まる包帯をモニター映しながらも問いかける。
武装の消費だけでなく、パイロット達の疲労という意味でもなかなかに悪いコンディションだ。
『やるしかない。諸君、弾を惜しむな。次を切り抜ければ、俺達の仕事は終わりだ。
マイルズ、心配するな。俺達がフォローしてやる。貴様は自分の命を大事にしろ、いいな?』
『了解……』
覚悟を決めろ、という老兵の言葉に、誰もが表情を引き締めていく。
そうしながらも、ハンターたちは前進する。有利な戦場を設定するのは、こちら側だ。
武器のチェックと状況、機体コンディションの情報交換を行いつつ、地形を精査する。
進むこと暫く、程よく遮蔽物と地形のあるポイントに突き当たった。
幸いなことに、やや内陸だったためなのか、事前の航空攻撃や艦砲射撃による被害が小さかったようだ。
『迎撃する。総員、戦闘態勢!』
そして、反転し、ハンターたちはついに武器を構える。
ここからが、本当の山場。追撃部隊を撃退できるかどうか。
全てはここにかかっていると言っても過言ではない。
『コンタクト!先制攻撃します!』
真っ先に動いたのは、ユノーだった。
互いのおおよその位置が割れている以上、隠密性を維持し過ぎる必要はない。
だから、というようにアグニMod.2を放った。オーバーロングレンジでのビームの一撃は、
同じく長距離射撃を行おうとしていたメリルのシグー・ロングアームズを正確に狙い撃っていた。
『きゃっ!?』
だが、それを見てとったオーレリアが、割り込むようにしてロングアームズを吹っ飛ばす。
当然、吹っ飛ばしたオーレリアのジンはその射線にその機体を入れてしまうのだが、オーレリアは器用に自分の機体も反動で吹っ飛ばしていた。
両者の間を、高収束のビームが通過していき、後方の山の斜面に激突して大きな破壊を生みだす。
『ッ!躱されました!』
『反撃が来るぞ、各機備えろ!』
ユノーの射撃を咄嗟に回避した、つまり、ロングレンジ戦闘でこちらをしとめる気だったのかもしれない。
遮蔽物はそこそこあり、地形的にも隠れる場所がそこそこあるのが、ハンターたちが定めようとしている戦域だ。
そこに逃げ込んだうえで、反転して攻撃。だが、相手は予想に反してロングレンジで仕留めようとしてきた。
こちらの機動力に追従してきたことから、銃火器はないだろうという甘い予測によるもの。
それは甘かったか、とハンターは少しばかり後悔する。
471: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:42:32
ハンターの警告通り、無反動砲とミサイルが飛んでくる。ついで、ビームの光条も同様に。
それらを回避、あるいはシールドで防ぎながらも、ハンターたちは態勢を整えつつも前進していく。
距離が詰まれば、一方的に叩かれる状況を回避できる。そのような判断が故だ。
果たして、距離が狭まるにつれて攻撃頻度は上がるが、警戒していた大出力ビーム砲撃は飛んでこなくなった。
代わりに、76mmの弾丸が飛んでくる。シールドをうまく使いつつも、ハンターたちはばらけ、ランダム回避しながら接近した。
『あの時と同じ新型か!』
そして、カメラでとらえたのは、度々南米においても目撃された新型MS。
高い戦闘能力、高い練度、そしてビーム兵器を有するなど高い基本性能。
他にも、先程襲ってきたMSと似たような外見を持つMSと、それをフォローしているジンの改造型が数機。
なかなかの持て成しを受けそうだ、とハンターは人知れず獰猛な笑みを浮かべる。
ヴィルター隊にも衝撃が発生していた。
『2機もいます!』
ヴィルターは、その機体を知っていた。
クルーゼ隊が連合から奪取したMSが、そのように呼称されていたのだ。
また、5機あったうちの1機を取り逃がし、それが地球圏に運ばれたということも。
試作機である、という予想に反し、どうやら量産していたようである。
いや、パナマ攻防戦と北米侵攻作戦後の戦闘詳報でも、同じくGシリーズと思われる上位機が多数報告されていたのだから、ありえないということはないだろう。ザフトでも新型の、ハイエンド機として開発されたMSを量産してエースに配備していると聞く。
特に、パナマ攻防戦では圧倒的優位に関わらず友軍の被害が大きかった。
EMP攻撃を行った後も活動を続けるだけの耐電磁性を持っていたMSのGシリーズが奮戦したためだ。
勝利というにはあまりにも被害が大きく、犠牲が大きなものであった。
最終的な勝利も、戦略目標であった北米への侵攻による大西洋連邦の屈服もかなわなかった。
勿論、MSだけが原因ではない。だが、それでも、そういった高性能機の奮戦が動力源となったのも確かなこと。
その経験則と分から、判断できてしまう。相手は、エースなのだと。
防衛線が凄まじい勢いで突破された理由も、それで説明がついてしまう。
エースの指揮官がついていたからこそ、従う兵士が十全に力を発揮できているのだろう。
『オクトーバー、大丈夫か!?』
『は、はい!』
だから、油断はない。古参のパイロット達は、緊張を極限まで張りつめていく。
あとから合流したパイロット達は、いまいち理解していないのだろう。
如何に彼らをフォローしつつ、撃破するのか。油断すると一瞬で負ける。その予感がする。
『総員、戦闘態勢。確実に仕留めるぞ!』
『了解!』
『戦闘、開始します!』
斯くして、二つの部隊はオーブにおいて激突する。
互いの生存、命、名誉。全てをかけての戦闘。
死力を尽くしての戦闘が、遂に火ぶたを切って落とされようとしていた。
472: 弥次郎 :2018/02/17(土) 19:43:21
以上、wiki転載はご自由に。
あっという間に書けたので投下しました。
メカニックなどの紹介は後でまとめてやります。
まあ、基本的にこれまで登場させた奴ばかりなんですけどね。
最終更新:2018年02月18日 09:33