344 :yukikaze:2012/01/07(土) 18:33:34
おかしい・・・
ドイツ海軍の活躍書くつもりだったのに、何で「ロイド=ジョージ無双3」に
なってしまったんだろうか・・・
しかし、直に終わらせるはずだったのに、書けば書くほど展開がgdgdになっている
と思う。少なくとも1943年8月15日に終戦は迎えられんわ。
駐英
アメリカ大使であるジョゼフ=ケネディにとって、現在置かれている状況は
全く持って面白いものではなかった。
彼は、ロングの再選に際して、多額の資金援助を行った褒章として駐英大使に抜擢をされ、
そして第二次大戦における英国の敗北を予見したとして、政府内より称賛を浴びることになった。
以来、彼は第二次大戦休戦後、露骨にすり寄りを見せるイギリス政府に軽侮の念を抱きながらも、
イギリスの足元を見つつ、様々な要求を突き付け、イギリスにおけるアメリカの影響力強化に邁進をしていた。
彼にとってはまさしく得意の絶頂であっただろう。彼はこの実績をもとに、次の選挙において、
主要閣僚に任じられ、そして最終的には自分の息子をホワイトハウスの主にする野望が実現できると確信していたからだ。
しかし、彼のこうした野望は、1942年8月15日を以て終わりになる。
大西洋大津波によって、アメリカの軍事・経済力が多大なダメージを受けたこともさることながら、
彼が一番目をかけていた長男が、大津波の救助の指揮中に事故で犠牲になってしまったからだ。
多くのマスコミが『避難民を助けるべく最後まで奮闘した若い士官』と大々的にキャンペーンをすることで、
ケネディ家の名声は上がったものの、ジョゼフにしてみれば、将来を渇望されていた長男の死はやはり痛いものがあった。
そして、失意の彼に追い打ちをかけるように、祖国は大陸で、フィリピンで、太平洋で日本に対し連戦連敗を続け、
その結果、これまで彼が築いてきたイギリスへの影響力も急落することになっていった。
無論、彼もこうした事態を座視していたわけではなかったのだが、如何せん、強気に出れる後ろ盾であった祖国の軍が連敗し
続けている中では、彼の強気の発言も虚勢でしかなく、これまでの傲慢な態度も災いして、その凋落ぶりに歯止めがかからなくなっていた。
その為、ホワイトハウスではケネディ召還を求める声が日増しに高くなっていった。
もはや彼は英米関係において何の益ももたらさないとして。
追いつめられたケネディが活路を見出したのは、ドイツとの関係強化であった。
彼は戦前からヒトラーに対して好意的な態度をとり続けており、ドイツに対して
それなりのパイプも作り上げてはいた。
そしてケネディは、ドイツとの関係を強化することで、英国の孤立を図り、
最終的に英国をすり寄らせることができると進言したのであった。
このケネディの提案は、ホワイトハウスにおいても妥当であると見なされ、
これによりケネディの首はすんでの所でつながったのだが、
それもハワイ沖海戦で太平洋艦隊が消滅したことによって、画餅となることになる。
後に残ったのは、イギリスのアメリカへの不信感だけであった。
そんな彼が未だに駐英大使になっているのは、関係が加速度的に悪化している米英関係において、
駐英大使に手を上げたがる存在がいなかったからに他ならなかった。
誰だって貧乏くじは引きたくないのである。
鬱屈した感情を抱いていたケネディが、イギリスのキューバ侵攻とワスプ撃沈の報を聞いて
ダウニング10番街に抗議に出向いたのは、そうした鬱屈を吐き出す最高の場面であると
思ったからかもしれなかった。
345 :yukikaze:2012/01/07(土) 18:36:20
「これはいったいどういう事ですか。首相閣下。ご説明いただきたい」
憎々しげに怒声を浴びせるケネディに、ロイド=ジョージは片眉を上げただけで、
紅茶の香りを楽しんでいた。まるでそこにケネディがいないかのように。
そしてそんな態度に余計にケネディはいら立つ。
「我が国の租借地であるグァンタナモの占領。そしてワスプ撃沈。
これはれっきとした戦争行為に他ならない。我が国としては断固として抗議させてもらう」
「要件はそれだけかね」
うるさいハエが近くを飛んでいるような表情で話すロイド=ジョージ。
ケネディの抗議なんぞ、この銀狐にとっては何の感慨も沸いていないようだ。
むしろその眼からは「こんな下らないことで時間を取らすなよ」と言わんばかりの
軽侮の色さえあった。そんなロイド=ジョージの姿に、ケネディはますますいきり立つ。
「それだけとはどういう事か!! 貴国は我が国に対して何をしたのかわかっているのか!!」
「ほう? では大使閣下に説明していただこうか。我が国が貴国に何をしたのかを?」
全く余裕の表情を隠さないロイド=ジョージに、ケネディは掴み掛りたい衝動を必死に抑えながら言葉を続ける。
「ならばもう一度言おう。我が国の租借地であるグァンタナモを含むキューバ占領。これは我が国に対する戦闘行為である」
「キューバ政府から我が国に支援と保護の要請があるのだがね。アメリカが碌に支援も保護もしないので、我が国に頼むと。
我が国はそれを受け入れたにすぎんよ。あくまで人道的な立場からの行動だがね。それを貴国は戦闘行為というのかね」
実に嘆かわしいという表情をするロイド=ジョージ。
「その証拠はどこにもあるまい!!」
「やれやれ疑い深い事だ。ではこれを見給え」
そういって、ロイド=ジョージは、机の引き出しから一枚の書類をケネディに見せる。
鼻を鳴らしながらそれを読むケネディであったが、読み進めるうちに彼の顔は蒼白になる。
そこには確かに、キューバ大統領の名のもとに、ロイド=ジョージが発言したことが要求されていた
事であったからだ。
ご丁寧なことに、アメリカのグァンタナモの租借条項を一方的に破棄することまでつけて。
「このような宣言など認められるわけがなかろう」
「貴国が認めようと認めまいと、これは我が国とキューバ国という
独立国の間で結ばれた条約。我が国はそれを誠実に守るのみ」
これまでのロイド=ジョージの所業を見ると、どう考えても「(大英帝国の利益には)誠実」
なのだが、幸か不幸か誰も突っ込む人間もいない。
「ならばワスプ撃沈はどうなのだ!!」
「我が国が撃沈したという証拠でもあるのかね」
「大西洋海域に潜水艦を展開できるのは貴国位だろうが!!」
勢い込むケネディに、ロイド=ジョージは「不作法者め」と言わんばかりの視線をしていたが、
溜息をつきながら言葉をつづけた。
「それでは単なる憶測にすぎん。勝手に人のせいにしてもらっては困るね。
大体、大西洋に展開するのならば、他にも国はあるではないか」
「そんな国がどこにあるというのだ」
「貴国だよ。大使殿」
346 :yukikaze:2012/01/07(土) 18:39:01
揶揄しきった声に、一瞬言われた意味が分からずキョトンとするケネディであったが、
意味を理解すると猛然と反論する。
「馬鹿な!! 我が国が自作自演をしたと言うのか!!」
「憶測だけで述べるならばそれもありだろう。そもそも貴国は自作自演が得意ではないか。
メイン号事件しかり。そして満州での一件しかり」
「下らん。実に下らん。我が国にとって何の意味があるのだ」
「意味はあるさ。何しろ貴国は国内の世論が二分されつつあるからな。新たに敵を作ることで、
国内の和平派に「もう和平は無理だ」と思わせる。強硬派がよくやる手ではないか」
実に楽しそうに話すロイド=ジョージに、ケネディは怒りに満ちた顔でにらむも、内心、不安を覚えていたのも
事実であった。政府内の状況に疎くなっていたのが原因であったが、彼はそういった不安を振り払うように、
さらに強硬に問い詰める。
「あくまで貴国は責任を認めないおつもりか」
「勝手に言いがかりをつけられているのに、何で貴国に責任を認めなければならないのかね。
貴国は1942年8月から何も学んではいないのかね」
完璧に馬鹿にしきったロイド=ジョージに、ケネディはとうとう我慢の限界を超えた。
彼は自分が持っている最後のカードを突きつける。
「貴国がこのような破廉恥な態度に終始するというのならば、我が国は貴国に宣戦を布告
するのも辞しませんぞ。これは本国政府の意思でもあります」
ケネディにしてみれば、これでイギリスは慌てふためくと判断していた。
彼がそう思うのも無理はない事で、何しろイギリス側も大軍を北米に派兵できるだけの余力もなく、
そしてそうであるが故に、バンクーバーを占領しても、経済制裁以外のリアクションはなかったからであった。
カナダの安全を守るためならば、戦争など望まない、ケネディはそう判断していた。
だが、内心そうほくそ笑んでいたケネディへのロイド=ジョージの回答は簡潔であった。
「よろしい。では戦おう」
まるでレストランでメニューを頼むかのように、何でもない事のようにロイド=ジョージは告げる。
それとは対照的に、ケネディの顔つきは、信じがたいものを見るかのようなものになっている。
「ご苦労でしたな大使殿。大使殿の外交官特権は今より24時間後に消滅します。さようなら」
そういうと、傍らの衛兵に対して、「大使殿はお帰りだ。丁重に案内して差し上げるよう」というと、
未だ呆然としているケネディを部屋から退出させる。
ややもすると、ドアの向こうから、我に返ったのか、しきりにケネディの声が聞こえてきたのだが、
衛兵は忠実に職務を果たしているのか、徐々に声は遠ざかっていく。
もっとも、ロイド=ジョージは、ケネディなんぞもはや歯牙にもかけてはいなかった。
彼のなすべき仕事は多いのだ。一人の粗野なヤンキーにこれ以上の時間を費やす必要性などもうなかった。
347 :yukikaze:2012/01/07(土) 18:41:10
「全く・・・分家のドラ息子にはろくな人材がいないと見える。もう少し会話で楽しませてほしいものだよ」
すっかり冷めてしまった紅茶に口をつけながら、ロイド=ジョージはひとりごちる。
そんな老宰相の姿に、先ほどまで一言も口を開かなかったイーデン外務大臣が尋ねる。
「しかしよろしいのですか? アメリカと戦争状態になるということは、カナダに対してアメリカ軍が
これまで以上に軍を派兵することに繋がりませんが」
イーデンの心配も無理はなかった。
英米が戦争状態になった場合、アメリカが恐れるのはカナダからの航空攻撃であろう。
そしてアメリカはそういった危険性を除去する為に、大規模なカナダ侵攻作戦を発動させる
可能性は無視することはできない。
だが、ロイド=ジョージはそういった心配にうんざりとした声を上げる。
「君。それについてはもう何度も話し合ったはずだよ。既に賽は投げられたのだ。
決断に躊躇してしまったら、ブルータスのごとく破滅しかないよ」
「ですが・・・」
尚も言いつのろうとするイーデンに、ロイド=ジョージは心底うんざりしていた。
この男が心配しているのは、カナダの被害ではなくて、そこから来る議会や民衆からの
反発の声でしかない。世論などというものは利用するものであって、振り回されるものではない
という初歩中の初歩すら理解できていないとは、大英帝国の政治家も落ちたものだと。
「心配せずともアメリカ軍はあれ以上の侵攻は出来ん。したくてももう不可能なのだよ」
そういって、ロイド=ジョージは机の上で折りたたまれていた地図を広げ、それを見つめる。
そこには、大まかであったが、アメリカ軍の配備状況が書かれていた。
陸空の主力部隊は西海岸から中西部に配備され、東海岸や南部地域は比較的錬度の低い部隊ばかり。
治安維持や短期間の防衛戦闘くらいであろう。
「さて・・・仕事を進めるぞ。演説に駐英日本大使との会談もしなければな。ああ。ドイツ大使にも
非公式に礼を言わねばならんな。貴国のUボートは大変良い仕事をしたと。後は東海岸での通商破壊作戦にも
期待しておりますとな、と。まあ・・・伍長殿の海軍の手助けを得ないといけないというところが、
大英帝国も落ちたものだと嘆きたい気分だがね。それと、例の件もだ。現地での行動を開始してくれ」
そういうロイド=ジョージの目線の先にあったのは、「メキシコ」と書かれた土地であった。
最終更新:2012年01月25日 19:58