和解 そのいち
「そりゃああ!」
レティクルの中心に日本製のKMFを捉え、一連射
多少の損害はあるが撃破には至っていない
ならばもう一撃、と照準を合わせようとしたが、弾丸は出ない
「クソッ」弾切れのようだ
その隙に相手は友軍のフォローのもと後退していく
しかたなく自分も後退し、弾装を交換しようとしたが左手を伸ばした先にはもう何もなかった
機体性能、個々のデヴァイザーの腕前、物資に至るまで何もかも向こうが上、いやこちらが下だ
「少佐、ご無事ですか?」
二機のジェンシーが駆けつけてくれた
「すまんが予備弾装あるか?
「これを」片方が自分の銃についてるのを取り外す
「使いかけですみませんが、じぶんももうこれしか残ってなくて」
「お、おい?」
「自分がばら撒くより少佐が使ってくださったほうが俺らの生き残る可能性上がりますからね」
「なるほど、んじゃこれも使ってください」
もう一人は自機の腰にある予備と、銃についてる弾装を取り外して渡してくる
「ま、まあありがたいがお前らはいいのか?」
「いいわけないでしょ このまま離脱します」
「・・・・・・気をつけろよ?」
しばらく戦った後、彼もまた後退する
通り過ぎた後に、自分に弾丸を渡したジェンシー二機がスクラップになっているのに気づかぬまま
「少佐!ご無事で!」
「サクラダイトと弾薬の補充を急げ!すぐ出撃するぞ!」
「それが少佐・・・・・・・部隊に後退命令が」
「何故だ!」
「はっきりいえば敵の足止め出来てるのが我々だけなんです
戦線はほぼ壊滅しておりこのままでは我々は敵中に孤立することに・・・・」
それがどうした!俺なら単機で突破口開いてみせる!と口から出かけたのを辛うじて抑える
わかってる・・・・・・・・俺一人がいくらあがいてもどうにもならないんだって
「連隊長も少佐の帰還を待って後退すると言ってます」
止むを得ないな
自分たちの連隊は大きく後退し、他の部隊と合流して待機の支持があった場所へとたどり着いた
ここが最終決戦の場だ
ここを抜かれたら敵軍はソウルへ容易にたどり着く
…・・・・・・・勝てない、と 負ける、と最初からわかってたはずだ
「あの」日本と「あの」ブリタニアの連合軍に我が高麗が何をどうすれば勝てるなどと思えるのだ
KMFの性能、弾薬の量、情報収集、戦略的視野の広さ
我が高麗が彼らのそれに対抗できる部分がひとつでもあるのか、そもそもこの戦争に勝算は・・・
はっきり言えば民の感情にひきづられてはじめた戦争だ
我が高麗は日本とブリタニアに対し強烈な敬意と礼儀を要求した
それに対し両国は我が高麗に対し国力と、なにより国としての品格に相応しい「軽い」扱いをした
それに激怒した高麗の民が騒ぎ、民に阿ったマスコミが両国を侮蔑し
煽られた民が両国への暴動、テロリズムに等しい行為を行った
結果激怒した両国が相応の責任を高麗に要求し、しかし騒ぐ民を無視もできなかった政府が
返答を引き伸ばし時間を稼げばどうにかなる、その内この騒ぎも流れてみな忘れる、と
だらだらしている内に突きつけられた最後通牒
感情のみで騒ぐ民に瀬を押される形でこの戦争は始まり、ひたすら一方的に殲滅されていっている
中華が和平を取り持ってくれるとか噂が流れるが、自分としてはもうどうでもいい
自分のするべきことは、レティクルの中心に敵機を捉えて引き金を引く、ただそれだけだ
きょうはここまでです
最終更新:2018年02月28日 12:05