155: ひゅうが :2018/05/13(日) 05:14:15

一発ネタ――「君は、生き残ることができるか(迫真)?」



――西暦202X年 東京 料亭FUJINOSE


「では、対象の撃破を祝って乾杯!」

「いやー想定外もなく、無事に済んでよかったですな!」

「お気持ちはよくわかりますよ」

「総理、苦しいところも多くありましたが何はともあれ…」

「うむ。一時はどーなることかと思ったが」

「やっぱりまだ人がいましたからね」

「あそこでかまわん撃て、責任は私がとるってのはしびれましたよ」

めいめいが和気藹々と乾杯を重ねる。
強引に連れてきた官房副長官が目を白黒させる中、ある意味共犯者であるところの内閣総理大臣はにやっと笑った。
実にいやらしい笑みであった。
どうしてこんなに皆が仲良くなったのだろう、などと官僚っぽいくせに政治家をやっている官房副長官が思うのは当然である。
だが答えてやる義理はない。
気が付いた時には巻き込まれている。それでいいのだ。
何しろ自分たちのように気が付いたら人生を2度どころか3度やり直しているようなものいるくらいだ。


――そう。
この場に集まった者どもは、みんなある意味で共犯者なのであった。
いずれもがここではないどこかで、教科書に載っているのとは違った歴史を歩んだ覚えがある。
それだけならば狂人といってもいいのだろうが、そうした中で培った技能や記憶が現在も通用することを考えれば、自分達自身にとっては本物だろうが偽物だろうが同じことである。
たとえばどこか宇宙のかなたで顔色の悪い宇宙人相手に冷戦状態を戦ってみたり、たとえばもののはずみで銀河帝国をでっちあげてアニメやゲームの世界と関わらざるを得なくなったり、たとえばかつての日本(大きさが異なったりあとちょっと流れが変だったりもする)で大戦争を戦いぬいたり…etc
いずれも、経験は様々ではあるが国家の指導者層であったり軍事の要であったりと状況の俯瞰的な立場であるのが共通項といえば共通項である。
自分にいくつもの記憶が重なり合っているなど珍しくもなんともないのだ。


だからこそ、この21世紀初めごろで気が付いたときに男や女たちは絶叫した

「シン・ゴジラじゃねーか!」

と。
ことに、大河内清次という名の政治家になっていた男は真っ青になり、ぶっちゃけ誰も名前を覚えていないような政治家になっていたりした男たちに確認をとった。
「ぬるぽ」
「ガッ!」
もとい、「木更津離陸(以下略)」と
やたら声のいい防衛大臣になった人物なんぞ、その場で賛美歌じみた「誰がしってんの?(和訳)」を歌いだす始末であった。

そうと決まれば話は早い。
誰だって内閣総辞職ビームにやられて「じゅっ」となるのはごめんである。
なお、某世界線で海軍提督のくせに海保のドン扱いされていた現農水大臣は余裕をぶっこいていたものの外遊キャンセルをたてに巻き込まれている。

156: ひゅうが :2018/05/13(日) 05:15:16

与党内はおろか、官僚たちまでも巻き込んだ上での挙国一致という驚天動地の出来事を起こして彼らは対処に邁進。
そしていくつかの計算違いはあったものの何とか事態収拾に成功していたのだった。


「教授も諦めてくれたらよかったのにな」

「なにあのスネーク術。CIAだけでなく公安の追跡もかわすとか、元気がありあまってなかったか?」

「なんかドクターヘルっぽくなってグローリー丸の上でジョジョ立ちしてたぞ」

「挙句、最期は『私は人間をやめるぞー!』だからな」

「奥さん生きてるだろ?」

「何かティンときちゃったらしい。もともと地球環境的な意味で意識高かったから」

「迷惑極まりないな!」

「しかし緊急時とはいえ、あの木更津の『痛いヘリ』を出してよかったのか?」

「気にするな。だいたい史実だ」

「えええ…」

それにしても、気が緩みすぎである。
妙に目つきの鋭い総理大臣補佐官とか官房副長官が聞き耳を立てていることも気にしていない。
だからだろう。
彼等は気が付かなかった。
上陸してきたゴジラ第2形態相手に容赦なく発砲したあとで焼却処分したはずの細胞サンプルがいくらか消えていたことや、それをこの手のバイオ研究大好きな「かの国」とか、甘い罠の結果情報を仕入れていた世界の中心のはなやかな国とか、あとまだ大統領やっている目つきの悪いハゲの国とかが手に入れていたことに…

だからこそ、解決から2か月を経たこのタイミングで凶報は舞い込むことになったのだった。

「し、失礼します!ニューヨークの領事館から緊急です!巨大なカマキリらしきものが――」


「「「アニメ版ゴジラかよ!!」」」


どっとはらい。

157: ひゅうが :2018/05/13(日) 05:16:08
【あとがき】――久しぶりにヒドい話を書いてみたくなったので一筆を…
ご笑納くだされば幸いです

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最終更新:2018年05月26日 12:02