63: 影響を受ける人 :2018/01/07(日) 22:15:17
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。というか、ほぼメアリー・スー状態です。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
―――“七支禍皇”討伐前 天龍隊―――
「ったく。今まで何していたんだよ。アイツらは。」
「愚痴を言わないでください。自分もそう思っていますから。」
【瑞鳳】飛行隊長である天龍空姫の悪態を聞きながら、副隊長の須藤つばめが何時ものように宥める。
その様子を部下が苦笑してみるのも、何時もの光景だ。だが、連戦により疲労が溜まり、何時ものメンバーではない。
3人ほど定員が足りないし、皆疲労が隠せていない。
それでも救援を求めた相手に対し、何もしないわけにはいかなかった。
『こちらとしても、長距離飛行になるから、さっさと切り上げたい。』
『同感するわ。』
『うむ。』
狛犬隊隊長アナスタシア・ジュガシヴィリ・葛城と、鎌鼬隊隊長の飛龍優花、同隊副隊長の寒衣シキも同意した。
ようやく目標を撃破して、「さぁ、戦後処理だ!」となっていたのに、水を差された形となっているのだから。
「なあスドウ。サボりの奴ら、どこまで戦場から離れたんだ? 戦場からだいぶ離れているけど。」
「ストウです。それはわかりかねます。なにしろ通信さえ聞いていませんし。」
須藤も出撃直前に聞いてみたのだが、結局そんな話は聞かなかった。
これは九曜葛葉の妨害電波を発生させている領域に、安田艦隊が入り込んでしまった弊害。
九曜の秘匿するための努力がこのような事態を発生させていた。
本人に聞けば「まさか、サボる奴が出るなんて想定できるわけが無い。」と真顔で言うこと間違いなしだ。
まぁ、そんな事は知らない一同は微妙にやる気が出ないのか、世間話をしながら飛ぶ。
「そういえばよ。お前ら、結婚考えているのか?」
そんな中で、軍内部の女性にしてはいけない質問ナンバーワンに輝く言葉を発した隊長に対し、副隊長が胡乱気にねめつける。
「何を言っているのですか貴方は。」
「いや。気になるじゃねぇか。未だに北郷の奴は恋愛に希望を持っているみたいだけどよ。
アイツは見合いじゃないと、絶対相手が見つからないと思うんだ。」
「しらないですよ。というか、北郷さんにもう少し希望を持ってあげましょうよ。」
自分の後輩に対し、情け容赦ない評価をする天竜に須藤が苦言を申し上げる。が、
『あー。自分は隣の家に住む二男と見合いが済んでおりまして。』
アナスタシア・ジュガシヴィリ・葛城は言い、
『自分も婚約者がおります。見合いですが。そう言えば寒衣もそうだったか?』
『ウム。』
飛龍と寒衣もあっさりかわした。
そして、なんとなく視線が副隊長に向いた・・・様に思える。
「・・・なんですか?」
「そう睨むなよ。で、どうなんだ?」
「プライベートの侵害になると思うのですが・・・?」
いつも以上にきつく睨むが、全く意に介さない天龍。
図太い神経を持つ頼れる隊長に大きく溜息を吐き、仕方なく白状した。
「いません。御見合いしているのですが、これといった方がおりませんので。」
「なんだよ。つまんねぇな。」
余りにもすっぱりと言ったので、どこに突っ込みを入れたらいいのか解らなかった天龍は大げさな動作で肩を竦めた。
それを見た須藤は、帰還したら書類地獄から絶対に逃がさないと決める。
しばらく無言の飛行が続いて行き、天龍がちょっと欠伸をした時だった。
「た、隊長!」
「んだぁ?」
64: 影響を受ける人 :2018/01/07(日) 22:16:09
突然部下の一人が呼びかけてきたが、眠気に負けそうだったので返事が間延びしている。
それでも部下は下を指差して叫んだ。
「海が凍っています!」
「はぁ? そんなわけがあるか。」
常識的に考えて海が凍る事は・・・北方ならあり得るが、この変ではまずありえない。
暇だからって、そんな見え透いた嘘などついてもつまらない。
つまらなそうに返答し、頭をガシガシ掻いて前を見る。
「あの、隊長・・・」
「アンだよスドウ。もう少ししたら戦域だ。気合を入れなおさないt「なにも言わずに下を見て下さい」あんだよ。
おまえ、あんな寒い冗談を真に受けてんのか?」
うんざりしつつも副隊長の方に顔を向けると、目を見開いて下を指し示している。
しょうがないので下を向くと、白い大地が見えた。
「・・・・・・・・・はぁ?」
慌てて進軍を停止して後方を振り返る。視線の先では白い大地と蒼い大海原がはっきりとわかる最下位目が見えている。
もう一度視線を下にやれば、白い大地は隆起しており、どう見ても形が並の形だった。
つまり、下の白い大地は凍りついた海。それも一気に凍らせた状態であるという非常識な状態であるとわかった。
「どうなってんだこりゃ!?」
『むむむぅ??』
『寒衣、落ち着いて。自分も混乱しているから。』
『何が起きているんだ・・・?』
各部隊長からも混乱の声が上がる。その声を聴いた天龍は、目的地に向かってストライカーの出力を上げた。
何が起きているのかはわからない、しかしとてもよくない事が起きている。それはわかる。
たとえ間に合わなくとも、それを見届ける必要が有ると、なぜか思えた。
―――“七支禍皇”討伐後 戦艦【山代】:艦橋―――
艦橋は静けさに包まれていた。
巨獣同士の戦闘。映画の中、漫画や小説といった架空の中の御話。
この世界にネウロイはいるが、まじかに見る実物は想像以上の物であり、ショッキングな光景だった。
誰かが息を飲み込む音が聞こえる。
白い海原に降り立った白き獣が咆哮を上げた後、ヨロリと体をよろめかせた。
【山代】の傍にいた一体が慌てて駆け寄ろうとしたが、怒鳴るような咆哮をあげられて押し留まる。
心配そうに鳴くが、使命を与えられているので仕方なく実行に移す。海を元に戻す使命を。
流石に巨大すぎる氷塊をそのままにはしておかない為、【若狭】に海水が浸入しないようにしておく分以外は全て解凍しなければならない。
一気に溶かしては津波になりかねないので、面倒だが端からやらなければいけないから、大量の分体に分裂して作業に当たる。
それを見届けた後、九曜葛葉は最後の作業に移った。
自爆の為に“七支禍皇”が溜めこんだ瘴気が、目に見える形で漂っている。
ただの人間が吸えば即死するレベルの猛毒だ。普通のウィッチでも、のた打ち回って5分もしないで死ぬ。
それをシールドでかき集めて、飲み込みだした。
ネウロから占領地を取り戻したとしても、自然拡散・減衰を待たないと再入植は難しい。
さっさと瘴気を除去するならば、それ相応の時間をかけなければならないが・・・九曜葛葉の様に体内に入れて蓄積し、長い時間をかけて浄化すれば早く済む。
すでに目撃されている為、自分が別働隊と戦った事は知られる。だからと言って、喧伝するつもりはない。
体内に入れて浄化するという行為には、もちろんデメリットが存在する。
何しろ対処許容量以上の劇毒を体内に入れるのだ、長時間の休眠が必要となる。
一度目は自身能力に振り回され重傷を負い、瘴気を何とか収集したが疲労困憊となって2年も眠り。
二度目は自爆を至近距離で受け、重体となりつつも海中に溶け込んだ海水ごと飲み込み3年近く眠り。
三度目は漂流していた民間人を助ける為に無茶をして、内蔵にダメージを受け、その状態で瘴気を収集して1年半も眠った。
それでも、九曜は飲み込むことを止めない。
ただでさえ海水を冷やしてしまった。これ以上の気象変動は抑えたかったのだ。
そんな事は知らない【山代】の艦橋から見える光景は、白き獣が黒い霧を勢いよく飲み込んでいく様子が見えている。
その光景に引き続き目を奪われ、誰とも知らずに敬礼。もしくは拝む者達がいた。
そんな中、
65: 影響を受ける人 :2018/01/07(日) 22:16:40
「・・・ぅ・・・ぇ」
たった一人の男だけが違う考えをもって、九曜を見詰めていた。
「あれは・・・化物だ。」
安田道長中将だけが、フラフラと体を揺らしながら後退している。
彼は恐れていた。初めて目にした強大な力に。
彼は畏れていた。もっとも新しい神の一つだと言われる白狐に。
彼は懼れていた。己が下した砲撃命令が、神に向かって放たれた事を。
彼は怖れていた。己の出世街道が閉ざされる事を。
「あれが・・・ あれは・・・いてはいけない。いて良いはずがない!」
叫ぶような、呻き声で現実を否定する。
しかし、目の前の白き神は消えてなくならない。
「撃てぇぇぇ!!」
「「「「「・・・・え?」」」」」
突然吠えた上官に、放心していた一同の視線が集まる。
自身に向けられる視線と、間抜けな表情に理不尽な怒りを湧き上がらせ、再度怒鳴り上げた。
「装填は済んでいるのだろうが! さっさと化物を撃てぇ!!」
何を言っているのかわからない。部下は、兵士達はキョトンとしてお互いに目を合わせた。
まさか自分達の上官が保身の為に、白狐を抹殺しようとしているなど思いもよらない。
自分が命令しているのに動かない愚鈍な部下たちに痺れを切らした安田は、狭い艦橋内を走って向かおうとした。
何人もの体がぶつかり、勢いが殺されるが知った事ではない。
強引にどかして進もうとする。
流石にここまでされれば、呆然としていられない。しかし、初動が遅すぎた。
勢いを取り戻した安田は、そのまま主砲射撃指揮所に向かう。
なんとか何者にも邪魔されずにたどり着き、状況がわかっていない指揮所の一同を薙ぎ倒してトリガーを掴もうとする。
しかし、この場の責任者である砲術長が慌ててしがみ付いて妨害した。
「どけ!」
「だめです!! 何をしようとするのですか!」
「化物を撃つのだ! 今ここで撃たなければ、全てが終わる!!」
「何を言っているのですか! あれはh「どかんか、馬鹿者が!」っが!」
血走った、正気を失った目で砲術長を睨みつけ。力任せに肘打ちを叩きつけて拘束を解いた。
砲術長が「止めろ!」と叫ぶ前に残りの人員が慌てて飛び掛かる。が、
「死ね!」
一歩遅く、トリガーが引かれて砲弾が放たれる振動が艦体を振るわせる。
氷に閉ざされたても職務を全うし、照準を合わせていた砲術長の努力は、醜い保身により侮辱されてしまった。
飛び掛かった際に指が折れてしまったのにも拘らず、安田は狂ったように嗤い続ける。
これで安泰だ。これで自分は助かる。これで自分は報われる。
狂ってしまった思考で、見当違いの安心感を得た安田は。そのまま気絶してしまった。
彼はそのまま病院に担ぎ込まれるまで眠りつづけ、かなりの心労となっていたのか白髪になり、目覚めた時には幼児退行していた。
その後も回復する見込みが無く、交通事故で事故死するまでそのままだったという。
さて、再び砲撃に晒された九曜であったが割と平然としていた。
砲撃に晒された事には驚いていたが、「コンナにデカい狐がいれば、そりゃビビッて攻撃もするだろう」と思っていたからだ。
吸引を行いながらシールドで砲弾をあらぬ方向に誘導する。
柔らかく、簡単に壊れるシールド。硬く、壊れにくいシールド。気圧の違うシールドを多用して、明後日の方向に着弾させる。
自分なら迎撃も出来るが、後処理は中断させずに終わらせたいが故の・・・
ただ単純に「面倒臭い」から、一番簡単な対処法で対処しただけだ。
全ての瘴気を飲む込み終わり、氷塊も全て解凍し終わったのを視認。生き残った艦艇全てが浮いている確認してようやく安堵の息を吐く。
気を付けて、無事に帰投する事を願って汽笛代わりに咆哮を上げると、そのまま天を目指して駆けだした。
宙を駆け進んで行く姿に、一同が心奪われている事を知らずに待っている人達の元に向かって帰っていく。
雲間に隠れてもなお、安田艦隊の敬礼は続き。
応援に来た天龍隊・狛犬隊・鎌鼬隊。三部隊が呆然と見ていた事も知らずに。
以上です。
あともうちょっとや・・・
最終更新:2018年02月23日 10:40