492: 影響を受ける人 :2018/03/24(土) 23:00:17
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。というか、ほぼメアリー・スー状態です。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
流血・グロイ表現が有ります。
それでも良い、という方のお読みください。
今日、坂本美緒と竹井醇子は、病院を訪れていた。
入院している親友を見舞う為に、ようやく時間が取れたのでやってきたというわけだ。
扶桑海戦後、激闘の疲れがドッと出た学兵組は、全員もれなく基地に到着した後眠りについた。
というか、寝室までどうやって歩いたのかわからない。
後から聞くと、ちゃんとに返事をしたというのだが・・・
無意識と言う物は恐ろしいものだ。
翌日の昼まで寝続けた一同は、旗本サエの怒号により飛び起き、急いで書類を作って提出した。
その書類もあまりい出来ではなかったため、旗本の怒号が再び木霊したという。
そんな事がったが、缶詰にされた北郷章香よりかはかなり良い。
「・・・思っていたよりも雰囲気が暗くないね。」
「うん。初めてきたけど、明るくて暖かい感じがする。」
初めてきたウィッチ専用の医療病院は、木造で窓が大きいと言う事もあってか明るめだ。
中にはちょっとした庭が有り、ちょうどよいサイズの木は、夏場にはよい日陰を提供してくれるだろう。
ベンチに座って日向ぼっこをしているおばちゃんもいれば、義足に慣れる為に歩いている同年代の少女もいる。
あの子は学兵だろうか? 見た事が無いので法術士学校の方かもしれない。
古くからある由緒正しい病院で、九曜葛葉が責任をもって設立した。
魔力特有の病気もさることながら、魔法を使った治療を研究する研究所の側面も持つ。
産婦人科もあったりするので、ある意味総合病院とも言えた。
清潔ながらも、木の温もりを存分に味わえる廊下を歩いて行き、目的の場所にたどり着く。
扉を叩くと、中から返事が来た。
すぐさま扉を空けると、中では若本徹子が義手を使ったリハビリをしていたる最中だった。
「あれ? 御袋たちかと思ったのに。」
「「・・・ッ!?」」
思わぬ来訪者に驚きの声を上げた徹子であったが、二人はあまりにもガラガラ声になった親友の声に驚いてしまった。
更に容姿も変わっていた。
前髪以外の髪の毛が白くなり、左目が血のように赤い。
「ようやく暇になったからね。お見舞いに来たんだよ。」
「徹子ちゃん。リハビリ進んでる?」
変わり果てた親友の姿におもわず泣きそうなった美緒であったが、何とか堪えて花束を渡す。
徹子は礼を言いつつも、醇子に対して苦笑して答えるて病院食に文句を言う。
「味が薄くってさ。食べた気にならないんだよ。」
「そうなの?」
「そうなんだよ。だからさ、売店で何か買ってきてくれないか?」
ねだって見たが、二人とも苦笑して窘めるにとどめた。
その反応がわかっていたのか、あっさり諦めてリハビリの続きを始めた。
リハビリの内容は“【念動】用いて義手を動し、折紙を丁寧に折る”事。今のところ成功したのものは無い。
以前にも述べたような気もするが、ウィッチは基本的に全ての事を行える。
全てとは、現在特殊能力と分類されている能力全般だ。
【未来視】【空間把握】【怪力】【発火能力】等々、これらの能力をウィッチは普通に行使で来ていた。古代のウィッチ、ウィザードたちは、
それを確認した九曜葛葉は、その能力を維持しつつも血統を絶やさぬようにしようとした。
不老長寿である彼女に時間は大量にあり、実行するのにも陰陽師であった事もあって、この計画はすんなり進んだ。
それでも多少の劣化は有ったものの、他国に比べれば遥かに高水準のウィッチが存在出来ている。
ウィッチの数も原作よりも増え、まさに計画通りと言えよう。
その計画の成果により扶桑皇国のウィッチは、四肢が欠損したとしても【念動】により義肢を動かす事が様に出来た。
特化タイプに比べれば、圧倒的に性能は低いのが玉にきずであるが・・・
もちろんそれ相応の訓練が必要だが。
あまり良い話ではないが、体に障害を負ったウィッチは、能力が発現したり強化される傾向が強い。
徹子もその例にもれず、身体強化の一つである強くなった【念動】を、必死に用いて腕を動かす訓練をしている。
493: 影響を受ける人 :2018/03/24(土) 23:01:03
木製の、球体関節の腕は、不出来な作り物にみえて違和感がどうしても拭えない。
肩口から整えられた傷口のせいとはいえ、どう口にしていいかわからない。
「ねぇ・・・「後悔してない。」え?」
それでも口を開いた美緒だったが、リハビリをしながら徹子は断言するように言った。
「後悔していない。って断言して言えばいいんだけどな・・・」
彼女の顔は泣きそうで、それでも笑っていた。
「あの時の判断は間違いじゃないと思っているぜ。ただ腕が無くなったのは・・・正直キツイ。
あの後。俺が目を覚ましたのはこのベッドの上だった。
御袋が花瓶の花を取り換えてくれていてさ。ちょっと「御袋」って言ったら涙を流して抱き着いてくれたんだ。
んで、抱き返そうとしたんだけど・・・腕が無い事に気が付いてさ。
もうパニックになって、声がおかしくなっているし、身体もまだ痛かったし。
結局鎮静の呪歌で強制鎮静。そのまま眠らされて、翌日起きたら状況説明。
戦争は二週間前に終わったって聞いて・・・安堵したのと同時に、御袋が泣いているのを見て、罪悪感が半端なかった。
説明を聞いている分じゃ、生きているのが不思議だって言っていたよ。
体中が機能不全。もう・・・・・・二度とウィッチの仕事には関われないってさ。
一般の仕事も支障が有るくらい、体が不自由なままなんだってさ。
実は視力も下がっているんだ。だから二人顔がマトモに見えないから、声で判断している。
再契約出来たけど、首筋を噛まれるそうになった。まぁ・・・無茶して、使い魔死なせたしな。」
「「・・・・・・」」
一気に心の内を打ち明けた親友に、二人は何も言えない。
言えるはずもない。なぜなら・・・
三人の中で最もウィッチとして活躍したがっていたのが徹子であり、美緒と醇子はそうでも無かった。
事変に関わったのも、その辺の気持ちが高かったこともある。
三人は一塊となって戦争を生き延び、五体満足でいられたのはその気は無かった二人。
「それで、本当に様子を見に来ただけなのか?」
「う、ん・・・」
沈黙が部屋を包み込む。
結局三人はそれ以上の会話をせず、面会時間が過ぎ去って二人は帰った。
一人残った徹子は黙々と折り紙を折り続ける。
三角形を作ろうとするが、手加減を間違えてクシャクシャにしてしまう。
広げては整え、三角形を作ろうと対角線上を折ろうとする。
失敗。直す。失敗。直す。失敗。なおs
「ああああああああアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!!」
折紙をグシャグシャに丸め、ゴミ箱の方に投擲するが入らない。
そして癇癪が爆発した子供の様にベッドの上で暴れ始めた。
と言っても自由に動くのは義肢の腕のみ。両足はギシギシと軋みを上げて曲がりにくい。
腰からは激痛を、視界は涙で曇って更に見えず、声は壊れたまま。
力任せに振り回した義肢が、ベッドの手すりに何度も衝突する。
何度も。何度も。
泣いているのか、怒り狂っているのか、悔しいのか・・・
乱暴に叩きつけられ続けた義肢は、とうとう耐久力を失って壊れていく。
その光景が、徹子には無くなってしまった自分の未来にしか見えなかった。
―――――
あの後、病室にやってきたガチムチナース(どう見ても男に見える←失礼)に取り押さえられ、新しい義肢を取り付けられた。
こういう事は多発しているので、病院側としては日常茶飯事。
しかし徹子の陰鬱とした気持ちははれる事は無い。
これからどうすれば良いのか。何をすればいいのか。残された時間はいかほどなのか・・・
取りあえず。肉親と親友が見舞いに来た時は明るく元気に振舞う事にはした。
人柄を知る者達から見れば、無理に空元気を振りまいているとわかってはいたが・・・
リハビリは順調に進んで行き、折紙も何とか鶴を折りあげられるまでに上達。
歪ではあるモノの、ホッと一息を吐くぐらいには小さな達成感を得る事が出来た。
そんな時に、真嶋志麻と旗本サエがやってきたのは。
「ぎはははは! 見舞いに来てやたz〔ドゴォ〕グガァ!?」
「・・・病院だ。静かにしろ。」
「あ、相変わらずですね。」
ちょっと冷や汗を流しつつも、旗本が差し出した土産を受け取る。
殴られた側頭部を撫でつつ、真嶋が椅子にどっかり座ると、まじまじと義肢を見詰め始めた。
「あの・・・やっぱり珍しいですか?」
「あに緊張じてんだ。いつも通りにじやがれ。」
ガシガシと頭を撫でられたが、怪力を誇る猛女の手は、傍目から見ると首をもぎ取る様に見えるので心臓に悪い。
ついでに徹子も首が取れるのではないかと、撫で終った時に首と頭をさすってくっ付いてないか確認した。
よかった。繋がっている。
494: 影響を受ける人 :2018/03/24(土) 23:01:35
「ほっ・・・」
「なに安心してんだ?」
何故安心したような顔になるのか理解できなかったが、真嶋は義肢を握っては離し、握っては離す。
そして上下に振るったかと思えば、左右に振るう。
何をしているんだろうともっていると、いきなりデコピンが飛んできた。
「ごぁ!」
「うぉぉぉぃ・・・」
首が吹き飛ぶような衝撃が走った。鍛え上げた猛獣女の攻撃力は、軽い威力の凸ピンでさえ凶悪だ。
痛みにもだえる徹子に対し、当の本人は物凄い不機嫌。
「な、なんですか・・・?」
「こんなフニャフニャで、物事が出来ると思うのがぁ?」
「フニャフニャって・・・」
抗議するように義肢で額をさすっていたのだが、真嶋はその義肢を掴んであっさり離されてしまう。
「こいつには“芯”がねぇんだ。だから力も込められてねぇし、ぎこちなく動く。」
見てろと言うと、細い縄を二本取り出して右手で握りしめる。
その途端、二本の縄は折紙を素早く織り上げていく。よくよく見れば五指に相当する部分もあった。
じっくり見た事が無かったが、真嶋の【疑似椀部】は只の縄なのにピンと張り、本物の腕の様にきっちり柔軟に動いている。
まさに “腕”と言う動きそのもの。そう言っておられた折紙は、
「なんでユニコーン???」
「俺が知っている中で、一番難易度が高い奴だ。」
「・・・以外に器用なんだ。・・・料理も北郷隊では二番目に上手い。」← 一番上手い
知らなかった。いや、そうではない。目の前の人物は“手に持った”縄で、見事な作品を織り上げた。
恐る恐る義肢で縄を掴んでみると、縄の柔らかさは有るがしっかり固定されていて微動だにしない。
自分の義肢の方が引っ張る力に負けている。
「俺も最初の頃は苦労したぜ。なにせ人間は腕二本。更に腕を増やすわけなんだがらな。
慣れるために本当の腕を縛って、生活もしたぜ。
物は試しだ。ちょいと動かすぞ。」
軽く笑いつつも徹子の後ろに回り、最中に手を当てた。
そして、何か温かいモノが流れ込んでくる。これは魔力を融通する時、もしくは同調させるときの感じだ。
了承を得る前に両腕を動かす。前方に手を伸ばす。次は腕を上げる。右腕はまげて、左腕は下げる。
色々動かした後、正拳突きの格好になり、〔パンッ!〕と言う音が鳴るくらいの速度で拳が撃ちだされた。
「どうでぇ。訓練すりゃ、これぐれぇは出来るぞ。」
「すごい・・・」
義肢で出るとは思っていなかった正拳突き。しかし・・・表情は驚きから回復しても、優れはしない。
その顔の前に、無表情の旗本が立った。
「・・・お前が義肢をうまく使えていなからと聞いて、コイツを連れてきた。
・・・が、それ以前の問題だな。
・・・お前は自信を損失している。
・・・腕が無くなった、もう戦えない。 ・・・体が痛む、助けてほしい。
・・・私が知るお前は、痛みに怯えて怯む奴ではない。
・・・誰よりも果敢に攻め、誰かの痛みを忌避する奴だ。」
「でも。お、れは・・・ もう、そんなにきられない」
弱々しく反論しようとし、その様子が気に入らなかったのか胸蔵を掴んで自分の方に寄せた。
旗本の顔は、感情があふれ出た憤怒に歪んでいる。そんな顔、怒っていた事もあったけど見たことなどなかった。
495: 影響を受ける人 :2018/03/24(土) 23:02:22
「・・・寿命が短くなった? ・・・人間にかかわらず、生まれ落ちたものはすべからく死ぬ。
・・・必ずだ!
だが、今すぐ死ぬわけではないだろうが! そんな辛気臭い顔されればこちらが死にたくなる!!
腕が無かろうとお前には、考える事が出来る頭が有るだろうが! どこにでも行ける足が有るだろうが!!
寿命が十年しかない? 蟲の寿命は一年にも満たん。それ以上に長く生きられるだろうが!!
足掻け! 生きて、生きて、生き抜いて!! 自分が生きた証を!!!
自分が誇りを持って行ける勲章を見つけてみせろ! 作ってみせろ!!
凡人の私とは違う才能あるお前が、ここで挫けてどうする!
戦争を知ったお前が、後世に伝えないでどうする気だ!!
友の死を無駄にするんじゃねぇ! 自分の決断に負けるな、糞が!! 後悔なら死んでからしやがれ!!!」
興奮していたせいで最後は荒い言葉使いになってしまった事に気が付いた旗本は、大きく深呼吸をすると「顔を洗ってくる。」と言って出て行った。
物静かな女性の変貌に徹子は茫然としていたが、真嶋の方は目を丸くしただけで苦笑するにとどめた。
「旗本さんが、ああまで怒るなんて早々ないぜ。あの人なりに心配していたのざ。
普段から「自分は長く生きた分の経験しかない」なんていう人だかんな。
才能ある奴が羨ましくて、妬ましくて、正しく導いてやりたいのざ。」
「俺は・・・」
どう答えて良いかわからない徹子の頭を、ポンポンと軽く叩いてやる。
「答えを急に出すんじゃねぇ。じっくり考えな。」
そう言って旗本の様子を見に出て行った。
その後ろ姿を見て、家族の様子を思い出して、親友達の顔を思い出して、足りない頭で考え続ける。
答えは帰ってきた二人による指導の間には出なかった。
ただ、心の中に熱い火が生まれた。たとえ小さな火でも、くべられる物さえあれば燃え続ける。大きく。
以上です。
徹子の話の他に書く予定だったのに、彼女の話だけで埋まってしまった。
な、なぜだ?←A:ネタが少ないから
最終更新:2018年05月06日 13:31