670: 弥次郎 :2018/03/07(水) 18:58:55
大陸ガンダムSEED支援ネタSS 「Triumph&Survive」epilogue:Side V


Main Staring:
<Z.A.F.T,P.L.A.N.T.>
Ronald・Virta
John・Martinez

<FAITH:Special Forces,Z.A.F.T,P.L.A.N.T.>
Jonathan・Smith

Staring Mobile Suit:
<Z.A.F.T,P.L.A.N.T.>
YMF-606D D-GuAIZ
ZGMF-600GF GuAIZ FS
ZGMF-X999FC Warrior Phantom Custom
ZGMF-1017G Ginn Type High-Maneuver G


      • CE70年7月23日 L5宙域 「プラント」 コロニー「マイウス・フォー」 





久しぶりの無重力にならされること1週間あまり。そして、割り当てられた3日の休暇を終えて、回収されたロナルド・ヴィルターは、マイウス・フォーを訪れていた。
他のHLVや脱出用シャトルなどに分乗してた他のメンバーとの合流は着実に進んでおり、通商破壊による消息不明や乗り損ねた隊員たちを除けば、往時のメンバーが揃いつつあった。というか、ヴィルターは自分の隊がスムーズに集まりつつあることに何らかの意図を感じつつあった。

(今度は一体何なんだ……)

休暇は十分とはいえず、未だに疲労が残り続けているのを自覚する。
本国に帰ったことで力が抜け、これまでハイな状態で認識できていなかった体の不調や疲れが認識できる状態だからだろうか。
だからこそ、早くも不穏な気配を感じる動きにうんざりしたような感情が湧くのを抑えられなかった。
自分達だけではない。地上戦線からの帰還者が集められるか、あるいは何らかの意図で誘導されているのだ。
それについては、当たりがついている。地上戦線での敗北を今の段階では統制しておきたい評議会の意思。

既に輸送艦隊が戻ってきている時点で、すでに情報統制も糞もないだろう、というのがヴィルターの本音だ。
自分達を回収するための艦隊にどれほどが動員され、手薬煉を引いて待ち受けていた連合にどれほど迎撃されたことか。
それだけの人員を動かせば、それだけ情報が動き、統制しようとも伝わってしまうのだ。
戦力が消耗したということは、安否が不明、もしくは連絡がつかなくなった人間がおり、消えた物資や艦艇があるということ。
それは書類上はともかくとして、何らかの形で目撃されてしまう。今さらごまかして何になるというのか。
まさか認識すること自体を拒否しているのか、と邪推さえしてしまう。

「……」

自分の副官としてついてくるジョン・マルチネスの表情もかなり悪い。
苛立ちや不快感を抑えきれていないのだ。まあ、自分も自分の表情などが悪いことも自覚はある。
いかんな、と意識を何とか切り替える。コロニー「マイウス・フォー」にご指名で呼び出しなのだ。
マイウス市を構成するコロニー群の4番目のコロニーであり、MSの生産工廠や研究施設が置かれているコロニー。
その入り口で、厳重な本人確認とボディチェックを受ける。その担当兵士の年齢の幼さに、また嫌悪感を覚えてしまう。

10代前半と思しき兵が多数と、10代後半が二人ほど。
姿勢は整っているように見えるが、よく見るとベルトで肩に背負っているライフルの重さで体の重心が傾いている。
ライフルは案外重量がある。きっちりと訓練すれば問題はないのだが、そうでなければ顕著にバランスが傾いてしまうのだ。

(……)

務めて、表情を変えない。返礼しながらも通過する。
赴くのは、マイウス・フォーの内部にある特務隊FAITHのオフィスだ。
戦闘技能の研究を行う部隊であり、教導隊であり、そして今もなお質が維持されているエース部隊。
配備されているMSに関してもゲイツをはじめとした一線級のMSばかりである。それを任されるのも、彼等こそが本土防衛隊の要であるが故に。これまでの宇宙での戦闘を生き延びた猛者もおり、質と経験が合わさっているのだ。

そして、そうであるが故に階級制の無いザフトにおいては一歩上の扱いを受けている。
これについては問題視する意見もあるにはあるのだが、それを過度に咎める理由が存在していない。
よく言えば実力主義のザフトにおいて、結局は実力者に発言の優位があるのは間違いない。

671: 弥次郎 :2018/03/07(水) 18:59:48

だが、それ故にヴィルターは解せない。
なぜ自分達を頼るのだ、と。
自分達は南米から叩き出され、さらにオーブでも大敗を喫した敗残兵だ。
プラントに戻ってきてから周囲の視線は厳しいし、侮蔑の言葉を投げつけられたこともある。
そんな連中に、一体何の用があるのだろうか?




      • ザフト特務隊FAITH オフィス


「よく来てくれました。ロナルド・ヴィルター隊長」

ジョナサン・スミスという名前の、FAITHからの出向者の白服の男性は草臥れた印象を受ける仕草で着席を促す。
隈が隠せていないあたり、相当にこの男は激務のようだ。飲み物があらかじめ用意されていたテーブルに着き、じっとその男を観察してしまう。この白服の男については、呼び出しを受ける前に少しばかり前に調べることが出来た。
元々は白服ではなく、特務隊FAITHの黒服。元々の仕事は、品質管理と品質の分析だとか。

「そう詮索をなさらないでください。
 あなたに隠すことなど、あまりありませんので」

屈託のない、しかし、疲労をのぞかせる笑いに、ヴィルターは追及する気を一瞬失う。

「まあ、お聞きになりたいことは分かります。
 なぜ、貴方を私が招集したのか。なぜ、ヴィルター隊の面々が意図的に集められているのか……」

「気になりはした。だが、ここに呼ばれたということは……」

「まあ、お察しの通りです。あなた方はその類稀な戦闘経験と功績を鑑みて、戦技研究および教導への転向とはなっていますが、実態としてはヴィルター隊長の御想像の通り、左遷です」

「やはり、か……」

「何故です…!何故、このような扱いを!」

「落ち着け、マルチネス」

激高するマルチネスとは対照的に、ヴィルターは平静を保てていた。
波立つものを心の中に感じはしたが、そこまで大きな流れとはならない。
ただ、なるべきようになった、という、諦観に近いものが満ちている。
まるで、粘性の高い液体をコップに入れて揺らしたよな、そんな印象だ。

「貴方の部下の方々も集められたのはその為です。
 集められた情報はもちろん私も閲覧し、特務隊FAITHはもちろんのこと、評議会の方にも伝手を頼って送りました。
 その結果についてはご想像に任せますが」

「これ以上隠してどうなる?既に情報は漏れているだろう。
 ごまかせるはずもないし、プラントの空気も悪くなっている。
 無理に継続するのは国家にとって致命傷だぞ」

「それはできませんよ」

こともなげに言い切ったジョナサンは、しかし、真剣だった。
抗議するつもりだったヴィルターの二の句を次がせない程度には、その表情は真剣そのものだった。

「病根は根深いのです。私一人では到底引き抜くことも、動かすこともできない。
 このまま白旗を挙げたところで、今度はコーディネーター同士での争いとなります」

「それほどまでに、か……」

コーディネーター同士の、それも、プラントに属するコーディネーター同士の殺し合い。
これまで戦線においては、連合に属するコーディネーターもいるのだと噂が流れ、事実としてコーディネーターもいた。
それは敵同士で、国家同士の戦争だからこそ起こったことだ。ある程度の割り切りは出来る。
だが、今度はプラントの内側で、自らを守るためではなく、あり方を決めるために殺し合うのだ。
悲惨という言葉さえ生ぬるい。これまで必死にザフトが戦った意味が消えてしまう。
本末転倒だ。
だが、本末転倒であるからこそ、ありえないはずなのだ。
理性的なコーディネーターは、そのような選択をするはずがないと、信じたかった。

672: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:00:34
「流石にそれは……」

「絶対に認めはしないでしょう。それこそ、最後の最後のその瞬間まで。
 いえ、決定的になってもなお固執するでしょう。彼等にはそれしかない。
 それしか教えられてこなかったうえに、それ以外を見下すように育てられてしまった。
 これはプラントの罪、コーディネーターの罪です。だからこそ、プラントは区切りを付けなければならないのです」

「罪、か」

他者との共存を選ばない思想、信条。
それは、他者から見ても脅威であり、排斥の対象となる。
故にこそ争いとなる。ただでさえコーディネーターは危険視されているというのに、積極的に社会規範と敵対を選べば、そのような扱いを受けてもおかしくはない。
そしてそれらの感情の螺旋の果てが、今回の戦争だ。
ナチュラルの側にも罪があり、コーディネーターの側にも罪があり、それらは表裏一体。
二重螺旋構造。
互いの尾を喰らい合う蛇のようであり、無限を象徴するウロボロスのようであり、遺伝子の構造のようでもある。
死と再生、永遠、無欠性、陰陽、輪廻など、ヒトはそこに多様な意味を与えてきた。
ナチュラルとコーディネーターの確執も、またそれのようですらある。
そしてウロボロスは蛇。蛇とはすなわち人の大罪である嫉妬を司る悪魔レヴィアタンにも通じる動物である。

「ここにおいてプラントを分断させない最善の解、そして、連合との間の決着までにつながる選択。
 それが流血だとしても、選ばなくてはならないのです。これは、たんなる軍の作戦というレベルではありません。
 国家戦略のレベルの判断です」

言外に言われてしまう。
これは、一介の隊長が判断を下せるものではないのだと。
一見すると正しくはない選択肢も選ばねばならないし、その正しさというのは、人によって違ってしまう。
だから、それを担える人間が判断する。

「恐らく最高評議会は、半ば覚悟していることでしょう。
 何かをなすつもりというのは、なんとなくですが把握しています。ですが、それが袋小路への片道切符の可能性があります」

「袋小路……?」

「スミロドンとなりに行くのか、はたまたエオマイアで踏みとどまるのか。
 私に言わせれば、大した差はありません。いずれは滅びるでしょう。
 人類史、いえ、地球そのものから見れば、瞬き程度の差でしかない。
 ですが、同時にそれは途轍もなく大きな差となります」

ここまでとしましょうか、と話を切り、ジョナサンは話題を変える。

「確かに左遷で、幼年兵の教育に回されることは確かです。
 ですが、左遷であるので周囲の目は閑職に追いやられてしまえば、それで満足なのです」 

「…?」

「なので、貴方には一つ研究を行ってもらいたいのです」

「研究…?」

「練度の低下は、地上戦線で消耗が著しかったことや通商破壊によって加速度的に進んでいます。
 このままでは、戦争にすらできない。戦争で生き残る技術を、若年兵たちに教えてもらいたい。
 研究を行いつつ、それを体系化し、一人でも多くの兵に徹底させる。
 私も権限と力の及ぶ範囲で行っておりますが、一人でも協力者が欲しいのが実情です。特に、実戦を知る人間が」

「だから、俺達を引き抜いたと?」

「ええ。正確には、左遷を誘導し、フリーハンドをとらせたのです。これは、FAITH特務隊のトップにも力添えをもらいました。
 そして、栄えて『栄転』となりました。実際、貴方方は便利屋として振り回され、しかし戦果を挙げていた」

やることをやっていただけだ、と応じるヴィルターに、ジョナサンは全く掛け値なしの称賛を送る。

「そんな実力のあるあなただからこそ、私の目的に助力いただくだけの力があると私は考えています。
 勝てない戦争ならば、負けないようにする。送り込まれる少年兵達を、どうにか生き残らせたい。あと2回。
 ボアズとヤキンを凌げば、大勢は決します。プラントもザフトもそれで終わりでしょう。
 ですが、コーディネーターの未来は繋がっていかなければならない。私たちは、いずれ来る報いの為にも戦わねばなりません」

「……」

「つまり、勝つためではなく、生き残るための戦いだと?
 それ以外は斟酌する必要はないのですか?」

673: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:01:10

沈黙を作ったヴィルターの代わりに、ジョンは信じられない、という表情で問いかける。
もはや連合に対してザフトが劣勢であることは疑いようがない。だが、それが必ずしも勝利の放棄につながるとは限らないのだ。
だが、目の前の白服の男性は、目標としての勝利さえも捨てている。
その疑問を、ジョナサンは大きく肯定した。

「そうです、生存(Survive)です。勝利ではありません。
 そもそも、この状況からプラントが得られる勝利など『ナチュラルの国である連合に負けない』という要素以外、それ以外を全て切り捨てた勝利でしょう。ですが、それは本当に誇るべき勝利(Triumph)なのか?」

ジョナサンの持つ予想が正しければ、そんなものは勝利ではない。
勝ち負け以前の問題であり、勝ち負けを失わせる行為だ。
前提条件を破壊するかもしれない。

「だからこそ、少しでもいい、生き残る戦いが、生き残ることのできる人間が必要なのです」

言い切る。
生き残れるかどうかは不明だが、生き残らせるために戦うべきなのだと。
だが、同時にそれは残酷なものでもある。救えはしない。ただ、可能性に賭けろと、そういっている。

      • ガン!

突如、音が生まれる。ヴィルターの手が机に叩きつけられる音だった。

「この俺に、死ぬための兵士を育てろと?」

「隊長…!」

押し殺した声には、明確な怒りがあった。
ジョンは止めに入ろうとし、しかし、ジョナサンに目で制される。
彼は、ヴィルターの行動を、怒りに萌えた動きを見ても、微動だにしなかった。
そして、すっと伸ばされた手がヴィルターのわずかに震える肩へと伸ばされ、そっと置かれる。

「戦争なぞ、そんなものです。
 死ぬことも前提の人間を育て、送り出す。
 なんとも生産性もない、無駄な行為。しかし、同時に必要でもあります」

さらりと、ジョナサンは言い切る。
そこに余計な情もなければ、感慨もない。

「連合はプラントを取り戻すことが目的。
 ですが、既に連合が取り戻したがっているプラントは、往時の力を持っていません。
 プラントの再稼働の為には、コーディネーターを保護し、守ってやるしかない。
 逆に言えば、それを行わせるためまで凌ぎ、戦後のための準備を行い、行動を重ねることこそ、必要な行為です」

あとは些事、と切り捨てる。
少しずつ、ジョナサンの言葉を聞きながら、ヴィルターの怒りで力がこもっていた体から、力が抜けていく。
それは、力だけではない。やり場のない感情が、支えを失っているのだ。

「これは生存競争です。変化できなければ、それこそ負けとなるのです。
 自発的に変化できないならば、変化を促してやるしかない。
 コーディネーターはそこまで弱くもない。ヴィルター隊長、貴方は全てを背負わなくても良いのです」

「……」

「貴方が守れる範囲のものを、いきなり大きくは出来ない。
 けれど、少しずつ大きくしてやることはできます。そして、貴方は一人で背負わなくても良い。
 支えてくれる人がいるのですから」

「……ッ、そうです、隊長。自分も、お手伝いしますよ」

暫くして、ようやくヴィルターは動いた。
最後まで拳を握っていた手が、力なく垂れる。
少し、声が震えそうになったのをこらえ、ヴィルターはやっと声を絞り出す。

「……この話をタダで、研究や指導を行う元手もなく受けるつもりはない。それくらいは用意してあるんだろうな」

それは、ジョナサンの望む答えだった。
だからこそ、今度こそ疲労を感じさせない笑みを浮かべ、ジョナサンは立ち上がった。

「勿論。ではこちらへ」

674: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:02:09

        • マイウス・フォー MS工廠



二人が案内されたのは、マイウス・フォーの工廠だった。
工廠設備の他にも、保管庫としての機能が設けられているのか、多くの物資が保管されている。
明らかにこれから加工したり改装を行う分以上にあることが分かる。

「ここまで本国は余裕があったのか?」

前方を行くジョナサンに問いかけるヴィルターの目は、久しぶりに見た工廠内部を驚きを持って見つめていた。
地上戦線では常に物資武器弾薬の消費と割り振りをかなり慎重に見極めていたのだが、その原因は物資の不足が多くを占めていたのだ。
共食い整備や耐用限界を超えたパーツでごまかすなど、よくあったこと。だが、ここまで本国ではパーツが余っていたのだろうか。

「いえ、比較的マシなだけです。
 地上戦線に送り出せなかった、あるいは地上戦線に送る途中で引き返した物資は、本国で余っているのです。
 特に地上でしか使えないものに関してはかなり余ってしまっており、再利用や転用の方法が検討されています」

なるほど、と思いながらもシンと静まり返っている在庫を収容した格納庫を進む。
まず見えるのはMSだ。特に地上においては重宝されていたディンと水陸両用MSが目についた。
くみ上げている途中なのかそれとも整備中なのか、骨を思わせる内部構造がむき出しになっていたり、ところどころのパーツが欠けていたりと、状態は千差万別だ。
割とごちゃごちゃと並んでいるというか、統一感があまりないことを考えると、とりあえず集めて保管していたら、あとからあとからと次々に集まってきてここまで膨れ上がったのだろう。そしてそのまま整理することが出来ないままに今の形を得た。
ここはまるで墓地だ、とヴィルターは呟いた。
生み出され、しかし、無為のままに持て余され、死んだようにして彼らは眠っているのだ。

「ジンやザウートならばまだ使い道はあるのですが、陸戦に特化あるいは大気圏内を前提の設計では、宇宙空間においては使い道が乏しいのですよ」

そんな光景を見ながらも、誰にともなく、言い訳のようにジョナサンは呟いた。
AMBACが出来なければ、あとはただの砲台として動かすしかない。
あるいは構造として宇宙に適していなければ、それを何とかしなければ意味がない。
地上戦線での需要が拡大したので急きょ増産されながらも、しかし、役目のある地に赴けなかったのだ。
アフリカ戦線、そして南米戦線。そこで必要なMSや物資の量はプラントで勿論生産されて、輸送艦隊で以て送り出された。
だが、連合はその輸送艦の通り道で手ぐすねを引いて待ち受けていたのだ。

「地上戦線の経験者には、あまり言えた物ではありませんね」

「いや、そちらも努力をした結果ならば、文句は言えない。
 それに、今の段階で少しでも残っているのはありがたいことだ」

結果論ですよ、と自嘲するジョナサンにヴィルターはきっぱりと言い切る。
少なくとも、全てを放出しきって伽藍となるよりははるかにマシ。
抵抗するだけの武器が無ければ、それこそなぶり殺しになりかねない。
そして、抵抗が出来なくなっても抵抗を命じるような、そんな連中が多かったのも確か。

ついで見えてきたのは、多くの武装だった。
見慣れた76mm重突撃銃、無反動砲、重斬刀、シールドなどが見え、弾薬もケースに収められていた。
他にもバクゥやザウート用と思われる砲弾やミサイルポッドが包装されて並べられている。
くみ上げる前の段階でいくらかが放置されているのは、おそらく地上戦線に合致したパーツに置き換えるための工夫なのだろう。
自分のいた南米でも、そしてアフリカ戦線の人間から聞いた話でも、生産ライン上においてあらかじめ余裕を生んでおくことで、
現場で必要な微調整やパーツの交換などの対応できるようになったのだ。
こちらは宇宙でも使えるのか、改装を受けるのだろう。

「他にもあるのか?」

「はい。この奥の方……ええ、そちらには地上戦艦用の砲弾などが多量に。
 こちらに関しては要塞砲などに使える見込みがあるので、現在は改装作業中です」

675: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:03:00

示された先からは、作業が行われていると思しき音が響いてくる。
工廠区画だろうか、かなりの人数が動いている気配がする。
気配だけではない、声もする。だが、指示を出す声も、応答を示す声も、だいぶ若い印象を受ける。

「艦艇につけるのではなく、要塞砲や大型の小惑星に設置する砲台という形で転用が検討されています。
 航路にばらまいて、宇宙機雷とするなどもありえるのでは、とも。L1宙域では特にそのように使われています」

「L1……」

「月面監視のための基地があります。ですが……現状では、時間稼ぎのための決死隊が駐留しています」

元々は物資輸送の中継点としても使っていましたが、とジョナサンは深くため息をつく。
決死隊に逃げる場所はない。故にこそ決死隊。制宙権を少なからず維持していた状態ならばともかく、
地上に戦力を集中させざるを得ない状況を維持していなければ、そこを維持するのは不可能なものだった。
まして、現状の戦力は地上と地上からの撤退戦でかなり削られているのだから。
そのようなことを話しながらも、三人の目の前には工廠の入り口が見えてくる。

「ここから先は、MS専用の工廠区画になります。
 研究や試験的な建造などに特化しておりまして、現在も調整や開発が進められています」

セキュリティーゲートをジョナサンのカードを使用して抜け、何名かのスタッフとすれ違いながらも奥を目指す。
途中、ガラス越しに調整や改修がなされているMSがちらちらと見えた。見慣れたMSもあれば、形状が様変わりしているMSもいる。
様々な改装を受けているのは、それだけ模索がなされているということだろうか。
地上戦線でそのような光景をいくらか見ていたので特段驚きはしなかった。
ただ、流石に水陸両用のMSまで改装していたのは目を剥くしかなかった。

そして、ヴィルター達が案内されたのは、工廠のセクションの一つ。
どうやら完成済みのMSが一時的に置かれる場所らしい。
促されるままに扉を潜り抜けると、そこにはMSが十数機鎮座している。
そして、ジョナサンの足はその内の一機の、ヴィルターが地上戦線で使っていたゲイツによく似たMSの前で止まる。

「YMF-606D。ゲイツをベースとして、根本的な性能向上を図った意欲作です」

「根本的、と来たか」

「ええ。連合から強奪されたGAT-Xシリーズの設計データを流用し、さらに連合のMSの解析結果も合わせて導入。
 高級機であるフリーダムやジャスティスのノウハウも合わせています。
 既存のゲイツやジンの改装計画は、基本的には外装の付け足しによる短期間での性能向上に焦点が当てられています」

「それは、よく言えば即応、悪く言えばその場しのぎだな」

「おっしゃる通りです。この改装は短期で性能向上ができる一方で、総合的に見ては大きく上昇はしません。
 また、無駄に付け足した分だけ、整備にも問題が生じる。それを果たして本当の改良と言えるのか?と」

これは作る側の意見ですが、とジョナサンは付け加えた。
なるほど、一理ある。だが、戦争においてはそんな都合の良い新型や解決策があるわけではない。
その場面ごとに合わせた微調整や対応策をうつことで、問題なく動かすことが必要なのだ。
作る側の意見。即ち、フィードバックを受け取って対策をうつことこそが、彼の、ジョナサンの仕事だったのか。
対して、ヴィルターは動かす人間だ。作り手の意図を全てくみ取ることなどできないし、作り手の意図以上のことをやらなければならないこともある。
だが、その両者は決して相反しない。同じモノに接して、解釈が違うだけなのだから。そのように認識しながらも、
ヴィルターはその機体と並ぶように置かれているMSへと目を移す。

「そして、この設計データはさらにスピンオフし、ジンやシグーの改装にも導入予定です。
 パーツも共用化することによって、整備の手間や生産ラインへの負荷を低減。現場での融通や互換性を向上させました。
 ガワがジンでもビーム兵器を安定して使用し、さらにスペック向上を果たし、運用効率を高める。
 連合のMSがやっていることをこちらでも導入し、共通化による全軍の性能向上を目指しています」

共通化。つまり、外側以外が最新鋭機と同じようになっている、ということか。
外見上、並んでいるのはジンやシグーだ。だが、確かに微妙な違いが窺える。

676: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:03:32

微妙に機体の形状や露出している関節部、そのほかバックパックが違うのだ。
装甲形状も改められていて、一見そうとは分からないがかなり変更されているのが窺える。

「なるほどな……」

「分かりますか?あれらが、現在開発中の試験機です。
 ジンやシグーに見えますが、中身は半分以上はゲイツです」

「俺達が地上でやっていたことを、今度は全体に広げるつもりか?」

「ええ。ヴィルター隊に限らず、ビーム兵器を任された地上戦線で見られた工夫ですよ。
 地上戦線からのレポートの内容で、これに関しては他の方からも口添えもあってある程度進められております。
 PS装甲を持つMSに対して、有効打を与えるにはビーム兵器が必須。オーブ戦においてPS装甲を持つMSがかなりの数導入されたのは、上層部にとっては予想外も良いところだったようです」

オーブ戦、という言葉にずんと重いものを感じてしまう。
他の隊からの編入者を失い、古参の一人を失い、そして、メリル・オクトーバーを失った戦い。
それだけではない。後方支援にいた人員も、オーブから脱出できなかったり、あるいは友軍に回収される前に確保されたり、
プラントに戻るまでの間に追撃を受けたのか行方不明となったりと、様々だ。
南米戦線とは違い、短い期間で一気に多くを失ってしまった。
自分も、リミッターの解除でガタが来た機体を放棄し、HLVに何とか滑り込んで宇宙まで打ち上げられるので精一杯。
自分の力が足りなかった、と、そんな程度で済む話ではない。死力を尽くしてもなお、覆せないものがあった。

「隊長?」

「あ、ああ……すまない」

知らず、表情が歪んでいたらしい。
ジョンの指摘にヴィルターは一端深く息を吐きだした。
今さら、過去を悔いてもしょうがない。何時までも死んだ人間の年齢を数えてもしょうがないのだ。

「しかし、よくそれを受け入れたものだな?」

「どうやら、自分の乗るMSが旧式で雑魚と言われるのは我慢ならないようです」

「子供だな…」

「子供です。必要だからではなく、そう馬鹿にされるのが嫌だから。ある意味御しやすくはありますが、虚しいものです」

自嘲気味に笑い、ジョナサンは続ける。

「まだ具体的な機体名については決まっていませんが、あの機体はヴィルター隊にお預けします。
 あの試作機たちも、同様に。設計は大きく変えていませんが、ビーム兵器は最低限持たせています」

「俺の要望通りか」

「はい。色々と苦労はしましたが、地上戦線からの正式な撤退は好機でありました。
 生産ラインの割り振りの調整、資源の割り当ての再検討、生産品の限定。余裕を埋めました。
 もとより、宇宙で戦争するだけの生産でさえギリギリだったにもかかわらず、地上侵攻を選ばざるを得なかったのは、そのギリギリだった国体を維持するため…ある意味では、自転車操業、毒を抑制するためにさらに毒を飲むような、そんな危険な行為でしたので」

「ある意味で、本来の力を出せるようになったんだな」

そうなりますね、と複雑な答えを返して、ジョナサンは隣のMSを手で示す。
パッと見にはゲイツ。しかし、脚部やバックパックに差異が伺える。
機体各所に見える姿勢制御用と思われるスラスターがあり、内蔵型のセンサー系に強化がされているのか、形状が違う。

「こちらは、ゲイツの試作高機動型…FAITHのパイロットでも苦労しますが、ヴィルター隊長の部下の方ならば、あるいは使いこなせるのではと思いまして」

「ああ。地上では、随分と機体に関しては不便をかけたからな」

「腕前のほどは?」

「エース部隊を切り抜ける程度にはある。年の割に歴戦のパイロットだ。それだけは、胸を張って言える」

全くゆらぎもしないお墨付きに、ジョンは頬を掻いて照れるしかない。
あの時は、原因不明だが地震が襲ってこなければ離脱が出来なかったし、オーレリアのフォローもあってのことだ。
相手の錬度の高さは正直脅威だったし、性能も差があった。幸運を拾えた、と認識していたジョンにとっては望外と言えた。

「なるほど。確か、オーブにおいてはGを二機も擁する部隊との戦闘に突入したのでしたか…」

677: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:04:14

その時のデータは、ヴィルターは脱出寸前で辛うじて持ち出せていた。
ジョナサンもそれに目を通していたのか、何度か頷いていた。

「他の部隊からの情報でも、汎用型のGを少数ではあるが量産し、優位を維持していたと報告がありました。
 それがどの程度宇宙に上がってこれるか、というものもありますが…恐らく相当数が配備されることでしょう」

「PS装甲を部分的に配したMSもいた。恐らくだが、実弾系武装はバイタルパートを狙い過ぎると効果が低いかもしれん」

「なるほど……とは言え、まったく効果が無いというわけではないかもしれません。
 対MS特化弾の配給はなんとか十分に行っていますので…試作された105mmを試験的に投じてみるのもいいかもしれませんね」

では次に、と促され、MS工廠の奥へと進んでいく。
途中、セキュリティーゲートを通過し、明らかに機密の領域へと入っていくのは驚いた。
地上へと配属となり、本国から離れたのは随分と前のことだが、ここまで奥に踏み込むのは初めてだった。
相当機密が高いMSか何かが保管されているのだろうか。

「おい、あれは……」

そう思って踏み込んだヴィルターの目に映るのは、どこかで見たような形状のMS達だった。
丸い形状の装甲、各所に見える動力パイプらしきもの、モノアイを持つヘルメット状の頭部、そしてカラーリング。
そう、アフリカ戦線から持ち帰えられた情報で見た、連合を構成する国の一カ国、大洋連合のMSと酷似していたのだ。
元々大洋連合の量産型MSがザフト系MSと同じくモノアイを採用しているのは以前から知っており、技術の収束進化とは面白いと思っていた。
だが今回は、このMSは違う。偶然の一致にしては出来過ぎているし、これは意図を持って似せられていると判断できる。

「私の…FAITHの権限で取り寄せた次世代試作機です。
 あのような外見になったのは、大洋連合のMSの形状が実のところかなり量産性などを意識していたと判明したからです。
 MSの構造としても優秀だと。故にそれを取り入れました」

正直、意外も良いところだった。
自らが生み出したものに絶対の自信を持っていたはずのザフトが、他者の、連合のMSを真似るとは。
連合の中でも大洋連合のMSはモノアイを採用し、形状としてもザフトのMSと類似しているだけあって、「似た形状でも、ナチュラルが作り上げたものにコーディネーターの作ったものが劣っているはずはない」と豪語されていたと聞く。
だが、それも所詮は虚勢だったということか。この場合、ザフトが自らの信念を曲げたということか。

「なりふり構っていられない。それが今のザフトの、プラントの現状です。
 スペックとしても、かなり良い部類です。カスタマイズされたゲイツと同等か、それ以上。
 最も、性能向上や戦闘力追及の弊害は各所に出ています」

「それも検証し、改めろと?」

「はい。建前上は、ですが。勿論、可能な限りのデータ収集はお願いしたいと思います。
 FAITHの権限で各所に配置してある実験機からも、逐次データは送りますので」

「よく配置したものだな」

「これについては戦力強化という名目も与えられましたからね。
 FAITHは教導任務を帯びる隊でもありますので、そこについてはいくらでも伝手が作れます。
 間に合うかどうかは不明です。ですが、試験運用の目的で多くのパイロットを集め、配り、運用方法や技能を叩きこみ、
 性能向上機を渡すことができます。どれほどかは分かりません、しかし、増えることは確かでしょう。
 間違いなく生存できる人間が増えるのです」

「そうだな……」

もはや、ジンは旧式機。
だが、その旧式機で送り出さねばならないパイロット達が余りに多い。
残酷かもしれないが、生き残れはしないだろう。だから、その可能性を少しでも上乗せする。
そして、これまでの訓練では得られない知識を教え、能力を向上させる。
どちらも必要だ。片方だけで戦えるほど、連合は生半可な存在ではないのだ。
一通りの説明を終え、ジョナサンは長くしゃべったことで疲労したのか、深くため息をついた。

「これまでの行動原理は、所詮は私のエゴです。生き残って苦しむかもしれない。
 生き残れるようにした私を恨むかもしれない。
 ですが、それでも……」

しばらく沈黙し、しかし、ジョナサンは言い切った。

「私は前線指揮など得意ではありません。
 ですが、事前の準備で対応することにかけて負ける気はしません。
 ヴィルター隊長、貴方は、貴方のできる戦いをお願いします」

「……ああ!」

生存という勝利を(Triumph&Survive)。
他者を滅ぼすコーディネーターという種の抱える罪への、贖罪を。
残る希望をともし続けるため、二重螺旋の申し子たちは、砂時計の中であがき続けていた。

678: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:04:49
【メカニック紹介】


Dゲイツ
形式番号:YMF-606D
全高:20.22m
重量:85.9t
装甲材:通常装甲 PS装甲
動力源:バッテリー+バッテリーパック
武装:
MMI-GAU2ピクウス 76mm近接防御機関砲×2
MA-XM23V ビームライフル
MA-4Bフォルティス ビーム砲×2
MA-XX765 腕部試作4連装ビームマシンガン
MA-M01ラケルタ ビームサーベル×1
MA-MV04 複合兵装防盾システム
その他、ザフト系武装を使用可能

オプション:
追加装甲
プロペラントタンク

概要:
地上戦線から辛くも撤収に成功したロナルド・ヴィルターが、教導および技術検証の任務を行うにあたって新たに受領した高性能MS。

序盤の快進撃を除けば苦戦が続き、ついに地上戦線から叩き出されたザフトは、一時評議会が紛糾するほどであったが、地上戦線の生産ラインを大幅に縮小させ、生産能力及びリソースを宇宙での戦闘に必要なものを生産するために転用することを決定した。
この生産ラインの整理と調整によって、ザフトではゲイツなどのMSの改装及び兵器生産の余裕を、泥縄ではあるが得ることに成功していた。

その中で計画されたMSは多数あるのだが、その一機が本機である。
開発時においてはゲイツおよびゲイツを母体としたドレッドノートが土台としている。
ゲイツの改装や改造計画は同時期に多数推進されていたが、基本的には設計をそのままに、外から必要な装備と機構をつけ足すことで行われていた。
一方で本機は、ゲイツおよびドレッドノートを土台とし、連合のGシリーズ及び核動力MSの技術を輸入することで、外側から付け足すだけでは実現できない根本的な性能の向上を図ったものである。
外見上は通常のゲイツと非常に似通っているのだが、その実態としてはドレッドノートをはじめとしたザフトガンダム目であり、核動力ではないことを除けば設計上の違いにおいて大差があるわけではない、ある種のザフト製GATともいえる。
その為かゲイツ系のパーツの流用が効きやすく、整備性という面においても優れるという利点を生んだ。

また、設計の発端がハーフデュエルやハーフバスターなどであったことも影響しているのか、設計を固めるにあたってはクルーゼ隊の奪取した汎用MSであるデュエルの設計のスピンオフが行われている。

まず機体そのものについてだが、基本的にゲイツと同様である。
コクピットに関してはドレッドノート フリーダム ジャスティスを参考にモニターなどを拡張させている。
一方で基本的な操縦に関してはゲイツからそこまで逸脱しておらず、転向訓練の短縮を実現している。
防御をまず固めるために、ドレッドノートの設計を流用することで設計を大きく変えずにPS装甲を実装した。
ただし、連合がビーム兵器を一般的に使用しているということや核動力ではないことを考慮して、採用箇所に関してはバイタルパートやコクピット回りと駆動部に限定してある。
また、バックパックに関しては通常のゲイツのそれから、フリーダムやエールストライカーのようなラジエーターを兼ねたX字型の飛行翼へと換装されており、単純な出力を向上させたこととあわせ、機動性の強化を行った。そのほか、被弾率の高い箇所へのモジュール装甲の装着を可能としている。
さらに装着されているプロペラントタンクによって推進剤搭載量が増加し、ビームライフル用に装備された使い捨てのバッテリーパックの携行とあわせ、稼働時間の延長も図られた。
そのほか、各種駆動系や反応系統などは高位グレードのものが採用されている。

核動力の採用は希望されたのだが、ヴィルター隊の扱いが表向き『教導任務及び戦技研究に栄転』となっていながらも実態としては地上戦線の敗北の情報を暫く隠匿するための『左遷』であったことや、ガンダム目への利用が優先されたことで、結局実現することはなかった。この代替として特務隊FAITHから出航したジョナサン・スミスの計らいでその他の面において融通が効かされている。

武装面では、こちらもゲイツやドレッドノートからの流用がメインとなっている。
メインウェポンは取り回しを改善した銃剣付きのビームライフルとし、近接防御火器を標準化。
さらにドレッドノートと同じくビーム格闘兵装を内蔵したアンチビームシールドを持たせた。
また、メインウェポンのロストに備えて腕部には試作型のビームガンを装備し、大腿部には予備のビームサーベルを格納している。
多くの武装が他のMSと共通化されているのは、試験運用において比較実験を行う為であると同時に、ザフトの生産能力や輸送能力の低下も影響しており、部隊内での武装の単一化を進めることで、いざというときの融通を聞かせやすくするための工夫である。

679: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:05:40

総じてMSとしてはかなりスタンダートであり、総合性能はストライクをはじめとするGAT-Xシリーズを若干だが上回るというところ。
これは一見すると低く見えるのだが、機体の設計や反応性は素直そのものであり、パイロットの操縦に過不足なくついていくため、技量のあるパイロットが乗り込めば発揮できる性能はかなりのものとなる。

そも、この開発計画は特機を開発することではなく、全体的な性能向上をMS運用の効率化と同時に行うという目的であった。
事実、ヴィルターが指揮・教導を行った部隊においては練度の向上と同時に戦闘力の向上が確認されており、統合された装備も問題なく運用できたことから、改装計画の趣旨は見事に果たされて大成功と言っても過言ではなかった。
しかし、本機の性能向上は譜面的には大きく変わっておらず、そもそも間に合う兵器を全力で投じる必要のあったザフトは、この段階での兵站整理を全軍で実施するのにはあまりにも余力を欠いており、拡張実施については却下せざるを得なかった。
末期戦ということもあって、計画やプランが乱立し、それの整理が上手くいっていなかったことも要因の一つだったのではともされている。

本機の命名に関しては複数の候補があがっていたのであるが、ヴィルター本人にこねくり回した名前の採用を拒否されており、ベースとなったドレッドノートとゲイツからとって、Dゲイツ(恐るべきゲイツ)と呼称されることになった。




ゲイツ・フェザーシュラウド
形式番号:ZGF-600FS
全高:ゲイツに準じる
重量:78.3t
動力源:バッテリー+バッテリーパック
武装:
MMI-GAU2ピクウス 76mm近接防御機関砲×2
MA-M21G ビームライフル/XMA-M23A ビームアサルトライフル
MA-M01ラケルタ ビームサーベル×1
MMI-M15クスィフィアス レール砲×2
MA-MV04 複合兵装防盾システム
肩部対ビームシールド×2
ハンドグレネード

概要:
ヴィルター隊へと配備されたゲイツの試作改修機。
基本的なところはゲイツやゲイツRと変わってはいない、というか、変える必要がなかったためにそのままである。
ただし、駆動系のスマート化や肩部へのシールドの追加など、戦訓に基づいた各所に変更が行われているほか、バックパックがDゲイツ同様にX字型のものへと置換されており、機動性での強化が図られたのが窺える。
このX字のバックパックが羽のように見えることから、ゲイツ・フェザーシュラウドの名を与えられた。
本機にも次世代試作機のパーツや武装が盛り込まれており、地味に性能の底上げを実現した。

主なパイロットはヴィルター隊の古参パイロット達である。これはヴィルターが『栄転』を承諾する見返りとして、練度の高い隊員に対してゲイツの配備を要求したことに由来し、ジョナサン・スミスがFAITHからの供与という形で応じたものである。
実際問題、ジン・ハイマニューバを元にスラスターなどの増設を行った本機は扱いが難しくなっており、育成段階にあるパイロット達には手に余るものとなっていたのである。似たようなゲイツの派生型としてゲイツ・ハイマニューバが存在するが、こちらは現場で作り上げたものではなく、きちんとした正規品として開発されている。

生産数についてはゲイツそのものの需要が大きかったことや改装プランが多かったことなどから、用意されたのは5,6機程度とされている。教導隊であった特務隊FAITHから供与されたヴィルター隊を始め、他のゲイツの派生型と共に各隊に指揮官や数少ないベテラン向けに配備された。


〇XMA-M23A ビームアサルトライフル

高機動戦闘に特化したビーム兵器として開発されてたビームライフル。
ビームの射程と威力をある程度犠牲にして、速射性と取り回しの良さを優先して設計されている。
これは機動力で以て距離を詰める際の武装、という目的のためと言える。
付属品としてアンチビームコーティングのなされた銃剣も装備されており、ビームサーベルとの激突も考慮している。

680: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:06:23
ジン・ハイマニューバG型
型式番号:ZGMF-1017G
全高:20.02m
重量:79.21t
動力源:バッテリー

固定武装:
MMI-GAU2ピクウス 76mm近接防御機関砲
武装:
MA-M21G ビームライフル/試作型ビーム突撃銃
MA-M3C 重斬刀/小型対艦刀/試作型ビームトマホーク
MA-XX765 腕部試作4連装ビームマシンガン
シールド

概要:
教導任務及び戦技・技術研究を任されたヴィルター隊に配備されたMS。
本機はベース機をジン・ハイマニューバとし、そこにゲイツのパーツを組み込んだだ性能検証機である。

確かにゲイツは高性能なMSであったが、やはりザフトにおいて多数生産されたMSといえばジンであった。
アサルトシュラウドやハイマニューバあるいはD型などのバリエーションが豊富であり、戦闘兵器として長らくザフトを支え続けたジンというMSが優れたMSであることは言うまでもない。

しかしながら、実弾を主兵装としており、序盤から使われ続けたことによる弊害からすでに対策が十分にされてしまったことで、ジンというMSは急速に価値を落としていた。そこで、南米戦線において行われたようにゲイツのパーツを組み込み、旧式化した設計を改めることによって性能の底上げが図られ、その検証のために開発されたのが本機である。
これはDゲイツやゲイツ・フェザーシュトラウドと同じ部隊で運用する場合に、効率的に且つ柔軟に運用できるか、というテストも兼ねている。
その為、本機はジンの見掛けとは裏腹にビーム兵器を標準化しており、内装面での性能底上げもされている。

本機の基本構造はジン・ハイマニューバに準じているのだが、バックパックや武装、内装がゲイツと共通化されており、要求度が高かったOSや操縦系をこれまでのデータを元手にして改修を加えているために、パイロットへの負荷を軽減した。
勿論これについては異論もあったのであるが、念のための研究と試験という名目で量産されており、新兵向けに配備された。
どの程度の配備がされたかは不明であるが、戦闘停止命令後に投降したMSにはこの型のコクピットのMSが含まれていたようである。

ジン・ハイマニューバのような高性能MSを新人に割り当てるのは育成が間に合うのかという懸念もあったが、操縦系のフォローと教官役の技量もあって、促成兵としては練度の高い部隊とすることが出来た。
また、部分的に試作されていた次世代MSの武装も盛り込まれており、固定観念をうまく突くことが出来た。
これらの検証結果は末期に製造されたザフトのMSにおいて反映が行われており、焼け石に水というレベルではあったが、確かなザフト軍MS部隊への強化をもたらした。

生産数(あるいは改装数)は20機から50機程度とされている。この振れ幅が大きいのは、ジン・ハイマニューバを始めとしたジンの派生型と非常に紛らわしかったことが理由で、他の機体と混同されたためと推測されている。




ZGMF-X999FC ファントムウォーリア・カスタム
全長:20.4m
重量:83.22t
動力源:バッテリー
武装:
MMI-M633 ビーム突撃銃
MA-M8 ビームブレード /試作型ビームトマホーク×2
試作14連装ミサイルポッド
対ビームシールド×2
ハンドグレネード

概要:
ヴィルター隊に試験の為という名目で配備された次世代MSのひな型となるMS。
過剰と言えるほど搭載されていた火器は、テストの段階で無駄が大きいとバッサリ切り捨てられており、多少性能を落とすことも許容した上で、MSとして安定して動かせるように改装がなされている。

「カスタム」と区分分けするために付けられているが、一応ファントムウォーリアと呼称されている。
カラーリングはダークグレーに改められ、頭部パーツは大洋連合のMSとの見分けをつけやすくするためにジンやゲイツなどと同じく鶏冠状のセンサーが取り付けられ、形状変更がされた。

ヴィルター隊ではその形状を活かした仮想敵、あるいは武装の運用の比較検証用に用いられ、決戦となったヤキン・ドゥーエにおいては実戦投入がなされた。

681: 弥次郎 :2018/03/07(水) 19:07:02
以上、wiki転載はご自由に。
ようやくザフトサイドでのエピローグ完了。
しかし、終わりとは次の始まりでもあります。

次はL1奪還に向けてのお話じゃ!やっておかねばならん話がいくつもありますからね。
なお、L1奪還作戦自体でイントロ2話くらい、メインで最低2話、後始末に…3話?
あとはブリーフィングファイルでそれの補完をやって…ハ〇ッ!(白目
登場人物も増やさねばなりませんし、バックグラウンドを用意しなくてはなりませんな

やるもんじゃないですね、キャラじゃないことは…(主任並感
本当は好きじゃないんだ、こういうマジな勝負(長編SSへの挑戦)ってのは…
まあ、やるんなら本気でやろうか!その方が(全員にとって)楽しいだろ、ギャハハハハハ!(メインシステム執筆モードを起動します

ふと思って登場人物を見直していたら、これまでに自分の作品でジョンさんが4人も登場させていて吹きました。
ヨハン、ジョン、ヤン、ジョナサン。一番最後のジョナサンという名前の人はジョンを愛称と使うこともあるとか。
海外の名前って怖い(小並

706: 弥次郎 :2018/03/07(水) 21:12:22
とりあえず修正をお願いします

672

×サーベルタイガー

〇スミロドン

脱字誤変換修正

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2018年03月12日 15:52