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765: 第三帝国 :2018/06/26(火) 23:21:01
GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり46


ロリカ・セグメンタタ、と称される鎧がある。
古代ローマ軍が装備していた鎧でその作りは非常に先進的である。
どこか、と問われればそれはロリカ・セグメンタタがプレートアーマーである点に尽きる

西暦2、3世紀の時代。
鎧といえば極論すれば「革をうろこ状に重ねた」代物から。
あるいは鎖帷子、鉄の小札を張り付けるスケイルメイル。

などがあるが全て「小さな皮ないし金属」を生産、管理する技術しかなかったためそうした鎧が主流となった。

しかしそんな中で金属を薄く平らに形成する板金の技術を有し、なおかつ「安定的に量産」する管理体制を有した国はローマだけであった。

しかも鎧自体の性能も元々プレートアーマーゆえに、斬撃や刺突には強い上に複数の板金を組み合わせた構造ゆえに、「打撃」に対しても衝撃を受け流し、逸らすことができた。

その上重量も後のローマ軍で採用された鎖帷子よりも軽く、
修理修繕も「板金など部品を交換するだけ」で済み、収納も「分解して保管」可能。

などと良いこと尽くめであった。
そのため長らく考古学会では存在自体疑われていたが、ハドリアヌス帝の長城で現物が発掘されたことで実在があきらかになったのだが・・・。

「すばらしい!
 レリーフでしか知ることができなかった鎧の構造が現物で確認できるとは」

「しかもついこの間まで使用していたから、年月を得て錆びていない、新品そのものだ!」

この時代は未だ発掘されておらず、それを踏まえた上で銀座の門から侵略してきた軍勢はローマ軍によく似ている。
そのため大量に鹵獲した各種武器、鎧その他文章類は古代史を研究する学者からすれば宝の山であった。

何せ歳月を得て風化、損傷していない現物を手に取ることができる。
しかも唯でさえ異世界という研究者の知的好奇心を刺激してやまない存在な上に、社会文化が古代ローマに近いため古代ローマの研究を前進させることが期待されていた。

「あー分かっていると思うが、考古学的な参考ではなく【帝国】に関する研究についてしっかりとやってくれ」

レアなコレクションを発見して騒いでいるオタク共に、色んな意味で身に覚えがある東条英機が米神を抑えつつ発言する。

【帝国】に関する情報はレレイ監修で完成した日本語から帝国語の翻訳。
そして現地に派遣されている部隊の語学力の向上とアルヌス生活協同組合を通じた情報収集。

766: 第三帝国 :2018/06/26(火) 23:21:48
などといった要因が重なり情報の精度と量は飛躍的に上昇した。
とはいえ、収集した情報全てを現地部隊そして軍だけで評価、分析するだけでは限界がある。

地理、歴史、文化、産業、経済。
各部門のスペシャルリスト達に協力を求めて今に至っているが・・・。

魔導書を無我夢中に読んでは物理学の解釈で議論する八木秀次に湯川秀樹。
羊皮紙の公文書から【帝国】の産業形態の計算を試みている伏見康治。

を筆頭に歴史に残る著名人たちが揃っていた。

「無論です東条閣下。
 陸軍の集めた各種情報、例えば地理、経済、歴史。
 そして産業に対する分析、調査が我々の本来の仕事であることは認識しています」

日本で古代ギリシャ、ローマ研究の基礎を築いた村川堅太郎助教授が堂々と述べる。

「とはいえ、
 【異世界】という非常に得難い研究材料ゆえ、少々の脱線は何卒どうかご容赦を・・・・・・」

「わかっている、その辺は『よく』わかっている・・・」

ギラギラと欲望に忠実過ぎる目線を前にして、常識人である東条に言えることはそれだけであった。

「それより、閣下。
 聞くところによると魔導士でなおかつ日本語に堪能な人材がいるとか・・・。
 是非とも魔法を映像や書物だけでなく実際に実演していただきOHANASIをしたいと考える次第で・・・」

徹夜と知的興奮による麻薬作用のコンボが決まり、非常に危ないギラついた目で登場した湯川博士が問いかける。
なお周囲の物理学者連中も一斉に東条に視線を集中させてくる。

(レレイを連れてきたら解剖しかねないぞ、このマッドども!?)

方向性は知的なものとは言え、生々しすぎる欲望の視線にさらされた東条は内心ドン引きする。

「・・・陸軍として彼女にはまだまだ門の向こうで協力して貰いたいと考えている」

普段なら夢幻会の席上でふざけて、
「陸軍としては海軍の提案に反対である(ドヤ)!」
と言う程度にハッキリと物事を述べるが欲塗れな亡者を前にして東条はヘタレた。

「・・・そうですか、ならば仕方ありませんね『今は』待ちましょう」

不穏極まる事を口走ったが聞かぬふりをする。
ここで「善処する」や「努力する」など典型的な官僚の逃げ答弁をしても延々と追及してくるからだ。

(・・・ち、ちくしょう!
 機密を守るには夢幻会の人間がいい。
 という事で決まったとはいえこのマッドどもを纏めるのが自分の役割だなんて!)

何せ立場上『陸軍が管理する異世界研究施設の総責任者』であるため、可能な限り集めた学者先生の『要望』には応える義務があり――――――我欲塗れな真理の探究者たちを今後も相手にしなくてはならない事実に頭を抱えた。





おわり

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最終更新:2025年03月03日 12:33