615: 影響を受ける人 :2018/04/08(日) 21:00:00
この作品にはTS要素が含まれています。
オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。
最低系である最強要素があります。というか、ほぼメアリー・スー状態です。
オリジナル設定、個人的解釈が入っています。
それでも良い、という方のお読みください。
「大佐。」
「なんだい。」
「こちらを睨んでくる教員がいるのですが・・・」
「まぁ。こちらは学生を徴収して、戦場に送り込んだ張本人だからね。」
「いえ、そうではなく・・・ なんというか、『昔の落とし前、付けてやる』っていう感じなのですが。」
「若いって、素晴らしいと思わないかい?」
「大佐が上級生ぶちのめして、病院送りにしたことは本当だったのですね。」
「ついでに言えばぁ。銀蠅しては、生徒に売りさばいていたとかぁ?」
「北郷。旭川。仕事を増やされたいのかい?」
「「申し訳ありません。」」
上司の静かな怒りに、部下の二人はすぐさま降伏する。
そんな二人に内心で溜息を吐きつつも、しっかり前を見据えていた。
今日は母校である導術士学校の、卒業式なのだ。変な事など出来はしない。
それに、いけ好かない田中の奴もいる事だし。
上司がそんな事考えているのを予測しつつ、北郷章香は視線を動かす。
姿良く見えないが、海軍から九鬼嘉明・山本五十六・古賀峯一・堀貞吉と言った面々。
陸軍からも東条英機・杉山元・柴田勝義・本多誠忠と言った面々。
ハッキリ言って、かなり偉い重鎮ばかりだ。
正直言うと胃が痛い。この中で大佐の階級なのは自分と水瀬大佐。
そして田中大佐に江藤敏子。
まあ。軍部の重鎮が集まるのも無理はない。
この戦争により、散らなくていい命が大陸で消えていったのだから。
いかに政府の決定と言えど、軍部を見る目はキツイ。たとえそれが、軍事関連が多い導術士学校であろうとも。
後ろを見やることは出来ないが、坂本美緒・竹井醇子の他に、飯島凛・山田里子の両名もいる。
法術士学校だった二人は、本人達の希望もあって導術士学校に移ってきた。
若本徹子の代わり・・・と言うわけではないだろうが、坂本・竹井両名とよく絡んでいるという。
大久保小毬は法術士学校に残ったそうだが、将来は軍人になるとか。
才能を知る分楽しみであり、殺伐とした世界に引き込んでしまった事に後悔の念もある。
しかし、目標を決めたのならば、応援する事はやめるつもりもない。
「そう言えば、若本徹子って言ったけ?」
「はい。若本がどうかしましたか?」
「終盤にあんなことして、病院に担ぎ込まれて両腕損失だろう?
女の身で、子持ちの私としちゃぁ・・・ ちょいと気になってね。」
若本徹子。
自信の寿命と引き換えに、強大な力を行使した少女。
結果は突撃路の確保と、両腕の損失であり・・・成果に見合うかどうかわからないものだった。
当初聞いた話では、情緒不安榮な所があったらしいのだが・・・
「今は元気に勉強をしています。」
「勉強? 何か、目標でも見つけたのかい?」
「恐らくはそうかと・・・」
今や徹子の部屋は本が大量にあり、片っ端から自分が習得できることを探しているという。
更にリハビリにも積極的になり。他の入院患者が影響されて、必死になっている。
将来的に杖さえあれば歩けるようになるのが目標だとか。
この話を聞いた大佐が、珍しく微笑んだ。
「へぇ・・・ 前向きに生きる様になって、結構じゃないか。」
美しく微笑む姿に、部下二人が呆然としてしまった事に気が付き、小さく睨み付ける。
御馬鹿な部下たちは、すぐさまシャキン!とした姿勢をとってみせるが、鬼の上司は小さく呟く様に口を動かし、
「仕事追加。」
「「そんな殺生な・・・」」
部下を撃沈してみせた。
604: 影響を受ける人 :2018/04/07(土) 23:21:18
―――――
そんなアホなやり取りを見ていた田中ウメは、内心で深い溜息を吐きつつも冷徹な目でゴミを視界に入れないように、前を向く。
「まったく、あの馬鹿は・・・ 今日は神聖な卒業式だというのに。」
「そうですね。」
「そう言えば、加東圭子の容態はどうですか?」
「物理的な問題は打ち身に擦り傷です。軽傷なので問題ありません。
問題は魔力に関する症状です。
魔力枯渇症と魔力導流擬痛症、能力持ちによくある魔導脳不快症ですね。」
魔力枯渇症は脱水症状な状態であり、水分をこまめにとればいい物理的な解決方法が無い。
強制魔力回復薬を大量に飲んだ際に起きる副作用で、強制回復していた分、長期にわたって魔力の回復が起こらないのだ。
魔力枯渇による脱力感と気怠さが遅い掛かり、食べ物を受け付けにくくなってしまう。
この症状が発症した際に併発するのが、魔力導流擬痛症。簡単に言うなら神経痛だ。
某運命な境界の月姫な世界にある魔力回路のようなモノが、強制回復による圧力上昇によって耐え切れない部分が肉体の各所に現れる。
赤く張れ、下手に回復魔法を掛ければ更なる激痛に悩まされてしまう。昔ながらの薬草学による対処以外ない。
魔導脳不快症は能力持ちによく起きる症状。簡単に言うなら頭痛。
某運命なぐだ男に盾子の世界にある魔力回路のようなモノが、能力の過剰使用によるオーバーヒート状態になっている。
普段ならしばらく安静にすれば治るのだが、魔力導流擬痛症が発症しているのが問題だった。
併発した事により、頭痛がより悪化した状態で襲い掛かってくる。
眩暈も起きて、視力も低下しているとの事。
時間を掛ければ治る見込みは有るがこうなった以上、彼女が望むように退役させるしかないだろう。
何時治るのかわからないし、訓練にも参加できないのであれば仕方がない。
「航空母艦に緊急着陸し。さらに墜落したと報告を受けて、どれだけ心配したか。」
(本当かなぁ・・・)
水瀬ササリ大佐と比べると、どっちもどっちのような気がする。
章香に聞くと、厳しさも同じくらいだし。
「なにか、気に障る事を考えていませんか?」
「いえ。なにも。」
この人も、どうやって心の中を探っているのだろうか?
「さて、そろそろ無駄口を止めましょう。」
「はい。」
―――――
卒業式が開始されると、進行役の声と音楽隊の演奏のみが会場を支配した。
厳かで、別れの悲しい感情により、なんとなく暗い印象を受ける。
それでも笑顔で上級生を見送ろうと、下級生たちはぎこちない笑顔を浮かべていた。
静々と進行していき、何事も無く卒業証書を手渡しできる生徒は全て終わった。
そして、学園長が壇上に上がった。
「皆さん。御卒業おめでとうございます。
ウィッチになり、目標を見つけられた方。
まだ、目標を見つけられない方。
ウィッチになれなかった方。
前に進むことを止めない限り、道は続いて行きます。
可能性は誰にでもあり、掴むチャンスを見逃さないでください。
間違える事もあるでしょう。立ち止まってしまう事もあるでしょう。
その時は、振り返って道を見直す事もよいです。
もしくは、周りにいる友人・親類・先輩・後輩を見て下さい。
悩んでいる事を話さなくても構いません。
ただ、話してくれるだけで・・・ 会話をしてくれるだけでも構わないのです。
話してくれないというのは、とても気持ちがざわめきます。
一人で解決できることもあれば、出来ない事もあるのです。
他愛のない事でも、関係ない話でも、少しでも心が軽くなったのなら。
話せる覚悟が出来たと思ったら。話してください。
私達は人です。会話を通して交流を図る生命です。
会話無くして、心を知る事は早々できません。痛みを知ることは出来ません。
会話を通して、初めて気持ちを知る事が出来るのです。
しかし、「それでも話したくはない。」と言う方がいるかもしれません。
残念な事に全ての人は善性ではありません。悪性を持ち合わせるのが人間です。
人を見分け、自分の味方となる人物を見つけるのは容易ではありません。
根気よく、小さなことからコツコツと。時間をかけて関係を構築していくのです。
未来を明るくするのも、暗くしていくのも自分次第です。
悪意に負けなよう。皆さんの運と努力を、常に祈りを捧げます。」
そこまで言うと、少し間を空けて息を吸い直した。
605: 影響を受ける人 :2018/04/07(土) 23:22:04
「記憶も新しい戦争が、大陸で起きました。
扶桑海事変と報道される怪異・・・ネウロイと呼称が改められた敵の侵攻。
この時の為に鍛えていた軍が対応に当たり、当初こそ優勢に進められていたそうです。
しかし激化に伴い兵士の数が、ウィッチが足りなくなってしまいました。
政府の対応は間誤付き、まだ幼いウィッチが戦場に出ていく事となってしまいました。
そして・・・その命を散らしていきました。
生きて戻ってきた子達でも、心に大きな傷を負いました。
中にはウィッチであることを止めてしまった子もいます。
それは仕方が無く、一つの、自分なりの決断であると思います。
現在、大陸側からの侵攻は落ち着いているようです。
いまだ油断ならぬ状況ではありますが、これも数ある一つの区切りでしょう。
命を散らした学生達の亡骸のいくつかが大陸に残されたままだと聞きます。
遺体を回収できなかった。遺体が残らなかった・・・
様々な理由があるにせよ。せめて、この卒業式をもって鎮魂の為に、彼女達が生きていたという証の為に。
彼女達を送り出していきたいと考えています。」
静香に締めくくり、学園長が壇上から離れて行く。
教員の一人が変わって、これから送り出す卒業生の名前を読み上げ始める。
ほぼ同時に軍の高官、政府の重鎮等の人々が静かに立ち上がると同時に首を垂れた。
「小鳥遊ひより。」
彼女は陸戦ウィッチで戦い、腹部に重傷を受けて殿に残って帰ってこなかった。
「高嶋ナエ。」
彼女は空戦ウィッチとして戦い、初戦で落ちて速度を殺しきれず地上に激突。即死だった。
何人もの少女達の名前が呼ばれていく。
頭を垂れた、責任ある大人達は微動だにせず。只々感謝と詫びの為に頭を下げ続けた。
本当なら戦場に出さなくても良い少女達の命を使い、本土の安全が確保された。
そして、その事実を消して忘れないようにするため、職務を賭してこれから仕事に挑んでいくだろう。
「早良ミチル。」
坂本美緒の肩が揺れた。
彼女の胸中に渦巻くモノはなんだろうか?
懺悔か、前を見ようとする健気な気持ちだろうか?
横に座っている竹井醇子の手が一瞬、美緒の手に重なりそうだった。
以前なら躊躇なく握って、安心させただろう。
しかし今は違う。
戦場をしり。親友の最後を見届け。級友の死を目にし。祖父の厳しい教えを胸に刻んでいる。
もう。ただ優しいだけの子供ではなくなっていた。
それでも、これが終わったら諌めてあげよう。
胸を貸す事ぐらいは、親友の自分でもできる事だから。
606: 影響を受ける人 :2018/04/07(土) 23:23:27
――心理世界――
その世界は黒い世界だった。
元から黒かったのではなく、年月がたって黒くなったのだ。
色褪せた“思い出”の様に、色が抜け落ちっていく。
九曜葛葉は、この世界で愛した夫と暮らした屋敷を模した家屋にいた。
黒い世界ながら輪郭は有るので、完全な暗闇と言うわけではない。
「・・・・・・・・・・・・・」
言葉を発する事無く。ただ真っ直ぐにこの世界を見ていた。
休眠状態でよく目にするこの世界だが、九曜はこの世界の事など見ていない。
ただ建物が有るだけの、物悲しい世界。彼女以外の音源すらない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目が覚めるその日まで無関心に、無感動にたたずんでいる。
この国を守ると決め。亡き夫との約束の為に生き続けていた。
それももうすぐしなくて良くなりそうだ。後10年位するれば・・・いや、短くなることも考慮しても良いかもしれない。
そんな事を頭の片隅で考えていると。なにか、音がしたような気がした。
余りにも小さな音だったが、夢の中でも性能のいい狐耳はけして逃さなかった。
音のした方に振り返ってみるが、何もいない。
気のせいだろうかと考える。この夢は自分の夢。何の不都合が有ろうか?
そう思ったのもつかの間、今度は泣き声が聞こえてきた。
誰かがいる。
九曜はすぐさま鳴き声の方に向かって歩き出す。
不信感よりも、不安よりも、その声の主を見つけようとした。
声は、自身が産んだ子供達が過ごしていた部屋からする。
驚かさない様に、慎重に黒いふすまを開いていくと・・・少しだけ遮られていた泣き声が大きくなった。
部屋にいたのは一人の少女。
「あなたは・・・」
どこか、親しみを覚える少女を見て九曜は動揺する。
彼女に気が付いた少女が泣き顔のまま、こちらを振り見て問うた。
『おばちゃんは、誰?』
これが、エイラ・イルマタル・ユーティライネンとの。
初めての出会いである。
以上です。
之にて完結!!
まさかこんなに時間がかかるとは・・・(汗
ここまでやってこれたのは、皆様の暖かなご支援のおかげです。
特にナハト様・ham様・第三帝国様と言った方々の
支援SSが楽しみの一つとなっていた事も、忘れては無いません。
次に書くのは自分なりのキャラ説明ですね。
これまた時間がかかるわぁ・・・
最終更新:2018年05月06日 13:41