276 :名無しさん:2012/01/06(金) 11:39:56
→251で広げた風呂敷だけでも畳もう。



 ―――西暦二〇ΧΧ年(平成ΧΧ年) 太陽系第三惑星・地球 某所


 どうしてこうなってしまったのか。
 人々はそう思いを抱きながら、満天の星空を見上げる。
 一見すれば今までとなんら変わりない星空。
 だが、あの空で瞬く星は、ある時を境にして、飛躍的にその数を増していた。
 何故なら、人類を地球という檻に閉じ込める、無慈悲な星々が新たに加わっていたのだから。


  ――天孫たちの憂鬱・星の檻――


 地球人類が己とは異なる己――異次元の地球に由来する星間国家、大日本帝国と接触したのは十数年前の出来事だ。
 当初、大日本帝国は地球に対し、『事故』ワープゲートの閉鎖処理が完了するまでの間、
互いに過度な干渉を行わない、とする内容の提案を行なった。
 そして、この提案を受け入れた場合、古い技術――地球から見れば最先端という言葉を
余裕で超越するものだが――を無償で提供するとしたのだ。
 尤もどちらかと言えば、提案というより通告に近かったかもしれない。
 大日本帝国からすれば、文明レベルが世紀単位で離れ、尚且つ縁も情もない異なる次元の地球に配慮する理由はない。
 実のところ、『事故』を処理するまで彼らを無視し続けるという選択もあった。
 彼らが何かをしたところで、その何かを掃える、あらゆる力が大日本帝国には備わっているのである。
 それを敢えてしなかったのは、日本人特有の義理堅さが関係していた。
 所謂『事故』処理の過程で迷惑が及ぶかもしれない近隣住民への配慮。
 彼らの地球への行為はその延長線上にあったのだ。

 だが、これが思わぬ不幸を招く。
 大日本帝国の行為を平身低頭、と誤認した地球の国家の一部が厚顔無知にも『事故』に対する更なる謝罪と賠償を求めたのだ。
 しかも何故か地球という対象ではなく、自分達だけを対象に。
 流石にこれ以上は周囲が止めるだろう、という考えがあった大日本帝国側は一応、国家として取らねばならないポーズである
遺憾の意』を示しつつ、彼らを無視してワープゲートの閉鎖実験に注力する。
 しかし、この『遺憾の意』でさらに勘違いを拗らせた一部の国家は周囲の制止を省みずさらに暴走。
 そして<長征>領宙侵犯事件と『事故』処理作業船団への核弾頭投射事件を経て、ついに大日本帝国は一つの行動を取った。

277 :名無しさん:2012/01/06(金) 11:42:19
 それが大日本帝国航宙軍が保有する廃棄寸前の旧式迎撃衛星の地球周回軌道への大量投入であった。
 レーザーから実弾まで、ありとあらゆる方法で大気圏離脱を試みる全ての物体を迎撃するよう設定を変えられたこれらの迎撃衛星群で、地球の挑発を完全に封じたのである。
 最早、そこに最初の慈悲はなかった。
 これで地球を気にせずに済むようになった大日本帝国はやがて『事故』処理を成功。
 『事故』ワープゲートごと、異次元の星空から姿を消した。
 後に残ったのは、壮絶な内ゲバに突入した地球と、地球を包む星の檻だけであったという。

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最終更新:2012年01月28日 19:12