433 :ひゅうが:2012/01/08(日) 22:19:45
おお!乙です閣下!時間がかぶってしまいましたが私もネタを投稿いたします。
「なんだあれは・・・。」
征東行省を任されている男は、そう言うことしかできなかった。
彼の視線の先、かつて倭と呼ばれた国の海岸線には、いくつもの旗が翻っていた。
彼は舌打ちする。
あの超大国に服属した彼らは、自ら戦って属領を手に入れることで生き延びるという戦略を構想していた。
ゆえに、海東の野蛮なところを自ら服属させ、皇帝に献上するという目的のために手段は選んではいない。
自ら日の本と名乗る連中が何とか大元や蒙古と対等に付き合おうとするなど認めない。
高麗こそが元の第一の臣として野蛮な倭人を従え、もって海東に君臨するのだ・・・
そのためにまず侵攻した対馬はもぬけの空。
恐れをなして逃げ出した倭人どもは簡単に服属するだろう――と彼は思っていたのだ。
だが・・・
800隻を数える大船団の前に立ちはだかったのは、白い帆を上げた見たこともない大船だった。
大きさはたいした物ではない。
しかし、その帆柱は巨大で3本もあり、帆は縦に何段にも分かれ機能的である。
気に入らなかった。
数はおよそ20ほどだが、彼は倭人がこのような船を作ること自体が気に入らなかったのだ。
「皆のもの!あれなる倭人どもの船を――」
そこまで述べた時、倭人の船から白い雲が沸いた。
そして・・・
ひゅるひゅるひゅる・・・という音とともに、水柱が立ち上る。
「な・・・何だ!?」
「火の薬がもえておるのか!?」
少数だが乗り込んでいるお目付役が目を見開く。
男はそれに質問を浴びせようとした。
だが。
「ああ!副相船が!」
恐るべき精確さで、水柱が船を貫く。
「ええい!なんとかしないか!」
するすると倭船はこちらに近寄ってくる。
この玄界灘の荒波にもこたえた風はない。
「おのれ・・・!」
俺は、高麗は、こんなところで終わって――!
彼の思考は、そこで止められた。
434 :ひゅうが:2012/01/08(日) 22:20:15
――西暦1274(文永11)年11月25日(グレゴリオ暦11月4日)
京都 「兵部省」大本営
「報告します。元軍――いえ、高麗軍迎撃作戦は、所定の成功をおさめました。古賀さん・・・いえ松浦閣下の『海軍』は所定の作戦により玄界灘での邀撃に成功。東条さんあらため少弐総司令指揮する『陸軍鎮西総軍』の守備する水城要塞へ追い込み、野戦軍の菊池閣下と協同しこれを撃滅した由。」
ほっとした空気が流れた。
蓮華王院を改装して設けられた兵部省の「大本営」で報告していたのは、なぜか存在する眼鏡を光らせた男、北条時輔だった。
現在は大蔵省梨壺(主計局)頭をつとめる切れ者である彼は、朝廷と幕府の実質的な一体化を進めた功労者である。
「どうにか、しのぎきりましたね。辻さん。」
「・・・こういう場ならいいのですが、外でそれは困りますよ。嶋田さん。いえ、『兄上』。」
「まぁ、この場ならいいではないか?」
上座で笑うのは、伏見宮改め、第7代征夷大将軍 惟康親王(これやすしんのう)。
ここまで書けばもう分かっただろう。
嶋田あらため、兵部大臣にして関白太政大臣を兼ねる男、嶋田繁太郎あらため北条時宗は苦笑しながら官庁体の漢字かな混じり文を読みながら頭を下げた。
「ありがとうございます。近衛さん。・・・次は、元と高麗の分断です。まだあそこに侵攻する力はありませんからね。」
「はっは。そう言うな。備州での鉄砲生産は順調なのだろう?」
「まだ端緒についたばかりですよ。何もかも。」
板の間の面々が頷く。
夢幻会――そう呼ばれた男たちは、何の因果か13世紀の日本に転生していた。
そしてすったもんだの末、夢幻会を再結成するに至っていたのだ。
男たちは、チートを尽くす。
何しろ、この時代のビッグイベントたる元寇の相手は、世界を支配する冗談のような超大国なのだ。
ゆえに、スクーナー型の巡洋艦を建造しても、鉄砲や大砲を作っても、そして近代的な軍事組織と中央集権体制を作っても足りないことはない・・・?そして彼らにはある野望があった。
「この際です。欧米列強が進出する前に太平洋を押さえてしまいましょう。」
「そうだな。できれば北米大陸も。」
「「「あのチート国家を誕生させるわけにはいかない!」」」
そう。
はるか未来の日本帝国の最大の敵、アメリカ合衆国。その建国を阻止すること。
できれば、1000年先にも存続する強力な日本帝国の基礎を作る。それがこの世界の夢幻会の目的だった。そして・・・
「ま。『モンゴルの残光』みたいな世界になられては困りますからね。」
「そうだな・・・。まぁそうなるとは・・・。」
衝号を思い出し、一同は身震いした。
最終更新:2012年01月25日 20:48