700: 影響を受ける人 :2018/02/04(日) 22:08:20
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。というか、ほぼメアリー・スー状態です。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
流血・グロイ表現が有ります。
それでも良い、という方のお読みください。



提督憂鬱×ストパン+零
第百二十五話 ―扶桑海事変―終幕―

〔ズゥゥン・・・・・・〕

とある人気のない海岸線に、巨大な体を投げ出した巨獣がいた。
言わずと知れた九曜葛葉の神獣形態だ。瘴気により、火傷の状態となっていた皮膚表面は癒えていたが、浸透した瘴気毒だけはそのまま。
強大な力を誇り、膨大な魔力を有し、長く生きた経験に裏打ちされた実力をもっていても、浄化能力だけは人並。
いかに常識的なウィッチよりも瘴気に対する耐性が高いといっても、今回の相手は常軌を逸していた。
荒い息遣い、口端に見える血の跡はどす黒い。

体内に取り込んだ瘴気が、深く人体を蝕んでいる様子がよくわかった。
体力を回復するために休憩している・・・わけではない。
戦いの後だからこそ、無理にでもやらねばならない事が残っている。
それを行う為に、断崖絶壁に遮られた人気のない小さな海岸が必要だった。

「本体。」
「■■■■■■■■■■■ゥゥゥゥ・・・・・・・・・」

生み出した総監督をする分体が、フカフカな体毛越しに手を添える。

「歯を食いしばって下さい。」

その言葉と共に、巨獣の呻き声が海岸を振るわせた。
総監督分体と共に同時に生み出された分体達が、負傷した部分の切開を開始したためだ。
負荷魔法を応用した擬似麻酔を掛けてはいるが、それでも巨体故に効き目が薄い。
それでも無いよりはマシ。さらに円柱型シールドを咥えて耐える。
切開した部分が高速で再生しようとするのを無理やりシールドで圧し止め、取り出せなかった砲弾の破片を取り出していく。

幾らなんでも戦闘しながら完全な手術など出来はしない。某無免医者ならやってのけるかもしれないが。
更にへし折れた腕も切開し、少し曲がって接着している骨を、真っ直ぐに直すために切り離す。
肋骨周辺にある砕けた骨も回収し、焼却しなければならないのでこちらも切り開く。
円柱型シールドに罅を入れんばかりに噛み続ける九曜を見つつ、総監督分体が念話による分担作業を効率的にすすめていく。
流れ出した血液は真空立体式シールドで集め、再度体に注入する。

常人よりも強力な再生能力持つ九曜であるが、変な治り方をすれば後々まで影響を及ぼす。
だから早めに、迅速にやらねばならない。
強力な力と言うのも、善し悪しだとわかるのも年のせいだと思ってしまう。
常人で300年以上も生きる人間などいないのだが・・・・・・

「■■■■■■ゥゥゥゥ・・・」

激しい激痛に、喰いしばる力が増す。
それでも、最初に比べればましだ。あの時は・・・思い出したくもない。
結局手術は1時間掛かった。よろよろと体を起こし、分体を全て戻す。
そしてすぐさま大地を蹴り上げ、飛翔する。
もし、“七支禍皇”が全盛期の力を発揮していたならば、もっと苦戦していただろう。

負傷具合も悪化し、最悪3年は休眠する事になっていた筈だ。
“七支禍皇”が狂暴であった事と、ネウロイの巣が戦力確保の為に質量を削った事が功を奏した。
敵情など知る事ができないが、様々な意味で幸運だった。だが、楽であったかと問われればそうではない。
その際に神獣形態は解除するのだが・・・解除と同時に一気に疲労と気怠さが襲ってきた。
本来の肉体よりも巨大化する為、いかに魔法で肉体を支えていようとも何かしらの不具合は発生する。

ただ単純に巨大化するだけならそれほど疲労はしない。この状態で皇族方の子供達と遊んだこともある。主にアスレチック感覚だが。
しかし戦闘をした後では話が違ってくる。形態維持にも魔力を使うからだ。
話はさておき、飛翔を続けるが髪の毛がウザッタイ程に伸びてしまっている。
これは後で切ろう。一応神獣形態の体毛も使える素材。とっておいて損は無い。
その前に・・・帰り付かなければ。

(体がまだ痛むのに、眠い・・・くそ。黒曜の奴が出たがっているのか?)

己の内に沈む人格を思うが、完治できないし話したことも無い。
黒曜と呼ばれる分体は、九曜が休眠状態にならない限り出てこない。
故に一度も話した事は無いが、彼女こそ己が取り込んだ使い魔の残滓であると。
己の本能と融合した分体であると認識している。

701: 影響を受ける人 :2018/02/04(日) 22:10:05

その為なのか、眠気の感覚が違う。
しかしまだ起きて報告をしなければならない。まだ交代するわけにはいかない。
コントロール可能な分体と違い、黒曜は完全な別人格の独立存在。
制御不能の厄介な相手。九曜葛葉の敵に容赦せず、味方であろうとも対応は塩。
      • それはともかく。帰路につくことは出来た。

――皇居:中庭――

中庭に置かれたテーブルに手をつき、白い高価な椅子に深く座り込んでいる人物がいた。
言わずと知れた天皇陛下である。
つい先ほどまで陛下は大銅鏡のある部屋にいたのだが、気を落ち着けるために、気持ちの整理をつけるためにここにいた。
戦争と言う縁遠い、良く知らない行為を知るために、九曜に命じていた。
血生臭く、命が散花する戦場の光景は、天皇陛下の覚悟を打ちのめすのには十分。

その場にまだ頼れる侍従長がいたからよかったが、いなかったのならばどうなっていたか。本人でもわからない。
その九曜がみた予知を共に見て、気丈に命令を下した。それを最善と判断して。
覆すべく予知した本人が出て行って大銅鏡は使えなくなった。はずであった・・・
九曜の誤算は、護衛巫女達の能力が思ったよりも高かったことが、大銅鏡を協力し合えば使えた事だ。
出て行ったあと、命令をした責任を全うするために護衛巫女を呼び集めた。

無論、残して置いた分体が苦言を申し入れたが聞く耳を持たなかった。
寧ろ天皇陛下自身が説得したほど。最終的に折れた分体は、余計な魔力消費をしない為に自分は協力はしないことを明言して黙認する事に。
謝りと断りを入れ、護衛巫女たちの協力の元、九曜の戦場を見ることに成功してしまう。
大銅鏡越しに目にしたのは、いにしえの闘争だった。

巨獣と凶獣。御互いの力がぶつかり合う、人が介入できない世界。
神代の世界なら、普通に行われていた戦闘光景。
しかし、最初に見た物が戦争ならば、こちらは決闘ともいうべきモノ。
視てはいけなかったか? そう思ったが、脳裏に刻みつける為に凝視し続けた。
九曜の電波妨害も相まって非常に視難く、霧が発生してからは余計に見えなくなってしまう。

無事を確認できない事に焦りが募り始め、不穏な雰囲気を出し始めた天皇陛下に恐れを抱いた護衛巫女たちは対処に走る。
そうこうしているうちに妙な一団を見つけた。安田艦隊のメンツだ。
サボっている艦隊が有るという事は知らされていたが、まさか九曜の戦場近くにいるとは思っていなかった。

「警告は送れないのか?」
「さ、さすがに無理です。自分達は九曜様ほどの技量は有りませぬ故。」

邪魔になるから退去させようとしたが、思った様な返答にはならなかった。
というか、九曜葛葉の技量等が高い山のように突出しているので、平凡なウィッチではいくら集まっても対抗できない。
しかも柔軟な思考を持っていて、けして思考を硬直させない。
そんな反則級の人材なのだから、比べる方がいけないのだ。むろん天皇陛下はすぐに謝った。
少し喉が渇いたので少しだけ視線を外し、御茶を少しだけ飲んですぐにもどした時。

拘束された九曜が、黒い巨体の怪物と共に靄を突き破って出現する所。
そして同時に、味方に砲撃されるという衝撃的な光景も目にすることになってしまった。
悲鳴を上げる巨獣を見て立ち上がった天皇陛下であったが、すぐさま席に戻る。
別に気を落ち着けたからではない。たとえ派閥争いで作戦外の事をしていようとも、味方であるならば攻撃などしないだろうという思考があった。
しかし結果は味方撃ち。その事実が受け入れがたく、力が抜けたが故に席に戻る結果となったのだ。

その後の推移も何とか見ていた天皇陛下であったが、戦闘終了と共に映像を切った。
今までの中で一番疲労したように思える。
大きく息を吸い、深く吐き出す。

「・・・はぁ。」

護衛巫女達も、沈んでしまった主上に対してどうすれば良いかわからない。
御互いに顔を見合わせるが、まったく解決策が浮かばない。
しばらくの間沈黙が部屋の中を支配していたが、意を決したリーダーが口を開いた。

「へいk「すまぬ。一人にさせてくれ。」・・・心得ました。」

702: 影響を受ける人 :2018/02/04(日) 22:11:06

陛下に命令されてはどうにもならない。大人しく下がっていく。
そして、一人となった部屋の中で気持ちが落ち着くのを待った。
先程の戦闘を思い浮かべ、なぜそうなったのかを考察していく。
考えに考えて、出した結論は・・・〔事故〕。これに尽きる。
なにしろ九曜葛葉の存在は政府上層部、一部の者達しか知られていない。

ましてや巨大な獣になれるという事などは、更に限定された人物しか知らないのだ。
得体のしれない攻撃に警戒するのは当然であるし、咄嗟の行動に止めるすべなどない。
だから、あの行動の正当性は・・・わかる。しかし気持ちがそうは思っていない。
沸々とわき上がる熱い感情。怒りが沸騰した水の様煮えたぎり、淵から零れ落ちそうになっている。
それを自制心で抑えてはいるが、手傷を負った九曜葛葉の前に出て抑えられるかどうか・・・

しばらく部屋の中でジッとしていると、扉を軽く叩く音がしたような気がする。
視線のみを向けると、扉越しに護衛巫女が話しかけてきた。

「陛下。九曜様g「九曜が帰ってきたのか!」・・・え、ええと。」

勢いよく扉を開けて問うと、護衛巫女が困惑と戸惑いの表情で隣を見る。
そこにいたのは確かに九曜葛葉であったが・・・

「落ち着かれましたか。陛下。」

置いて行った分体の方の九曜であった。

「う・・・む。」

期待が外れ、表情にも表れるほどに気落ちしてしまう。
そんな天皇陛下を気遣ってか、分体は外で御茶をしませんかと聞いてみる。
天皇陛下も気乗りはしないが、気分転換の為に頷いた。
御茶の準備自体は手早く済み、何時もの様に御茶を入れてくれる。
熱く、好みの濃度で入れてくれた日本茶は、内蔵に染み渡り思わずホッと息を吐いた。。

「陛下。本体から連絡が有りました。」
「いつ帰ってくるのだ? 手傷を負った様だし、しばらくは動けんだろう。」

聞きたい事を早く聞きたいが為に、やつぎに質問を飛ばす。
たとえ分体であろうとも、天皇家を尊重するのには変わらない。
しかし回答は、望んだモノではなかった。

「まず・・・本体は帰っては来ません。」
「なっ! ・・・なぜだ?」
「瘴気を飲み込んでいるからです。思ったよりも濃度が濃く、安全に浄化できる事が出来ないそうです。
 まあ。その前に、この皇居に瘴気を・・・毒物を持ち込むなどいたしません。」

一瞬激昂しかけたがすぐに気を落ちつけ、分体の話を聞く。
分体の思考が辻正信寄りのせいで、若干無遠慮だ。

「次に手傷ですが。確かに負傷しましたが治療自体は完了しております。」
「ふむ。それは朗報だ。」
「しかし体力低下が思っていた以上の大きく、魔力消費による疲労が溜まっています。
 休眠期間は・・・そうですね。大凡ですが、短く見積もっても半年はかかるかと。」
「半年も会えないのか。」
「以前であれば一年以上休眠する事もありました。それに比べれば圧倒的に短いです。」

事実である。最も真相は慣れない力の制御を誤って、自爆しただけなので自業自得なのだが。

703: 影響を受ける人 :2018/02/04(日) 22:12:24

「あの子には何といえばいいか。」
「包み隠さず。教えになられればよいかと・・・」
「・・・海軍が、味方が砲撃した事も?」
「何をおっしゃいますか。

 あの場に、皇国海軍はいましたが。“何も”ありませんでしたよ?

 思ったよりも強敵でしたが“単独”で撃破に成功しました。
 戦闘に巻き込んでしまった事の方が、本体には堪えたようです。」
「・・・・・・」

九曜葛葉は、味方に攻撃されたことを報告しなかった。
むろん分体は全てを知っているが、本体から教えるなと言われているから教えない。
尋ねられても答えないだろう。たとえ天皇陛下であっても。
現時点で大多数を占める堀井派を叩いてしまうと、夢幻会でも手におえないほどに支障が出てしまう。
それを避けるために、ワザと報告しなかった。

「本体は自分の存在を隠したがっています。」
「それは無理であろう。すでに被害は出ているのだろう?
 だとすれば、覆い隠せるものでもあるまい。たとえ箝口令を敷こうともな。」
「そうですね。しかし、ぼかすことは可能かと思われます。」
「・・・はぁ。わかった。九曜の為に骨を折るとしよう。」
「本体が目覚めたんらば、存分に甘えた方がよろしいかと。」

――富士樹海:洞窟――

暗い、暗い洞窟の奥深くに、白い体の女性が胎児の様に丸まっていた。
シールドで作ったカプセル内で、髪の毛を切る間もなく休眠に入った九曜葛葉だ。
髪の毛がさながら羽毛布団のように体を覆い、寒い洞窟内でも暖かそうに見える。
浅い呼吸音のみが音源の世界で、彼女を見守る黒い狐がいた。

「キュゥ。」

小さく鳴いた狐は愛おしそうに白い女性を見続ける。
黒い狐。扶桑皇国において不吉を司る神の一体。

殺戮・無慈悲・理不尽

白い狐と対をなす悪神。理性を持った生存防衛本能。
黒い狐は嗤う。薄く、戦慄を覚えさせる笑みでもって敵を笑う。

「キュゥ。」

不気味なほど可愛らしく。冷たい目線で宙を見つめていた。



以上です。
次は夢幻会中心だぜ!!

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最終更新:2018年05月06日 13:07