538 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22:15:28
ネタでは良く憂鬱日本のその後としてレールガンが出てきているので。
○レールガン式撲殺兵器
さて、ここはとある料亭の奥座敷。そこに夢幻の重鎮が集まっていた。
第二次世界大戦を駆け抜けた嶋田、辻を筆頭とするメンバーだ。
しかし、新作カップラーメンを啜る様子は、
とても昭和の元老などと呼ばれている人間とは思えない。
会が始まるまで和やかな談笑……
実際には、萌えや燃えについての主張をして嶋田のやる気を殺いでいたのだが、
時間になると、誰ともなしに黙って会合が開催される。
嶋田が会議の司会をしようとしたそのとき、近衛が開口一番爆弾を投げ込む。
「さて、レールガンでも作ろうと思うのだが。あ、辻の賛成も得ているぞ。」
はぁ?
という声が唱和される。嶋田に至っては固まっている。
横で辻がうんうんと賛成しているように見えるのも混乱に拍車をかけた。
チートで技術的優位を確立しているとはいえ、
まだレールガンは夢物語に近い欠陥技術だった。
そういうものを作りたがるのはどちらかと言えば、
前世のアニメを実現させんとするアニメや軍オタ達だった。
(近衛はぶっちゃけ此方側だったが)
辻は大日本帝国の健全(?)な発展に力を注ぎ、
そういう戯言をいう輩を切って捨てるのが常だったからだ。
近衛はともかく、辻がボケたのかと思った。
打たれ強さに定評のある嶋田が真っ先に復活し、辻に問いかける。
「つ、辻さん。どうしたんだ一体。まさか認知しょ……」
「おや嶋田さん、何を勘違いしているのです。誰がホンモノを作ると言いましたか?」
「……。(この野朗ども、絶対誤解させようとして言ったくせに)」
この問答で全員の凍結が解けた所で、近衛が話始める。
「国策映画を作ろうと思う。ただし、外国向けのメッセージをこめた作品だ。
目的は技術のミスリードその他だ。」
近衛と辻が語ったのは、
何故かは不明だが、2010年以降からの逆行者は殆どいないこと。
このまま現状に胡坐をかいていては、
今までチートで築いてきた技術大国の地位が揺らぐ恐れがあること。
そのために、日本人に史実の昭和時代のような、怒涛の技術開発を促すこと。
諸外国に、到底実現しえない技術方針を提示し、研究・開発資源の浪費を誘うこと。
レールガンは架空技術代表としての例えであり、
大陸間弾道ミサイルは日本が技術を独占していたが、
各国で秘密裏に研究が続けられている。
人材不足でなかなか研究がはかどらないが、独ソに迂闊に手を入れられない今、
ICBMが独ソで別途完成し配備される恐れもある。
レールガンなどの架空技術に少しでも
人材資源や研究資金をつぎ込ませれば儲け物だと。
539 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22:16:00
「だから、特殊映像加工技術満載の架空兵器が出てくる映画を作って、
日本帝国軍監修でクレジットを入れて真実味を出して、独・ソの研究を誘導しようと?」
「ええ、ここに来てコンピュータ分野はかなり発展しています。
この前完成したスーパーコンピュータ‘億’をさらに並列にして使用すれば、
この時代の人間なら簡単に編集やCGで騙せます。日本の研究方針については、
暴走しそうだったら総研経由のテコ入れで修正・誘導すればいいでしょう。」
「のってくるか?」
「何のために、今まで散々総合火力演習などで兵器類を見せてきたのです。」
「まあ、また日本が悪乗りしていると思ってくれるかもしれんが。」
「それでレールガンか、少なくとも史実2010年までの技術では
実用不可能との結果が出ているし、この時代の技術で成功する恐れはまず無い。
ついでになまじ理論が正しいから、独ソは飛びつくかも知れんな。」
辻は対外牽制として予算も付けることを確約する。
アニメで「とある○学の超電磁砲」を作ろうぜ!という意見もあったが、
目的が目的だけに、リアルに作る必要があったので却下となった。
夢幻会の反応としては。
「これは参加しない訳にはいかない。」
「レールガンはもちろん大陸間弾道だよな。
作り付けの鈍重なのじゃなくて、台座を可動式にして360°旋回可能にすべき。」
「敵役で巨大潜水はでるよな?」
「宇宙戦艦……はさすがに現実味がなくなるが、超戦艦は必須。轟天ご……」
「却下。ドリルはやりすぎ。」
「とりあえず、物を選ばないと完全な空想映画として取られるから、調整しないと不味いな。あとリアルすぎるのも没な。マジものの技術を教えてもしょうがない。」
この場でまとまるわけは無いので、
運営委員会を作り、夢幻会から代表者を立てて指揮、経過報告をさせるといった
いつもの形式に落ち着いた。
試写会会場
「「「こっ、これは……」」」
異様に素早い旋回性能。
黒光りする長大な砲身は戦闘機の激突にも耐えられるほど頑丈だ。
東欧地域に建造されたそのレールガンは、正確無比なAA-GUNに守られている。
どうみても最強の鈍器、‘撲殺’兵器バラ○ールだった。
バラウ○ルを破壊するべく、謎の巨大潜水空母シンファ○シから発進するのは、
なぜか戦闘機ヴィルコ○ク……通称イカ。
主人公は超性能管制機E-767を駆って、常に最前線で友軍を叱咤激励するゴース○アイ。
レールガン式鈍器“バ○ウール”
巨大潜水空母“シ○ファクシ”
びっくり機動戦闘機“ヴィル○ラク”
どうみてもエースコ○バットであった。
「敵味方混じりすぎ。なんでシンファ○シなのだ。」
「誰だ! 企画まとめ役にエスコン厨を入れた奴!」
「なんで、轟天号がいないんだ!」
「よりによって戦闘機がイカとか。そこはハリアーだろ! それよりラプターだせよ。」
「ゴー○トアイだと? ツンデレ管制のサ○ダーヘッドこそ至高だ。」
「内容はごった煮過ぎるが……この名曲をフルオーケストラ音源で聴けるなら本望だ。」
540 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22:16:36
夢幻会での試写会でそんな怒号が響きわたった。
隠れエースコンバ○トマニアが監修総まとめとして着任していたための事件であった。
重度のエスコンマニアで構成された裏痛い子中隊の面々が喜び勇んで介入し、
戦闘機や空戦の監修に協力してほくそ笑んだのは公然の秘密だった。
因みに、ラプターやハリアーなどの機体が出ない理由は下手に史実機体をだして、
他国のブレイクスルーの原因を作ってはたまらないという理由であった。
もっとも、戦闘部分はCGでの再現なのでやばい部分は隠せるのだが、
一応、実機ではなく架空機で誤魔化しておいた。
もちろん、その他の内容としても、
宇宙開発のミスリードとして吊り下げ式の軌道エレベータがあったり、(ネタ1>>274)
某かくれんぼゲームを彷彿とさせるステルス迷彩スーツがあったり、
超戦艦「日○武尊」が力の入ったCGで再現されていたり、
一度聞いたら、爆発して自己消滅する指令テープがあったり……
CGの出来が素晴らしく、一部ミスリードを引けそうな内容も見受けられたが、
逆行者からみると、懐かしのネタ総集編のような内容となっていた。
一部、内部から不評を買った場面もあったが、結局は封切りされてしまった。
本家痛い子中隊の面々が、「ヒャッハー、次は俺達の時代だぜ!」といって、
アイ○ス映画を作ろうと息巻いていたが、
既にオタク成分は民間に十分普及しているとして、却下を食らって、
自主制作という名の同人活動を繰り広げたり、
嶋田がその様子を聞いて「もうやだ、この国」と鬱に入っていたのは、
比較的どうでも良い話だった。
何しろ、この映画を見て燃えてしまった国内科学者が周囲(逆行者)の忠告を振り切って、
レールガンの研究を始めてしまい、その変態的熱意を持って研究を続け、
80年代には実用化に漕ぎ着けてしまうのだから。
もちろん、手間を惜しまずCGを多用したり、大掛かりなセットを使用した撮影は、
この時代の人が見れば実写と代わらない迫力の映像を生みだした。
(史実21世紀からみれば不自然な点などが多数見受けられ、CGであると分かる。)
これを見た一部の国は恐慌状態となった。
ソ連は恐慌状態だ。
映画の様なレールガンが出来上がれば、一番割りを喰うのはソ連だった。
スターリンが怒りで真っ赤になると、粛清を恐れた軍人や技術者が真っ青になった。
しかしさすがに、これ以上人材を失うわけにはいかないことが分かっていたスターリンは、
怒りながらも、ベリヤに尾崎ルートで夢幻会から情報を引き出すように命令した。
独逸では総統が青筋を浮かべるのを見て、高級軍人らがやはり青くなっていた。
影の薄いデーニッツ提督がシンファクシを見て、「これからは潜水艦の時代だ」と嘯いたり、
宣伝相が「またやられた!」と闘志を燃やしたりしていたりと、
ある意味前向きな反応もあった。
英国も探りを入れた。直接軍備に回す予算がつけられないのは分かっていたが、
情報だけでも手に入れなくては大英帝国の名の折れだった。
さすがというべきか優秀な英国情報部は一部真実にまでたどり着き、
映画内での技術の多くが未だ構想段階であることを突き止めた。
(しかし、今までの日本の技術からいつかは実現するつもりと考えた)
英国首相の「あんなもの(国家予算を付けた映画)を作って喜ぶ変態どもが」
と核心をついた呟きは幸い誰にも聞かれなかった。
カルフォルニア共和国は虎の威をかる様に周囲に喧伝した。
規模は縮小したとはいえ、カルフォルニア財界には新聞王ハーストを中心に、
マスコミの力を知り世論操作に長けた者が多かった。
日本の技術力を押し出し、降りかかる災いを減じようというのだった。
フィンランドなどの友好国は、市民レベルにおいては、
あの友邦は頼りになるが変な事をするなぁ。という認識であった。
もちろん国のトップや高級軍人は青くなり、
日本と敵対してなくて良かったと胸を撫で下ろし、
改めて自国との技術上のギャップについて考え、諦めに似たため息を吐いた。
542 :ヒナヒナ:2012/01/09(月) 22:18:21
この裏で、日本は国際的なスパイの展示場のようになった。
各国がスパイを送り込んできたり、すでに潜伏しているスパイが動き出したのだ。
技能のお粗末な者も多く水際防御も可能であったが、日本は彼らを国内に入れた。
「各国の密偵どもには、お土産をお持ちいただけ。」
もちろん、この好機を逃すまいとして、
村中大佐を中心とする戦後に強化された情報部が、手薬煉を引いて待ち構えており、
パッと見重要技術情報に見えるトンデモ情報をお土産に持たされた。
レールガンの技術書類と思った物が良く見ると全くの嘘だったり、
設計図と思って持ち帰ってみると微妙に数値がデタラメで役立たずだったり、
ビデオテープがデッキ内で爆発したり(テープに爆薬が仕込まれていた)……
スパイにとっては踏んだり蹴ったりであった。
しかし、意外にも軍に正面から取材を申し込んだ強者は、
格納庫内を案内付きで見させてもらえる(型落ち機ではあるが)など、
日本はスパイの墓場と呼ばれ諜報関係者から恐れられた。
(了)
最終更新:2012年01月25日 20:59