394 :ひゅうが:2012/01/08(日) 20:02:40

提督たちの憂鬱 ネタSS――「赤化した世界~AD1943~」

――西暦1942年8月 太平洋 客船「みかさⅡ」


「ああ・・・どうしてこうなったのか・・・」

「何よ。何か文句でもあるの?」

「いや、そうじゃなくてだなぁ・・・」

「だいたいあなたは気にしすぎよ。そもそも私が『私』なのだからこの世界の変化は
あまり気にしすぎないようにって約束したじゃないの。」

大日本帝国宰相 嶋田繁太郎は肩をすくめた。
資本主義陣営の砦であるアメリカ合衆国・・・通称「米南」の大統領をつとめるダグラス・マッカーサーの招きでハワイ立憲王国での首脳会談にのぞむ彼の傍らには、上品な雰囲気ながらも勝気な釣り目で彼を見つめるゲルマン系の美女がいた。

「私には、あなたがいるわ・・・」

「誰に聞いたのかは知らないがエロゲごっこはやめてくれ。」

「あらそう?」

クスリとアドルフィーネ・H・嶋田は微笑した。
本来なら史上最悪の独裁者の称号をほしいままにするはずの演説の天才がなぜ嶋田のそばにいるのか。
いまだに確たる答えは出ていないが、夢幻会では「彼女」の誕生は単なる偶然かバタフライ効果のたまものという意見が大勢を占めていた。
最初に報告を送ってきた総研(夢幻会)欧州総局の担当者も頭を抱えていたくらいだ。


そして彼らの知る歴史は「史実」と大いに異なっている。
たとえば、第1次大戦を終結に追いやった「背後からの一撃」ドイツ革命は、スパルタクス団の暴走でエーベルト政権となるはずの臨時政府が丸ごと粛清された後でドイツ軍同士と労農赤軍が相撃つ壮絶な内戦へと発展していたし、その結果としてドイツ帝国は東西に分裂しソ連やボヘミア社会主義共和国と共に「欧州社会主義連合」ともいうべき勢力を築き上げていた。
対する資本主義陣営は、1930年のホワイトハウス一揆(退役軍人のデモ鎮圧失敗)の結果3年にわたる内戦の末にアメリカ北部が「アメリカ社会主義合衆国連邦」として独立し、相前後してフランスが赤化するなど旗色が悪い。
西ドイツのクルト・シューマッハー政権や、英国のチャーチル政権、そしてコロンビアに臨時首都を置くアメリカ合衆国(米南)のマッカーサー政権が連携して日本帝国に接近するのはむしろ必然だったろう。

独立したばかりの満州国で米南と協調し、共産主義に対抗している日本帝国はこの時点で世界の3割という強力な工業力を手にしていたのだから。

「はたして・・・どうなるか。」

嶋田は頭を抱えた。

極東には、ソ連が欧州方面へ拡張指向をとったために切り離された「ロシア帝国」(首都はアレクセイグラードこと旧ハバロフスク)が存続してはいるが、蒙古国と蒙古人民共和国の対立や、汪兆銘の華南と蒋介石の華北、それに節操のない張学良が合流した中華ソヴィエトの三者が展開する泥沼の内戦という頭の痛い問題がある。
肝心の欧州は、ポーランドとソ連・東独の対立(主にダンツィヒや西プロイセン問題について)が発火点に近付きつつあるし、西独もアルザス・ロレーヌ問題に加え「対独賠償問題」という赤化フランスの積年の恨みを突き付けられていた。

中近東ではイラン帝国をめぐって蠢動するソ連と英国があるし、仏領シリアと英領パレスチナという特大の火種もある。
まして、米北(社会主義アメリカ)領であるシアトル軍港には強力な米北太平洋艦隊がいるのだ。

「ま、なるようになるでしょう?」

欧州で大戦後のどさくさに巻き込まれた嶋田に成り行きでついてきて「押しかけ女房」になっているアドルフィーネは肩をすくめて笑った。


嶋田の乗る5万トン級客船「みかさ2」は、超大型空母「大鳳」と戦艦「長門」の護衛を受けつつ、ハワイ真珠湾へと滑りこみつつあった・・・。



【あとがき】――ネタですw赤い世界vs憂鬱日本と英国、それに米国の半分。さてどうなるかw

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最終更新:2012年01月25日 20:26