382: 弥次郎@外部 :2018/03/29(木) 22:40:49
大陸ガンダムSEED支援ネタSS 「行くべき場所へ」Side V

Main Staring:
<612th Special Task Unit:Traning & Technical Evolution Unit,Z.A.F.T,P.L.A.N.T.>
Ronald・Virta (612rh STU Commnder)
Egil・Rosser (612th STU eXecutive Officer)
Aurelia・Walker (612rh STU Element leader)
John・Martinez (612rh STU Element leader)

Original:Mobile Suit Gundam SEED
Arranged by:ナイ神父Mk-2氏
Written by:弥次郎





プラントにも、墓地というものは存在する。
コーディネーターとて病気にかかることもあるし、数はかなり少ないが老衰することもある。
また、宇宙での作業中に事故などで命を落とすなど割とあることなのである。むしろ、宇宙での資源を探し、採掘し、加工することが仕事の一つであったプラントでは、それに由来する死因が稼働開始以来多くを占めていた。

最近では遺体無き墓が急速に増えている。
地上戦線で戦死すれば遺体は状況によるが回収は難しいし、宇宙に至ってはどこかに流れ出ていく可能性だって高い。
そもそも、MSや艦艇に乗っている人員が被撃墜時に無事に脱出できるなどかなり確率が低いのだ。
爆発すれば人間の体など、簡単に消え失せる。だからこそ、遺体が無い墓が多くなる。

今、ヴィルター達の前に並ぶのは、南米戦線での戦死者や戦死と判断された兵の墓だった。
死亡者が多く、手間を省くためなのかいくつかの墓碑にまとめられており、そのうち一つが今ヴィルターの目の前の墓。
身の丈の3分の2ほどの高さのそれには、一体どれほどの死者が眠り、どれほどの慰霊の思いがこもっていることか。
墓地を訪れるのは、ヴィルターにとっては地上戦線に赴く前以来のこととなる。
その時は、戦死した友人へ花を供え、地上戦線に赴くことを報告するためだった。
だが、ヴィルターにとっては既に遠い思い出になっていた。

長い長い南米戦線は、宇宙での記憶を風化させるには十分すぎる苦しさだったのだ。
本国に帰還し、新たな隊の結成をジョナサンから指示されてからさらに休養を与えられたのだが、その間に無意識にシャットアウトしていた痛みや疲労が堰を切るかのようにあふれてきた。
なるほど、こういうことがあったからジョナサンは事務手続きなどを代行すると申し出たのか、と納得を得た。
また、自分達に先んじてプラントに帰国していたヴィルターの部下たちがあらかじめ用意していたこともあって、
驚くほどヴィルター自身がこなすべき仕事は少なかった。

「……」

今日、ヴィルターがここを訪れたのは、ヴィルター隊が第612STU(特別任務隊)へと置き換わったことや、地上戦線での死者を弔うためだ。その為、負傷や病気などで動けない人員を除いた、第612STUのメンバーがそろっている。

「散ることのない花、か…」

墓石に置かれている花は、ヴィルター達が持ってきたのもそうであるが、造花が多い。
プラントには生花を育てる場所もあるのだが、最近では流通量が減りつつある。
食糧生産にそういったリソースが優先されており、日常生活において必要不可欠ではない分野の人員が他の分野に動員されたためだ。
全く見かけない、というわけではないのだが、死者が増えていることもあって需要が拡大しているのに育てる人員が減っている。その結果だ。
代わりに、比較的生産が出来る造花の割合が増えている。あとから世話をする手間が省けるというのも大きな後押しになっているし、墓地の管理の手間が減るという事情もあった。自然の花ならば徐々に活力を失い、腐るのだが、人工物ならばその恐れはない。

だが、それを供えることに、ヴィルターは少し抵抗を覚える。
南米は過酷な自然があったが、同時に美しくもあった。
微妙な変化を日々重ね、やがてそれが実を結び、大きく変わる。
時に繊細に、時に大胆に。命の息吹というものを、広い世界の中で感じさせてくれる。

一方で、ここに満ちているのは時を止めたように動かず、変化しない花。
それが、なぜだか悲しくなる。人工の大地、人工の花、人工の世界。
人の叡智の結晶でありながらも、どこか自然から隔絶された、拒絶されているかのような感傷を抱く。

「隊長…?」

「……ああ、すまん。少し、な」

一足先に南米戦線から本国へと帰還させ、上層部へと報告を行わせたエギル・ロッサーの声に、ヴィルターは我に返る。
貴重な20代後半のエギルは、新生ヴィルター隊では副官(XO)としての役目が任される。
パイロットとしての歴も長く、同時に後方を支えてもらう人員となってもらうことになっている。

383: 弥次郎@外部 :2018/03/29(木) 22:41:52
先に送り出した後方人員を含む部下たちに欠員が出ていることは、少なからずショックではあった。
だが、通商破壊や妨害を受けながらもきちんと持ち帰ることができ、ジョナサンのような行動者が生まれたことはありがたい限りだ。
自分達が決して孤立無援ではない。その事実は、どれほどヴィルター達を勇気づけたことか。

「よし、献花は終わったな?」

「はい!」

「ばっちりです」

色々な声がヴィルターの耳に届く。老若男女、というには些か比重が若い方に傾いているヴィルター隊の声だ。
声と言葉。かつて、世界は神の言葉によって始まったとされる。
そして、このプラントに満ちるのは、戦争で疲弊しながらも生き続ける人間達の言葉だ。
それでも。まだ、自分たちは生きている。生かされている。
犠牲になった同胞が、形や動悸こそ違えども、今を作っている。
言葉を受け取り、声を送り、遺伝子に刻まれた暗号をバトンのように受け渡しながらも、人類は生きてきた。

(だからこそ、コーディネーターを伝える言葉を絶やすな、か…)

ジョナサンが語った言葉が、脳裏に思い出される。
プラントが滅びるとしても、そこに暮らしていたコーディネーターによってプラントという国家についての言葉は残されるのだ、と。
地球の人々が想像もつかないほどに、思想や内部の風潮などはおぞましく、奇形ともいえる進化を遂げた。
その愚かしさや、愚かしさに抗った人々の姿を、それを紡ぐ言葉を、途絶えさせてはならないのだと。
プラントはナチュラルとコーディネーターという枠組みでしか世界を見なかった。それがどれほど恐ろしいのか、過去の偉人や国家が嫌というほど言葉に残しているというのに、顧みることはなかった。

ならばこそ、それを語り継がなければならない。
生き残ったコーディネーターが、それを伝えていかなければならない。

「今は亡き英霊たちに、黙とう」

敬礼を送るのも良いが、黙とうを捧げた。
オクトーバー、バルド、リー、ルーサー、ウィアー。そのほか、数え切れないザフト兵士達。
静かに彼らに、祈る。
愚かしさを引き起こした思想の犠牲になった彼らが語ることが出来ない分、自分達が語り継ぎ、生きて行けるように。
人工の大地の人々は、僅かな平穏を過ごしていた。


【キャラ紹介】


エギル・ロッサー
年齢:26歳
人種:第二世代コーディネーター
性別:男性
制服:緑
役職:第612特別任務隊 副官
搭乗MS:ジン → ディン改 →ジン・ハイマニューバG型 ファントムウォーリア・カスタム

概要:
ヴィルター隊の比較的古参隊員であり、第612特別任務隊副官。
MSパイロットであったが、実際にはデスクワーカーも兼業していた。
宇宙戦線がひと段落して降下作戦が実施されたころからヴィルターの部下であり、地上戦線での情報を本国へと持ち替えるために先んじて宇宙へ送り出された。
第612特別任務隊に編成後には指揮官であり教官として働くヴィルターを支えるために、後方での事務を取り仕切る役目を負うことになる。

搭乗MSにはジン・ハイマニューバG型とファントムウォーリア・カスタムがあてがわれた。
格闘戦は不得意だが、射撃には適性を持つ。
地上戦線ではヴィルター隊に配備されていたディン改を操っていた。

384: 弥次郎@外部 :2018/03/29(木) 22:43:58
以上、wiki転載はご自由に。

これはやっておきたかったなぁと思っておりました…
プラントは日本とは違い文字通り無宗教なのか、それとも…

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最終更新:2018年04月01日 09:49