クリスマス2017 しげちーのデート
「おめでとう一繁」
「頑張るのよ一繁」
「ハルカちゃんに良くするのですよ一繁」
「メリークリスマス一繁」
「待って!まだクリスマスじゃない!」
ここは嶋田さんの家。今日はクリスマス…ではなくその二日くらい前くらいです。
そして何だか雰囲気が可笑しいのです。
それもそのはず。長男の一繁君はこれから幼馴染のハルカちゃんとデートらしいです。デートですってよ奥さん!青春だわぁ。
「だってあんた今日ハルカちゃんとデートなんでしょ?」
「ちゃんとエスコートできる?大丈夫?」
「ハルカちゃんなら心配ないと思いますが、粗相のないようにするのですよ」
上から二姉、一姉、母の言葉である。しげちーへの信頼感ゼロである。悲しい。
「ひでぇ言い草だ…それにデートじゃなくて買い物に付き合うだけだから」
「それを人はデートと言うんだぞ一繁…」
お父さんが横からささやかなツッコミを入れますがそれを華麗にスルーします。現実逃避は一繁君の得意分野です。
「とにかく、俺行ってくるから。待たせちゃ悪いし」
「ファイト!」
「がんばりなさいな」
「ハルカちゃんによろしくね」
「楽しんで来いよ」
そう言って玄関に向かう一繁君へと家族はそれぞれエールを送ります。
愛されてますね。
なんやかんや言って家を出た一繁君。ハルカちゃんとはご近所ですが今回は街の駅前で待ち合わせです。
電球で輝くもみの木の下で待ち合わせです。他にも待ち合わせをしている人達がチラホラと。
「ごめん。待った?」
「30分くらいな」
「そこは素直に今来たところって言いなさいよ」
「へいへい」
待ち人来たり。木の下で待っていた一繁君の下へハルカちゃんがやってきました。
既に軽口を叩き合ってますがいつものことです。仲いいですね。
「今日は親父さんやおふくろさんへのプレゼン選びだっけ?」
「そうよ。毎年こうやって私が選んでるのよ」
「それ俺いらないんじゃ…」
「黙らっしゃい。この前のゲームで負けた時の約束よ。今日一日付き合うの。わかった?」
「了解ですよ。おじょー様」
「わかればよろしい」
二人は並んで歩きだします。
「取りあえず買い物って何買うんだ?」
「お父さんにはネクタイ。お母さんには髪飾り」
「そんじゃいきますか」
「ゴーゴー!」
そうして二人は他愛無い話をしながらもプレゼントを見繕っていきます。お店の店員さんからは案の定カップル扱いされましたが春閣下は結構口では否定しながらも顔が赤くなって内心では結構喜んでます。しかしここでしげちー渾身の鈍感ムーブで即否定。
そしてすぐさま春閣下のパンチが炸裂します。これには店員さんも苦笑い。
そんなアクシデントを挟みながらも買い物は無事終わりました。
「よし。買い物終わり!」
「プレゼント以外も大分買い込んでなかったか…」
「いいじゃない。自分へのプレゼントってやつよ」
「言っていて寂しくないんですかねぇ」
そんなやり取りをしながら荷物持ちとなっている一繁君。まあそうなるな…
「今日は付き合ってくれてありがとね。はいこれ」
「え、何…」
「ハルカ様お手製のマフラーよ。ありがたく思いなさい」
なんと買い物に付き合ったお礼として春閣下お手製のマフラーが一繁君にプレゼントされました!
これにはさすがの一繁君もびっくり。その顔を見て悪戯が成功した子供のように笑うハルカちゃん。
「あー。そのありがとう」
「うむ。どういたしまして」
「まあそのあれだ…俺からも渡すものがあってな」
「え…」
なんと一繁君もプレゼントを用意していました。ハルカちゃん用のリボンです。こいつただのしげちーじゃありません。出来るしげちーです。
「いやほら…前に新しいリボンが欲しいって言ってただろ。だからさ…少し早いけどクリスマスプレゼントってことで」
顔をそらしながらもハルカちゃんへリボンを手渡す一繁君。気恥ずかしいさ満点です。
「え、あ…その、ありがとう。大事にするわ」
予想していなかった事態に動揺を隠せない春閣下。攻める時は強いが攻められると弱いのはこの手のタイプによくあることです。ポイント高いですよ!
「じゃ、じゃあさ!せっかくだからこのリボン一繁がつけてよ」
「お、おう。いいぜそのくらい」
なんと動揺しているのかしげちーにリボン付けての要請。しげちーも戸惑いながらこれを承諾。春閣下渾身の反撃です。なお自分自身にも羞恥心のダメージが行く模様。
少々ぎこちない手つきながらもハルカちゃんへリボンをつけ終わった一繁君。両者顔が赤いです。
「に、似合ってるかしら」
「ああ。似合ってるぞ」
もうニヤニヤの止まらない春閣下。内心ではちびハルカが大勢で輪を組んで踊りまくってます。
「ねえ…さっきさ店員の人にカップルって間違われたじゃない」
「なんだよ唐突に」
「いいから聞いて。それでさ…あんた速攻否定したじゃない。あれってなんで?」
「え、そりゃ俺達そういった関係じゃないし」
「でも私みたいな可愛い子が彼女なら嬉しくない?それとも他に気になる人でもいるの?」
「まてまて。それはつまり…」
ここで春閣下唐突な攻めです。多分頭が沸騰しているためでしょう。いきなり全面攻勢です。この強襲にしげちー陣営はたじたじでろくな防衛が取れていません。
「どうなの。どうなの!」
「いや他に気になる人はいないけど」
「じゃあ!」
「いや待てって。取りあえず聞いてくれ」
ここでしげちータイム宣言です。何やら真剣な表情のため攻めていた春閣下も一旦下がりました。
「ほらさ。あれじゃん。俺達小さいころから一緒にいた幼馴染ってやつだろ」
「そうね。昔っから何からあんたとつるむこと多かったわね」
「それでさ。俺は今この関係が嫌いじゃない…というか居心地いいんだ。だからまだこのままでいたい」
「それってなに?遠回りにさっきのことへの返答?拒否ってこと?」
言葉は強いですが顔は泣きそうになってる春閣下。これにはしげちー何度めかの狼狽。
慌てて言葉を正します。
「いやそうじゃなくて…あれだ……順序があるというか…なんというか」
「順序って何!はっきり言ってよ!」
「ああもう!こういうことは俺から言い出したいんだよ!もっとちゃんとしたムードの時にさ!!」
この答には流石に春閣下も茫然。そして同時に顔がこれまで以上に赤くなります。
しげちー鈍感なのはフリだった模様。こいつは偽物の可能性が微レ存?
「だからさ。クリスマスの時にもう一度会ってくれるか。その時にちゃんと答えを言うから」
しげちー真剣な表情で春閣下に言います。閣下も思わずうなずいてしまいました。
これは既に遠回しな告白なのでは?隣で聞き耳立ててた一般通過ボブはそう思いました。
その後二人はぎこちない距離感で帰路へとつきました。
それぞれの家に帰った後でハルカちゃんはベットに飛び込み奇声を発しながらゴロゴロと転がります。嬉しさと恥ずかしさと緊張でもう感情ぐちゃぐちゃのようです。
対する一繁君の方は家族への返事もまばらに部屋へ直行。こんなはずじゃなかったと赤面しながら考えがまとまらない模様。
その後のクリスマス当日に二人がどのような会話を交わし、どのような返答を得たのかは…皆様の想像へとお任せするとしましょう。今宵はここまで。
最終更新:2018年03月24日 09:53